• 更新日 : 2024年9月18日

出産手当金とは?申請から入金までの期間や金額、早くもらう方法

出産手当金とは、出産により仕事を休んでいる期間中に給与が減少または無給の場合、勤務先の健康保険から支給される手当です。支給期間は出産予定日以前42日から出産後56日までで、計算方法は「平均標準報酬日額の2/3×産休の日数」です。申請には事業主から申請書を受け取り、必要事項を記入して提出します。申請が受理されると、通常数週間後に銀行口座に振り込まれます。

本記事では、出産手当金の概要や、申請から入金までの期間や金額、早くもらう方法などについて解説します。

出産手当金とは?

出産手当金とは、出産により仕事を休んでいる期間中に給与がない、または減少している場合に、勤務先の健康保険から支給される手当のことです。ここでは、出産手当金の受給期間・日数・支給要件について解説します。

出産手当金の受給期間・日数

出産手当金の受給期間は、出産の日(実際の出産が予定日より後になった場合は出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から出産日の翌日以降56日までの範囲内です。つまり、出産日以前42日間と産後56日間、合計で最大98日間が対象となります。

一方、出産手当金の受給日数は、上記の受給期間内で会社を休んだ日数です。したがって、産休に該当する期間内でも有給を取得した日は対象日にはカウントされません。

また、出産が予定日より遅れた場合でも、遅れた期間についても支給対象です。具体的な支給期間は「出産予定日以前42日+出産予定日から遅れた出産日までの日数+産後56日」となります。

出産手当金の支給要件

出産手当金の支給要件は、以下のとおりです。

  • 被保険者の出産であること
  • 妊娠4ヶ月以上の出産であること
  • 出産のため仕事を休み、給与の支払いがないか支払額が出産手当金より少ないこと

出産手当金は、健康保険に加入している従業員(被保険者)が対象です。被扶養者の場合、出産手当金は支給されません。また出産手当金は、妊娠4ヶ月(85日)以上の出産に対して支給されます。早産などの場合も支給の対象です。

出産のために仕事を休んでおり、その間の給与が無給(あるいは出産手当金額よりも低い)の場合、出産手当金が支給されます。

出産手当金はいくらもらえる?支給額の計算方法

出産手当金の具体的な計算式は、以下のとおりです。

出産手当金=平均標準報酬日額×2/3​×産休の日数

 

このときの平均標準報酬日額は、支給開始日の以前12ヶ月間の各標準報酬月額を平均した額を30日で割ったものです。

例えば、月給30万円(保険料や税金を引く前の数字。残業代など込み)の方が産休期間をすべて休む場合、出産手当金は約65万円になります。ただし出産手当金は、賃金の支払いを受けた期間は受給できません。また出産手当金の金額は、産休前に休む場合でも、変化しない規定です。

出産手当金の申請から入金までの流れ

出産手当金を受給するためには、いくつかの手続きが必要です。ここでは、出産手当金の申請から入金までの流れをご紹介します。

①産休前に申請書を従業員に渡す

産休を取得する予定の従業員は、事業主から出産手当金の申請書を受け取らなくてはなりません。こちらの申請書は、健康保険組合から提供され、事業主が従業員に渡します。なお、申請書は人事担当者から受け取るか、加入している健康保険組合の公式サイトからダウンロードすることが可能です。

②被保険者の項目を記入する

申請書には、被保険者の項目があります。具体的には従業員の氏名や住所、保険者番号などの基本情報を記入することが必要です。

③産院で医師・助産師の項目を記入してもらう

次に、産院で医師または助産師に、申請書の医師・助産師の項目を記入してもらいます。例えば、出産予定日や産休開始予定日などの情報が含まれます。

④産休後に申請書を受け取り、事業主の項目を記入する

産休が始まった後、従業員は再度申請書を事業主に提出します。このとき、事業主は申請書の事業主の項目を記入しなくてはなりません。事業主の名前や住所、連絡先などの情報を記載します。

⑤申請書を加入先の健康保険団体に提出する

すべての項目が記入された申請書は、従業員または事業主によって、従業員が加入している健康保険団体に提出されます。提出方法は郵送や直接持ち込みなど、健康保険団体によって異なるため注意が必要です。

⑥出産手当金の入金

申請書が健康保険団体に受理されると、出産手当金の支払いが開始されます。支払いは通常、指定された銀行口座に直接入金されます。支払いのタイミングは、健康保険団体によりますが、申請から数週間後になることが一般的です。

退職する場合の出産手当金の申請方法

出産を機に退職する場合でも、一定の条件を満たしていれば出産手当金を受給することが可能です。以下で、その要件と申請方法を解説します。

出産手当金を受給するための条件

退職を予定している方が出産手当金を受給する条件は、以下のとおりです。

  • 退職日までに1年以上継続して健康保険の被保険者であること(任意継続期間は除く)
  • 退職日に出勤していないこと(退職日に有休はOKです)
  • 退職の翌日において出産手当金を受けているか、または受ける条件を満たしていること

出産手当金の申請方法

退職を予定している方が出産手当金の申請を行う方法も、基本的には前述した内容と大きく変わりません。大まかな流れは、以下のとおりです。

  • 事業主に出産手当金支給申請書を記入してもらう
  • 病院で出産手当金支給申請書を記入してもらう
  • 健康保険組合などに提出する

なお、産前分と産後分をまとめて申請することも可能ですが、それぞれ別々にも申請できます。ただし事業主の証明欄については、毎回証明が必要です。

具体的な手続きの内容は、協会けんぽや健康保険組合の指示に従いましょう。

出産手当金が入金されない場合

出産手当金が入金されない場合は、会社か申請先の健康保険団体へ確認が必要です。以下で、それぞれの内容について解説します。

会社に確認する

出産手当金が入金されない場合、最初に行うべきことは、自分の勤務先に確認することです。以下で、具体的な手順を解説します。

  1. 担当者に連絡する:人事部門や経理部門の担当者に連絡し、出産手当金の申請が正しく行われたかどうかを確認します。
  2. 申請状況の確認:申請が適切に行われ、必要な書類がすべて提出されたかどうかを確認します。
  3. 入金日の確認:出産手当金の入金予定日がいつであるかを確認します。入金日がまだ来ていない場合、それが理由である可能性が高いです。

申請先の健康保険団体に確認する

会社への確認が終わった後、または会社が手続きを行っていない場合は、申請先の健康保険団体に直接問い合わせましょう。具体的な手順は、以下のとおりです。

  1. 健康保険団体に連絡する:健康保険団体のカスタマーサービスに連絡し、出産手当金の申請状況について問い合わせます。
  2. 申請状況の確認:申請が適切に行われ、必要な書類がすべて提出されたかどうかを確認します。
  3. 入金日の確認:出産手当金の入金予定日がいつであるかを確認します。入金日がまだ来ていない場合、それが理由である可能性があります。

以上の手順を踏むことで、出産手当金がなぜ入金されないのか、どのように対処すべきかが明確になるでしょう。しかし、それでも解決しない場合は、労働局や労働基準監督署などの公的機関に相談する必要があります。

出産手当金の入金を早めるには?

出産手当金の申請と受給をスムーズに進めるためには、早めの準備と計画が重要です。ここでは、出産手当金の入金を早める方法を2つご紹介します。

入院前に申請書を準備する

出産手当金の申請は、出産の予定日が近づいたらすぐに始めるのがおすすめです。申請書の準備を早めに始めることで、出産後すぐに申請を行え、手続きの遅延を防げます。

会社に早めにできるか相談する

出産手当金の申請は、通常、出産後に行います。しかし会社によっては、出産前に申請を開始することが可能な場合もあります。そのため出産予定が近づいたら、人事部門や上司に相談してみましょう。会社が申請手続きをサポートしてくれる場合、出産後の手続きがスムーズに進む可能性があります。

ただし、出産後に申請を開始することを要求する会社もあるため、事前に確認しておくことが重要です。また、会社が申請手続きをサポートしてくれる場合でも、自分自身で必要な書類を準備し、申請書を正確に記入しなくてはなりません。

出産手当金・出産育児一時金・育児休業給付金との違い

出産手当金とよく似たものに出産育児一時金と育児休業給付金があります。ここでは、それぞれの違いを確認してみましょう。

出産育児一時金との違い

出産育児一時金とは、健康保険や国民健康保険の被保険者などが出産したときに支給される給付金です。令和5年4月から支給額が42万円から50万円に引き上げられています。

出産手当金は、出産による休業期間中に労働者が収入を得られないことを補償するためのものです。一方、出産育児一時金は、出産に伴う医療費や育児の初期費用を補助するためのものという違いがあります。

また出産手当金は、出産日(出産予定日より後になった場合は出産予定日)以前42日から出産日の翌日以降56日までの休暇期間に対して支給されます。それに対し、出産育児一時金は、出産した時点で一時的に支給される点が違いです。

支給方法については、出産手当金の場合、標準報酬月額の平均を基に算出され、直接労働者に支給されます。出産育児一時金は、医療機関等への直接支払制度や受取代理制度が導入されており、医療機関に直接支払われることもあるのが違いです。

参考:出産育児一時金の支給額・支払方法について|厚生労働省

育児休業給付金との違い

育児休業給付金とは、育児休業期間中に従業員の賃金が低下した場合に、国から支給される給付金です。支給の対象は、産後57日から子どもが1歳になる前日までの期間で、支給率は67%です。

出産手当金の支給の目的が、出産による休業期間中に労働者が収入を得られないことを補償するためのものであることに対し、育児休業給付金は育児休業期間中に労働者が収入を得られないことを補償するためのものである点が違いです。育児休業給付金は、産後57日から子どもが1歳になる前日までの期間に対して支給されます。

また出産手当金は、標準報酬月額の平均を基に算出され、直接労働者に支給されますが、育児休業給付金は休業前の賃金の一部が支給される点が違いです。

産休申請書のテンプレート(無料)

以下より無料のテンプレートをダウンロードしていただけますので、ご活用ください。

速やか、かつ適切に申請して出産手当金を受給しよう

出産手当金とは、出産により仕事を休んでいる期間中に給与がない、または減少している場合に勤務先の健康保険から支給される手当です。受給期間は出産日以前42日間と産後56日間で、計98日間が最大です。

支給要件は、被保険者であること、妊娠4ヶ月以上で出産すること、そして休業中の給与が無給または出産手当金より少ないことです。支給額は平均標準報酬日額の2/3を産休日数分掛けたものです。申請は、会社から申請書を受け取り、必要事項を記入し、健康保険団体に提出することで行います。

本記事の内容を参考に、速やか、かつ適切に申請して出産手当金を受給してもらえれば何よりです。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事