• 作成日 : 2022年8月19日

2022年4月に年金手帳が廃止 – 厚生年金と国民年金で変わること

2022年3月まで、厚生年金や国民年金に加入すると「年金手帳」が交付されていました。
厚生年金手帳・国民年金手帳のような区別はなく、どちらも共通の手帳です。年金関連情報の管理に必ず用いられていましたが、4月に廃止されて新規交付をされなくなりました。この記事では年金手帳について、概要と廃止による影響を中心に解説します。

年金手帳とは?

年金手帳は国民年金・厚生年金など公的年金制度への加入者に交付されてきた手帳で、加入者ごとの基礎年金番号や加入記録などが記載されています。自身の加入記録にひもづけられる書類でもあります。そのほかに身分証明書として用いられることもあるため、紛失しないよう厳重な保管が必要です。

年金手帳は、公的年金制度に加入していても必ず交付されているわけではありません。例えば、公務員などが加入する共済組合では年金手帳の交付が行われず、加入者には基礎年金番号通知書が交付されます。交付を受けた年代によっても色が変わるため、家族全員異なる色の年金手帳を持っているケースも起こり得ます。

以下では年金手帳について、厚生年金・国民年金の違いによる差異が生じるか否かを解説します。

厚生年金と国民年金で年金手帳は違う?

年金手帳には主に色の違いがみられますが、色の違いは交付された年代により生じるものです。厚生年金・国民年金のどちらに加入しても、同じ年代であれば同じ色の年金手帳が交付されるため、年金の種類で手帳に違いが生じることはありません。

ただ、古い年代では厚生年金・国民年金で異なる書類を交付されていたことがありました。1974年10月までは国民年金のみ「年金手帳」と呼ばれる書類が交付されており、厚生年金は年金手帳でなく保険証が交付されていました。厚生年金の保険証は年金手帳よりも開始年代が古く、年金手帳の1960年10月に対して保険証は1954年5月から交付されています。その後1974年11月に両保険の書類が統合され、共通の年金手帳が交付されるようになっています。国民年金のみの年金手帳は色がおおよそ5年間隔で更新されており、茶色・水色・薄だいだい色などが用いられました。

また、青い年金手帳のみ、年代によって発行者名にも違いがあります。青い年金手帳は1997年1月から発行されていたもので、2009年12月までに交付されたものは社会保険庁からの発行です。一方、2010年1月以降に交付されたものは日本年金機構からの発行になっています。

参考:基礎年金番号・年金手帳について|日本年金機構

2022年4月の年金手帳廃止

年金手帳は1950~1960年代から導入されて広く用いられていましたが、2022年3月までを最後に廃止されました。これらの動きは、主にマイナンバー制度の施行が理由です。4月以降は年金手帳が積極的に用いられず、代わりに基礎年金番号通知書やマイナンバーが多用されるようになっています。

年金手帳の廃止により保険加入者や勤務先の会社が手帳を保管しておく必要はなくなります。基礎年金番号・マイナンバーなどのみを扱えるため、従来と比べてシステム的な管理がより簡単に行えます。会社が管理を効率良く行えれば、保険加入者自身も恩恵を受けられるのです。

参考:基礎年金番号・年金手帳について|日本年金機構

年金手帳が廃止される理由

年金手帳廃止の大きな理由としてマイナンバー制度の施行が挙げられます。マイナンバーは国民一人ひとりに割り振られた番号で、社会保障・税・災害対策に必要な事務手続きを対象に使用されます。行政においてスムーズかつ簡便な手続きを実現して、国民生活の利便性向上にもつながっています。

マイナンバーによって各国民の個人情報を一括でシステム管理できるようになったため、年金関連の情報も従来と比べて容易な管理が可能になりました。その結果、年金管理のために専用の手帳を発行する必要もなくなっています。

マイナンバーとの連携システムによって被保険者の年金加入記録を閲覧できるため、記録閲覧の際に年金手帳の提出を求める必要もありません。年金手帳がなくとも年金に関する情報の取り扱いをオンラインで行えるようになり、年金を扱ううえで年金手帳が必要ではなくなっています。年金手帳が不要になったため、コスト削減の意味もあり廃止に至りました。

年金手帳は廃止されましたが、年金手帳に記載されている基礎年金番号は引き続き利用されます。また、すでに交付されている年金手帳は引き続き使用可能です。一方で新規の発行がなされないため、紛失や破損などにより再発行を希望する場合、新しい年金手帳は受け取れません。

年金手帳の代わりに基礎年金番号が届く

年金手帳の廃止以降は、年金加入時・再発行時などに基礎年金番号通知書が送付されるようになりました。基礎年金番号は年金加入者全員に割り振られている番号で、年金に関する各種手続きの際に求められます。「就職して厚生年金・共済組合に加入する」「退職して国民年金に加入する」「名前・住所が変わる」といったケースに必要になります。

昔は国民年金・厚生年金・共済組合で独自の番号を使用していましたが、利便性向上のために統合されました。「年金に新しく加入する」「年金手帳を紛失・破損した」「共済組合以外の保険に一度も加入していない」といった場合に、基礎年金番号通知書が交付されます。

年金手帳が廃止される前まで、基礎年金番号は年金手帳内に記載されていました。年金手帳廃止後は基礎年金番号通知書を確認して基礎年金番号を調べられるほか、国民年金保険料の納付書や年金証書などを使っても調べられます。

もし基礎年金番号通知書を紛失してしまった場合は、加入している年金ごとに異なる方法で再発行しましょう。厚生年金ならば勤務先の社会保険担当者に、国民年金ならば市町村役場の国民年金係に申請します。共済組合の場合は社会保険業務センターに連絡して、再交付申請用紙を受け取りましょう。

年金手帳は会社に提出する必要がなくなる?

年金手帳の廃止が進むと、年金手帳を会社に預けたままにする会社員の減少が予測されます。なぜなら年金手帳は個人よりも会社が多く使用するもので、なおかつ今後は会社でも使用頻度が低下するとみられるためです。実際、年金手帳を交付されたとしても、本人の使用機会はほぼありません。一方、各種手続きを行う会社は、基礎年金番号が記載された年金手帳を多く使用します。会社でしか使用されない道具であれば、普段は会社に預けておくと合理的です。会社側は普段の手続き業務を進めやすくなり、会社員側は会社が預かってくれるため紛失のリスクも防げます。

しかし、これら手続きのために年金手帳そのものは必要ありません。基礎年金番号がわかれば充分であるため、年金手帳を使用せず番号のコピーなどで済ませるケースもあります。また、近年では基礎年金番号に代わってマイナンバーを使用する例も増えています。番号のコピーやマイナンバーなどにより、会社で年金手帳を使用する機会が減少するようになりました。

今後は年金手帳の廃止により手帳を持っていない会社員が増加するため、さらに年金手帳を使用した手続きが行われづらくなるとみられます。会社の手続きで年金手帳を使用しないならば、すでに手帳を持っていても会社に提出する機会もありません。将来的には年金手帳を持っていない、あるいは持っていても会社には提出しない形が一般的になるでしょう。

年金手帳廃止後に必要なことを把握しよう

この記事では、年金手帳の概要や廃止による影響などを解説しました。

年金手帳は厚生年金・国民年金を問わず必ず利用されていた書類です。廃止前から所有していた方が多いため、当面は使用されるとみられます。一方、廃止理由の一端が管理業務の簡便化にあるため、早期に新体制へと移行できればスムーズな管理が行われ、保険加入者にもプラスの影響が得られます。

年金手帳を持っている場合は大事に保管しつつ、より重要な情報である基礎年金番号とマイナンバーを適切に活用しましょう。長らく年金手帳を会社に預けたままにしていた場合、新たに原本を自分で持っておく必要が生じるため特に注意が必要です。

問題なく年金の支払い・受け取りを続けるために、廃止前の仕様と変わった点や変わらない点について詳しく把握しておきましょう。

よくある質問

年金手帳とはなんですか?

2022年3月まで年金加入者に交付されていた冊子型の書類で、加入者ごとの年金に関する情報が記載されていました。詳しくはこちらをご覧ください。

年金手帳はなぜ廃止されるのですか?

マイナンバー制度の施行により、年金手帳がなくとも情報管理をスムーズに行えるようになった点が大きな理由です。詳しくはこちらをご覧ください。


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