• 作成日 : 2022年9月2日

裁量労働制とは?対象業務やメリット・デメリットについて解説

裁量労働制とは?対象業務やメリット・デメリットについて解説

裁量労働制とは、働き方について労働者の裁量に委ねる制度です。実際に働いた時間とは関係なく、一定時間が労働時間とみなされます。
専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制の2種類があり、それぞれ定められた対象業務にしか適用されません。

今回は、裁量労働制のメリット、デメリットについて解説します。

裁量労働制とは?

裁量労働制とは、労働時間や仕事の進め方などが労働者の裁量に委ねられ、自由で柔軟な働き方を可能にする制度です。労働時間は1日8時間・1週40時間といった定められたものではなく、一定の時間とされます。似た制度にみなし労働時間制やフレックスタイム制がありますが、どのように異なるのでしょうか?裁量労働制とみなし労働時間制、フレックスタイム制の違いについて考えてみましょう。

みなし労働時間制との違い

みなし労働時間制とは、実際の労働時間にかかわらず一定時間を労働時間とみなす制度です。異なる場所で労働したといった理由で働いた時間の把握が難しい場合に、みなし労働時間制が用いられます。

裁量労働制も労働時間が実際に働いた時間ではなく一定時間とされる点ではみなし労働時間制と同じですが、裁量労働制は労働時間を労働者の裁量で定められる点がみなし労働時間制とは異なっています。

フレックスタイム制との違い

フレックスタイム制は、1日の始業時間・終業時間を、労働者の事情に合わせて変えることができる制度です。通院のため始業時間を1時間遅らせたり、子供の送迎のため終業時間を30分早めたりすることが可能です。コアタイム(必ず就業することが求められている時間帯)を除き、始業時間や終業時間を労働者が自由に変えることができます。

始業時間や終業時間を変更できるという点ではフレックスタイム制も裁量労働制も同じですが、裁量労働制は一定時間が労働時間とみなされるのに対し、フレックスタイム制では実際に働いた時間が労働時間になります。

裁量労働制の対象業務とは?

裁量労働制には、専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制の2種類があります。対象業務も異なるため、業務内容と対象者に注意しなければなりません。

専門業務型裁量労働制

以下が専門業務型裁量労働制の対象業務です。

  1. 新商品もしくは新技術の研究開発または人文科学もしくは自然科学に関する研究の業務
  2. 情報処理システムの分析または設計の業務
  3. 新聞もしくは出版の事業における記事の取材もしくは編集の業務または放送法の制作のための取材もしくは編集の業務
  4. 衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインを考案する業務
  5. 放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサーまたはディレクターの業務
  6. コピーライターの業務
  7. システムコンサルタントの業務
  8. インテリアコーディネーターの業務
  9. ゲーム用ソフトウェアの創作の業務
  10. 証券アナリストの業務
  11. 金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務
  12. 大学における教授研究の業務
  13. 公認会計士の業務
  14. 弁護士の業務
  15. 建築士の業務
  16. 不動産鑑定士の業務
  17. 弁理士の業務
  18. 税理士の業務
  19. 中小企業診断士の業務

企画業務型裁量労働制

企画業務型裁量労働制の対象業務は、以下の事業場で行われる、要件を満たすものに限られます。

  1. 事業場
    • 本社、本店
    • 当該事業場の属する企業等にかかる事業の運営に大きな影響を及ぼす決定が行われる事業場、または本社・本店である事業場の具体的な指示を受けることなく独自に当該事業場にかかる事業の運営に大きな影響を及ぼす事業計画や営業計画の決定を行っている支社・支店等
  2. 要件
    • 事業の運営に関する業務であること
    • 企画、立案、調査、分析の業務であること
    • 業務の性質上、遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があること
    • 業務遂行の手段や時間配分決定など、使用者が具体的に指示しないこと

裁量労働制を導入するメリット・デメリット

裁量労働制導入にあたっては、メリット・デメリットをしっかり理解しておく必要があります。どのようなメリット・デメリットがあるのか、考えてみましょう。

メリット

裁量労働制を導入すると、人件費の管理がしやすくなります。実際の労働時間にかかわらず一定時間を労働時間とみなす裁量労働制では残業が発生しません。日々の業務において基本的に残業代が生じず、人件費管理の負担が軽減されます。

デメリット

裁量労働制のデメリットには、コミュニケーションに問題が生じやすくなるという点が考えられます。裁量労働制で働く労働者は、ほかの労働者の労働時間に就業しているとは限りません。違う時間帯を労働時間としている場合もあり、顔を合わせる機会も少ないことが一般的です。コミュニケーションがあまりとれず、必要な連絡事項が不達になるなどの問題が起きる可能性があります。

裁量労働制の導入方法は?

裁量労働制の導入は、専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制で方法が異なります。

専門業務型裁量労働制の導入方法

  1. 次の事項を労使協定で定める
    • 対象業務を遂行する手段や方法、時間配分等に関し労働者に具体的な指示をしないこと
    • 労働したものとみなす時間
    • 労働時間の状況に応じて実施する健康・福祉を確保するための措置の具体的内容
    • 苦情の処理のため実施する措置の具体的内容
    • 協定の有効期間(3年以内とすることが望ましい)
    • 労働者ごとに講じた④⑤の措置の記録を協定の有効期間、および期間満了後3年間保存すること
  2. 締結した労使協定を所轄労働基準家督書へ届ける

企画業務型裁量労働制の導入方法

企画業務型裁量労働制の導入には、次の事項について労使委員会で委員の4/5以上の多数による決議で、決議されることが求められます。

  • 対象となる業務の具体的な範囲
  • 労働したものとみなす時間
  • 健康および福祉を確保するための措置の具体的内容
  • 苦情処理措置の具体的な内容
  • 使用者が対象となる労働者の勤務状況に応じて実施する健康および福祉を確保するための措置の具体的内容
  • 適用について労働者本人の同意を得なければならないこと、および不同意の労働者に対し不利益取扱いをしてはならないこと
  • 制度の適用について労働者本人の同意を得なければならないこと、および不同意の労働者に対し不利益取扱いをしてはならないこと
  • 決議の有効期間(3年以内が望ましい)
  • 実施状況にかかる記録を保存すること

裁量労働制で残業代が出る場合

裁量労働制では、実際に働いた時間ではなく一定時間が労働時間とみなすため、基本的に残業代は発生しません。しかし、休日労働や深夜労働に対しては、裁量労働制においても割増賃金を支払う必要があります。
休日に労働させたり、労働が22時以降に及んだりした場合には、割増賃金を支払わなくてはなりません。

裁量労働制でも深夜労働や休日労働には割増賃金が必要なことに注意しよう

裁量労働制を導入すると、労働者の裁量で業務の進め方を決定することができ、柔軟な働き方の実現につながります。実際の働いた時間ではない一定の時間が労働時間とみなされ、1日8時間・1週40時間を超える労働が可能になります。

専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制の2種類があり、対象業務はそれぞれ限定されています。導入には専門業務型裁量労働制は労使協定締結、企画業務型裁量労働制は労使委員会の設置が必要です。

裁量労働制では一定の時間が労働時間とみなされるため、時間外労働に対する割増賃金は発生しません。ただし深夜労働と休日労働に対する規程は適用され、深夜労働に対する割増賃金、休日労働に対する割増賃金は支払う必要があります。裁量労働制には、コミュニケーションが問題となることにも注意しましょう。

よくある質問

裁量労働制とは、どのような制度ですか?

労働者の裁量で労働時間や仕事の進め方が決定できる制度で、専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制の2種類があります。詳しくはこちらをご覧ください。

導入には何が必要ですか?

専門業務型裁量労働制は労使協定、企画業務型裁量労働制には労使委員会の設置が必要です。詳しくはこちらをご覧ください。


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