• 更新日 : 2022年10月20日

社会保険の種類について解説!一覧表付き

社会保障制度のなかでも最も身近に感じるのが社会保険制度といえるでしょう。病気やケガの際には医療保険や労災保険、老後の生活には公的年金、会社退職時には雇用保険と、誰にとっても頼りになります。

企業の人事労務担当者にとって社会保険の知識は必須です。社会保険の種類を一覧にしてまとめましたので、理解を深めるのに役立ててください。

そもそも社会保険とは?

社会保険とは、「社会保険」「社会福祉」「公的扶助」「保健医療・公衆衛生」の4つの分野からなる国が実施する社会保障制度の1つです。社会保険でカバーされる範囲と対象者は広く、病気、ケガ、死亡、出産、老齢、介護、失業など、誰にでも起こり得る保険事故があった際に、国が最低限の保障をします。社会保険にはセーフティーネットとしての役割も持っており、国民生活に「安心」と「安定」をもたらす制度といえるでしょう。

社会保険の分野は、主に「年金」「医療保険」「介護」「雇用」の4つの分野に分けることが可能です。社会保険は原則強制加入となる公的保険制度のことであり、広義の意味では、医療保険、介護保険、年金制度、労災保険、雇用保険などの全般が含まれます。

なかには公的保険制度として、労働保険や社会保険という言葉を耳にしたことがある方は多いのではないでしょうか。狭義の意味では、労災保険制度と雇用保険制度を「労働保険」、健康保険や国民健康保険、後期高齢者医療制度などの医療保険制度と、介護保険制度や年金制度を「社会保険」と呼んで区別することも多くあります。

社会保険の一覧表

社会保険にはさまざまなものがあります。社会保険の種類を一覧にしてまとめましたので、それぞれの特徴を確認しましょう。

主な社会保険の種類対象者カバーする主なリスク(給付事由)
社会保険健康保険(全国健康保険協会・健康保険組合)健康保険の適用事業所に勤務する75歳未満の従業員(被扶養者も含む)業務外のケガ・病気・出産・死亡
船員保険(全国健康保険協会)船員(被扶養者も含む)業務外のケガ・病気・出産・死亡
共済組合等(各種共済組合)国家公務員・地方公務員・私立学校の教職員(被扶養者も含む)ケガ・病気・出産・死亡
国民健康保険(市区町村)健康保険・船員保険・共済組合等に加入していない自営業者・農家・無職の人などケガ・病気・出産・死亡
後期高齢者医療制度(市区町村)75歳以上の方、65歳以上~75歳未満で一定の障害の状態にあることが認定された人ケガ・病気・死亡
国民年金(日本年金機構)厚生年金保険に加入していない原則20歳以上60歳未満の自営業者・厚生年金保険の被保険者の被扶養者・無職の人など(国民年金第3号被保険者を含む)老齢・障害・死亡
厚生年金保険(日本年金機構)厚生年金保険の適用事業所に勤務する70歳未満の従業員・国家公務員・地方公務員・私立学校の教職員老齢・障害・死亡
共済年金(各種共済組合)国家公務員・地方公務員・私立学校の教職員(被扶養者も含む)※平成 27 年 10 月からは、被用者年金の一元化により、厚生年金保険に加入しています。老齢・障害・死亡
介護保険65歳以上の人(第1号被保険者)・40歳以上65歳未満の医療保険加入者(第2号被保険者)要介護状態・要支援状態
労働保険労災保険(労働基準監督署)労災保険の適用事業に勤務する従業員(遺族も含む)業務上または通勤によるのケガ・病気・障害・死亡など
雇用保険(ハローワーク)雇用保険の適用事業に勤務する従業員失業・育児・介護など

公的医療保険

社会保険の代表的な存在でもある公的医療保険とは、加入者とその被扶養者が病気やケガなどで通院や入院するなどして治療を受ける必要があるときに、治療費の一部を負担してくれる制度です。日本国民は、公的医療保険の加入義務があり、これを「国民皆保険制度」といいます。

公的医療保険にもいくつかの種類があり、その運営は、国や企業、市町村などが行っています。どの保険に加入したとしても、同じ治療を受けることができますので、医療は全国場所を問わず平等です。

公的医療保険の種類は、以下のとおりです。

健康保険

健康保険とは、被保険者やその被扶養者が業務外の理由で病を患ったり外傷を負ったりしたときや、その療養によって休業して働くことができなくなった場合の収入減少に備えるための公的な医療保険制度です。出産や死亡したときに受けられる給付もあります。

保険者は、健康保険組合に加入していない企業に勤務する従業員が被保険者となる協会けんぽや、大手企業や同業種の企業グループでつくられる健康保険組合です。被保険者である従業員及び企業が報酬に応じた保険料を双方で負担して支払うことで、必要な保険給付を受けることが可能となります。

船員保険

船員やその被扶養者が業務外の理由で病気やケガをしたときや、その療養によって休業して働くことができなくなった場合の収入減少に備えるための公的な医療保険制度です。出産や死亡したときに受けられる給付もあり、保険者は協会けんぽとなります。

もともとは船員に関するほぼすべての給付を船員保険でカバーしていましたが、年金部門は厚生年金保険制度へ、職務上疾病は労災保険制度へ、失業部門は雇用保険制度へと、それぞれシフトされ、現在は「健康保険制度に相当する部門」と「船員の独自給付」のみを給付する社会保険制度となりました。

共済組合等

国家、地方公務員や、私立学校の教師が加入する医療保険制度です。共済組合等とは、正式には法律により組織されている共済組合である、国家公務員共済組合連合会、地方公務員共済組合連合会、日本私立学校振興・共済事業団が該当します。なお、保険者は各共済組合です。

国民健康保険

本来は、農家や個人事業主などを対象とする医療保険制度で、昭和13年に創設されました。制定当初は任意加入の制度だったこともあり、あまり普及しなかった経緯があります。戦後、市町村が運営する強制加入が義務づけられ、幾たびもの改正を経て、現在に至っています。

現在は、被用者として健康保険や健康保険組合などの健康保険制度に加入していない、自営業者、退職者、無職の者などを対象としており、業務外の理由での病気やケガ、出産・死亡を支給事由とする公的な医療保険制度となっています。保険者は市町村や国民健康保険組合です。

後期高齢者医療制度

75歳以上の人や、65歳以上75歳未満で一定の障害がある後期高齢者医療広域連合の認定を受けた人が対象となる、疾病や負傷、または死亡した場合に必要な給付を受けられる公的な医療保険制度です。保険者は後期高齢者医療広域連合です。

公的年金

公的年金とは、老後までの長い期間に社会経済がどのような変化をしたとしても、老後を迎えたときにはこれまでと同水準の暮らしができるような年金の支給を保障するための制度で、加入条件によっていくつかの種類があります。さらに、障害・死亡により一定の要件に該当する場合に、年金の支給を保障する制度でもあります。

なお、世代間扶養を行う公的年金ならではの特徴として、賃金や物価の水準の変動に応じて年金額水準を改定するしくみが取られています。また、原則として日本国内に住む20歳以上60歳未満の人は公的年金への加入は義務づけられており、国民側には加入するかどうかの選択肢は与えられていません。

公的年金の種類について見ていきましょう。

国民年金

国民年金は、自営業者、会社員、専業主婦など、すべての国民に共通する年金制度です。老後を迎えたとき(老齢基礎年金)や負傷を負ったときや身体疾患などで障害が残ったとき(障害基礎年金)、加入者自身や加入者であった者が亡くなったとき(遺族基礎年金)に必要な給付が行われます。共済年金・厚生年金保険に加入している場合は、自動的に国民年金への加入をすることになります。

厚生年金保険

国民年金と同じく、老齢・障害・亡くなったときに年金が支払われる制度です。国民年金はすべての国民を対象とするのに対し、厚生年金保険は保険料を支払った人を対象に給付する「保険」の仕組みとなっているのが特徴です。主に厚生年金保険の適用事業所に勤務する会社員が加入者(被保険者)となり、要件に該当した場合は被保険者やその家族(遺族)が年金を受けることができます。

共済年金

厚生年金保険と同じく、高齢者・障害・亡くなったときに年金が支払われる制度です。共済年金の対象となるそれぞれの共済組合において、常勤の国家公務員、地方公務員が組合員、私立学校の常勤教職員が加入者となり、要件に該当した場合は組合員やその家族(遺族)を対象に年金の給付が行われます。

平成27年10月からは、被用者年金の一元化により、共済年金の対象だった公務員や私立学校の教職員も厚生年金保険に加入することとなりました。それと同時に共済年金の職域加算部分が廃止となり、代わりに「年金払い退職給付」が創設されています。なお、平成 27 年 10 月以後も、これまで共済年金に加入していた期間分の職域加算部分は支給されます。

介護保険

要介護認定または要支援認定を受けた65歳以上の人や、40歳以上64歳以下で特定疾病により介護や支援が必要と認められた人が、日常生活を送るために必要に応じた介護サービスを受けられる制度です。

介護サービスの種類は、都道府県や政令市などが指定・監督を行う居宅介護サービス・施設サービスや介護予防サービスと、市町村が指定・監督を行う地域密着型介護サービスや地域密着型介護予防サービスなどがあり、多岐に及びます。

労災保険

企業に勤務する従業員が、業務上または通勤による負傷・疾病・障害・死亡等にあった場合に、本人やその家族(遺族)に必要な給付が行われる制度です。

労災保険の保険料は全額企業負担となり、従業員の負担は発生しません。また、健康保険や雇用保険のように従業員が被保険者として資格を取得するという手続きもなく、企業で働く従業員は自動的に労災保険が適用されます。

従業員の業務上または通勤によるケガや病気に対し、被災した従業員を守るために国が企業にかわって補償を行います。従業員が被災したときは確実に補償を受けられるばかりか、企業は多額の補償が必要になり、事業を継続できないという事態を回避することが可能です。

雇用保険

企業で働く人の雇用継続を後押しし、働く意欲があっても仕事に就くことができない人の生活を保障するための制度です。主なものとして、失業者の生活保障のための「求職者給付(いわゆる失業保険のこと)」があります。

その他、育児や介護をしている従業員や高齢者の雇用を継続するために支給する給付金や、従業員自らの職業能力を高めるための教育訓練を受講した場合に支給する給付金など、さまざまな場面で雇用に関するサポートが受けられます。保険料は、企業と従業員が決められた率で負担をします。

従業員を守るためにも、社会保険の理解を深めることが大切

社会保険にはさまざまな制度があります。社会保険でカバーされる範囲は広範囲にわたり、病気やケガ、死亡、出産・育児、老齢、介護、失業など、いずれも誰にでも起こり得る保険事故が起きたときに、最低限の生活を保障するセイフティーネットの役割を持っています。

特に、健康保険や厚生年金保険、労災保険や雇用保険などは、企業の経営者や人事労務担当者にとっては、業務に必要となる分野です。自社の従業員を守るためにも、社会保険の制度をよく理解し、必要な手続きを確実に行うことが大切です。

よくある質問

社会保険とはなんですか?

社会保険は、病気、ケガ、死亡、出産、老齢、介護、失業など、誰にでも起こり得る保険事故があった際に、国が最低限の保障としてセーフティーネットの役割を果たす、「安心」と「安定」をもたらす制度です。詳しくはこちらをご覧ください。

公的年金とはなんですか?

詳しくはこちらをご覧ください。


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