• 作成日 : 2022年8月26日

2022年10月から適用拡大!短時間労働者の社会保険について

2022年10月から適用拡大!短時間労働者の社会保険について

バイトなどの短時間労働者であっても、労働時間などの要件を満たす場合には社会保険への加入義務が生じます。今回は、短時間労働者が社会保険の対象となる条件や、2022年10月に予定されている適用拡大の詳細について解説します。

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社会保険とは?

社会保険とは、労働者が病気やケガによって仕事ができなくなる場合に備えて用意されている、公的な保険制度です。法人は基本的に社会保険への加入を義務付けられており、そこで雇用されている労働者も原則、被保険者として扱われます。

社会保険は以下の5つの保険によって構成されていますが、今回の記事で「社会保険」という言葉を用いる際には、主にこのうちの「医療保険(健康保険)」と「厚生年金保険」(40歳以上の従業員の場合には「介護保険」も含める)を指すものとします。

  1. 医療保険(健康保険)
  2. 厚生年金保険
  3. 介護保険
  4. 雇用保険
  5. 労災保険
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短時間労働者の社会保険加入条件について

社会保険に加入するのは、正社員として働く労働者だけではありません。パートやアルバイトといった雇用形態であっても、原則として、週の所定労働時間が正社員の4分の3以上(一般的には週30時間以上)、契約期間が2か月以上の両方を満たす場合は社会保険の加入対象になります。また、前述した要件に当てはまらなくても、以下の5つの要件を全て満たす場合にも、社会保険の加入対象となります。

特定適用事業所であること

1つ目の要件は、特定適用事業所で雇用されていることです。

特定適用事業所とは、被保険者の数が常時501人以上の事業所のことです。「常時」とは、直近12ヶ月のうち6ヶ月以上の従業員数が501人以上となる場合を指します。

労働者が1週間の所定労働20時間以上であること

2つ目の要件は、1週間の所定労働時間が20時間を超えていることです。

なお、出勤のシフトなどによって週ごとの労働時間が変動する場合には、後述する基準によって判断します。

雇用期間が1年以上見込まれる

3つ目の要件は、雇用期間が1年以上になると見込まれていることです。

雇用期間が定められていない場合や、雇用期間が1年未満でも契約の更新が見込まれる場合には、1年以上という条件を満たしている扱いになります。

賃金が月額88,000円以上

4つ目の要件は、1ヶ月の賃金が88,000円以上であることです。

ここでの賃金は、週休、日給、時間給を月額換算したものに、各種手当を足した額を指します。以下に挙げるような賃金に関しては、88,000円以上という要件には含まれません。

  • 賞与や結婚手当など、臨時または期間ごとに支払われる賃金
  • 時間外労働や休日労働、深夜労働に対して支払われる賃金
  • その他、皆勤手当や通勤手当などの賃金

学生でない

5つ目の要件は、生徒または学生でないことです。

大学、高等学校、専修大学などに在学している労働者は対象外となります。ただし、学生であっても以下に該当する場合は、社会保険の被保険者として扱われます。

  • 卒業見込証明書を有しており、卒業前に就職し、卒業後も同じ事業所で働き続ける予定がある
  • 休学中である
  • 大学の夜間学部、または、定時制の高等学校に在学している

参考:日本年金機構│適用事業所と被保険者

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週20時間以上の計算方法

特定適用事業所に雇用されているパート・アルバイト(以下、短時間労働者)が社会保険に加入する要件の一つに、「所定労働時間が週20時間以上である」というものがあります。ここでは、所定労働時間の計算方法について詳細を解説します。

週20時間以上を超えたり超えなかったりする場合はどうなる?

所定労働時間とは、就業規則や雇用契約書において定められている、労働者が通常の週に働く時間のことです。しかし、シフト制で勤務している労働者は、週の労働時間が20時間以上を超えたり超えなかったりする場合もあります。その際には、以下の基準に沿って週ごとの所定労働時間を算定します。

  • 1年単位で所定労働時間が定められている場合

→1年間の所定労働時間を52で割って算定

  • 1ヶ月単位で所定労働時間が定められている場合

→1ヶ月の所定労働時間に12を掛け、52で割って算定

  • 1週間の所定労働時間が変動する場合

→平均によって算定

1年を週に直すと、52週となります。そのため1年間の所定労働時間を基準にする場合には、52で割ることで週ごとの所定労働時間が算定できます。1年間の所定労働時間が1,040時間(社会保険の加入要件である週20時間×52週)以上の労働者は、社会保険の対象です。

1ヶ月の所定労働時間を基準にする場合には、12を掛けて1年間の所定労働時間に直し、その後に52で割って週ごとの所定労働時間を算定します。1ヶ月の所定労働時間が87時間(厳密には86時間40分)以上になると、要件を満たすことになります。

参考:日本年金機構│短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大

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2022年10月からの短時間労働者における社会保険適用拡大について

短時間労働者における社会保険の適用範囲は、2022年10月と2024年10月の2回に分けて拡大されることが決まっています。ここでは、変更される要件について解説します。

まず2022年10月の適用拡大では、現行の制度から以下の2点が変更となります。

  1. 特定適用事業所の要件が「被保険者が常時501人以上」から「常時101人以上」に
  2. 雇用期間の要件が「1年以上見込まれること」から「2ヶ月以上見込まれること」に

特定適用事業所となる事業所は現行よりも小規模になり、雇用期間の要件が正社員など通常の被保険者と同じに変更になるというのが変更点です。

裏を返せば、被保険者が常時100人以下の事業所であれば、これまで通り、週の所定労働時間が正社員の4分の3以上(一般的には週30時間以上)、契約期間が2ヶ月以上の両方を満たす場合に社会保険に加入させれば良いということになります。

2024年10月からの短時間労働者における社会保険適用拡大について

2024年10月の適用拡大では、特定適用事業所の要件が「常時101人以上」から「常時51人以上」へとさらに変更されます。なお、その他の要件については、変更点はありません。

裏を返せば、被保険者が常時50人以下の事業所であれば、これまで通り、週の所定労働時間が正社員の4分の3以上(一般的には週30時間以上)、契約期間が2ヶ月以上の両方を満たす場合に社会保険に加入させれば良いということになります。

短時間労働者の社会保険適用拡大にともない、企業がすべきこと

来たる短時間労働者における社会保険の適用拡大に向けて、企業はどのような対策を取るべきなのでしょうか。現時点で押さえておくべきポイントを3つ解説します。

新たに被保険者になる労働者の把握

社会保険の適用拡大によって、これまでは被保険者となっていなかった短時間労働者にも加入義務が生じる可能性があります。

特定適用事業所、または2022年10月以降に特定適用事業所となる事業所においては、前述した5つの要件を満たす労働者を把握しておきましょう。具体的には、現状は社会保険の加入要件を満たしていない週の所定労働時間が20時間から29時間の人を抽出して全ての要件を満たすか確認していきます。

従業員への説明を行う

適用拡大によって新たに社会保険に加入する労働者に対して、周知を行うことも重要です。社会保険の保険料を給与から天引きする旨を伝えたり、社会保険そのものについての説明をしたり必要があります。

また、配偶者の扶養に入っている労働者の場合には、社会保険に加入することで扶養から外れることも説明しておきましょう。

資格取得届の準備

労働者が社会保険に加入する際には、企業が「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」を作成し、日本年金機構へ提出する必要があります。特に適用拡大の対象となる事業所では、あらかじめ資格取得届を作成しておきたいところです。

社会保険の制度を押さえて、短時間労働者が安心して働ける環境づくりを

パートやアルバイトなどの短時間労働者でも安心して働ける環境をつくるうえで、社会保険は必要不可欠な制度です。手続きにかかる手間や保険料といった負担はあるものの、従業員目線での保障が充実されることによる離職率の低下など、企業側のメリットにもつながると考えられます。

現行の制度や2022年10月、2024年10月からの適用拡大の内容を把握し、余裕を持って準備を進めましょう。

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よくある質問

短時間労働者の社会保険加入義務について教えてください

1週間の所定労働時間や雇用期間などの要件を満たしている場合には、短時間労働者であっても社会保険に加入する義務があります。詳しくはこちらをご覧ください。

労働時間が週20時間以上を超えたり超えなかったりした場合、社会保険の加入対象になりますか

1年単位、1ヶ月単位といった基準で見たときの所定労働時間が一定以上の労働者は、社会保険の加入対象になります。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:板羽 愛由実(社労士法人ワイエムピー 社会保険労務士・行政書士)

神奈川県出身。21歳の時に長男を出産。以後アルバイトや正社員、派遣社員と様々な働き方で生計を立てるも法が適切に認知されていない、理解されていない、運用されていないことにより苦い思いを経験。悔しさを糧に一念発起し、行政書士試験合格を経て社会保険労務士試験に合格。「良い組織をつくる」をモットーに日々業務に従事している。

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