• 更新日 : 2025年1月10日

希望休が取れないのはパワハラ?有給やシフトでありがちな事例がパワハラに該当するか解説

希望休を反映しないシフトを作成して従業員に出勤を強要し続けた場合、それがパワハラに該当する可能性が高くなるでしょう。一方で、会社側としては必ずしも全ての希望休を実現できないこともあります。

今回は希望休や有給の取得拒否がパワハラ扱いになるケースや、パワハラだと言われないためのポイントをご紹介します。

希望休が取れないのはパワハラ?

そもそも、希望休とはシフト制の職場において従業員が希望する休日のことを指します。例えば、従業員が「今度の日曜日は休みたい」と申請した場合、要望通りに日曜日が休みになれば希望休が取得でき、日曜日に休みが取れなかったときは希望休が取得できなかったということになるのです。

希望休はその名の通りあくまで従業員が希望する休日のことですが、会社は必ずしもこれに応じる必要はありません。

労働基準法第35条には

使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。

引用先:労働基準法|e-Gov法令検索

と定められています。これをクリアしていれば、いつ休日を与えてもいいということになるのです。

有給取得拒否との違い

従業員が好きな日に休みを取得できる制度として有給休暇というものがあります。有給休暇の取得は労働者の正当な権利であり、会社はこれを拒否することはできません。労働基準法第39条5項には「使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。」と定められており、仮に有給休暇の取得を拒否した場合は労働基準法違反となり6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる恐れがあります。

参考:労働基準法|e-Gov法令検索

有給取得拒否はパワハラに該当する恐れがあるのはもちろんですが、そもそも不法行為です。一方、希望休の取得は拒否しても違法ではありませんが、希望を一切無視して従業員が精神的苦痛を感じた場合には、パワハラとみなされてしまう恐れがあります。

パワハラと言われないシフト作成のポイント

従業員に全く希望休を取得させない行為はパワハラにあたる可能性がありますが、必ずしも全ての希望を汲み取ったシフトが組めるとは限りません。ここからはパワハラだと言われないシフトを作成するポイントをご紹介します。

公平性を考慮してシフトを組む

シフト制の職場の場合、例えば他の従業員と比較して希望休が通りにくい、シフトが多すぎる・少なすぎる、夜勤や早出、ワンオペなどの負担が大きいシフトが多いなどの不公平感が従業員の不満につながりがちです。

なるべく全ての従業員が同じ配分の出勤日になる、夜勤や早出、ワンオペの割合が等しくなるよう意識してシフトを組みましょう。

譲歩案を提示する

希望休を全く無視するとパワハラと捉えかねられません。一方で、全ての希望休を考慮するのが難しいケースもあるかと思います。例えば、従業員が水曜日と日曜日に休むことを希望していた場合、日曜日は出勤してもらう代わりに水曜日と土曜日は休みにする、今週の日曜日だけは出勤してもらい次週の日曜日は確実に休みにすることを約束するなど、譲歩案を提示することで、希望休を考慮している姿勢を示すことができ、不満の軽減につながります。

希望休のルールを定める

従業員にとっては休みたい日に休めるのがシフト制の職場のメリットといえますが、とはいえ全員の希望を考慮していたら仕事がまわらないでしょう。特に、土日は家族や友人と休みの日を合わせたい、遊びに行きたい、家庭の用事や子どもの行事があるという人が多いため、どうしても休みの希望が集中する傾向があります。

例えば「土日休めるのは3人まで」「人数が多い場合は話し合って決める」というようにルールを決めておくといいかもしれません。

「休むなら代替要員を自分で探すように」と指示したらパワハラ?

「休みたいなら代わりの人を探してきて」と代替要員を従業員に探させるようにしている管理職の方もいらっしゃるかもしれません。しかし、そもそも代替要員を探す義務は従業員にはなく、会社側が責任を持って人員を手配しなければなりません。

「休むなら代わりを自分で探せ」「代わりを見つけないと休ませない」と強要し、希望休を取得させない行為はパワハラ扱いとみなされる可能性があります。

繁忙期を理由に有給の時季変更権を行使したらパワハラ?

前述の通有給休暇の取得は労働者に認められた正当な権利であり、会社側は有給取得を拒むことはできません。しかし、会社側には「時季変更権」という権利があります。先ほどご紹介した労働基準法第39条5項には続きがあり、全文を見てみましょう。

使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。

引用:労働基準法|e-Gov法令検索

休まれると事業が正常に回らなくなる場合、従業員から有給休暇の申請があったとしても、有給休暇を取得する時季を変更するよう要請できるのです。例えば「今週は忙しいけど来週なら有給を取ってもいいよ」というふうに、繁忙期を理由にして時季変更権を行使するのは問題ありません。

ただし、全く有給を取得させない、あるいは高圧的に有給取得の時季変更を迫るような行為は、パワハラ扱いになる恐れがあります。

有給取得の理由を聞いたらパワハラ?

基本的に有給休暇はどのような理由で取得することができ、会社に詳細理由を報告する義務もありません。取得理由が旅行や遊びに行く場合でも、あるいは理由がなく単に休みたい場合でも、咎められることなく有給休暇は取得可能です。一方、会社側が有給休暇を取得する理由を尋ねる行為もパワハラではなりません。

例えば、繁忙期である場合、会社側としても時季変更権を行使するかどうかを理由によって判断するケースもあり得ます。

ただし、従業員が理由を答えたくないと意思表示しているにもかかわらず、執拗に理由を問いただしたり、業務上の必要性を超えてプライベートな事柄に踏み込んで質問したり、理由を答えなければ有給取得を認めないと迫る態度は、パワハラに該当する可能性があります。

アルバイトやパートに合意のないシフトカットをしたらパワハラ?

人手が足らないケースもあれば、なんらかの理由で人員が余ってしまうこともあり得ます。特に、パートやアルバイトの場合は「明日は休んでもいいよ」と言ってシフトカットすればいいと思われがちですが、これにも注意が必要です。

会社都合でシフトカットを行う場合、会社は休業手当を支払わなければなりません。これは労働基準法第26条に定められています。

使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。

引用:労働基準法|e-Gov法令検索

また、労働契約の内容変更について定められた労働契約法第8条には以下のように記載されています。

労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。

引用:労働契約法|e-Gov法令検索

つまり、会社側は労働者との合意がない場合は労働契約の内容を変更することはできません。一方的にシフトカットをする行為はパワハラ扱いになるだけでなく、法律にも違反する恐れがあります。

参考:労働契約(契約の締結、労働条件の変更、解雇等)に関する法令・ルール|厚生労働省

そのシフトの組み方、パワハラに該当するかもしれません

シフト制の職場では従業員がシフトの組み方に対して不満を抱くケースもあり、それが大きなトラブルに発展する恐れもあります。例えば、希望休を全く考慮しない、不公平なシフトの組み方をする、代替要員を見つけるよう指示する、一方的にシフトカットをするといった行為はパワハラとみなされる場合もあり得ます。

また、有給休暇の取得を拒んだり、無給でシフトカットしたり、法定休日を与えなかったりした場合は、パワハラだけでなく法律違反に該当する可能性があります。

管理者の方は今回紹介したように、希望休も考慮し、不公平感を与えないようなシフト作成を心がけましょう。どうしても出勤してほしい場合は会社側の事情をきちんと説明して折り合いをつけることが大切です。


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