- 更新日 : 2024年4月26日
OFF-JTとは?OJTとの違いや企業向けの教育研修の例、助成金を解説
OFF-JTとは、業務を離れて職場外で行う研修のスタイルをいいます。理論的・体系的な学びを得るのに適しています。また、従業員の継続的なキャリア形成を支援する上でも、重要となる研修スタイルです。
ここでは、OFF-JTとはなにか、OJTとの違いを解説するとともに、メリット・デメリットについてお伝えします。
目次
OFF-JTとは?
OFF-JTとは、「Off the job training」の略称で、業務を離れて行う職場外研修を指します。業務を通じて研修を実施する「OJT(On the job training)」の対になる考え方です。職場や通常業務から離れ、時間をとって研修の場を設ける点が特徴です。
厚生労働省の令和4年の「能力開発基本調査」によれば、OFF-JTを実施した企業の割合は71.5%となっています。新卒入社社員、中途入社、管理職など、対象の立場を問わずに、従業員の能力開発を目的として広く取り入れられる研修手法です。
OFF-JTの研修方法
OFF-JTの研修方法は、「通常の仕事から離れた場所」で「座学」を基本として行う点が特徴です。新入社員全員を対象とする集合研修や、管理職のみを対象とした少人数の研修など、研修の規模や内容は目的によって異なります。また、研修期間も数時間~数日などさまざまです。
OFF-JTで仕事に関連する知識を身に着けることで、業務の成果向上や、従業員のスキルアップが期待できます。
OFF-JTとOJTとの違い
OFF-JTとOJTとの大きな違いは、教育・研修が職場外で行うのか、職場内で実践を通して行うのかです。OJTは、実務から離れて理論を体系的に学ぶOFF-JTとは異なり、実務を通じて従業員のスキルを伸ばすことを目的としています。商談のやり方や、システムの使い方など、先輩や上司から直接教わることで、実務で求められるスキル・知識を短期間で吸収できるのがOJTの大きな特徴です。
そのため、OJTは新卒入社社員や中途入社社員、異動してきた社員のスキルアップを目的として導入されることが一般的です。ただし、OJTでは学べる内容や範囲が限定されることから、OFF-JTと組み合わせて研修プランを組むことは珍しくありません。
参考:OJTとは?意味やOFF-JTとの違い、研修のやり方や成功のコツを解説
OFF-JTが求められている理由
OFF-JTが求められている理由を以下に解説します。
効果的な学びの促進
実務で必要なスキルを確実に取得できるOJTですが、OJTの研修スタイルは教育係の手腕に左右されるというデメリットがあります。また、教えるべき実務に精通しているベテラン・中堅社員の存在が不可欠です。人手不足が進む昨今では、こうした教育係を確保することが難しい職場は少なくありません。
教育・研修のリソースを社外に依頼できるOFF-JTを組み合わせれば、社内の負担を減らしつつ、効果的な学びを促進することができます。
DX推進
ITシステムには「2025年の崖」と呼ばれている問題があります。これは、既存システムの老朽化や複雑化、システム維持管理費の高額化、保守運用に携わる担い手の人材不足などにより、企業のDX化が停滞し、2025年以降、最大年間12兆円の経済的損失が生じるというシナリオです。
この問題を解消するためには、企業はシステムの刷新を行うことはもちろん、こうした問題に横断的に対処できる人材の育成が不可欠になります。事業とITの両方に精通した人材を育てるには、実務を通じたOJTだけではなく、研修で新しい学びを得るOFF-JTが効果的といえます。
OFF-JTのメリット・デメリット
OFF-JTのメリット、デメリットを以下で解説します。
OFF-JTを導入するメリット
OFF-JTは、座学やロールプレイングを通じて体系的・論理的な学びを行うのに適しています。業務とは異なる分野を学び、従業員のさらなるキャリアアップに活かすことも可能です。また、少人数から大人数と幅広い規模に対応でき、同時に複数の従業員の教育が可能という効率的なメリットもあります。
さらにOFF-JTでは、役職や社歴、所属部署、スキルなど対象者の属性に合わせて学習内容を設定することが可能です。
OFF-JTを導入するデメリット
OFF-JTを導入する場合、教育内容に適した講師を選定する必要があります。自社の従業員が担当するのが難しい場合、外部講師の依頼を検討します。その場合は、追加コストが発生します。さらに、会場費や研修に参加する従業員の交通費、時間などのコストを考慮して研修計画を立てることが重要です。
OFF-JTで知識を習得しても、現場で活用する機会がなければなかなか身に付きません。OFF-JTのあと、実践する機会を設けられるよう、受講した本人や上司と連携をとることがポイントになります。
企業向けのOFF-JT教育研修の例
OFF-JTは、さまざまな研修に活用できるスタイルです。ここでは、企業で取り入れるのに適しているOFF-JTの研修事例をご紹介します。
新規採用者研修
新卒入社や、中途入社社員向けの教育研修です。入社後、会社の事業内容や業界動向、部署の役割、法令関係などについてをOFF-JTで学びます。また、ビジネスマナー研修など、配属前に身に着けるべきスキルを学ぶのにも、OFF-JTは適しています。
リーダーシップ研修
リーダーシップ研修では、リーダーとして育成したい人材を集め、リーダーとしての知識や能力を伸ばす内容を実施します。業務でリーダーシップを発揮する必要のある従業員のほか、将来的にリーダーシップをとって欲しい従業員を選定し、実施することができます。
コンプライアンス研修
企業にとって重要な経営課題であるコンプライアンス。コンプライアンス研修では、個人情報の取扱いや稟議の上げ方など、従業員が気を付けるべきポイントについて学ぶことができます。パワハラやセクハラなど、年々アップデートされる部分について、新たな知識を習得する場にもなります。
マネジメント研修
マネージャーやリーダーなど、管理職が身に着けるべきスキルを学ぶ研修です。傾聴スキルなど、指導やアドバイスする際に使えるスキルのほか、マネージャーとして望ましい姿勢や役割について学びます。
メンタルヘルス研修
従業員が精神的・肉体的に健康な状態を維持できるよう、メンタルヘルスについて学ぶ研修です。日頃の生活を振り返り、自身が不調に陥りやすいタイミングを知ることができます。また、ストレスへの対処法や解消法を学び、自らの体調管理に役立てます。
OFF-JTに活用できる助成金はある?
OFF-JTを実施する企業は、厚生労働省が行う以下の制度を活用して、助成金を申請することができます。
人材開発支援助成金
人材開発支援助成金とは、従業員のキャリア形成を目的に、専門知識やスキルを身に着けるためのOFF-JTやOJTを行った事業主に対して助成する制度です。OFF-JTだけではなく、休暇中に訓練を受けてスキルアップを行う従業員を支援する教育訓練休暇制度など、複数のコースを設定しています。
OFF-JTを行う企業の場合、人材育成支援コースにおいて、以下の訓練が助成金の対象となります。
【OFF-JTのみ】
- 人材育成訓練:職務に関連する知識・技能を習得させるための10時間以上のOFF-JT
【OFF-JTとOJTを併用】
- 認定実習併用職業訓練:厚生労働大臣の認定を受けた実習併用職業訓練
- 有期実習型訓練:有期契約労働者等に対し、正規雇用労働者等に転換するための訓練
【賃金助成額】
- 一人一時間あたり最大960円
【経費助成率】
- 45%~最大100%
なお、人材開発支援助成金制度は、職務に関連する知識・技能を習得させるためのOFF-JT(またはOJT)を対象としています。そのため、職業人として共通して必要となるビジネスマナー研修や、日常会話レベルの語学の取得のみを目的とした研修などは対象にならないため注意が必要です。
OFF-JTの取り組み事例
最後に、OFF-JTを活用して従業員のスキルアップに取り組む会社の事例を紹介します。日本マクドナルドとユナイテッドアローズは、どちらも店舗経営を行う事業スタイルです。店舗ではOJTの教育スタイルが主流となりますが、OFF-JTを組み合わせることで従業員のスキル・キャリアアップを支援しています。
日本マクドナルド株式会社
「働きがいをすべての人に」を掲げる日本マクドナルドでは、本社内に「ハンバーガー大学」を設置し、最新の教育理論と手法を用いて人材育成に取り組んでいます。ハンバーガー大学のカリキュラムは、リーダーシップ、マネジメント、チームビルディングなど多様です。OJTで店舗教育を受けた社員は、その後自身の興味に合わせてハンバーガー大学のコースを選択することができます。
株式会社ユナイテッドアローズ
ユナイテッドアローズの教育スタイルは、スキルや経験がゼロからでも、キャリアアップを目指せる体制となっています。後輩と先輩がペアになり教え合う「ES(エデュケーター・スチューデント)制度」というOJTスタイルのほか、全社教育の研修期間である「束矢大學」では、OFF-JTで接客・販売業務の基礎を教えています。ほかにも、会社が定めるビジネススクールの入学に対して、全額支給。検定受験費用もサポートするなど、従業員のキャリア形成を支援しています。
参考:制度について|株式会社ユナイテッドアローズ 採用サイト
OFF-JTとOJTを組み合わせて効果的な研修を実施しよう
OFF-JTとOJT、それぞれの研修スタイルの良さがあります。OFF-JTは、理論的・体系的な学びを得られる点が大きな特徴です。あえて業務から離れることで、現在の業務に直接関係がなくても、従業員のキャリア形成に重要なスキルを身に着けることも可能です。OFF-JTのメリット・デメリットを理解し、効果的な研修計画につなげましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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