• 作成日 : 2022年3月18日

青色事業専従者に年末調整は必要?

青色事業専従者に年末調整は必要?

個人事業者でも従業員がいる場合、年末調整によって源泉徴収した税額の年間の合計額と年税額を一致させる精算をしなければなりません。家族を従業員として雇用していると、青色事業専従者として扱われることがありますが、ほかの従業員と同じように年末調整は必要なのでしょうか。今回は、家族が青色事業専従者とされる要件と、年末調整を行うことによるメリットや手続・方法について解説していきます。

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そもそも青色事業専従者とは?

税法上、個人事業主の事業に従事する一定の要件を満たした親族のことを「専従者」と呼んでいます。本来、所得税には「親族に対する賃金給与は原則として経費に計上できない」という考え方があります。家族で所得を分散すれば、不当な租税回避ができるからです。

とはいえ、専従者である家族に対して一切の経費を認めないというのも実態から乖離し、適切な課税ができないことになります。そこで、確定申告では、専従者について青色申告白色申告に分け、前者には「専従者給与」、後者には「専従者控除」という仕組みを設けています。

なお、青色申告については事前に納税先の税務署に申請し、承認を受けていることが必要です。青色申告の専従者給与では、親族に対して実際に支払った給与の額について経費に参入できます。しかし、白色申告の専従者控除では、専従者への給与は経費にはできず、定額控除だけが認められています。節税効果としては、青色事業専従者給与のほうが大きいといえるでしょう。

では、青色事業専従者とは、どのような専従者が該当するのでしょうか。次の要件を満たしていることが必要です。

  1. 青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること
  2. その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること
  3. その年を通じて6ヵ月を超える期間(一定の場合には事業に従事することができる期間の2分の1を超える期間)、事業に専ら従事していること

上記の要件は、白色申告の専従者控除の対象となる専従者もほぼ同じですが、節税効果の大きい青色事業専従者とするには、後述するように所定の手続をしなければなりません。

青色事業専従者については、以下の記事も参考にしてください。

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青色事業専従者にも年末調整は必要

個人事業者でも従業員がいる場合、年末調整しなければなりません。パートやアルバイトであっても、一定期間定期的に雇用するときは税法上は正社員と同じ扱いです。

では、青色事業専従者はどうなのでしょうか。青色事業専従者は、すでにみたように一定の要件を満たした親族ですが、結論からいえば給与所得者である以上、年末調整が必要となります。

脱サラして、これから個人事業を開始しようとする方は、今まで給与所得者として、勤務先で年末調整をしてもらう立場だったため、年末調整がどのようなものかよくわからないということもあると思われます。

年末調整は、会社が従業員に支払う毎月の給与から所得税などの租税を天引きした1年間の徴収額と実際の納付額(年調年税額)の過不足を年末に計算し、清算する手続です。

事業主は、源泉徴収をした所得税などの合計額が年調年税額よりも多い場合には、その差額の税額を過納となった従業員の各人ごとに還付します。

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青色事業専従者の年末調整をするメリットは?

前述のように青色事業専従者給与は、親族に対して実際に支払った給与の額について経費に参入できます。また、必要経費は、労働の対価として適正な金額であれば、上限はありません。

もちろん、あまりにも高額な給与を支払っている場合や、事業主本人の収入と比較して相対的に高額であるなど適正さが問題となる場合には経費性が否定されることになるでしょう。

いずれにしても、青色事業専従者給与は、親族である専従者に支給した額だけ個人事業主としての所得の圧縮が可能となるため、青色申告する大きなメリットであることは間違いありません。

ただし、青色事業専従者については、確定申告では配偶者控除扶養控除が使えなくなります。配偶者控除は、最大で38万円です。したがって、それよりも低い金額を専従者給与とすると節税ではマイナスとなってしまいます。節税効果を考えるのであれば、配偶者に支払う青色事業専従者給与は年間38万円以上にする必要があります。

専従者の立場で考えれば、支払われた給与については所得税などの納税義務が生じます。所得税は年収103万円未満の場合には非課税ですが、実際に課税対象となるかは、1年経たなければわからないため、月給が88,000円以上であれば、事業主には従業員の給与から所得税などを天引きする源泉徴収を行うことになっています。これについて年末調整を行わなければなりません。

節税効果は、個人事業主と家族である専従者のそれぞれについて個別に考えるのではなく、世帯単位で考える必要があります。

整理すると、ポイントは次のような点になります。

  • 青色事業専従者給与は年間38万円以上にすること
  • 月給が88,000円以上であれば、年末調整によって所得税などの加納分は還付されること
  • 青色事業専従者給与は必要経費であるため、高額になればその分、事業主の収入が少なくなること
  • 所得税の税率は所得が高いほど高い超過累進課税となっていること

これらからわかることは、青色事業専従者給与を源泉徴収の対象となる適正な金額とすれば、事業主の収入が下がることで税率も低くなり、一方、青色事業専従者も年末調整によって還付が受けられるということです。

つまり、青色事業専従者給与とすることによって、個人事業主の世帯全体として節税効果が大きいということになります。

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青色事業専従者が年末調整を行うための手続

青色事業専従者も還付を受け、節税効果を得るには年末調整をしなければならないわけですが、どのような手続が必要となるのか、ポイントについて紹介していきます。

税務署に「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出する

すでに述べたように年末調整の対象となる青色事業専従者とするには、所定の手続をしなければなりません。納税地の税務署への「青色事業専従者給与に関する届出書」の提出です。

まず、この手続によって事業に従事する家族を青色事業専従者とし、給与を必要経費に算入できるようにします。届出書に記載した内容とは別に給与規程を定めているときは、その写しも添付することになります。

提出期限は、「専従者給与」を支払う年の3月15日までです。その年の1月16日以後、開業した場合や、新たに専従者がいることになった場合については、その日から2ヵ月以内となっています。提出期限が土・日曜日・祝日などに当たる場合は、これらの日の翌日が期限となります。

こうした手続をしたうえで、給与を支払い、ほかの従業員と同様に年末調整を行います。

青色事業専従者本人が確定申告を行う

年末調整は事業主が行う手続であり、従業員がすることはありません。青色事業専従者も同様です。しかし、年末調整で所得控除できないケースもあり、この場合は青色事業専従者本人が確定申告しなければなりません。

具体的にどのようなケースがあるのでしょうか。

まず、給与以外の所得の合計額が20万円を超える場合が挙げられます。例えば、FX、YouTube、ネットビジネスなどで収入があるようなケースです。いずれも副業として行われていることは少なくないでしょう。

また、最近人気のあるふるさと納税も挙げることができます。ふるさと納税については、そもそも年末調整で税額控除はできません。

青色事業専従者にも所得税や住民税が課税されていれば、夫婦別に寄付の申込は可能であり、1年間に行ったふるさと納税は、すべて翌年に確定申告で還付を受けることができます。

年末調整については、以下の記事も参考にしてください。

事業主本人の収入と青色事業専従者の給与を全体で考えることが大切

青色事業専従者について、青色申告制度そのものも含め、その要件やメリット、手続について解説してきました。節税効果が大きいことは間違いありませんが、事業主本人の収入と青色事業専従者給与の全体で考えていくことが大切です。節税効果を最大限に受けるために、金額について確認し、よく考慮したうえで決めましましょう。

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よくある質問

青色事業専従者とは何ですか?

一定の要件を満たした親族の従業員です。詳しくはこちらをご覧ください。

青色事業専従者にも年末調整が必要ですか?

ほかの従業員と同様に必要です。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:坪 義生(社会保険労務士)

じんじ労務経営研究所代表(社会保険労務士登録)、労働保険事務組合 鎌ヶ谷経営労務管理協会会長、清和大学法学部非常勤講師、「月刊人事マネジメント」(㈱ビジネスパブリッシング)取材記者。社会保険診療報酬支払基金、衆議院議員秘書、㈱矢野経済研究所、等を経て、91年、じんじ労務経営研究所を開設。同年より、企業のトップ・人事担当者を中心に人事制度を取材・執筆するほか、中小企業の労働社会保険業務、自治体管理職研修の講師など広範に活動。著書に『社会保険・労働保険の実務 疑問解決マニュアル』(三修社)、『管理者のための労務管理のしくみと実務マニュアル』(三修社)、『リーダー部課長のための最新ビジネス法律常識ハンドブック』(日本実業出版社、共著)などがある。

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