• 更新日 : 2024年9月18日

フキハラ(不機嫌ハラスメント)とは?具体例や原因、対処法、対策を解説

職場環境において、ハラスメントの問題はますます深刻化しています。その中でも「フキハラ(不機嫌ハラスメント)」は、特に見過ごされがちな問題です。不機嫌な態度や言動が周囲に与える影響は大きく、職場の雰囲気や生産性に悪影響を及ぼします。

本記事では、フキハラの意味や具体例、原因、対処法、そして企業としての対策について詳しく解説します。フキハラの理解を深め、健全な職場環境を維持するための参考にしていただければ幸いです。

フキハラ(不機嫌ハラスメント)とは?

フキハラ(不機嫌ハラスメント)とはモラルハラスメントの一種です。まず、意味や概要、特徴など、基本的事項から解説していきます。

モラルハラスメントの一種

フキハラ(不機嫌ハラスメント)とは、モラルハラスメント(モラハラ)の一種であり、不機嫌な態度や言動を通じて他人に不快感や精神的な苦痛を与える行為を指します。モラルハラスメントは、精神的な暴力や嫌がらせを通じて相手を支配しようとする行為ですが、フキハラはその中でも特に「不機嫌」という感情を武器にして行われる点が特徴です。

フキハラは、意図的に不機嫌な態度を取ることで相手に圧力をかけたり、無意識に不機嫌な態度を示すことで周囲にストレスを与えたりすることが含まれます。

例えば、上司が部下に対して無言で不機嫌な態度を取り続けることで、部下が萎縮し、業務に支障をきたすことがあります。

このような行為は、職場の雰囲気を悪化させるだけでなく、被害者のメンタルヘルスにも深刻な影響を与える可能性があります。フキハラは、家庭内でも発生することがあり、パートナーや家族に対して不機嫌な態度を取ることで、家庭内の人間関係を悪化させることもあります。

フキハラの具体例

フキハラについて、さらに掘り下げていきましょう。職場と家庭での具体的なフキハラを挙げてみます。

職場での具体例

職場でのフキハラは、上司や同僚が不機嫌な態度を取ることで、周囲に不快感やストレスを与える行為を指します。以下に、職場での具体的なフキハラの例を挙げて解説します。

  • 無言の圧力

上司が部下に対して無言で不機嫌な態度を取ることがあります。例えば、部下が提出した報告書に対して何も言わずに突き返したり、深いため息をついたりする行為です。これにより、部下は自分の仕事に自信を失い、ストレスを感じることになります。

  • 特定の人に対する不機嫌

特定の部下や同僚に対してのみ不機嫌な態度を取ることもフキハラの一例です。他の同僚には笑顔で接するのに、特定の人に対しては無表情で冷たい態度を取ることがあります。これにより、対象者は孤立感を感じ、職場での居心地が悪くなります。

  • ため息や舌打ち

仕事のやりとりの際に、ため息をついたり舌打ちをしたりする行為もフキハラに該当します。部下が質問をした際に、上司がため息をついてから答えることで、部下は自分が迷惑をかけていると感じ、萎縮してしまいます。

  • 無視や無反応

挨拶を返さない、話しかけても無視するなどの行為もフキハラの一種です。部下が「おはようございます」と挨拶しても、上司が無視することで、部下は自分が嫌われていると感じ、精神的な負担を感じます。

家庭での具体例

家庭内でのフキハラは、夫婦間や親子間で不機嫌な態度を取ることで、家族に不快感やストレスを与える行為を指します。以下に、家庭での具体的なフキハラの例を挙げて解説しましょう。

  • 無言の圧力

家庭内で、パートナーが無言で不機嫌な表情を見せ続ければ、受け手は自分が何か悪いことをしたのではないかと不安になります。

  • 急な態度の変化

外では社交的で明るい態度を取るのに、家に帰ると急に不機嫌になるケースもフキハラの一例です。外では笑顔で話しているのに、家に帰ると無言でため息をついたり、物を乱暴に扱ったりすることで、家族が精神的に追い詰められることもあります。

  • ため息や舌打ち

家庭内でのやりとりの際に、ため息をついたり舌打ちをしたりする行為もフキハラに該当します。パートナーに家事の手伝いを頼んだ際に、ため息をついてから手伝うような場合、頼んだ方は頼むこと自体がストレスになるでしょう。

  • 無視や無反応

家族の話しかけに対して無視する、反応しないなどの行為もフキハラの一種です。子供が親に話しかけても無視されれば、子供は自分が愛されていないと感じ、精神的な負担を感じます。

フキハラは無意識にやることがある!?

フキハラは、加害者自身が無意識のうちに行ってしまうケースが少なくありません。以下のような具体例が挙げられます。

感情のコントロール不足のケース

納期や〆切が迫り、ストレスが最高潮に達した上司が、部下に対して不機嫌な態度で指示を出してしまったり、家庭ではイライラが溜まり、家族に対して一方的に無視したり、些細な失敗にも過剰に叱責してしまったりするようなケースが挙げられます。

コミュニケーション能力の欠如のケース

上手く言葉が見つからず、部下の質問に対して不機嫌な態度で応対してしまうケースや、家庭では、家族の気持ちを汲み取れず、一方的に無視したり、冷たい言動で接してしまったりするなどです。

マナー・ルールの無知のケース

職場でマナーを無視して同僚の機嫌を害するような態度を無自覚に取ってしまったり、家庭では、パートナーの家事を当たり前と考え、感謝の気持ちを持たずに不機嫌な態度を取ってしまったりするケースが考えられます。

自分勝手な性質のケース

自分本位で、部下の気持ちを考えずに厳しい言葉遣いで指示を出してしまうほか、自分の感情に流されて、家族に対して意味もなく無視したり、不機嫌な態度を取ってしまったりするなどです。

無自覚の癖のケース

人前では無表情を装う癖があり、相手に不機嫌に映ってしまうことも珍しくありません。感情を表に出さないクセがあり、家族に不機嫌に見られてしまうようなケースもあるでしょう。

このように、さまざまな場面でフキハラに走ってしまう可能性があります。自覚がないまま、加害者となってしまうリスクがあるでしょう。自分自身の言動を常に振り返り、相手への気遣いを忘れないことが何より大切です。

フキハラが企業にもたらす影響

フキハラは、個人のメンタルヘルスに悪影響をおよぼすだけでなく、企業全体にも深刻な影響を与えます。以下、フキハラが企業にもたらす主な影響について、具体例を挙げてみます。

職場全体の雰囲気が悪化する

フキハラは、周囲の人々にも不快感や威圧感を与え、職場全体の雰囲気を悪化させる要因となります。不機嫌な態度は周囲に伝染しやすく、一人の従業員がフキハラを行えば、他の従業員も同様の態度を取るようになり、全体が不機嫌な雰囲気に包まれてしまいます。例えば、次のようなケースが考えられます。

  • 上司がフキハラを行うと、部下は常に気を遣い、萎縮してしまう。これにより、部下同士のコミュニケーションも不活発になり、チームワークが損なわれる。
  • 特定の従業員がフキハラを行うと、周囲の従業員も不機嫌になり、互いに冷たい態度を取り合うようになる。このような雰囲気では、協力して業務を行うことが難しくなる。

生産性が低下する

フキハラによる不快な雰囲気は、従業員のモチベーションを低下させ、結果として生産性の低下を招きます。不機嫌な態度に遭うことで、従業員は精神的なストレスを感じ、集中力が低下しやすくなります。具体例としては、以下のようなケースが考えられるでしょう。

  • 上司がフキハラを行うと、部下は仕事に対する意欲を失い、生産性が低下する。例えば、報告書の作成が遅れたり、ミスが増えたりする。
  • 同僚間でフキハラが横行すると、お互いに気を遣い合い、本来の業務に集中できなくなる。このため、業務の進捗が遅れたり、品質が低下したりする。

離職率の増加につながる

フキハラは、従業員のメンタルヘルスを損ない、結果として離職につながる可能性があります。不快な職場環境に耐えられず、以下のように他の会社に転職を決意する従業員が増えてしまいます。

  • フキハラを受けた従業員は、精神的なダメージを受け、うつ病などのメンタルヘルス不調に陥ることがある。このような状態が続けば、休職や離職を選択せざるを得なくなる。
  • フキハラが横行する職場では、従業員の士気が低下し、モチベーションを維持できなくなる。このような環境下では、優秀な人材が次々と離職してしまう。

フキハラになる原因

ここでは、フキハラがなぜ起こるのか、その原因について具体例を挙げてみましょう。フキハラの原因を理解することで、適切な対策を講じることができます。

体調不良やストレス

フキハラの原因の一つに、体調不良やストレスがあります。体調が悪いときや過度なストレスを感じているとき、人はイライラしやすくなり、その結果として不機嫌な態度を取ってしまうことがあります。これがフキハラの一因となります。

  • 睡眠不足

連日の残業や休日出勤が続くと、睡眠不足に陥りやすくなります。例えば、プロジェクトの締め切りが迫っている状況で、連日深夜まで働き続けると、翌日には疲労が蓄積し、不機嫌な態度を取ってしまうことがあります。

  • 体調不良

病気や慢性的な痛みがあると、常に不快感なため、周囲に対して不機嫌な態度を取ることが増えます。例えば、腰痛に悩む上司が、痛みのためにイライラし、部下に対して冷たい態度を取ることがあります。

  • 過度なストレス

職場でのプレッシャーや家庭内の問題など、さまざまなストレスが重なると、精神的に余裕がなくなり、不機嫌な態度を取ることが増えます。例えば、業績目標が達成できずに上司からのプレッシャーが強まると、そのストレスが部下に対する不機嫌な態度として現れることがあります。

自分自身の評価が低い

自分自身の評価が低いと感じることも、フキハラの原因となります。自分が他人に比べて評価されていないと感じると、ネガティブな感情が生じ、それが不機嫌な態度として表れることがあります。自己評価の低さの要因には、以下のようなものがあります。

  • 評価されない努力

いくら努力しても成果が認められないと感じると、不満が溜まりやすくなります。長時間働いても上司からの評価が低いと感じる社員が、その不満を同僚や部下に対する不機嫌な態度として表すことがあります。

  • 昇進や昇給の不満

昇進や昇給が期待通りにいかない場合、自分が評価されていないと感じることがあるでしょう。同僚が昇進したのに自分は昇進できなかった場合、その不満が不機嫌な態度として現れ、周囲に悪影響を与えることがあります。

  • 比較による劣等感

他人と自分を比較して劣等感を感じることも、フキハラの原因となります。同僚が高い評価を受けているのに対し、自分は評価されていないと感じると、その劣等感が不機嫌な態度として表れることがあります。

相手への支配欲

相手を支配したいという欲求も、フキハラの原因です。次のように不機嫌な態度を取ることで相手をコントロールしようとする行動が見られます。

  • 権力の誇示

上司が部下に対して権力を誇示するために不機嫌な態度を取ることがあります。部下がミスをした際に、上司が無言で睨みつけることで、部下に対する支配欲を満たそうとすることがあります。

  • 責任の回避

自分のミスや失敗を他人に押し付けるために不機嫌な態度を取ることもあります。プロジェクトが失敗した際に、上司が部下に対して不機嫌な態度を取ることで、自分の責任を回避しようとすることがあるでしょう。

  • 感情のコントロール

不機嫌な態度を取ることで、相手の行動や感情をコントロールしようとすることがあります。親が子供に対して不機嫌な態度を取ることで、子供を従わせようとしているのです。

フキハラを受けた時の対処法

では、自分がフキハラを受けた場合、どのように対処すればよいのでしょうか。3つのポイントについて具体例を挙げて説明します。

不機嫌な態度に同調しない

フキハラを受けた際に最も重要なのは、不機嫌な態度に同調しないことです。不機嫌な態度は周囲に伝染しやすく、同調してしまうと職場全体の雰囲気が悪化する可能性があります。以下に具体的な対処法を解説します。

  • 冷静な対応

相手が不機嫌な態度を取っている場合でも、自分は冷静に対応することが重要です。例えば、上司が不機嫌な態度で指示を出してきた場合でも、冷静に「具体的にどのように改善すればよいか教えてください」と尋ねることで、建設的な対話を促します。

  • 感情のコントロール

自分の感情をコントロールし、相手の不機嫌に引きずられないようにしましょう。深呼吸や短い休憩を取ることで、冷静さを保つことができます。

  • ポジティブな態度

可能な限りポジティブな態度を維持し、相手の不機嫌に影響されないようにしましょう。笑顔で挨拶をするなど、ポジティブな行動を心がけることで、職場の雰囲気を改善することができます。

相手との距離を置く

フキハラを受けた場合、物理的または心理的に相手との距離を置くことも有効です。これにより、自分の精神的な負担を軽減し、冷静な判断を保つことができます。

  • 物理的な距離

可能であれば、相手から物理的に距離を置くことが有効です。オフィス内で席を移動する、休憩時間をずらすなどの方法があります。

心理的な距離: 物理的に距離を置くことが難しい場合でも、心理的な距離を保つことが重要です。相手の不機嫌な態度に対して過度に反応せず、自分の感情をコントロールすることで、心理的な距離を保つことができるでしょう。

  • 相談窓口の利用

職場に相談窓口がある場合、上司や人事部門に相談することで、適切な対応を求めることができます。具体的な事例を挙げて相談することで、問題解決に向けたサポートを受けることができます。

自分に責任があることだけ謝る

フキハラを受けた際に、自分に責任があることだけを謝ることも重要です。無闇に謝罪すると、相手の不機嫌を助長する可能性があるため、適切な範囲での謝罪を心がけましょう。

  • 具体的な謝罪

自分に明確なミスがある場合、その点について具体的にわかるように謝罪します。「報告書の提出が遅れてしまい、申し訳ありません」というような謝罪を行います。

  • 過度な謝罪を避ける

自分に責任がない部分については、過度に謝罪しないようにします。相手の不機嫌が自分のミスとは無関係な場合、「その点については私の責任ではありませんが、改善策を一緒に考えましょう」といった対応を取ります。

  • 建設的な対話

謝罪の後は、建設的な対話を心がけます。「今後同じミスを繰り返さないために、どのように改善すればよいかアドバイスをいただけますか」といった形で、前向きな対話を促します。

職場でのフキハラ対策

社員にフキハラが発生した場合、職場ではどのような対策が考えられるでしょうか。ここでは、3つの施策を紹介します。

本人へのヒアリングと指導

職場でのフキハラの問題を解決するためには、まず被害を受けた本人とのヒアリングが必要です。被害を受けた者の意見や感情を聞き、具体的な事例や証拠を収集します。そのうえで、適切なサポートやカウンセリングを提供し、対処方法を指導します。被害者が安心して相談できる環境を整えることが重要です。

配置転換を検討する

フキハラの問題が深刻な場合、被害者を保護するために配置転換を検討することが必要でしょう。被害者が直接的な接触を避けることで、状況が改善される可能性があります。ただし、これは一時的な解決策であり、根本的な問題の解決にはなりません。また、他の職場で同様の問題が再発する可能性も考慮する必要があります。

業務の指示フローを改善する

フキハラの原因となる業務上の問題やコミュニケーションの不足を改善することも重要です。明確な業務指示やルールを定めることで、従業員間の不適切な言動を防ぐことができます。また、上司や管理者が適切なフィードバックを提供し、不適切な行動を抑制することも必要です。組織全体でのコミュニケーションと協力を促進することで、フキハラの問題を根本的に解決することができます。

ハラスメントヒアリングシートのテンプレート(無料)

以下より無料のテンプレートをダウンロードしていただけますので、ご活用ください。

フキハラ対策を徹底し、健全で生産的な職場環境を築こう!

フキハラは、職場の雰囲気を悪化させ、生産性の低下や離職率の増加を招く深刻な問題です。フキハラを防ぐためには、本人へのヒアリングと指導、配置転換の検討、業務の指示フローの改善など、具体的な対策が必要です。

また、従業員一人ひとりが自分の態度や行動に気を配り、周囲に与える影響を意識することも重要です。企業全体でフキハラ対策に取り組むことで、健全で生産的な職場環境を築きましょう。


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