• 更新日 : 2024年8月29日

復職制度とは?カムバック、ジョブリターンの意味やメリット、注意点を解説!

日本の総人口の減少と少子高齢化の進展にともなう労働力人口の減少により、採用に頭を悩ませる企業の数が増加しています。そのような中、過去に退職した従業員を再雇用することで必要な人材を確保する対応が注目を浴びています。

今回は、退職した従業員を再雇用する復職制度について、メリットやデメリット、進め方や注意点などを解説します。

復職制度とは?

復職制度とは、退職した従業員を再雇用することに関する社内制度です。自己都合退職した人の復職を対象としています。復職の手順や要件などを明確にしておくと、復職を希望する人材の再雇用を円滑に進められるでしょう。

復職制度の種類は?

復職制度には、次のような種類があります。いずれも退職した従業員を再雇用することに関しては同じですが、対象者の範囲に応じて異なる言い方をする場合があります。

カムバック制度

退職した従業員が復職を希望した場合に、その者を再雇用することの総称です。一般的に再雇用の決定や再雇用後の配置は、あらかじめ会社が定めた制度に基づいて行われます。

ジョブリターン制度

結婚や出産、育児や介護、傷病による長期療養といった私生活上の理由で退職した人を再雇用する制度です。本人が希望する場合、あらかじめ会社が定めた手続きに基づいて会社に復職の申し出を行い、会社が承認した場合に復職が実現します。

復職後は、もともと本人がいた職場に配置されるケースが多いです。

アルムナイ採用

転職や起業など、本人の仕事上の都合で退職した人を再雇用する制度です。アルムナイは、退職者を意味します。本人が会社に対して復職を申し出るケース、会社のほうから本人に復職の誘いを行うケースの双方の運用があります。

復職後は、もともと本人がいたところとは異なる職場に配置されるケースも少なくありません。

再雇用制度との違いは?

退職した従業員を再び雇用する制度として、復職制度以外に再雇用制度があります。再雇用制度と復職制度には、次の違いがあります。

対象者の範囲

再雇用制度は、一般的に定年による退職を迎える人を対象としています。60歳を定年年齢にしている企業が多いのですが、高年齢者雇用安定法で65歳までの雇用機会を創出することが企業に義務付けられています。その対策の一環として、定年退職後に再雇用するケースが多く見られます。

一方、復職制度は、定年年齢前に退職した人を対象としています。前述したように、私生活上の理由や仕事上の都合で自己都合退職した人を再雇用するための制度です。

再雇用の開始時期

再雇用制度は、定年退職日の翌日から再雇用が開始されるのが一般的です。本人の希望で定年退職日から一定の期間休養するケースもありますが、定年退職日を跨いで継続して在籍するのが通常です。

一方、復職制度は一般的に、本人が希望する時期より再雇用が開始されます。

復職制度を導入するメリットは?

復職制度を導入することで、次のようなメリットを得ることが期待できます。

即戦力人材を確保できる

再雇用する人材には、自社で働いた経験があります。自社の業務フローやルール、システムを理解した状態で働いてもらえるため、即戦力人材として期待できるでしょう。

採用や教育にかけるコストを削減できる

求人広告や人材サイトなどの外部媒体を使用せずに直接本人にアプローチできるため、採用にかけるコストを削減することが可能です。

さらに、自社の業務フローやルール、システムを理解している、配置先の業務経験があることなどで、教育にかけるコストを削減することもできます。

採用後のミスマッチを防止することができる

通常の採用では、自社のカルチャーになじめない、求める能力とのギャップがあるなどの理由で短期間の退職につながるケースが少なくありません。

復職制度による再雇用の場合は、自社のカルチャーを熟知し能力のレベルも明らかな人材を採用するため、採用後のミスマッチを防止することが可能になります。

他社のノウハウを吸収できる

他社に転職し、他社のノウハウを身につけた人材を再雇用することで、本人を通じて他社のノウハウを獲得することが可能です。そのことが、企業競争力の強化や自社の業務改善などの推進に対して好影響を与えることを期待できます。

復職制度を導入するデメリットは?

復職制度を導入することで、次のようなデメリットに見舞われる可能性があります。

待遇を巡って従業員の不満が生じることがある

再雇用された従業員が好待遇で迎えられた場合、既存の従業員が不満を感じることがあります。業務実績が乏しいにも関わらず、いきなり好待遇を与えられたと感じるのが原因です。

さらに、再雇用された従業員間で処遇の格差が生じた場合、処遇の低い従業員が不満を感じることもあります。このような不満を感じさせないように、再雇用後の処遇の決定に透明性を確保する必要があるでしょう。

従業員の安易な退職を招くことがある

簡単に復職できると感じると、従業員が安易な退職を決断してしまうことがあります。既存の従業員が退職することにより、業務の引継ぎや人員計画の立て直し、採用の実施などの手間やコストが生じるでしょう。

再雇用者の業務への適応が難航することがある

入社時の再雇用者の頭の中には、過去の業務経験の記憶がインプットされています。一方、企業は、環境の変化に応じて、業務フローやルール、システムを変更することがあるでしょう。

企業の業務の仕組みややり方が変化しているにもかかわらず、再雇用者が過去の経験に固執する姿勢を取った場合、今の業務に適応するのが難航します。

復職制度を導入する手順は?

復職制度は、次の手順で導入することが効果的です。

対象者の要件を明確にする

どのような要件を兼ね備えた元従業員を復職の対象にするのかを明確にします。次のようなことに関して要件を設定するのが一般的です。

  • 復職時の年齢
  • 退職理由
  • 退職時の雇用形態や職位
  • 退職時の勤続年数
  • 退職時からの経過年数

復職時の処遇の基準を明確にする

復職時に与える処遇の基準を明確にすることが、復職を巡る既存の従業員からの不満の防止にも役立ちます。次のようなことに関して基準を設定するのが一般的です。

  • 試用期間の有無
  • 試用期間中の労働条件
  • 復職時の賃金や職位の上限

復職までの運用フローを明確にする

復職を実現させるまでの運用フローを明確にします。次のようなことを明確にするのが一般的です。

  • 面談者や面談回数
  • 再雇用決定までの手順
  • 復職者に対するフォロー内容(情報提供や研修など)

従業員に周知する

自社の復職制度の内容を従業員に周知します。文章で規定化し口頭での説明も行った上で、従業員がいつでも確認できるようにすることが望ましいです。

復職制度を導入する際の注意点は?

復職制度を導入する場合、次のことに注意する必要があります。

基準やルールを明確にする

復職制度を機能させるにあたっては、従業員が自社の復職制度の内容を理解していることが大前提です。そのため、再雇用できる人の基準や復職時のルールなどを明確にした上で従業員に周知する必要があります。

周知に関しては、文章で規定化するだけで終えるのではなく、再雇用の事案が生じるたびに従業員に内容を知らせるなどの対応を行うことも効果的です。

退職者との間の良好なコミュニケーションを実現する

退職者の再雇用を期待する場合、退職者が現在の自社の状況を知った上でいつでも復帰を考えられる状態を維持することが効果的です。退職者と良好なコミュニケーションを築くと、退職者に復職の門戸を開き続けることができます。

退職者に対する社内コミュニティへのアクセス権限の付与、在職者を通じたコミュニケーション形成などの方法が考えられるでしょう。

現在の本人を客観的に評価する

退職者には自社における業務の経験や実績があるため、再雇用の決定を行う際に過大評価をしてしまうことがあります。反面、在籍時の失敗や印象に左右されて過小評価してしまうこともあるでしょう。

しかし、再雇用は、これからの会社に必要な人材確保のために行われなければなりません。よって、現在の本人を客観的に評価するように努める必要があります。

休職から復職する際は診断書が必要?

休職は法律に基づかない任意の制度であり、復職時の医師の診断書提出についても法律上の規定はありません。

一方、休職者を復職させる場合は、復職後に本人が心身ともに安全に就業できる環境を構築しなくてはならない義務が企業側に発生します。その義務を履行するために、企業側が休職者の復職の可否を判断するにあたって、次のようなことに対する医師の助言を得ることが望ましいです。

  • 復職後に配置する業務内容
  • 復職後の働き方
  • 復職後の当面の期間企業側が配慮すべきこと

復職時に医師の診断書の提出を求めることで、企業側は医師の助言を得ることが可能です。なお、近年増加しているメンタルヘルスによる休職に関して、厚生労働省は復職時に医師の診断書提出を求めることを推奨しています。

参考:心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き|厚生労働省

復職制度を機能させるために円満退社を心がけましょう

雇用コストの削減、雇用ミスマッチの防止、雇用の確実性という意味において、復職制度は、企業にとって効果的な採用方法であると言えます。一方、復職制度に応じることに関しては、退職者が自社に対して良い印象を抱いていることが大前提となります。

円満退社が実現されるように企業側が留意することで、自社に合う人材を再び雇用するチャンスを得られるでしょう。


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