• 更新日 : 2024年11月27日

労働条件通知書とは?雇用契約書・労働契約書の比較とテンプレートを紹介

会社で人を雇う際、必要となるのが労働条件通知書です。労働条件通知ではなく、雇用契約書または労働契約書を取り交わす場合もあるようですが、問題はないのでしょうか?
この記事は、労働条件通知書と雇用契約書(労働契約書)の違いを確認し、労働条件通知書の項目についてテンプレートを参照しながら解説しています。

労働条件通知書とは?

会社が新しく労働者と雇用契約を結ぶ場合に必要となるのが「労働条件通知書」です。

労働基準法は、原則、わが国で労働者として働いている人の場合、勤めている会社やその就業形態等にかかわらず、すべての人に適用される法律です。

その労働基準法第15条第1項には、
「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。」
とあります。

引用:労働基準法 | e-Gov法令検索

そして、労働基準法施行規則第5条④には、
「労働者に対する前項に規定する事項が明らかとなる書面の交付とする」
とあり、労働者からの希望によりメールやFAXによる交付も認められています。

引用:労働基準法施行規則(◆昭和22年08月30日厚生省令第23号)

したがって、労働条件通知書とは「労働契約の締結に際して、労働者に対し労働条件を書面で明示しなければならない」とする法律の下に作成されるものです。
労働条件通知書は、会社が労働者として雇う人すべてに交付する必要があります。

労働条件を定めたものに就業規則がありますが、これは社内のすべての労働者に対し統一的に定めた就業上のルールであり、労働条件通知書に記載される内容は個々の労働者ごとに違いがあるため、個別に発行することとされています。

労働条件通知書と雇用契約書の違い

会社によっては、労働条件通知書ではなく、「雇用契約書(労働契約書とも呼ばれます)」を会社と労働者の間で締結する場合があります。
基本的に、記載される内容には労働条件通知書も雇用契約書も違いはありませんが、根拠法などの取扱いが異なります。

2つの違いを見てみましょう。

労働条件通知書雇用契約書
根拠法労働基準法※民法第623条労働契約法第4条※※※
書面交付※※義務任意できるだけ書面により確認する
交付形態一方的
(事業主→労働者)
双方の合意
(事業主⇔労働者)

※労働基準法のほか、パートタイム労働法、労働者派遣法にも労働条件の明示が定められています。
※※書面には、メールやFAXなども含まれます。
※※※雇用契約書と労働契約書はほぼ同義ですが、根拠となる法律が異なります。

つまり、労働条件通知書は会社から労働者に一方的に交付されるものであるのに対し、雇用契約書は会社と労働者の間で雇用契約について合意がなされたことを証明するものとなります。

上の表を見ると、雇用契約書を交付するのは義務ではなく、労働条件通知書が義務となっているため、労働条件通知書の交付で法律上は問題がないことになります。
しかしながら、雇用に関するトラブル回避の観点から、相互に雇用契約書を取り交わすケースが多く見られます。

労働条件通知書の詳細

労働条件通知書は、会社が労働者に対して、契約期間、就業場所、業務内容、労働時間や賃金などの労働条件を「明示」するものです。
ここでは、労働条件通知書の目的等を解説した後、働き方の多様化による種々の労働形態について詳しく説明します。

労働条件通知書の目的と必要性

労働条件通知書交付によって労働者への労働条件が明示されます。
労働条件を明示は、不利な条件から労働者を保護することが目的がといえます。

労働者の労働条件の最低基準を定める「労働基準法」「パートタイム・有期雇用労働法」「労働者派遣法」に、「労働条件を明示しなければならない」と通知を義務化することにより、労働者の権利を保護しています。

労働条件通知書の対象者

労働条件通知書の対象となる者は、一般の常用労働者だけではありません。
現在はさまざまな雇用形態がありますが、これらすべての者が労働条件通知書の交付対象となります。

有期契約労働者

有期契約労働者とは、正社員とは異なり、労働契約にあらかじめ雇用期間が定められている労働者です。
期間については、予め労働者と会社の合意により契約期間を定め、契約期間の満了により、労働契約は自動的に終了します。

短時間労働者

短時間労働者とは、パートタイム労働者ともいい、一週間の労働時間が同じ会社の常用労働者の一週間の所定労働時間に比べて短い労働者のことをいいます。
パートタイム、アルバイト、嘱託など、いくつかの呼び方がありますが、上記要件に当てはまる労働者であれば、短時間労働者となります。

派遣労働者

派遣労働者とは、労働者が派遣元の会社と労働契約を結び、その派遣元が労働者派遣契約を結んでいる派遣先の会社に労働者を派遣するという形態で働く労働者です。
この場合、労働者に賃金を支払うのは派遣元の会社であり、労働者に指揮命令をするのは派遣先の会社になります。
派遣労働者に労働条件通知書を交付するのは派遣元の会社です。

労働条件通知書の書き方と記入例・テンプレート

まず、労働条件通知書の書式を確認しましょう。厚生労働省のひな型は次のとおりとなっています。非常に項目が多くイメージでは詳細が見づらいので、以下よりダウンロードしたものを見ながら確認するとわかりやすいです。

主要様式ダウンロードコーナー|厚生労働省 
なお、労働条件通知書は、サイト内で「労働条件通知書」を検索ください。以下の説明に使用したものは、【一般労働者用】 常用、有期雇用型 です。

労働条件通知書【一般労働者用】
引用:主要様式ダウンロードコーナー|厚生労働省

また、マネーフォワード クラウド給与では社労士監修の「労働条件通知書」のテンプレートを用意しています。無料で利用可能ですので、以下のページからダウンロードしてご利用ください。

労働契約期間

労働契約期間とは、労働基準法に定める範囲内とします。
期間の定めありとした場合には、契約の更新の有無や更新の判断の基準を明示します。
労働条件通知書_労働契約期間の記載

就業場所

就業場所については、雇入れ直後の場所で問題ありません。
将来的な就業場所などを網羅的に明示することでも差し支えないとされています。

業務内容

就業場所と同様、雇入れ直後の業務内容で問題ありません。
将来的に従事させる業務を併せて網羅的に明示することでも差し支えないとされています。

就業時間

始業、終業の時刻、休憩時間、所定時間外労働の有無について明示します。
変更労働時間制、フレックスタイム制、裁量労働制等の適用があるときは、明示します。

休日、休暇

所定休日について、曜日又は日を特定し、明示します。
休暇の欄については、年次有給休暇は6ヶ月間勤続勤務し、かつ、その間の出勤率が8割以上である場合に付与するものとし、その付与日数を明示します。

賃金

基本給等につき、金額を具体的に明示します。
賃金等級等が別途就業規則に規定されている場合には、等級等の明示で問題ありません。

退職に関する事項

退職の事由及び手続き、解雇の事由等を具体的に明示します。

以上の項目うち、就業時間、休日・休暇などについて明示項目が多くなる場合には、所定時間外労働の有無以外の事項については、就業規則の条項を明示する方法でもよいとされます。

パート・アルバイト、有期雇用労働者に対する労働条件の明示事項

労働条件の明示について、パートやアルバイト等の短時間労働者や有期雇用労働者については、さらに次の事項について明示項目が追加されます。

 

  • 昇給の有無
  • 退職手当の有無
  • 賞与の有無
  • 相談窓口

 

 

相談窓口とは、パートタイムや有期雇用労働者の雇用の改善等に関する相談窓口のことで、労働者からの相談に応じることができる窓口等であれば、名称を問うものでなく、組織であるか個人であるかを問いません。

労働条件通知書の発行方法

労働条件通知書の発行にあたっては、書式が決まっているものではありませんが、明示しなければならない項目が決められています。上記モデル書式を参考にして作成しますが、次の点に注意します。

絶対的明示事項 必ず明示すべき7項目

  1. 労働契約期間
  2. 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準
  3. 就業する場所、従事する業務に関すること
  4. 始業・終業時刻、休憩、休日などに関すること
  5. 賃金の決定方法、支払時期などに関すること
  6. 退職に関すること(解雇の事由を含む)
  7. ※昇給に関すること

※昇給に関する事項は口頭でもよいとされますが、必ず明示が必要です。

相対的明示事項 会社に定めがある場合には明示すべき項目

  • 退職手当に関すること
  • 賞与などに関すること
  • 食費、作業用品などの負担に関すること
  • 安全衛生に関すること
  • 職業訓練に関すること
  • 災害補償などに関すること
  • 表彰や制裁に関すること
  • 休職に関すること

労働条件通知書をもらうタイミング

労働者から見た場合、どの時点で労働条件通知書をもらうのかも気になります。
入社の可否については、内定通知によって知らされますが、採用内定通知書と労働条件通知書が兼用になっている場合もあります。

労働条件通知書の交付は雇入れ時であるため、入社日に渡すのが一般的に思われますが、実際は労働条件を定めずに入社を決定することはないため、内定時などに出すケースも多くみられます。

たとえ採用内定通知と兼用であっても、労働条件通知書に明示すべき事項が網羅されておれば問題はありません。

労働条件通知書に関する注意点

労働条件通知書については、契約更新の場合でも必要となります。たとえ契約内容は同じであっても交付しないのは許されません。

労働条件通知書を作成した場合には、

 

  • 適切な明示方法によっているか
  • 明示する書面の項目に不足はないか
  • 有期雇用の場合には、更新の有無や更新の判断基準が明記されているか
  • パートやアルバイト、有期雇用労働者の場合には、追加で必要な4項目の明示はあるか

 

 

などを見直しておきましょう。

労働条件通知書は電子メール等で対応できる

2019年4月1日より、労働者が希望した場合には、電子メールやFAX、SNSなどによる労働条件通知書での交付が可能となりました。

ただし、労働条件通知書は原則として、「書面の交付」となっているため、電子データを出⼒して書面作成ができるものに限られます。

労働条件通知書について正しく理解し、トラブルの無い雇用契約を結びましょう

労働条件通知書の作成にあたっては、雇用契約書との違いをよく認識し、明示事項を正しく理解した上で、間違いなく交付しましょう。

電子メールやSNSなどでの交付の場合においても、一方的に送信するだけでなく労働者が受信したかどうかも確かめる方法を採用する等、確実な明示方法を心掛けるべきです。

後でトラブルにならないためにも、労働条件通知書への理解を深めておきましょう。

労働条件通知書を含むワークフローの承認から、契約締結、管理までワンストップで行えるマネーフォワード クラウド契約では、個々の労働条件通知書の管理を効率的に行うことができます。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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