• 更新日 : 2025年1月17日

事業主・パートなど雇用保険に加入する条件やメリット!手続きまとめ

雇用保険とは、従業員へ継続した安定と就職を提供するために設けられた制度です。

雇用保険は、事業主や従業員の加入希望の有無にかかわらず、加入条件を満たした時点で雇用保険への加入が義務となります。

雇用保険へ加入することで、事業主には保険料の負担が発生します。一方で、雇用に関する助成金が申請できたり多くの人材確保につながったりなど、メリットもあるのです。

事業主が雇用保険に加入する条件とは?

雇用保険とは、失業した従業員の生活を支援し、雇用の安定を図るための制度です。雇用保険は、労働者と雇用主が保険料を負担し合って国が管理し必要時に支払われます。具体的に、雇用保険には下記などが含まれます。

  • 失業保険
  • 育児休業給付金
  • 介護休業給付金 など

事務所が雇用保険へ加入するためには、下記の条件が必要です。

  • 従業員との雇用契約が31日以上であること
  • 職場での所定労働時間が週20時間以上であること

雇用保険への加入希望の有無にかかわらず、上記に当てはまった場合は必ず雇用保険への加入が必要です。

また、もし従業員が学生だった場合は基本的に加入できませんが、夜間部や通信制の学生は例外として認められる場合があります。

パート・アルバイトが雇用保険に加入する条件とは?

パートやアルバイトが雇用保険に加入するための条件は、以下の通りです。

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
  • 31日以上の雇用期間が見込まれること
  • 学生でないこと(例外あり)

たとえば、1日4時間で週5日働く場合は合計で20時間となり、上記の条件を満たします。しかし1日3時間で週5日働く場合は15時間となり、加入対象外です。

また、職場で雇用契約に更新規定があり、31日未満での雇止めが明示されていない場合や、過去に同様の契約で31日以上雇用された実績がある場合も該当します。最初の契約期間が31日未満でも、その後31日以上に延長される場合は、その時点から雇用保険が適用されるため注意が必要です。

雇用保険に加入しない場合の例外

パートやアルバイトの中でも、下記などの場合は雇用保険への加入条件に当てはまりません。

  • 所定労働時間が20時間未満の場合
  • 雇用期間が31日未満の場合
  • 法人の代表者の場合
  • 季節的な雇用の場合
  • 昼間学生である場合
  • 外務員(外交員)の場合
  • 家事使用人の場合
  • 海外で現地採用される場合
  • 他社で雇用保険に加入している場合
  • 公務員や船員の場合

高校や大学などの昼間部に通う学生は、雇用保険の適用外です。ただし、通信教育や夜間学校に通っている場合は加入可能です。また、卒業前に内定先で働くことが決まっている場合や休学中の場合は例外として加入できることもあります。

季節的に雇用される労働者については、4か月以内の期間を定めて雇用される場合や、1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の場合は、雇用保険に加入できません。季節的な業務とは、たとえば夏季限定の海水浴場施設における業務や、冬季限定のスキー場における業務などがあります。

事業主が雇用保険に加入するメリット

事業主が雇用保険へ加入することで、雇用保険料の負担が発生するため、できれば加入したくないとお考えの方もいらっしゃるでしょう。

しかし、加入することで従業員の雇用に関する助成金が受けられたり、福利厚生が完備された職場であると認識されたりなどのメリットがあります。

事業主が雇用保険へ加入するメリットについて、解説します。

雇用に関する助成金が受けられる

事業主が雇用保険へ加入することで、雇用に関する助成金が受けられる場合があります。たとえば事業主へ向けた助成金制度には下記があります。※2024年12月時点

制度名概要
キャリアアップ助成金
  • 非正規雇用者を正社員化する事業主へ支給される
  • 賃金を引き上げた事業主に対して支給される
特定求職者雇用開発助成金
  • 高齢者や障害者などの就職困難者を雇用した場合に支給される
  • ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等を介して雇用した事業主へ支給される
両立支援等助成金
  • 育児や介護と仕事を両立させるための制度を導入した事業主に対して支給される

上記の助成金制度は、すべて事業主が雇用保険へ加入することで申請できます。さらに、受け取った助成金は返済不要のため、事業主にとってありがたい制度といえるでしょう。

人材の確保につながる

雇用保険に加入することで、従業員は失業時や育児・介護休業中に一定の給付を受けられるため、安心して働けます。

安心して働ける職場なら、従業員が長期的に勤務する可能性が高まり、人材の定着につながるでしょう。

さらに、雇用保険に加入している企業は、求職者にとって選びたくなる職場であるといえます。とくに従業員は、雇用保険の制度によって提供される、失業手当や育児休業給付金などの各種給付金が受け取れるかどうかを重視している人もいます。

そのため、雇用保険へ加入していない職場よりも、加入している職場の方が人材の確保につながりやすいといえるでしょう。

採用活動で信頼性が高まる

従業員が、ひとりでも雇用保険へ加入する条件を満たしている場合は、事業主による雇用保険への加入が義務です。そのため雇用保険へ加入していることは、義務を遵守している点で、社会的信頼を得ているといえるでしょう。

また採用活動では、雇用保険に加入していることが「安心して働ける職場」の指標となり、多くの人材を引き寄せやすくします。

雇用保険への加入は、労働者が安心して働ける環境を提供することでもあります。企業のイメージ向上やブランド価値の向上にもつながるでしょう。

雇用保険への加入条件を満たしているにもかかわらず加入していない場合は、法律上の罰則が科されるリスクもあります。未加入が発覚した場合は、企業の信頼性を損ない、人材確保にも悪影響をおよぼす可能性があるでしょう。

パート・アルバイトが雇用保険に加入するメリット

従業員にとってメリットが多く働きやすい職場は、安定した人材確保につながるでしょう。

雇用保険に加入することで、失業時に失業手当が受け取れたり育児や介護時に給付金が受け取れたりなど、従業員にとってもメリットがあります。

事業主が雇用保険へ加入することで、従業員が得られるメリットについて解説します。

失業した場合、失業保険が受け取れる

従業員が雇用保険に加入することで、退職時や失業時に、一定の条件を満たすことで失業手当が受け取れます。

失業手当を受け取るためには、離職前の2年間に通算12か月以上雇用保険に加入している必要があります。自己都合退職の場合は給付制限期間が設けられますが、会社都合での退職は、受け取りまでの期間が短く設定されています。

職場や自身の事情で一時的に働けなくなった場合でも、経済的な不安が軽減できるでしょう。

育児や介護などの給付金を受け取れる

従業員が雇用保険に加入することで、一定の条件を満たせば、育児や介護に関連する給付金が受け取れます。

育児休業給付は、出産後に育児休暇を取得した際に支給され、育児休業中の賃金が一定額未満である場合に支給されます。受け取るための具体的な条件としては、1歳未満の子どもを養育するために育児休業を取得し、休業中の就業期間が一定以下であることなどです。

また介護休業給付も同様に、介護が必要な家族を持つ労働者に対して支給される制度です。雇用保険の加入によって受けられる制度により、従業員でも家庭の事情に応じた経済的支援が受けられるのです。

教育やスキルアップの給付金が受け取れる

従業員が雇用保険に加入することで、教育やスキルアップに関連する給付金が受け取れる場合があります。具体的には、下記などがあります。

給付金制度の名称概要
一般教育訓練給付金
  • 受講者が支払った教育訓練経費の20%(上限10万円)が支給される
特定一般教育訓練給付金
  • 受講費用の40%(上限20万円)が訓練修了後に支給される
専門実践教育訓練給付金
  • 受講中に支払った教育訓練経費の50%(年間上限40万円)が6か月ごとに支給される
  • 資格取得後1年以内に雇用保険の被保険者として雇用された場合には、さらに20%(年間上限16万円)が追加で支給される可能性がある

従業員が経済的な支援を受けながら、自己啓発やキャリアアップが図れます。

事業主が行う雇用保険の加入・喪失手続き

雇用した従業員が雇用保険への加入条件を満たす場合、事業主は、雇用保険への加入が必要です。

初めて従業員を雇用する場合や、新しく追加で雇用する場合など、複数のパターンにおける雇用保険の手続きの仕方や手順について、解説します。

初めて従業員を雇用する

初めて従業員を雇用する場合、雇用保険の加入条件に当てはまっている場合は、下記の手順に沿って手続きをしましょう。

  1. 従業員を雇用した日の翌日から10日以内に、保険関係成立届を所轄の労働基準監督署に提出する
  2. 雇用した月の翌月10日までに、雇用保険適用事業所設置届と雇用保険被保険者資格取得届を管轄のハローワークに提出する
  3. 従業員を雇用した翌日から50日以内に、概算保険料申告書を所轄の労働基準監督署または金融機関などへ提出する

手続きは迅速に行う必要があり、とくに従業員を雇った月の翌月10日までに必要な書類を提出しないと、罰則が科される可能性があります。

また雇用形態や就業条件が変わった場合には、新たな手続きが必要になる可能性があるため注意が必要です。

新たに従業員を雇用する

すでに雇用保険へ加入している状態で、新しく雇用保険への加入条件を満たした従業員を雇う場合は、下記を行いましょう。

  • 雇用した月の翌月10日までに、雇用保険被保険者資格取得届を管轄のハローワークに提出する

新しく雇用保険へ加入するときとの違いは、雇用保険適用事業所設置届が不要になる点です。

手続き完了後、雇用保険被保険者証や雇用保険資格取得等確認通知書などが交付されます。書類は従業員に渡し、事業主側でも保管します。

雇用保険の加入手続き後に発行される書類

雇用保険の加入手続きが完了すると、複数の書類が発行されます。書類は、雇用保険に加入したことを証明し、今後の手続きや助成金の給付申請に必要な場合があるため、適切に管理しましょう。

まず、加入手続き後に発行される主な書類は以下の通りです。

  • 雇用保険被保険者証
  • 雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(被保険者通知用)
  • 雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(事業主通知用)

雇用保険被保険者証は、従業員が雇用保険に加入していることを示す証明書です。通常、雇用主が証明書を受け取り、従業員に渡します。従業員が、失業手当や育児休業給付などを申請する際に必要です。

雇用保険被保険者資格取得等確認通知書は、従業員用と事業主用の2つがあり、従業員が雇用保険の被保険者として登録されたことを確認するための書類です。

従業員が加入条件を満たさなくなった場合

従業員の所定労働時間が週20時間未満になったり、雇用契約が31日未満になったりした場合、雇用保険被保険者資格が喪失します。そのため、雇用保険に加入していた従業員が、雇用保険の条件を満たさなくなった場合、事業主は迅速に手続きを行う必要があります。

具体的には、下記の手続きが必要です。

  • 従業員が雇用保険の被保険者でなくなった日の翌日から起算して10日以内に、雇用保険被保険者資格喪失届を管轄のハローワークへ提出する

手続きが遅れた場合、事業主は本来負担しなくてよいはずの雇用保険まで負担することになるため、早めの手続きが重要です。

従業員が離職した場合の手続き

従業員が離職した場合は、雇用保険に加入する条件が失われるため、下記の手順に沿って迅速に手続きしましょう。

  • 従業員が雇用保険の被保険者でなくなった日の翌日から起算して10日以内に、雇用保険被保険者資格喪失届を管轄のハローワークへ提出する
  • 発行された離職票を従業員へ渡す

離職した従業員が、就職活動を始める場合があります。その際、失業手当を受け取るためには離職票が必要です。

離職票の受け渡しが遅れると、従業員が失業手当を受け取りながら就職活動ができなくなるため、早めの手続きが必要です。

雇用保険への加入条件を満たした場合は加入が義務です

事業主は、雇用した従業員が下記に当てはまる場合、雇用保険への加入が義務付けられています。

  • 従業員との雇用契約期間が31日以上であること
  • 職場での所定労働時間が週20時間以上であること

雇用保険へ加入することで、雇用保険料の負担が増える点がデメリットですが、雇用に関係する助成金が申請できたり人材確保につながったりなどのメリットがあります。

雇用保険へ加入する際は、加入条件を満たした日から手続きができる期間が定められているため、早急に手続きするよう注意が必要です。


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