• 更新日 : 2023年10月27日

辞令とは?拒否したら?意味や法的効力、テンプレートを基に書き方を解説

辞令とは?拒否したら?意味や法的効力、テンプレートを基に書き方を解説

企業は人事権の行使として人事異動を行い、辞令を交付します。宮仕えの身である会社員にとって、自分のキャリアだけでなく、家族の生活にも大きな影響を与えるため、辞令の交付は一大行事として無関心ではいられません。

この記事では、人事担当者が知っておくべき辞令の意味、法的効力、その種類、書き方のポイントのほか、従業員の辞令拒否などの問題について解説していきます。

辞令とは?

辞令とは、企業において、勤務場所・職種の変更などの配置転換および昇進・昇格などの人事異動の際に公式に通知する文書です。企業には、経済活動をするうえで必要な従業員の採用、配置転換などの人事異動に関する人事権があると解されています。

辞令は、その人事権行使の決定書と言えるでしょう。まず、その発令のタイミング、内示と発令との相違について確認しておきます。

辞令を発令するタイミング

辞令は、以下のさまざまなタイミングで発令されます。

  • 従業員の採用と配属時

    入社日や初日の職務に関する詳細を伝えます。

  • 配置転換や昇進昇格などの異動時

    従業員が新しい部署や役職に配置される際に発令されます。

  • 退職時

    従業員が退職する場合に、退職日や手続きに関する情報を提供します。

  • 給与変更

    給与や手当の変更がある場合、その詳細を明記します。

「内示」「発令」との違い

辞令には、「内示」と「発令」という2つの段階があります。

  • 内示(ないじ)

    組織内での人事異動や昇進の予定が従業員に内々に伝えられる段階を指します。内示はまだ公式な文書ではなく、変更が確定したわけではありません。内示の方法としては、第三者がいない場所で、直属の上長が部下に対して人事の意向として口頭で伝達するのが一般的です。

  • 発令(はつれい)

    内示が確定し、変更が実施されることが確定した段階です。辞令文書が従業員に発行され、新しい職務や責任についての詳細が公式に通知され、受け入れられる必要があります。発令により、その変更は人事権行使としての効力を持ちます。

辞令の法的効力は?口頭でも拘束力はある?

辞令は、配転命令、昇進昇格などの人事異動や給与決定などの情報を明確に示す文書です。前述のように企業が経済活動するうえで必要な人事権の行使として法的効力を持ちます。ただし、次の点に留意する必要があります。

口頭での通知や内示は、あくまで予告や情報提供の段階であり、辞令の内容によっては企業側が従業員に個別の同意を確認するという意味合いがあります。また、この段階で企業によっては、本人の事情を勘案し、辞令の内容を変更することもケースもあるでしょう。昇進・昇格など、特に本人の個別の同意を必要としない場合は、通常、口頭の段階で決定事項として扱われ、拘束力が生じます。

辞令の種類

辞令は、あらゆる場合に交付されます。以下、昇給辞令、昇進辞令、採用辞令、異動辞令、出張辞令、転籍辞令、出向辞令、退職辞令の8つの辞令について説明します。

昇給辞令

昇給辞令は、従業員の給与が引き上げられる際に発行されます。通常、組織は定期的な評価や業績に基づき昇給を決定し、昇給辞令によって新しい給与額や効力の開始日が従業員に通知されます。

昇進辞令

昇進辞令は、従業員が新しい職位や役職に昇進する際に発行されます。辞令は、昇進の詳細な条件や職務内容、給与変更、開始の日付などを含みます。昇進辞令が交付されることによって昇進が正式に確認されます。

採用辞令

採用辞令は、新しい従業員が組織に採用された際に発行されます。辞令には入社日、役職、給与、就業条件、福利厚生などの採用に関する情報が含まれます。採用辞令は従業員と組織の間の労働契約を締結後、人事権行使として入社日や就業条件などの必要な情報を確定するという位置づけになるでしょう。

異動辞令

異動辞令は、従業員が同じ組織内で別の部署や拠点に配置される際に発行されます。異動の理由、新しい職務内容、配置場所、日付などの必要事項が辞令に記載され、従業員に通知されます。

出張辞令

出張辞令は、従業員が一時的に他の場所で業務を行う際に発行されます。出張期間、目的、経費の扱い、報告先などが記載され、対象の従業員に提供されます。

転籍辞令

転籍辞令は、従業員が別の拠点や支店に転籍する際に発行されます。転籍の理由、新しい職務内容、配置場所、日付などが辞令に含まれ、転籍を正式に通知します。

出向辞令

出向辞令は、組織内の従業員が他の組織やプロジェクトに一時的に出向く際に発行されます。出向期間、目的、報告先、給与や手当の取り決めなどが辞令の際に記載されます。

退職辞令

退職辞令は、従業員が会社を退職する際に発行される辞令です。退職の理由、退職日、給与の精算、退職手続きなどが辞令として含まれ、退職が公式に確定されます。

辞令の各種テンプレート・例文

辞令のタイミング、種類は多岐にわたりますが、具体的な文章はどのようなものでしょうか。ここでは、各種の辞令のテンプレートと文例を紹介しましょう。以下のリンクから、必要なテンプレートがダウンロードできます。

辞令の書き方のポイント

辞令を書く際のポイントは、正確で明確な情報提供が求められます。以下は、辞令の書き方の具体的なポイントです。

明確なタイトルと日付

辞令の文書には、タイトル(昇進辞令、異動辞令など)と発令日付を明確に記載しましょう。これにより、文書の種類と発効日が一目でわかります。

従業員の氏名と識別情報

辞令は特定の従業員に対して発行されるため、氏名、社員番号、所属部署、役職などの識別情報を記載します。

変更内容の明示

辞令文書には、具体的な変更内容を明確に示す必要があります。昇進の場合、新しい職位や責任、給与の変更点を詳細に説明することが大切です。

発令の理由

変更や異動の理由を簡潔かつ明確にまとめます。「なぜこの変更(異動)が行われるのか」ということを従業員に伝えることは重要です。

行使される日程

辞令には実際に行使される日程を含めましょう。ここでは、昇進や異動の開始日、給与変更の適用日などを明示します。

従業員への期待

従業員に対して、新しい役職や職務に対する期待や責任を明記しましょう。これにより、従業員は自分の役割について理解しやすくなります。

署名

辞令には代表取締役や人事担当者の署名が必要です。これにより、文書が正式に発効されたことが示されます。

交付方法

辞令は通常、本人に手渡しで交付されますが、状況によって郵送で交付されることもあります。この場合、受領の確認や応答が必要であれば、それに関する指示も明記しましょう。

誠実なトーン

辞令は、従業員にとってキャリアにかかる重要な文書です。人事異動や昇進昇格などの辞令の際は、誠実なトーンで、従業員の新たな役割への適応をサポートするメッセージを伝えましょう。

辞令を出す流れ

通常、辞令は次のような流れで交付されることになります。

①内示

内示は、辞令を発行する前に従業員に対して変更や昇進の可能性について口頭で通知する段階です。内示の目的は、従業員が変更を事前に知識を得ることで、変更に対する理解を深め、不安や誤解を減らすことです。一般的に、内示は直属の上長を通じ、変更の理由、内容、予定の日程など、人事の意向を説明し、従業員の質問や懸念に答える機会を提供します。

②辞令書の作成

内示が行われた後、具体的な文書としての辞令の作成が行われます。辞令は正式な文書であり、従業員に人事権を行使した法的な根拠となります。前述のように従業員の氏名、識別情報、変更内容、開始日、給与の変更、発令者の署名、承認など辞令の種類に応じた情報が記載されます。

③辞令所の発令・交付

辞令を作成後、発令者(通常、上司や人事担当者)によって従業員に交付されます。辞令は従業員に手渡されるか、必要に応じて郵送される場合もあります。従業員は辞令を受け取り、内容を確認し、通常、承諾を示すことになります。

辞令は拒否できる?断るとどうなる?

辞令は、人事権の行使として発出されます。特に配置転換などの場合、従業員の家庭事情(家庭環境)によっては大きな不利益を与えることもあり、本人が辞令を拒否することもあるでしょう。人事権行使は業務命令でもあり、これを拒否することは業務命令違反として懲戒処分の対象となります。

企業側が注意しなければならないのは、辞令の種類によっては、本人の個別の同意が必要となるケースがあるということです。その一つが配置転換であり、従業員本人の同意なく、有効に配置転換の命令権を行使できるのは、判例上、以下の場合とされています(S61.07.14最二小判:東亜ペイント事件)。

  1. 労働協約や就業規則に配置転換を命ずることができる旨の定めがあり、実際にこれに基づき配置転換が頻繁に行われていたこと
  2. 勤務場所・職種を限定する合意がなされなかったこと
  3. 権利の濫用とならないこと

権利の濫用とならない条件については、

①業務上の必要性があること
②退職に追い込むなど不当な動機・目的が認められないこと
③労働者に対する不利益が通常甘受すべき程度を著しく超えないこと

上記3つの全ての条件が該当していないこと前提であり、あれば権利濫用として配置転換の命令は無効となります。

ちなみに東亜ペイント事件は、住居の変更を伴う転勤の内示を2度にわたって拒否(2度目は発令も拒否)した従業員に対し会社が懲戒解雇した事案でした。上記の3つを満たしていたことから従業員側が敗訴した事例です。同様の事例については、「東亜ペイント基準」とされ、以後、踏襲されています。

辞令の意味・法的性質を理解し、労使双方とも健全な関係を保とう!

辞令の意味、法的効力、その種類、書き方のポイントなどについて解説してきました。企業にとって、辞令は従業員に対して持つ人事権の象徴ともいえるかもしれません。辞令による大きな影響は、従業員のキャリアだけでなく、家族の生活も含まれます。

労使双方の健全な関係を維持するためには、こうした辞令の存在意義を十分に理解することが大切だと言えるでしょう。


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