• 更新日 : 2022年10月11日

就業規則の変更の仕方 – 手続きの流れと注意点

就業規則の変更の仕方 - 手続きの流れと注意点

労働基準法第89条では、常時10人以上の労働者を使用する事業場は、就業規則の作成と労働基準監督署への届出義務があります。この就業規則は、変更する場合も法律に従って手続きを行う必要があることをご存知でしょうか。

今回は、どんなときに就業規則を変更するか、その際の手順や押印廃止、罰則、その他の注意点などについて解説します。

就業規則とは?

就業規則とは、労働者の賃金や労働時間など、労働条件に関することや職場の規律などについて定めた職場におけるルールブックです。

職場で働くためのルールを定め、労使双方がそれを遵守することで、労働者は安心して働くことに集中ができ、労使間の無用なトラブルを防ぐことにつながりますので、就業規則は重要な役割を果たすのです。

労働基準法第89条では、「常時十人以上の労働者を使用する使用者」は、「所定の事項について就業規則を作成し、行政官庁(労働基準監督署)に届け出なければならない」「就業規則を変更した場合も同様に届け出なければならない」とされています。

なお、就業規則の作成にあたっては、必ず記載しなければならない「絶対的必要記載事項」と定めをする場合には記載しなければならない「相対的必要記載事項」があります。

就業規則の作成方法については、こちらの記事もご確認ください。

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就業規則の変更はどういった場合に行う?

就業規則の変更は、下記のようなケースがあった場合に検討して進めていくことが重要です。

  • 労働基準法や労働関係の法律(労働契約法や育児・介護休業法など)が改正されたとき
    →上記法令の改正により、現行の就業規則が法律に合わなくなった場合に変更が必要になります。
  • 就業規則の内容が会社の成長などによって実態と大きく異なってきたとき
    →会社の成長による従業員数の増加や業務内容の変化により、現行の就業規則の内容が実態と大きく乖離するような場合に変更が必要になります。
  • 労働基準監督署の是正勧告があったとき
    →労働基準監督署の調査により就業規則の作成漏れや不備などの行政指導などを受けた場合に、作成や変更が必要になります。
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就業規則の変更に関する注意点

就業規則の変更にあたって、その変更手順と注意点について解説します。

就業規則変更の手順

就業規則の変更は全部で5つのステップに分けることができます。

  1. 就業規則に加える変更について、検討・決定する。
  2. 代表取締役社長や取締役会など、就業規則の変更の権限を持つ人の決裁を受ける。
  3. 決裁を受けた変更内容について労働者の過半数が加入する労働組合(ない場合は労働者の過半数を代表する人)に意見を聞く。
  4. 変更内容についての意見を「意見書」としてまとめてもらう。
  5. 意見書、変更後就業規則、就業規則変更届を所轄労働基準監督署長に提出する。

※法的に必要な手続きは3以降の手続きのみです。

変更の際の注意点

この5つのステップの中で注意しなければならないのは3点です。

1つ目は原則的に就業規則の変更は企業単位ではなく、事業場単位である点です。

例えば本社と実店舗10店を経営している場合、本来は本社と各店舗で個別に就業規則を所轄労働基準監督署長に提出しなくてはなりません。ただし本社と店舗の就業規則がまったく同じ内容の場合だけ、本社の所轄労働基準監督署長を経由して、一括して届け出ることも可能とされています。

2つ目と3つ目はどちらも「労働者の過半数を代表する人」に求められる条件です。

第一にその人は労働基準法第41条第2号に規定されている、監督または管理の立場にある人でない必要があります。

第二に使用者側から就業規則の変更内容についての意見を聴く目的を明らかにしたうえで、挙手や投票で選ばれた人でなくてはなりません。

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就業規則の変更は労働者に有利か?不利か?

就業規則は、事業主が行った変更に対して労働者代表の意見を聴くことで変更できます。それでは、就業規則の変更が労働者に不利な内容だった場合でも変更はできるのでしょうか?

労働者に不利な変更も可能

労働基準法をはじめとする法令に抵触しなければ、就業規則の変更が労働者にとって不利な内容になる可能性もあります。例えば賃金水準の引き下げや休暇の削減などです。

このような変更は、今後の企業運営の観点から特に労働組合や労働者代表との意見交換が重要になります。使用者側は労働者側の意見に十分耳を傾けると同時に、変更の理由や内容についてしっかりと説明する必要があるでしょう。

不利な場合でも「労働者の合意」は必要ない?

ここでの注意点は労働基準法第90条の内容にあります。

使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。

引用:労働基準法|e-Gov法令検索

ポイントは最後の「意見を聴かなければならない」の部分です。これはあくまで「どのような意見があるかをきちんとヒアリングした」という意味です。そのため労働者側の同意や、労働者側との協議や話し合いは、法律上義務付けられていません。

したがって労働組合や労働者代表が「今回の変更については断固反対である」という内容の意見書を提出したところで、使用者側はそれを無視することもできます。

この場合でも使用者は「断固反対」と記載された意見書と、変更後就業規則、就業規則変更届を所轄労働基準監督署に提出すれば、就業規則の変更手続きを終えることができるのです。

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就業規則の変更における合理的と非合理的

就業規則の変更にあたっての合理性の基準や変更・周知に関する疑問について見ていきます。

「非合理的」な就業規則の変更とは?

労働契約法第10条では、就業規則変更の合理性の基準を次の5つの観点から検討するべきとされています。

  1. 労働者の受ける不利益の程度はどれくらいか?
  2. 労働条件の変更の必要性はどれくらいあるか?
  3. 変更後の就業規則の内容は社会通念上適切か?
  4. 労働組合や労働者代表との交渉の状況はどのようなものか?
  5. その他の就業規則の変更に関連する事情はどうか?

これらの観点から妥当であると判断されれば就業規則の変更は「合理的である」とされ、不適切であると判断されれば「非合理的である」とされます。

就業規則を「周知する義務」とは?

労働契約法第10条はこれ以外にも「変更後の就業規則を労働者に周知させ」ることを求めています。

この場合の周知とは、事業場の掲示板などに就業規則の変更を知らせる書面を掲げたり、労働者に対してコピーを配布したりといった手続きです。

就業規則の拘束力が発生するには、周知のための手続きが必要不可欠とする最高裁判例も出ています(フジ興産事件・最二小判平15・10・10)。

就業規則変更届に押印は必要?

令和3年3月31日までは押印は必須でしたが、令和3年4月1日以降、押印は廃止されています。

周知が必要な従業員にはパート・アルバイトも含まれる?

労働基準法第106条で、「就業規則は、各作業場の見やすい場所への掲示、備え付け、書面の交付などによっていつでも労働者が見られるようにしなければなりません」とされています。

引用:就業規則を作成しましょう|厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署

就業規則の周知は、常勤者だけではなく、パート・アルバイトを含むすべての労働者に必要です。

就業規則に関する手続きを怠った場合、罰則はある?

労働基準法第89条には、就業規則の作成義務、届出義務についての規定があり、それに違反した場合には、同じく労働基準法第120条に基づいて30万円以下の罰金が科せられます。

就業規則を適正に変更し正しく運用しましょう

今回は、就業規則とはどのようなものか、就業規則の変更はどういったときに行うのか、その変更の際の注意点や就業規則に関する罰則について見てきました。
就業規則は会社のルールブックです。会社も労働者も働きやすい環境で働けるように、就業規則を確認・整備して運用していきましょう。

よくある質問

就業規則の変更はどういった場合に行いますか?

就業規則の変更は、労働基準法や労働関係法令の法改正により乖離が発生した場合、内容が会社の成長などによって実態と大きく異なってきた場合、労働基準監督署の税制勧告があった場合などに変更を行います。詳しくはこちらをご覧ください。

就業規則の変更手順について教えてください。

変更手順は以下の通りです。

  1. 変更内容の検討・決定
  2. 会社の変更権限者の決裁
  3. 変更内容について労働者代表の意見を聴き意見書としてまとめてもらう
  4. 変更内容を従業員に周知
  5. 労働基準監督署に届け出
詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

執筆:山本 務(特定社会保険労務士/AFP/2級FP技能士/日商簿記2級/第一種衛生管理者)

山本 務(特定社会保険労務士/AFP/2級FP技能士/日商簿記2級/第一種衛生管理者)
やまもと社会保険労務士事務所所長
大学卒業後、システム開発技術者、上場企業情報システム部&人事部を経て2016年に開業。
独立後も労働局の総合労働相談員として200件以上のあっせん事案に関与。労働相談は民間委託事業の電話相談も含めて1,000件以上の実績あり。
労務相談、就業規則、給与計算を中心に、各種手続きや労使問題対応など、外部人事部員として活動。システムのことも分かる社会保険労務士です。

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