- 更新日 : 2025年1月17日
深夜労働とは?割増率や給与の計算方法、深夜労働が禁止される労働者について解説
22時〜翌5時までの間に労働者に労働させた場合は、25%の割増賃金を支払う義務があります。
本記事では、深夜労働についての定義や深夜労働が禁止されている人、割増賃金の計算方法について解説します。
目次
深夜労働とは?
深夜労働とは何か、概要を解説します。
深夜労働は22時〜翌5時まで
深夜労働とは、労働基準法第37条で規定された労働時間帯であり、22時〜翌5時の時間で労働させた場合は、深夜手当として深夜割増賃金を支払う義務があります。
人は心身の健康を保つために、日中働いて深夜は休息をとるのが望ましいとされています。
しかし業務上、上記の時間帯で働かざるをえない場合もあるため、制限と割増賃金の義務を設けたうえで通常の労働とわけて、「深夜労働」と呼んでいるのです。
深夜労働が禁止・制限される労働者
深夜労働は、心身の健康を保つために、さまざまな制限が設けられています。
交代制などで、従業員に深夜労働をさせる企業は、従業員の年齢や状況をしっかりと把握してから従事させるようにしましょう。
年少者(18歳未満)である労働者
18歳未満の従業員は、割増賃金の有無に関わらず、原則深夜労働が労働基準法第61条で禁止されています。
しかし以下のケースは例外が認められているので、労働が可能です。
- 交代制で勤務する16歳以上の男性
- 交代制による事業で、監督署からの許可を得た午後10時30分までの労働
- 農林水産業、保健衛生業、電話交換業務の従事者
- 非常災害時の時間外・休日労働
上記のケースに当てはまるかどうかわからない場合は、労働基準監督署に確認しましょう。
妊産婦である労働者
妊産婦が請求をした場合においても、深夜労働をさせることはできません。妊産婦とは、妊娠中および産後1年を経過しない女性のことを指します。
なお、女性が深夜労働の免除を求めたことによって、解雇や不利益な扱いをすることは、男女雇用機会均等法9条3項で禁止されています。
そのため、妊産婦が深夜労働の免除を求めた場合は、法律で認められている権利に基づくものであると覚えておきましょう。
深夜労働に含まれる時間、含まれない時間
深夜労働にあたる「22時〜翌5時まで」の間に職場にいたからといって、そのすべての時間に深夜手当として深夜割増賃金がつくわけではありません。これは深夜労働に限った話ではなく労働時間全体に言えることですが、深夜労働においては労働時間であるか否かの判断に迷うケースが多いのも事実です。
以下では深夜労働に多く見られるケース別に、深夜労働に含まれる、含まれない時間の違いを、5つのパターンで解説します。
仮眠の時間
仮眠の時間はトラブル等があった場合に、労働者が起床して対応する必要があるかどうかで、深夜労働に含まれるかが決まります。
たとえば24時間勤務の警備員が仮眠をとった場合は、勤務時間内であるため、なにかあった際には起きて対処が必要です。このような仮眠時間は深夜労働時間に含まれます。
一方で、仮眠時間中のトラブルは別の労働者が対応するシフトになっており、自由時間となる場合は休憩時間であるため深夜労働時間に含まれません。
食事の時間
〇時〜〇時は休憩時間と就業規則に明記しており、その時間内で食事する分には、深夜労働に含まれません。
ただし上職者からの差し入れ等で、休憩時間外で飲食する場合は、所定の賃金に加え深夜手当として深夜割増賃金を支払う必要があります。
待機の時間
会社からの要請による自宅待機の時間は、原則として労働時間にみなされません。そもそも労働時間の定義は、「使用者の指揮命令下に置かれている時間」とされています。
ゆえに、使用者の指揮命令下ではない自宅待機の時間は、労働時間と扱われないのです。
ただし企業が待機場所等を設けて指定場所で待機させる場合は、「場所的拘束を受けている=指揮命令下」にあり労働時間と判断され、所定の賃金に加えて深夜手当として深夜割増賃金が必要なケースもあります。
勤務場所の移動
会社からの指示に従い、深夜時間に移動が必要な場合は、深夜労働時間として扱われます。
出張や任意での移動は、労働者が日常的に出勤するために必要な移動時間と同等にみなされるので、深夜労働に含まれません。
準備・片付け時間
業務の準備や片付けの時間は、就業規則に明記されているかどうかではなく、実態として使用者の指揮命令下にあり、かつ労働者にその遂行が義務付けられている場合は深夜労働時間に含まれます。
一方で、たとえば始業時刻より前に自身のデスクを整理するなど任意でおこなったものに関しては、就業に先行してその遂行を義務付けられているとは言えず、労働時間にならないことが多いでしょう。
あくまでも使用者の指揮命令下において、客観的にみて業務のためにその遂行が義務付けられているかどうかで、深夜労働時間に含まれるかどうかが判断されます。
深夜労働における賃金の計算方法
深夜時間に労働した場合には、本来支払われるべき賃金に加えて深夜手当として1時間あたりの賃金の25%に相当する深夜割増賃金の支払いが必要です。
以下では時給制や日給制、月給制の場合の、それぞれの深夜労働における賃金計算の具体例を解説します。
時給制
時給制で賃金を支払っている場合は、下記の計算方法で深夜労働に対する賃金を算出します。
たとえば時給1,200円の労働者が21時〜翌3時まで働いた場合の、賃金計算方法は次のとおりです。
その日の労働者への深夜労働に対する賃金は、合わせて8,700円となります。
日給制
給与形態が日給制の場合は、先に1時間あたりの賃金を算出してから、前述の時給制と同様の計算方法で割増賃金を計算します。
たとえば、日給9,600円・8時間労働・うち深夜労働が3時間の場合の計算方法は、次のとおりです。
その日の労働に対する賃金は、合わせて10,500円となります。
月給制
月給制は、以下の計算方法で1時間あたりの賃金額を算出します。
基本給÷1年間における1ヶ月の平均所定労働時間=1時間あたりの賃金
たとえば基本給24万円、年間所定休日日数が125日、1日8時間労働の場合における、1時間あたりの賃金は次のとおりです。
(365-125)×8÷12=160時間
24万円÷160時間=1,500円(1時間あたりの賃金)
1時間あたりの賃金が算出されたら、時給制と同様に深夜割増賃金を計算しましょう。
ここでは、その月の所定労働時間のうち深夜労働時間を3時間と仮定して計算します。
月給=24万円
深夜割増賃金=1,500×0.25×3時間=1,125円
当月の深夜割増を含む賃金は、241,125円となります。
深夜労働以外に割増賃金が発生するケース
時間外労働や休日出勤が、深夜労働である22時〜翌5時に重なった場合は、該当する割増賃金をすべて支払う必要があるので、注意が必要です。
以下では、具体的な例を踏まえて解説します。
時間外労働と深夜労働が重なる場合
深夜労働時間が時間外労働にあたる場合は、時間外労働の割増賃金25%も加算になるので、実質50%の割増賃金を支払う必要があります。
たとえば時給1,200円で通常21時〜翌3時までの勤務に対して、2時間の時間外労働が発生し、結果21時〜翌5時まで働いた場合は、次のように計算します。
時給=1,200円
深夜割増賃金=1,200円×0.25×7時間=2,100円
時間外割増賃金=1,200円×0.25×2時間=600円
賃金合計=(1,200円×8時間)+2,100円+600円=12,300円
上記の計算から、深夜割増賃金と時間外割増賃金を含めて、12,300円の賃金を支払わなければいけません。
休日出勤と深夜労働が重なる場合
法定外休日出勤の場合は時間外労働とみなされるため25%割増、法定休日出勤の場合は35%割増を、深夜割増賃金のほかに支払う必要があります。
法定外休日出勤とは、労働基準法で定められた休日以外の休日出勤を指します。一方で法定休日出勤とは、「週に1回以上、または4週を通じて4日以上」と、労働基準法で定められている休日に出勤することです。
法定外休日割増賃金=1時間あたりの賃金×0.25
法定休日出勤=1時間あたりの賃金×0.35
休日出勤と深夜労働が重なった場合は前述のとおりそれぞれを計算して、「通常の賃金+深夜割増賃金+休日割増賃金(時間外割増賃金)」の3つを合わせた賃金額を支払いましょう。
深夜労働における割増賃金の注意点
本章では、深夜労働における割増賃金の注意点を2つ解説します。
管理監督者にも深夜割増の支払いが必要
管理監督者は、労働時間や休日の規定が適用されないため、時間外・休日労働に対する割増賃金は発生しませんが、深夜労働の規定は適用されるため深夜割増賃金が発生します。
そもそも管理監督者の定義とは、「労働条件の決定その他労務管理について、経営者と一体的な立場にある者」と労働基準法で定められており、役職名ではなく勤務の実態で判断されます。
このことから、労働時間の拘束を受けない立場であるというから、時間外割増賃金や休日割増賃金は支払われないのが一般的です。
ただし深夜の労働だけは、生活リズムが不規則になったり、寝不足による労災のリスクが高まったりすることから、通常の労働者と同様に25%の割増賃金の支払が必要です。
管理監督者だからすべての割増賃金が対象外だと勘違いしていると、労働基準法違反になってしまうので、注意しましょう。
深夜労働と時間外労働は区別される
22時~翌5時の間に時間外労働をした場合は、深夜労働と時間外労働を区別して、それぞれの割増賃金を支払う必要があります。
深夜労働における手当:25%割増
時間外労働における手当:25%割増
労働基準法で、1日8時間週に40時間以上の勤務は時間外手当を、22時~翌5時の時間帯で勤務した場合は、深夜労働として割増賃金を支払う義務があるため、必ず2つは区別して計算するようにしましょう。
深夜労働について正しく知ろう
深夜労働は、割増賃金を支払うから大丈夫だろう、ではなく、労働基準法で定められている「深夜労働をさせてはいけない人」がいる点に留意が必要です。
深夜労働が制限されていない労働者に対しては、25%割増での賃金支払い義務があり、深夜労働に加えて時間外労働となった場合は、それぞれを区別して計算しなくてはいけません。
正しい賃金計算ができていないと、未払い賃金が発生し労働者とのトラブルになりかねないので、深夜労働についてその計算方法と併せて正しく把握して賃金計算をおこないましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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