- 更新日 : 2021年11月29日
退職する従業員の社会保険手続き

目次
退職する従業員の社会保険手続き
従業員が退職する場合、社会保険の手続きを行う必要があります。ここでは、従業員が退職するときの社会保険の手続き方法と、注意するべきポイントを紹介します。
手続きが必要となる社会保険の種類
従業員の退職時に手続きが必要となる社会保険は次の3つです。
1.健康保険および、介護保険(40才~65才の対象者のみ)
2.厚生年金保険
3.雇用保険
健康保険および、介護保険と厚生年金保険の手続き
事業主は従業員の退職日の翌日から5日以内に、「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を事業所管轄の年金事務所へ提出します。健康保険組合に加入している事業所の場合は、健康保険・介護保険の資格喪失については健康保険組合 / 厚生年金保険の資格喪失については事業所管轄の年金事務所へ提出します。
協会けんぽに加入している事業所の場合は、健康保険・介護保険・厚生年金の資格喪失について、まとめて事業所管轄の年金事務所へ提出します。
★「被保険者資格喪失届」には、「資格喪失日」を記載する欄があります。
この「資格喪失日」は退職日とは異なり、「退職日の翌日」を記載することになっていますので、注意が必要です。
「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」のほかに、以下の添付書類が必要です。
「資格喪失届」の添付書類
健康保険組合 または 協会けんぽより交付されている健康保険被保険者証(本人および被扶養者分)を添付して返却します。退職後に、既に失効している健康保険被保険者証を使用してしまうと、医療費を後から請求されることがありますので、注意が必要です。
特殊な場合の資格喪失手続きに係る添付書類
また、下記のような特殊な場合は、別途添付書類が必要となります。
健康保険組合の場合、組合により必要書類が異なる場合がありますので、事業所が加入している組合へ別途ご確認ください。
1.届出書の受付年月日よりも、60日以上さかのぼる「資格喪失年月日」の場合
・退職者が法人役員以外である場合は、退職月の賃金台帳と出勤簿の写し(退職日がわかる書類)
・退職者が法人役員の場合は、株主総会の議事録、または役員変更の内容が記載された登記簿謄本の写し(退職または、退任日のわかる書類)
2.退職後、1日も間をあけず再雇用された60歳以上の場合
・就業規則、退職辞令(退職日の確認ができる書類)と雇用契約書(再雇用の確認ができる書類)の3つの書類、または、退職後に継続して再雇用されたことがわかる、事業主の証明書(事業主印が押印された書類)
退職時の社会保険料控除に関する注意点
健康保険料・介護保険料厚生年金保険料は「資格喪失日」を含む月は徴収しないこととなっています。そのため、退職月の社会保険料控除には注意が必要です。
実際の例を使用して、退職月の社会保険料控除について説明します。
- 例1)3月20日退職の場合、資格喪失日は3月21日となり、3月分の保険料は徴収されません。3月支払いの給与では、一般的に前月分の社会保険料を控除するので、3月支払い給与では、前月(2月分)の社会保険料のみ控除します。
- 例2)3月31日退職の場合、資格喪失日は4月1日となり、4月分の社会保険料は徴収されませんが、3月分の社会保険料は徴収が必要です。この場合、3月支払いの給与では、前月(2月分)と当月(3月分)の2か月分の社会保険料を控除する必要があります。
雇用保険との手続きと注意点
事業主は退職日の翌々日から10日以内に「雇用保険被保険者喪失届」と、「雇用保険被保険者離職証明書」(交付を希望しない場合を除く / 59歳以上の退職者は本人が希望するしないに関わらず提出が必要です)を管轄のハローワークに提出します。
従業員が退職し、基本手当(失業したときに支払われる雇用保険の給付金)を受けようとする場合には、ハローワークに離職票を提出し、求職の申し込みを行わなければなりません。この離職票は、事業主が資格喪失届に添えて提出する離職証明書に基づいて、ハローワークが発行します。
そのため、従業員が退職し、基本手当を受けるためには、必ず「離職証明書」を届出る必要があります。
「雇用保険被保険者喪失届」の記入方法と注意点
「雇用保険被保険者喪失届」は従業員が退職した時の他、死亡等により被保険者でなくなったときや、労働条件の変更等により被保険者資格要件を欠くこととなった時等に提出する書類です。ここでも「資格喪失日」は「退職日の翌日」を記入します。
「雇用保険被保険者離職証明書」の記入方法と注意点
「雇用保険被保険者離職証明書」には、従業員がハローワークからもらえる基本手当の金額や期間を決めるために必要な、賃金額の情報や退職理由の情報等を記載します。
この証明書の内容によって、従業員がハローワークからもらえる基本手当の金額や期間が変わってきますので、正確に記入することが必要となります。
また、退職理由については、事業主と退職者の間でしっかりと認識を同じにしておくようにしましょう。
退職時の社会保険手続きは早めに準備
従業員が退職するときの手続きは届け出る書類や届出先が複数あり、面倒に感じることもあるかもしれません。。しかし、従業員にとっては、退職後に新しい社会保険へ変更する手続きをするため または ハローワークから基本手当をもらうために、重要な手続きとなります。
退職後のトラブルを避けるためにも、早めの手続きが重要です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。