• 作成日 : 2022年3月18日

固定資産税は年末調整で控除対象になる?減額するための方法を紹介

土地や家屋といった不動産に対する固定資産税には、さまざまな減税措置があります。しかし、制度が複雑であるため、知らずに恩恵を受けることができないこともあります。今回は、固定資産税や、あまり聞きなれない償却資産の定義のほか、新築住宅やリフォーム等の場合の軽減措置の内容と年末調整の関係について解説していきます。

固定資産税とは?

住宅を新築したり、マンションや土地を購入したりすると、ローンの返済だけでなく、維持していくために毎年、さまざまな費用がかかります。代表格となるのが、その不動産の所在する市町村が課税する地方税である固定資産税です(東京都23区においては特例で都が課税)。不動産は、宅地建物取引業法では、土地と家屋を指しますが、税法上の固定資産には、これに加えて後述する償却資産も含まれます。

固定資産は、全国どこの市町村にもあるため、固定資産税は地方税としては税源の偏りが小さい基幹なる税金となっています。納税義務者は、土地、家屋、償却資産の所有者であり、土地と家屋の場合は登記簿上の所有者を固定資産課税台帳に登録して課税します。

また、償却資産については、市町村に申告した所有者を固定資産課税台帳に登録して課税します。土地・家屋、償却資産のいずれも総務省の定める固定資産評価基準によって固定資産の価格が算出され、それをもとに課税標準額が決定されることになります。

この段階で政策的な特例措置として課税標準額が減額される場合もあります。「住宅用地の特例」というものです。これについてはあとで解説します。

最終的な固定資産税は、次の計算式で算出します。

固定資産税=課税標準額×税率(1.4%)

こうして算出された固定資産税が、政策的な特例措置で減額される制度もあります。つまり、固定資産税が減額される特例措置は、計算基礎となる課税標準額の減額と、計算後の固定資産税そのものの減額の2つの種類があるということになります。

固定資産税における償却資産とは?

土地や家屋ではない「償却資産」とは、どのようなものなのでしょうか。これは、土地と家屋以外で事業用に使用されている資産が該当します。具体的には、工場や商店等の事業をしている場合であれば、構築物、機械、工具、器具、備品等が該当します。

会社員でも、駐車場やアパート経営をしているケースがありますが、その場合も、その事業のために使用している構築物、機械、工具、器具、備品等には土地、家屋と同じように固定資産税が課税されることになります。

前述のように償却資産については、市町村に申告した所有者を固定資産課税台帳に登録して課税しますが、土地と家屋が3年ごとに評価替えが行われるのに対し、償却資産は毎年、評価替えがなされます。評価額は、取得価額と取得後の経過年数等に応じて算定されます。

固定資産評価基準による具体的な計算式は、次のようになっています。

評価額= 取得価額- 取得後の経過年数等に応じた減価分
評価額の最低限度= 取得価額× 5%

償却資産を所有されている方は、毎年1月1日現在所有している償却資産の内容(取得年月、取得価額、耐用年数等)について、1月31日までに償却資産の所在する市町村にある税事務所に申告しなければなりません。

償却資産の種類

申告の対象となる償却資産には、次のような種類があります。

  1. 構築物
  2. 舗装路面、庭園、門・フェンス、緑化施設等の外構工事、外灯、看板(広告塔等)、自転車置場、ゴミ置場、ビニールハウス、ゴルフ練習場設備、受変電設備、予備電源設備、その他建物付帯設備など

  3. 機械および装置
  4. 工場・作業所等で使用する各種製造設備等の機械および装置、クレーン、ブルドーザー等建設機械、機械式駐車設備(ターンテーブルを含む)、太陽光発電設備(家庭用のものであっても10kw以上のものは申告の対象)など

  5. 船舶
  6. ボート、ヨット、釣船、漁船、作業船、客船、艀(はしけ)など

  7. 航空機
  8. 飛行機、ヘリコプター、グライダーなど

  9. 車両および運搬具
  10. 大型特殊自動車、台車、フォークリフト等の構内運搬具等(標識の分類番号が9、90~99、900~999のもの)等(自動車税、軽自動車税の課税対象資産、小型特殊車両は、軽自動車税の対象となるため除く)

  11. 工具、器具および備品
  12. 事務机、パソコン、コピー機、エアコン、冷蔵庫、レジスター、自動販売機、陳列ケース、看板(ネオンサイン等)、ロッカー、応接セット、カラオケ機器、医療機器、測定工具、金型、理容・美容機器、衝立など

次に視点を変えて、業種別に償却資産の対象となる主な資産を整理してみましょう。

  1. 業種共通
  2. パソコン、コピー機、事務机、ルームエアコン、応接セット、レジスター、自動販売機、内装・内部造作等(賃借人・テナントが取付けた場合)、駐車場舗装、避難設備、フェンス、外構工事、カーポート、敷地内排水溝、看板(広告塔、袖看板、ネオンサイン)、LAN設備など

  3. 農業
  4. 乗用でない耕運機・田植機、ビニールハウス(家屋に該当しないもの)、きのこ栽培用原木、農業用機械ボイラー、養液装置、乾燥機、畦塗機など

  5. 漁業
  6. 漁船、遊漁船、航海計器、無線、魚群探知機、網・縄の巻上機、ボイラーなど

  7. 製造業
  8. 金属製品製造設備、食料品製造設備、プレス機、旋盤、ボール盤、ベルトコンベア、梱包機、工業用配管、テント倉庫など

  9. 印刷業
  10. 各種製版機、印刷機、断裁機など

  11. 建設業
  12. ブルドーザー・パワーショベル・フォークリフト等の土木建設車両(軽自動車税の課税対象となるべきものを除く)、大型特殊自動車、発電機、コンクリートカッターなど

  13. パチンコ・ゲームセンター
  14. パチンコ器、パチンコ器取付台(島工事)、パチスロ台、玉貸機、還元機、ゲーム機、メダル貸機、両替機、カラオケ機器、ボウリング場用設備など

  15. 料理飲食店業
  16. テーブル、椅子、カウンター、室内装飾品、放送設備、厨房用具、冷凍冷蔵庫、カラオケ機器など

  17. 小売業
  18. 陳列棚・陳列ケース(冷凍機または冷蔵機付きも含む)、間仕切、ネオンサインなど

  19. 理容・美容業
  20. 理容・美容椅子、理容・美容用洗面設備、消毒殺菌器、テレビ、タオル蒸器、ドライヤー、サインポールなど

  21. 医・歯業
  22. 医療機器(レントゲン装置、手術機器、歯科診療ユニット、ファイバースコープ等)など

  23. クリーニング業
  24. 洗濯機、脱水機、乾燥機、プレス機、ミシン、ボイラー、ビニール包装設備など

  25. 不動産賃貸業
  26. 駐車場舗装、外灯、駐輪場、広告設備、集合郵便受、構内排水工事、ガスボンベ庫、ゴミ置場、フェンスなど

  27. 駐車場業
  28. 屋外照明等電気設備、機械式駐車設備(ターンテーブルを含む)、舗装路面など

  29. ガソリンスタンド
  30. 洗車機、ガソリン計量器、防壁、リフト、独立キャノピー、地下タンクなど

  31. ホテル・旅館業
  32. 客室設備(ベッド、家具、テレビ等)、洗濯設備、音響設備、厨房設備、放送設備、駐車場設備など

このほか、福利厚生の用に供するものも償却資産の対象となります。

固定資産税は年末調整で控除される?

固定資産税が減額される特例措置を改めて整理してみます。次の2つでした。

  1. 課税標準額の減額
  2. 固定資産税そのものの減額

明確にしておかなければならないのは、これら特例措置による減額は本来支払うべき固定資産税の金額が減額されるということです。支払ったものが、のちに還付されるというものではありません。

年末調整は、会社員等の給与所得者が1年間、毎月の給料から天引きされてきた所得税等の過不足を清算する手続です。社会保険料、生命保険料等、控除対象とされているものについては、年末調整によって天引きされた所得税等が還付されます。

しかしながら、「固定資産税は年末調整で控除されるの?」という質問に対しては、上記の固定資産税が減額される特例措置は年末調整ではできないということになります。

固定資産税を減額するための方法

一般的に固定資産をお持ちの方は、「とにかく支払う固定資産税が少なくなる方法が知りたい」のではないでしょうか。結果的に固定資産税が少なくなる制度は、課税標準額の減額、固定資産税そのものの減額という特例措置のほかにもあります。

これまで概略を紹介した課税標準額の減額と、固定資産税そのものの減額について詳しくみていきましょう。

①土地地に関する軽減税制度を活用する

まずは、固定資産税の計算の基礎となる課税標準額を軽減する特例措置に解説します。これは土地が対象であり、固定資産税が課税される年の賦課期日(1月1日)において、住宅やアパートなど、人が居住するための家屋の敷地として利用されている土地(住宅用地)について課税標準額を減額するというものです。

特例の内容は、小規模住宅用地と一般住宅用地の2つで異なります。

  1. 小規模住宅用地(住宅やアパート等の敷地で200㎡以下の部分)
  2.  固定資産税:価格×1/6、都市計画税:価格×1/3

  3. 一般住宅用地(小規模住宅用地以外の住宅用地)
  4.  固定資産税:価格×1/3、都市計画税:価格×2/3

住宅の戸数は、原則1棟を1戸とします。ただし、共同住宅の一室など、居住のために独立して区画された部分が複数ある場合は、その数を戸数とします。

また、家屋の一部が住宅のほか、店舗等に利用されている家屋(併用住宅)の場合は、建物の構造、階数、住宅として利用している部分の割合によって、住宅用地となる面積を算出する必要があります。

なお、賦課期日に住宅の新築が予定されている土地や住宅が建設されつつある土地は、住宅用地とは扱われません。

② 新築住宅の軽減税制度を活用する

次に固定資産税そのものを減額する特例措置についてみていきましょう。2022年3月31日までに新築された住宅物件が対象とされていましたが、2022年度の税制改正により、現行のまま2年間延長されます。住宅を新築した場合、基本的に固定資産税額の2分の1が減額されます。

減額は、新たに課税される年度から3年度分に限られていますが、3階建以上の耐火・準耐火建築物については、対象期間が5年度分に延長されることになっています。

固定資産税額の減額については限度額があります。居住床面積120㎡相当分についての減額となり、それを超える部分は減額されません。

基本的には、一戸建てが想定されており、住宅の居住部分の床面積については原則として、50㎡以上280㎡以下であることが必要です。一戸建てでも住宅に店舗等が含まれている併用住宅の場合は、居住部分の床面積が全体の2分の1以上 かつ 50㎡以上280㎡以下となります。

アパート等の共同住宅の場合は、独立して区画された居住部分の床面積に廊下や階段等の共用部分の面積を按分し、加えた床面積で算定し、50㎡以上280㎡以下(貸家の場合、40㎡以上280㎡以下)が要件となります。

③中古住宅のリフォームに関する軽減税制度を活用する

固定資産税が減額される特例措置の2つの制度についてみてきましたが、次に中古住宅のリフォームに関する軽減税制度、いわゆる「リフォーム減税」について解説していきます。

リフォーム減税は、一定の要件を満たすリフォームを行う際に、税金の控除や減額を受けられる軽減税制度のことです。2022年度の税制改正の対象となっていますが、ここではこれまで公開されている主なものについて取り上げます。

中古住宅のリフォームで固定資産税が減額されるのは、次の4つの工事が対象となっています。

  1. 耐震リフォーム
  2. 住宅を現在の耐震基準に適合するようにリフォームした場合が該当します。控除対象限度額は250万円、控除率は10%です。

  3. バリアフリーリフォーム
  4. 車椅子を利用しやすくするための通路の拡張や入浴、その介助のための浴室改良等を行った場合が該当します。控除対象限度額は200万円、控除率は10%です。

  5. 省エネリフォーム
  6. 断熱改修等の省エネのためのリフォーム工事が該当します。控除対象限度額は250万円、控除率は10%です。

  7. 耐久性向上リフォーム
  8. 建物の耐久性を高めることを目的とするリフォーム工事が該当します。耐久性向上リフォームについては、上記の複数と併せて実施することが要件とされています。控除対象限度額は、耐震リフォームまたは省エネリフォームと実施する場合は250万円、耐震リフォームおよび省エネリフォームと実施する場合は500万円、控除率は10%です。

いずれも、減税の手続としては、その年度の確定申告が必要です。還付によって減税されたことになります。

リフォーム減税は、制度が複雑なうえ、改正によって減税額が頻繁に見直されます。リフォームをする前に住宅が所在する市町村でリフォーム減税に関する詳細を確認することが大切です。

住宅ローン控除を活用する

固定資産税の減税ではありませんが、所得税等から控除されるものとして、住宅ローン控除がありますが、こちらも2022年度の税制改正の対象となっています。

2021年末までの住宅ローン控除は2021年11月30日が契約期限、2022年12月31日が入居期限となっていましたが、4年間延長されることになりました。控除の要件も一部改正されましたが、次のようになっています。

  1. 自分が居住すること
  2. 住宅ローン控除を受ける年の年収が2,000万円以下であること(改正前は3,000万円以下)
  3. 住宅ローンの借入期間が10年以上であること
  4. 床面積40㎡以上であること(改正前は50㎡以上)
  5. 中古住宅の場合は耐震性能を満たしていること(改正で1982年以降の住宅は新耐震基準に適合するとして一定の証明書は不要)

所得税から控除される金額については、従前は住宅ローンの年末残高の1%相当分となっていましたが、改正では0.7%となりました。

住宅ローン控除は、これまで紹介してきた固定資産税の減税措置と違い、所得税等の控除であり、年末調整で手続を行うことになります。年末時点での残高が1,000万円の場合には控除される金額は7万円ということになり、7万円が還付によって戻ってくることになります。なお、所得税で控除し切れない分については、住民税から控除されます。

なお、控除率の対象となる住宅ローンの借入残高の上限についても改正の対象です。従前は、耐震性等を満たした認定住宅とそれ以外の一般住宅に分け、前者は上限を5,000万円、後者は上限を4,000万円としていました。

改正では、住宅を4つに分けています。

  1. 長期優良住宅等の認定住宅
  2. ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(Net Zero Energy House)
  3. 国が定める省エネ基準を満たした住宅
  4. 省エネ基準を満たさない一般住宅

2のネット・ゼロ・エネルギー・ハウスとは、太陽光発電等の再生可能エネルギーを導入することで年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロとすることを目指した住宅のことです。アルファベットの頭文字から「ZEH(ゼッチ)」と呼ばれています。

いずれにしても、2023年末までに入居した場合、1は5,000万円、2は4,500万円、3は4,000万円、4は3,000万円が住宅ローンの借入残高の上限となります。一般住宅については、1,000万円の引き下げとなりました。

その一方、減税される控除期間は原則10年間から13年間に延長されました(中古住宅は10年間に据え置き)。

住宅ローン控除については、こちらの記事も参考にしてください。

固定資産税を年末調整で減額しよう!

固定資産税と減税措置について解説してきました。固定資産税の軽減措置の種類が多いうえに複雑です。知らないことから損をすることも少なくないでしょう。特に初めて住宅を取得する場合は、市町村の固定資産を管轄する部署のほか、不動産業者、税理士等の専門家に相談することをおすすめします。

よくある質問

固定資産税とは何ですか?

土地・家屋、償却資産に課税される地方税です。詳しくはこちらをご覧ください。

固定資産税は年末調整の対象ですか?

対象にはなっていません。詳しくはこちらをご覧ください。


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