• 更新日 : 2025年7月18日

労働時間とは?計算方法や勤務時間、残業代の注意点を解説!

労働時間とは、労働者が使用者のもとで労働している時間を指します。法定労働時間は1日上限8時間・1週間上限40時間で、会社が定める所定労働時間は、これを超えてはなりません。法定労働時間を超えて働かせると時間外労働になり、割増賃金を支払う必要があります。長時間労働の是正・改善のためには、労働時間の正しい管理が求められます。

労働時間とは?

労働時間とは、従業員が会社に労働を提供している時間を指す言葉です。会社の指揮監督下にある時間ともされています。また賃金の計算対象となっている時間であるともいえます。労働時間には法定労働時間と所定労働時間がありますが、それぞれどういった時間を指しているのでしょうか?違いを見ていきましょう。

法定労働時間

法定労働時間とは法律で定められている労働時間のことをいいます。労働基準法で規定されている「1日あたり上限8時間・1週あたり上限40時間」が、法定労働時間です。

労働基準法 第32条

使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。

② 使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない。

所定労働時間

所定労働時間とは、会社が定めている労働時間を指します。就業規則に定めている時間のことです。労働基準法に抵触しない範囲で会社が自由に定めることができます。

例)

始業時刻は9:00、終業時刻は18:00とする。(12:00から13:00までは休憩時間)

→労働時間は8時間となる

所定労働時間をどう決めるかは会社の裁量に任されています。そのため1日あたり上限8時間・1週あたり上限40時間より短くしている会社も、大企業を中心に多く見られます。

例)

始業時刻は9:00、終業時刻は17:00とする。(12:00から13:00までは休憩時間)

→労働時間は7時間となる

しかし次のような規定は労働基準法を下回るため、認められません。

例)

始業時刻は8:30、終業時刻は18:00とする。(12:00から13:00までは休憩時間)

→労働時間が8時間30分となり、8時間を超えるため労働基準法違反となる

労働時間と勤務時間の違いは?

勤務時間は始業時間から終業時間までの、休憩時間を除く時間です。所定労働時間と同じになりますが、所定労働時間が労働基準法上、その企業の就業規則などで定められた労働時間を意味するのに対し、勤務時間は一般的に用いられる用語であり、特に定義はありません。

労働時間と時間外労働時間の違いは?

労働時間とは従業員が会社の指揮監督下に置かれた労働を提供している時間を指します。時間外労働時間は、労働基準法が原則として禁止する1日8時間を超える労働時間を意味します。

労働時間に含まれる時間と含まれない時間の判断基準

労働時間に「含まれる時間」と「含まれない時間」の違いを明確にし、企業が適切に対応することで、法令遵守と従業員満足の両立が可能になりますので見ていきましょう。

使用者の指揮命令下にあるかどうかで判断する

労働時間に該当するかどうかの最大のポイントは、「使用者の指揮命令下にあるかどうか」です。これは、労働者が会社の指示で拘束されているか、または業務遂行のために時間を使っているかという観点で判断されます。

例えば、上司の指示で始業前に出勤し、朝礼やミーティングに参加している場合、これは明確に労働時間に該当します。同様に、終業後に業務の延長として残って作業する場合も、指示や業務上の必要性がある場合は労働時間とされます。これに対し、休憩時間中に自由に外出するなど、使用者の拘束を受けていない時間は、原則として労働時間には含まれません。

労働時間に「含まれる」時間の例

労働時間に含まれる時間の具体例としては、以下のようなケースが挙げられます。

  • 始業前・終業後の業務指示や準備作業(例:レジの立ち上げ、開店準備)
  • 会社が義務づける研修や会議(休日開催であっても労働時間に含まれる)
  • 外回り中の移動時間(営業先間の移動など)
  • 会社指定の健康診断受診時間(就業時間中の場合)

      これらは、従業員が企業の業務遂行に必要な行動をしており、実質的に会社の指揮下にあると判断されるため、労働時間として取り扱う必要があります。

      労働時間に「含まれない」時間

      一方、労働時間に含まれない代表的な時間としては、次のようなケースが考えられます。

      • 通勤時間(自宅から職場までの移動時間)
      • 昼休みなどの休憩時間(業務の指示を受けず、自由に過ごせる時間)
      • 自主的な早出や居残り(会社からの明示的・黙示的な指示がない場合)
      • 私的な外出・用足し(昼食の買い物、通院等)

          注意が必要なのは、「自主的に早く来て作業している」場合です。これが継続的かつ黙認されていた場合には、黙示の業務命令とみなされ、結果として労働時間と判断される可能性があります。そのため、企業としては、就業前後の行動についても明確なルールを設け、曖昧な運用を避けることが重要です。

          労働時間の計算方法は?

          労働時間は始業時間から終業時間までの、休憩時間を除いた時間です。

          例)

          始業時間は9:00、終業時間は17:00、12:00から13:00までは休憩

          →労働時間は8時間

          労働時間を計算する際の注意点は?

          労働時間を間違えて計算すると、長時間労働につながります。労働基準法違反となったり従業員の健康を損ねたり、会社の信用を大きく失う恐れがあるため、以下の注意点に留意し、正確に計測しなければなりません。

          原則1分単位で計算する

          労働時間は1分単位で把握・計算します。端数を切り捨てる計算方法は認められないので、注意が必要です。例えば以下の計算方法は禁止されています。

          • 10分や15分、30分単位として、端数を切り捨てる
          • 始業時間より5分早く仕事を開始しても、労働時間にカウントしない。
          • 1時間に満たないと残業時間にならない。

          労働時間を15分単位にできるのは、1か月の合計時間を求めて、時間外労働時間の割増賃金を計算するときです。日々の時間外労働時間を15分単位にできるわけではありません。混同しないよう、気をつけましょう。

          労働時間に応じて休憩時間を付与する

          労働時間に応じて、会社は従業員に休憩を与えなければなりません。

          • 労働時間6時間超で、少なくとも45分間の休憩
          • 労働時間8時間超で、少なくとも1時間の休憩

          労働基準法で定められていて、休憩を付与しないと6か月以下の懲役または30万円以下の罰則が科せられる恐れがあります。

          遅刻や早退、欠勤は労働時間から差し引く

          従業員が遅刻や早退、欠勤をして就業しなかった時間は、労働時間から差し引きます。労働時間から引く時間も1分単位としなければなりません。例えば10分の遅刻で労働時間を30分差し引くことはできません。

          時間外労働や残業代の取り扱いに注意する

          時間外労働時間や残業代の扱いは、労働基準法を遵守することが求められます。時間外労働は上限規制、残業代は割増賃金に注意しなければなりません。労働基準法の改正によりそれまでは特別条項付き36協定の締結により実質的には無制限となっていた時間外労働時間に上限が設けられ、割増賃金率の見直しも行われました。

          変形労働時間制・フレックスタイム制・裁量労働制の労働時間における注意点

          柔軟な働き方を実現する制度として、変形労働時間制、フレックスタイム制、裁量労働制が広く利用されていますが、これらは通常の労働時間制度とは異なる運用が求められ、法的な注意点も多く存在します。
          まず、変形労働時間制は、一定期間内で平均して法定労働時間内に収めれば、日や週によって法定労働時間を超える労働が可能になる制度です。例えば1ヶ月単位の変形労働時間制では、1ヶ月以内の一定の期間を平均し週40時間を超えなければよいという柔軟性がある一方、制度導入には労使協定や就業規則への明記が必要です。また、所定時間を超えた場合の時間外割増賃金の扱いも正しく理解しなければなりません。

          フレックスタイム制は、一定の清算期間内で総労働時間を定め、その範囲内で従業員が出退勤の時間を自由に決められる制度です。導入には就業規則への記載と労使協定が必須であり、コアタイムフレキシブルタイムの設定、清算期間内での時間超過・不足への対応方法も明確にしておく必要があります。

          裁量労働制は、実労働時間ではなく、あらかじめ決めた「みなし労働時間」で労働時間を評価する制度です。対象業務は法令で限定されており、導入には対象者の同意と、労使委員会による協定が必要です。業務の実態と「裁量性」が乖離していると違法運用となるため、実態に即した導入と管理が不可欠です。

          労働時間を正しく管理する方法は?

          労働時間管理方法には様々なものがありますが、適切な管理が可能な方法としてはタイムカードを使うものと勤怠管理システムを使うものが考えられます。それぞれがどういった方法か、どのようなメリット・デメリットがあるかについて理解しましょう。

          タイムカードを活用する方法

          タイムカードは紙媒体などに始業時刻と終業時刻を打刻して、差を労働時間として把握・管理する方法です。簡単で労働者の負担にならないというメリットがある一方、打刻の押し忘れが発生する、出張時や在宅勤務時には使えないというデメリットがあります。手作業での集計が必要で、その際にミスが発生する恐れがある点もデメリットとされています。

          勤怠管理システムを活用する方法

          勤怠管理システムはパソコンのログイン・ログアウト情報などをもとに、自動で労働時間の把握・管理を行う方法です。自動で集計でき、ミスも起こらない点がメリットとされています。デメリットにはタイムカードと比べて初期投資費用がかかる点や、システムの導入・運用に関する従業員教育が必要な点が挙げられます。

          労働時間の管理が不適切な場合のリスク

          ここでは、不適切な労働時間管理が引き起こす主なリスクについて整理します。

          未払い残業代請求

          労働時間の管理が不十分な場合、最も直接的なリスクは「未払い残業代」の請求です。実際には残業していたにもかかわらず、タイムカードや勤怠システムで適切に記録されていない、あるいは自己申告に任せていたといったケースでは、労働者が証拠をもとに残業代を請求することが可能です。

          これにより、多額の支払い義務が発生するだけでなく、過去3年(令和2年3月以前の分については2年)に遡って支払いを求められる場合もあり、企業の財務的な負担は大きくなります。また、同様の請求が複数の従業員から相次ぐことで、社内外の信頼を失う恐れもあります。

          労働基準監督署による是正勧告や行政処分

          労働時間管理が不適切な状態が継続していた場合、労働基準監督署による調査や指導の対象となる可能性があります。例えば、36協定の上限を超える残業が常態化している、休憩時間が確保されていない、打刻と実働に乖離がある、といった実態が発覚すれば、是正勧告や指導が入ることになります。

          場合によっては、事業所名の公表や、労働基準法違反としての罰則(6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金)に至ることもあります。社会的に注目されている企業でこのような処分が行われた場合、企業ブランドへの影響は計り知れません。

          従業員の健康問題や離職

          労働時間の過多は、従業員の健康に悪影響を与える要因のひとつです。長時間労働が慢性化することで、過労死や精神疾患のリスクが高まり、健康被害が発生した場合には、安全配慮義務違反として企業が損害賠償責任を問われることになります。

          また、「働かせすぎ」「管理がずさん」といった印象が職場に広がれば、従業員のエンゲージメントが低下し、早期離職の原因にもなります。採用コストや引き継ぎ負担など、間接的な経営ダメージも無視できません。

          労働時間について就業規則に定めておくべき事項

          労働時間は企業における労務管理の根幹であり、就業規則で明確に定めることで、労使双方の認識を統一し、トラブルの防止につながります。ここでは、就業規則に記載しておくべき主要な項目について整理します。

          所定労働時間と休憩時間

          就業規則には、所定労働時間を明確に記載することが基本です。始業および終業の時刻、1日の労働時間、1週間あたりの労働時間を具体的に示します。例えば「勤務時間は9時から18時、うち12時から13時は休憩」といった形で、誰が見ても理解しやすい記述にすることが求められます。

          また、休憩時間についても、取得のタイミングと長さを明示し、労働時間との切り分けをはっきりさせる必要があります。業種や職種によっては複数回の短時間休憩を設けることも想定されるため、その場合も具体的に示しておくとよいでしょう。

          特別な労働時間制度を導入する際は詳細を記載

          変形労働時間制やフレックスタイム制、裁量労働制などの制度を採用している場合は、その内容を詳細に定める必要があります。変形労働時間制の場合は、対象期間(1ヶ月・1年など)や週ごとの労働時間の変動方法、上限時間を就業規則に明記しなければなりません。

          フレックスタイム制を導入している場合には、コアタイム(必ず勤務する時間帯)とフレキシブルタイム(出退勤を自由に決められる時間帯)を設定し、清算期間(最長3ヶ月)とあわせて記載する必要があります。裁量労働制については、対象業務や労使協定の内容も明示が求められます。

          時間外労働・休日労働の運用ルール

          時間外労働や休日労働が発生する場合の取り扱いについても、就業規則での明文化が必要です。例えば、残業の発生条件、事前の申請手続き、上長の承認フローなどを定めておくことで、無断残業や未払い残業といった問題の予防につながります。

          また、36協定(時間外・休日労働に関する労使協定)の存在を明記し、その上限時間と遵守の義務についても触れておくと、労使双方の意識づけに有効です。

          労働時間の管理と記録方法

          就業規則では、労働時間の記録方法や管理責任者についても定めておくと、トラブル回避に効果的です。タイムカード、勤怠管理システム、打刻アプリなど、記録手段を明示し、従業員の自己申告が必要な場合の手続きも併せて記載します。

          テレワークや直行直帰が増える中で、勤務状況の可視化が課題となっている企業も多く、就業場所を問わず一貫した記録ルールを設定することが、労務コンプライアンスの維持につながります。

          自社に合った管理方法を選んで労働時間の正しい管理を徹底しよう

          労働時間は労働基準法で1日上限8時間・1週上限40時間と定められています。超えた時間は時間外労働時間となり、割増賃金を支払わなくてはなりません。時間外労働の割増賃金率は原則25%ですが、月60時間を超える時間外労働については50%となります。

          長時間労働を改善するため、一定時間を超える割増賃金率の引き上げが行われました。割増賃金率の引き上げによる人件費増大を防ぐためには、法定労働時間を遵守するため、労働時間を正確に把握・管理し、適正化を図る必要があります。

          労働時間を適切に管理する方法として代表的なものにはタイムカードを使う方法と、勤怠管理システムを使う方法があります。導入して効果を得るためには自社に適した方法を選ぶことが大切です。

          それぞれの方法について、どのようなメリット・デメリットがあるかをよく理解し、労働時間の正しい管理を徹底しましょう。


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