• 更新日 : 2018年9月18日

労災保険の各種手続き

労災保険とは、労働者が勤務時間中に遭った災害や出退勤中に災害に遭った場合に、本人やその家族に補償するために、保険金を支払う制度です。

そのため、使用する従業員が正社員や契約社員、アルバイトかを問わず、労働者を使用する会社及び個人事業主は、労災保険に加入することが義務付けられています。ここでは、労災保険への加入や給付についての手続きを、必要書類や記入上のポイントを押さえて説明します。

労災保険への加入手続き

会社は、従業員を新しく初めて雇い入れたとき、事業所として労災保険に新規加入することが必須になります。ただし、加入手続きを済ませると、その後に従業員が増えても、再度、手続きする必要はありません。

加入手続きに必要な書類

労災保険に加入するために必要な書類は、以下のとおりです。

・保険関係成立届
・概算・確定保険料申告書

書類提出の流れ

「保険関係成立届」には、会社名や会社所在地、従業員の数、事業を開始した日(保険関係が成立した日)などを記載します。また、これらの確認のために、登記簿謄本も添付します。この保険関係成立届を、管轄の労働基準監督署(業種によっては公共職業安定所)に届出すると、「労働保険番号」を発行してくれます。労災保険を申請するときには、この番号が必要となります。

それから、「概算保険料申告書」で、初年度分の労災保険料と雇用保険料(両方で労働保険料という)の総額を、概算額として申告・納付します。この保険料は、保険関係の成立日から年度末までの間に全従業員に支払う給与等の概算額に、料率を掛けて算出します。料率は、業種によって異なるため、前もって労働基準監督署の担当係に確認するほうがよいでしょう。

雇用保険の手続き時の注意

雇い入れた従業員が雇用保険被保険者に該当する場合は、労災保険と同時に、雇用保険に関する手続きをします。このとき、管轄の公共職業安定所へ「雇用保険適用事業所設置届」と「雇用保険被保険者資格取得届」を届出しますが、保険関係成立届の控えも必要になります。

手続きを怠った場合には

労働保険の新規加入手続きを踏まない場合には、関係する行政機関によって、強制で手続きが執行され、労働保険料が決められてしまうことがあります。さらに、その労働保険料を徴収する際に、追徴金が課せられる場合もありますので、注意しましょう。

労災保険の給付手続き

勤務時間中の災害や通勤途中に事故に遭ったなど、労災保険の申請が必要となったときは、原則として罹災した労働者が管轄の労働基準監督署へ病院等を経由して給付請求を出すことになります。提出書類の様式には様々なものがありますから、事前に労働基準監督署に確認しておきましょう。手続きの際には、労災保険の種類によって、以下のような点に注意します。

療養給付の請求手続き

療養の給付(指定医療機関による無料の治療)や、立替払いをした治療費用の全額支払を請求することができます。療養費用には、病院での治療にかかった費用だけでなく、薬や訪問看護、整体や針灸、あんまなどの費用も含まれます。

休業給付の請求手続き

病気やけがのため仕事に就けない日が4日以上となる場合は、休業給付を請求できます。休業した日数分を全てまとめて請求するか、分割して請求するかは、請求者本人の自由となっています。長期休業になる場合は、1ヵ月ずつ請求されることが多いようです。

障害給付の請求手続き

病気やけかが治っても身体に障害が残った場合に請求できる障害給付には、医師などの診断書やレントゲン写真などの資料の添付が必要です。なお、障害給付が必要になった方は、社会復帰のために必要な支援として障害者特別支給金や特別年金なども請求することができます。

遺族給付の請求手続き

労働者が勤務時間内あるいは通勤途中に死亡された場合、残された親族(受給対象者の要件があります)に対して、遺族給付が年金または一時金で支払われます。請求時には死亡診断書などが必要です。なお、受給権利を持つ遺族が複数いる場合でも、分割支給は認められておらず、代表者に対して給付されます。

葬祭給付の請求手続き

葬祭料は、亡くなった方の葬儀を行った方に対して、支給されます。そのため、遺族がおらず会社が社葬を行った場合は、その会社が葬祭料を請求することができます。

傷病年金の請求手続き

病気やけがをした労働者が、1年6ヶ月以上経っても治らない場合は、その障害の等級に応じて、傷病年金が支払われます。このとき、引き続き治療費の給付は受けられますが、休業補償はなくなります。

介護給付の請求手続き

障害年金又は傷病年金を受給している人のうち障害の程度に応じて、介護給付が支払われます。ただし、身体障害者の療養施設や老人保健施設などに入院している場合は、支給はされません。

まとめ

以上、確認してきたように、労災保険という制度を利用するためには、労働者を雇う会社は、労働基準監督署に労災保険の加入手続きを行う必要があります。会社がこの手続きを済ませていれば、業務災害や通勤災害にあった労働者は、労働基準監督署に然るべき保険金給付の請求をすることができます。会社も労働者も、各種手続きに関して、正しい知識を身に着けておきましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談していただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事