- 更新日 : 2023年12月8日
休憩とは?法律上の定義や3原則、休憩から外れるケースを解説
ずっと働き詰めでは仕事のパフォーマンスも低下してしまいます。パフォーマンスの維持向上のためにも、適切な休憩時間を設定することが推奨されます。
当記事では、労働基準法における休憩について解説を行っています。法律上の休憩の定義や、何時間から休憩が必要かなどについて解説を行っているため、ぜひ参考にしてください。
目次
休憩とは?
「休憩を取る」という表現はよく使われますが、休憩とは、一体どういったものを指すのでしょうか。
労働時間との違い
休憩時間中は、労働を行うことはありません。一方の労働時間は、労働義務が課されています。両者は労働義務の有無の点が異なります。
休日との違い
休日とは、原則として0時から24時までの暦日単位で付与されます。一方の休日は、1時間や45分などとなっており、両者は長さにおいて異なっています。
たばこ休憩等は、厳密にいえば休憩にあてはまらない
休憩時間中に喫煙を行う従業員は珍しくありません。しかし、最高裁は喫煙時間を休憩時間と認めないとする判決を下しています。たばこ休憩は、休憩時間と認められない場合もあるため、注意が必要です。
休憩の法律上の定義
労働基準法では、労働時間が6時間超の場合は45分、8時間超の場合は1時間の休憩を与えることを定めています。また同法において休憩は、労働時間の途中に与えなければならないとも定められています。詳しくは後述しますが、休憩には守るべき原則と例外規定が設けられているため、注意しなければなりません。
45分と1時間については、法で定める最低限度であり、これ以上の時間を付与することも可能です。そのため、2時間や3時間の休憩時間を付与することも会社の判断次第では可能となります。なお、残業時間が何時間になったとしても、労働時間が8時間超となった時点で、1時間の休憩を付与すれば、違法ではありません。
休憩時間の3原則とは?
休憩はただ、定められた時間を付与すれば足りるものではありません。守るべき3原則が定められています。
休憩時間は労働時間の途中に取らなければならない
既に述べた通り、休憩は労働時間の途中に与えることが必要です。そのため、労働時間の始めや終わりに接着する形での休憩付与は、違法となります。
一定付与の原則
休憩時間は、原則として全ての従業員に対して、一斉に与える必要があります。しかし、労使協定を締結しているか、一定の業種の場合には、この原則は適用されません。なお、派遣労働者がいる場合には、派遣労働者を含めての一斉付与が必要です。
休憩時間の利用方法は自由
休憩時間は、従業員の自由に利用させなければなりません。ただし、事業場の規律保持のため、一定の制限を加えることは可能です。また、警察官など業務の必要上、自由利用が困難な一定の場合には、自由利用させなくても違法とはなりません。
休憩時間の原則から外れるケースはある?
休憩の3原則には、例外規定が設けられています。本項では、項目ごとに例外の解説を行います。
【一斉付与の例外】労使協定を別途結んでいる
労使協定を締結している場合には、休憩を一斉付与しなくても違法とはなりません。なお、この労使協定は、労働基準監督署長への届出義務はありません。
【一斉付与の例外】一定の業種の場合
次の業種は、労使協定の締結がなくとも一斉付与の例外となります。
- 坑内労働
- 運輸交通業
- 商業
- 金融広告業
- 映画演劇業
- 通信業
- 保健衛生業
- 接客娯楽業
- 官公署の事業
【自由利用の例外】特定の業務の場合
次に該当する場合には、休憩時間を自由に利用させなくても違法とはなりません。
- 坑内労働者
- 警察官
- 消防吏員
- 常勤消防団員
- 準救急隊員
- 一定の児童自立支援施設職員
- 一定の児童養護施設・障害児入所施設職員
- 家庭的保育者として保育を行う居宅訪問型保育事業所職員
休憩時間がない労働者もいる?
休憩は、原則として全ての労働者に適用されます。しかし、一定の場合には、休憩時間、休憩および休日の規定が適用されません。このような労働者は、法41条該当者と呼ばれます。そのため、以下に該当する労働者には、休憩時間を与えなかったとしても、法違反とはなりません。
- 農業、または水産・養蚕・畜産業に従事する場合
- 監督もしくは管理の地位にある場合(管理監督者)
- 機密の事務を取り扱う場合
- 労働基準監督署長の許可を受けたうえで、監視または断続的労働に従事する場合
なお管理監督者とは、単に部長や課長といった肩書で判断されるものではなく、実態で判断されます。そのため、役職者だから休憩は不要と安易に考えることは危険です。
休憩時間にあてはまらないケース
会社が休憩を付与しても、休憩時間とはみなされないケースも存在します。トラブル防止のためにも、休憩時間にあてはまらないケースの確認は重要です。
電話対応
休憩時間中は、労働から解放されていることが必要です。そのため、休憩時間中であるにも関わらず、会社から電話対応を指示されている場合には、労働時間とみなされ、休憩時間とはなりません。
待機時間
突発的に発生する業務のために待機している時間も、休憩時間とはなりません。手待ち時間などの待機時間は、必要があれば即業務を行う必要があり、労働から解放されているとはいえないからです。
業務上設定されている仮眠時間
業務上設定されている仮眠時間も、会社からの指示があれば、即業務に対応することが必要となる時間です。このような時間も待機時間同様に休憩時間とはなりません。
休憩時間を設定するうえでの注意点
休憩時間を適切に設定することは、法違反とならないためにも重要です。本項では、休憩時間を設定する際の注意点を解説します。
休憩時間は分割してとることができる
休憩は一度に45分や1時間取得する必要はなく、分割取得も可能です。そのため、30分の休憩を2回取るという運用も可能となります。しかし、休憩時間があまり細切れになっては、リフレッシュにならないため、適切な長さに設定しましょう。
休憩時間は返上できない(遅刻や早退の返上)
遅刻や早退をした場合であっても、その代わりとして休憩時間の返上はできません。たとえば、1時間の遅刻をした場合に、本来の休憩時間である12時から13時に労働することで、帳尻を合わせることは不可能です。
アルバイト・パートにも休憩時間が必要
休憩は、労働者の雇用形態を問わず付与することが必要となります。そのため、アルバイトやパートに休憩を付与しないことは違法です。休憩を付与しないことは、仮に本人が希望しても許されません。
休憩時間に関してよくあるトラブル
休憩には、3原則をはじめとする様々な規制があるため、トラブルが発生する場合も多くなっています。トラブル事例を知ることで、防止につなげましょう。
休憩中に顧客対応が発生する
休憩時間中に来客があること自体は、珍しくないでしょう。しかし、既に述べた電話対応と同様に、顧客への対応を行う場合には休憩時間とはなりません。
そもそも休憩時間を取れる勤務体制になっていない
人手不足の状態となっており、誰か一人でも欠ければ業務が回らないような勤務体制の場合もあるでしょう。しかし、そのような場合であっても、法定の休憩を付与しなければなりません。例外が許されるのは、あくまで法で定められている場合に限られます。
会社支給のスマートフォン対応
休憩時間中であっても会社支給の端末で、業務の指示を受けている場合も多くなっています。このような場合も、労働から解放されているとはいえず、休憩時間とはみなされません。
休憩時間における事故・負傷の労災扱い
休憩中の事故による負傷や怪我は、原則として労災とは認められません。休憩中は、労働から解放され自由に行動しており、業務とは無関係なことが理由です。会社設備等が理由の場合には、労災となることもありますが、従業員には休憩中の労災の扱いについて説明しておくべきでしょう。
休憩時間のトラブルを防ぐためには?
休憩時間にまつわるトラブルを防止するためには、休憩時間の理解が不可欠です。そのためには、徹底した周知が必要となるでしょう。
休憩時間は原則働かないことを徹底する
これまでも述べてきた通り、休憩時間は労働から解放された自由な時間であることが必要です。そのため、会社から休憩時間中の業務指示を行わないことはもちろんのこと、従業員が休憩時間中に業務を行わないように、徹底して周知することが必要となります。
休憩時間中に業務を行っている従業員を見掛けたら、適切な休憩を取るように促しましょう。上司が率先して、休憩中は働かない姿勢を示すことも、職場の意識を変えるために効果的です。
休憩時間を取得させなかった場合、罰則はある?
休憩を適切に付与しなかった場合には、労働基準法第119条により、6ヶ月以下の懲役、または30万円以下の罰金が科される恐れもあります。そうなった場合には、罰金や懲役を科されるだけでなく、適切な休憩を与えない企業であるとして、社会的評価も低下してしまいます。
休憩時間が取れなかった場合、給与は発生する?計算方法
業務の繁忙等により、どうしても勤務時間中に休憩を与えられない場合もあるでしょう。そのような場合には、本来の休憩時間は、労働時間となります。
休憩時間中の労働により、1日8時間、週40時間の法定労働時間を超過した場合には、その労働時間は時間外労働時間となります。この場合には、25%の割増率による割増賃金の支払いが必要です。一方で、休憩時間中の労働を行っても法定労働時間の枠内であれば、通常の賃金を支払えば足ります。
労務担当者が休憩時間の管理をするポイント
休憩時間を適切に管理できなければ思わぬトラブルにつながりかねません。ポイントを押さえてしっかりと管理しましょう。
システムなどで休憩時間を打刻可能に
適切な休憩時間の管理には、勤怠管理システムも導入がお勧めです。スマートフォンやタブレット端末で休憩時間の打刻が可能なシステムもあるため、多様な働き方にも対応可能となります。
半休の場合でも6時間勤務を超えるなら休憩時間が必要
仮に半休を取った場合であっても、労働時間が6時間を超えた場合には、45分の休憩が必要となります。半休は休憩不要と思い込まずに、しっかりと何時間休み、何時間働くのかを把握しましょう。
休憩が取れなかった場合の対応フローを考えておく
繁忙期や人手不足により、どうしても休憩が取れない場合もあります。そのような場合に備えて、代替措置の用意や、取れなかった休憩時間の扱いなどについて、あらかじめ対応を定めておくと、トラブルを抑制しやすくなります。
休憩時間は適切に設定しよう
休憩は、心身をリフレッシュさせ業務のパフォーマンスを向上させるためにも重要です。また、適切に休憩時間を設定しなければ、法違反などのトラブルにもつながりかねません。当記事を参考に適切な休憩時間を設定してください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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