• 更新日 : 2026年10月8日

ストックオプションの給与課税はいつ発生する?計算方法も解説

PDFダウンロード
Pointストックオプションの給与課税のタイミングは?

原則は権利を行使した時点で、株価と行使価額の差額に課税されます。

  • 優遇制度の要件を満たせば売却時まで延びる
  • 会社には源泉徴収の義務が生じる
  • 株を売る前に納税資金が必要になる

信託型も権利行使時の課税とされているため、制度設計の段階で確かめておきましょう。

ストックオプション制度を導入する際、多くの経営者や担当者が直面するのが税金の問題です。権利を行使した時点で給与所得として課税されるのが原則ですが、税制適格の要件を満たせば売却時まで課税が繰り延べられます。

ストックオプションの給与課税について、計算方法や実務上の注意点を交えながら解説します。

ストックオプションの給与課税は権利行使時に発生する

税制非適格のストックオプションでは、権利を行使した時点と、取得した株式を売却した時点の2回、課税が発生する可能性があります。このうち給与課税にあたるのが、権利行使時です。

権利行使益が給与所得とされる理由

ストックオプションの権利を行使すると、あらかじめ決められていた権利行使価額との差額が、個人の利益となります。この利益は、会社への貢献に対する報酬、つまり給与と同じ性質を持つものと見なされます。

従業員が労働の対価として得る経済的利益であるという考え方にもとづき、原則として「給与所得」として課税の対象になります。

付与時と売却時の課税との違い

権利を付与された時点では、まだ利益が確定していないため課税されません。将来の株価がわからず、金銭的な価値が定まっていないためです。

一方、権利行使して取得した株式をその後売却して得た利益は「譲渡所得(申告分離課税)」として扱われます。給与所得などの他の所得とは合算せず、利益に対して個別に20.315%の税率で課税されます。

課税されるタイミングと所得区分をまとめると、次のようになります。

タイミング 税制非適格 税制適格
権利付与時 課税されない 課税されない
権利行使時 給与所得として課税 課税されない
株式売却時 譲渡所得として課税(20.315%) 譲渡所得として課税(20.315%)

参照:No.1543 ストックオプション税制|国税庁

広告

この記事をお読みの方におすすめのガイド4選

この記事をお読みの方によく活用いただいている人気の資料・ガイドを紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。

※記事の内容は、この後のセクションでも続きますのでぜひ併せてご覧ください。

人事・労務の年間業務カレンダー

2026年版 人事労務の年間業務カレンダー

毎年大人気!人事労務の年間業務を月別にまとめ、提出や納付が必要な手続きを一覧化しました。

法改正やシーズン業務の対応ポイントについて解説するコラムも掲載していますので、毎月の業務にお役立てください。

無料ダウンロードはこちら

所得税・住民税の課税・非課税ルール

所得税・住民税の課税・非課税ルール

所得税や住民税の課税・非課税の判断は、正確な給与計算の根幹となる重要な要素です。

本資料では、給与担当者が実務で迷いやすい項目を中心に、課税・非課税のルールを体系的に整理し、業務上の注意点についても解説します。

無料ダウンロードはこちら

扶養人数別の所得税早見表

扶養人数別の所得税早見表

所得税額は給与額や扶養親族の人数によって細かく変動します。毎月の給与計算で、正しい税額を算出できているか不安になることはありませんか?

計算ミスは給与の修正対応など無駄な業務を生んでしまいます。給与額と扶養人数を照らし合わせるだけで税額がわかる本資料を、計算時の確認用としてお使いください。

無料ダウンロードはこちら

賞与の所得税計算早見表

賞与の所得税計算早見表

年数回しかない賞与計算は、毎月の給与計算に比べて手続きを間違いやすい業務です。特に所得税は前月の給与額を基準にするなど特殊な算出が必要なため、計算ミスが起こりかねません。

複雑な計算や表の確認作業を効率化できる本資料で、ミスのない正確な賞与計算を行いましょう。検算用としても便利です。

無料ダウンロードはこちら

税制適格なら権利行使時の給与課税はない

ストックオプションは「税制適格」と「税制非適格」に分かれ、どちらに該当するかで権利行使時の給与課税の有無が変わります。

税制適格ストックオプションは売却時まで課税が繰り延べられる

税制適格ストックオプションは、特定の要件を満たすことで税制上の優遇措置が受けられる制度です。最大の利点は、権利行使時に給与所得として課税されず、株式を売却する時まで課税が繰り延べられる点です。

株式を売却して実際に利益を得た時に、その利益はすべて譲渡所得として計算され、20.315%の税率で課税されます。これにより、従業員は権利行使時に納税資金を準備する必要がなくなります。

税制非適格ストックオプションは権利行使時に給与課税される

税制適格の要件を満たさないストックオプションは、すべて税制非適格として扱われます。この場合は原則どおり、権利行使時にその利益が給与所得として課税されます。

設計の自由度が高い反面、権利行使する従業員は、株を売却する前であっても納税資金を準備しなければなりません。

税制適格ストックオプションとして認められる要件

税制適格ストックオプションとして認められるには、複数の要件をすべて満たす必要があります。

主な要件は次のとおりです。

  • 付与対象者:会社の取締役、執行役、使用人であること(一定の要件を満たす社外の高度人材も対象)
  • 大口株主でないこと:未上場会社は発行済株式総数の3分の1超、上場会社は10分の1超を保有する株主とその特別関係者は対象外
  • 権利行使価額:ストックオプションの付与契約時の株価以上の金額に設定すること
  • 譲渡の禁止:付与された権利を他人に譲渡できないこと

令和6年度税制改正により、年間の権利行使価額の上限が引き上げられました。改正後の区分は次のとおりです。

会社の区分 年間の権利行使価額の上限
設立5年未満の会社 2,400万円
設立5年以上20年未満で、非上場または上場後5年未満の会社 3,600万円
上記以外の会社 1,200万円

権利行使期間についても、原則は付与から2年後から10年後までのところ、設立5年未満の非上場会社に限り最長15年まで延長できるようになりました。

あわせて、権利行使後の株式管理について、従来の証券会社への委託に加え、発行会社自身が株式を管理する契約を結ぶ方法も認められています。

参照:ストックオプション税制|経済産業省

給与課税される金額は株価と行使価額の差額で決まる

税制非適格ストックオプションの場合、権利行使時に発生する給与所得は計算式にあてはめて求めます。

経済的利益の計算式

給与所得として課税される金額は、権利行使日の株価と権利行使価額の差額に、権利行使した株式数を乗じて計算します。計算式は次のとおりです。

(権利行使日の株価 - 権利行使価額)× 権利行使した株式数 = 給与所得額

たとえば権利行使価額が100円のところ、権利行使した日の株価が1,000円であれば、1株あたり900円が経済的利益(給与所得)となります。

税制非適格の計算例

次の条件で、実際に給与所得となる金額を計算してみましょう。ここで示した数値はモデルケースです。

  • 権利行使価額:1株あたり500円
  • 付与された株式数:5,000株
  • 権利行使日の株価:1株あたり2,000円

(2,000円 - 500円)× 5,000株 = 7,500,000円

この750万円がその年の給与所得(経済的利益)として、会社から支払われる給与に上乗せされます。累進課税の対象となるため、所得が高い人ほど税率も高くなります。

正確な税額を算出する際は、最新の税率表と各種控除額を確認のうえ、税理士等の専門家と相談してください。

会社には源泉徴収の義務が生じる

権利行使によって給与所得が発生した場合、会社側では源泉徴収と会計処理が必要になります。社会保険料の扱いとあわせて確かめておきましょう。

金銭の支払いがなくても源泉徴収する

税制非適格ストックオプションの権利行使による経済的利益は給与所得に該当するため、会社は給与や賞与と同様に源泉徴収を行う義務があります。ただし権利行使の利益は金銭で支払われるわけではないため、税額分をどう徴収するかを決めておく必要があります。

従業員から源泉徴収税額分を別途徴収するか、給与から天引きするなどの対応が求められます。手続きが複雑になる可能性があるため、事前に税理士などの専門家へ相談しておきましょう。

権利行使時の会計処理

従業員が権利を行使し、会社が新株を発行した場合、会社側では会計処理が必要になります。権利行使によって発生した経済的利益は、会計上、従業員への労働の対価と見なされ、「株式報酬費用」などの費用勘定で計上するのが一般的です。

たとえば権利行使価額20万円の払い込みを受け、時価280万円の新株を発行した場合、次のような仕訳が考えられます。

勘定科目 借方 貸方
普通預金 200,000円
株式報酬費用 2,600,000円
資本金 1,400,000円
資本準備金 1,400,000円

資本金と資本準備金の計上額は、会社法にもとづき決定します。これはあくまで一例のため、実際の処理は顧問税理士や会計士に確認してください。

社会保険料の算定基礎には含まれない

ストックオプションの権利行使益は、社会保険料の算定基礎となる「報酬」には通常含まれないとされています。労働の対償として経常的に支払われるものには当たらないためです。

ただし、役員報酬としての性質が強い場合など、個別の事情によっては報酬と判断される可能性も否定できません。制度を導入する際には、事前に管轄の年金事務所へ確認しておきましょう。

参照:No.2508 給与所得となるストックオプション契約により取得した株式の売却益|国税庁

従業員には確定申告が必要になるケースがある

会社が源泉徴収を行い年末調整で精算できれば、従業員の確定申告は不要です。ただし次のいずれかに当てはまる場合は、従業員自身が確定申告を行います。

  • 給与収入が2,000万円を超える場合
  • 2か所以上から給与を受け取っており、従たる給与の勤務先で権利を行使した場合
  • 会社が源泉徴収を行っていない場合
  • 取得した株式を売却し、譲渡所得が生じた場合(特定口座で源泉徴収ありを選択している場合を除く)

会社としては、従業員に対して確定申告が必要になる可能性があることを、あらかじめ周知しておくとよいでしょう。

あわせて注意したいのが、納税資金の問題です。税制非適格ストックオプションを行使する際、従業員は権利行使価額の払込金と、それによって発生する所得税・住民税の納税資金という2種類の資金を準備することになります。

株価が大きく上昇した場合、納税額も高額になり、利益は出ているはずなのに権利行使に必要なお金が手元にないという事態も起こり得ます。制度設計の段階からこうした課題を考慮し、従業員へ丁寧に説明しておくことがトラブル防止につながります。

参照:No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人|国税庁

信託型ストックオプションも権利行使時に給与課税される

未上場のスタートアップ企業を中心に活用が広がっているのが「信託型ストックオプション」です。従来のストックオプションとは仕組みが異なりますが、課税のタイミングは同じく権利行使時とされています。

信託型の仕組み

会社が発行したストックオプションを信託銀行などの受託者に預けておき、一定期間後に従業員へ交付する仕組みです。従業員は会社の業績や個人の貢献度に応じてポイントを付与され、信託期間が満了した時点で、貯まったポイントに応じてストックオプションが交付されます。

入社時期が異なる従業員にも公平にインセンティブを付与しやすく、柔軟な制度設計が可能という利点があります。

国税庁の見解と課税タイミング

信託型ストックオプションについて、国税庁は令和5年5月に、権利行使時の経済的利益が給与所得として課税されるとの見解を示しました。実質的には会社が従業員に付与したものと認められるためです。

信託の設定時や、信託から交付を受けた時点では課税されません。従来のストックオプションと同じく、権利を行使して株式を取得した時点で、その時の株価と権利行使価額の差額が給与所得となります。

この見解が示される以前は、交付時に課税されるという解釈で運用していた企業もありました。すでに信託型を導入している場合は、源泉徴収の要否について確認しておきましょう。

参照:ストックオプションに対する課税(Q&A)|国税庁

退職者や役員は所得区分の判断が分かれる

権利行使益が給与所得になるかどうかは、行使する人の立場によって判断が分かれる場面があります。担当者が迷いやすい2つのケースを確かめておきましょう。

退職者が権利行使した場合

退職者が権利行使した場合の所得区分は一律ではありません。在職中の勤務に起因すると認められる場合は給与所得となり、会社に源泉徴収義務が発生します。

一方で、勤務との関連性が薄いと判断されれば雑所得として、退職者本人が確定申告で納税します。実際には契約内容や行使のタイミングなどをもとに総合的に判断されるため、専門家への相談が欠かせません。

役員と従業員の扱いの違い

権利行使益に対する所得区分の考え方は、役員と従業員で同じです。しかし税務上の扱いは異なり、役員の場合は次のような論点があります。

  • 事前確定届出給与などの損金算入要件
  • 退職所得として課税される可能性
  • 源泉徴収の要否

役員への制度導入時には、顧問税理士などの専門家へ確認しておきましょう。

ストックオプションの給与課税は制度の区分で決まる

ストックオプションの給与課税は、権利を行使した時点で発生するのが原則です。ただし税制適格の要件を満たせば、権利行使時には課税されず、株式を売却する時まで課税が繰り延べられます。

税制非適格の場合、会社には源泉徴収の義務が生じ、従業員は株を売却する前に納税資金を準備することになります。信託型についても権利行使時の課税とされているため、導入済みの企業は源泉徴収の要否を確認しておきましょう。

制度を成功させるには、課税の仕組みを経営陣と従業員の双方が理解しておくことが欠かせません。自社の状況に合った制度を設計し、課税関係について丁寧に周知しましょう。

参照:No.1543 ストックオプション税制|国税庁

PDFダウンロード

※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事