- 更新日 : 2025年10月31日
人事企画とは?仕事内容の具体例から必要なスキル、キャリアパスまで徹底解説
企業の成長を人の側面から牽引する人事企画は、経営戦略を実現させるための重要な役割を担っています。単に人を管理するだけでなく、企業の未来を見据え、どのような人材を獲得し、どう育成し、いかにして活躍してもらうかという人材戦略を策定・実行するプロフェッショナルです。
この記事では、人事企画の具体的な仕事内容から、人事労務との違い、求められるスキルやキャリアパスまで解説します。人事企画という仕事の全体像を掴み、ご自身のキャリアを考える上での参考にしてください。
目次
人事企画とは
人事企画は、企業の経営戦略や事業計画と密接に連携し、人材の側面からその目標達成を後押しする機能を持つ部門です。企業の人に関するあらゆる仕組みや制度を、未来志向で設計・構築・改善していく、まさに人事の司令塔と言える存在です。
人事企画の目的と役割
人事企画の主な目的の一つは、経営目標の達成です。そのために、事業の成長に必要な人材ポートフォリオを定義し、採用、配置、育成、評価、報酬といった一連の人事制度を戦略的に設計・運用する役割を担います。これにより、社員一人ひとりの能力を最大限に引き出し、組織全体のパフォーマンス向上を目指します。企業のビジョンと社員の成長を繋ぐ架け橋となる重要なポジションです。
人事労務との違い
人事企画と人事労務は、人事部門の中でも担当領域が明確に異なります。ただし、中小企業では同じ担当者が兼務するケースも少なくありません。
- 人事企画
人事制度の設計や企画といった戦略的で未来志向の業務を担当します。経営戦略を実現するための仕組み作りに焦点を当てます。 - 人事労務
給与計算や社会保険手続き、勤怠管理といった、定められた制度を正確に運用する役割を担います。法令遵守が重視される管理的側面が強いです。
人事企画の具体的な仕事内容
人事企画の業務は多岐にわたります。ここでは、企業の成長段階や課題に応じて担当する代表的な仕事内容を、具体例を挙げて紹介します。
採用計画の立案
会社の事業計画に合わせて、「いつまでに・どんな人を・何人採用するか」という採用全体の作戦を立てます。例えば、「3年後の目標達成のために、ITの専門家を毎年10人採用する」といった計画を立て、新卒と中途のどちらで採用するか、どんな方法(例:社員紹介、直接スカウト)で探すかを決めます。
人材育成プランの計画
社員のスキルアップや成長をサポートする仕組みを考えます。例えば、将来のリーダー候補を育てるための特別な研修を企画したり、全社員がいつでも学べるインターネット上の学習システムを導入したりします。
人事評価制度の設計・運用
社員の頑張りや成果を公平に評価し、給料や次のステップにつなげるための仕組みを設計します。OKR(目標と成果を管理する手法)のような新しい評価の仕組みを導入したり、会社の価値観に合った行動を評価項目に加えたりします。作った後も、きちんと機能しているか定期的に見直すことも大切な仕事です。
人員配置・異動計画
会社全体の力が最大になるよう、社員の能力や経験、本人の希望を考えながら、最適な人員配置を計画します。例えば、新しい事業を立ち上げる時に、いろいろな部署からピッタリなメンバーを集めて特別チームを作ったりします。将来の幹部を育てるための後継者育成計画も、この仕事の一部です。
社員のエンゲージメント向上
社員がやる気を持って楽しく働ける環境を整え、組織を活性化させることも重要な仕事です。アンケートで社員の満足度や仕事への熱意(エンゲージメント)を調査・分析し、課題を見つけます。その結果をもとに、社内交流イベントを開いたり、上司と部下が定期的に話す1on1ミーティングの制度を取り入れたりします。
人的資本情報の開示対応
最近では、投資家などが会社を評価する際に「人材をどれだけ大切にしているか」を重視するようになりました。そのため、男女の給料の差、女性管理職の割合、社員教育にかけた費用といった人に関する情報を集めて分析し、会社のレポートなどで社外へ公表する仕事も増えています。
人事企画に向いている人の特徴
戦略的な視点が求められる人事企画の仕事には、特有のスキルや素養が必要です。ここでは、人事企画で活躍できる人物像について解説します。
経営視点と論理的思考力を持つ人
人事企画の仕事は、常に会社の経営方針や事業戦略と連動しています。そのため、自社のビジネスモデルや財務状況を理解し、経営者と同じ視点で物事を考える力が求められます。また、人事課題を特定し、データを分析して仮説を立て、具体的な解決策を論理的に導き出す思考力も、施策を推進する上で欠かせません。
コミュニケーション能力が高い人
優れた人事制度を設計しても、それが社内に浸透し、適切に運用されなければ意味がありません。経営層に施策の意図を説明して承認を得たり、現場の社員に制度変更の背景を伝えて理解を求めたりと、様々な立場の人と対話する場面が多くあります。各部署の意見を聞きながら利害を調整し、協力を引き出す力が重要です。
変革を推進するマインドや実行力がある人
人事企画は、時に既存の制度や慣行を大きく変える役割を担います。現状維持を望む声や変化に対する抵抗に直面することもあります。そうした状況でも、目的を見失わずに粘り強く関係者を説得し、計画を最後までやり遂げる実行力が求められます。
人事企画で活かせる資格
人事企画の業務に必須の資格はありません。
労働関連法規の深い知識が制度設計の際に役立つ社会保険労務士や、社員のキャリア開発支援に活かせるキャリアコンサルタントといった資格を保有していると、業務の理解や遂行に役立ちます。
ただし、資格以上に、これまでの実務経験や課題解決能力が重視される傾向が強いです。
人事企画のキャリアパスと将来性
未経験から人事企画として採用されるケースは多くありません。まずは人事部門で給与計算や採用アシスタントといった労務や採用実務を経験するか、事業部門で実績を積み、社内異動でキャリアチェンジを目指すのが一般的です。未経験者向けのポテンシャル採用求人に応募する際は、前職で培った課題解決能力や論理的思考力をアピールすることが重要です。
人事企画としての経験を積んだ後のキャリアは多彩です。一つの道を究めるスペシャリスト、人事部門全体を統括する人事マネージャー、そして経営幹部として人事戦略の最高責任者であるCHRO(Chief Human Resources Officer)を目指す道があります。また、身につけた経営視点や課題解決能力を活かし、経営企画や事業企画、人事コンサルタントへ転身するキャリアも考えられます。
人事企画の仕事について理解できましたか?
人事企画は、企業の重要な資産である人を通して、経営戦略を実現に導く、創造性あふれる仕事です。働き方が多様化し、働く人の価値観も変わる中で、データを見ながら会社と社員の両方に寄り添い、最適な作戦を立てられる人事企画の価値は、これからもますます高まっていくでしょう。
この記事が、人事企画という仕事の面白さを理解し、あなたのキャリアを考えるきっかけになれば嬉しいです。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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