• 更新日 : 2024年1月12日

産業医とは?医師との違いや設置要件について分かりやすく解説

産業医とは?医師との違いや設置要件について分かりやすく解説

従業員が安心して働くためには、職場の安全管理はもちろんのこと、健康管理も重要となってきます。当記事では、従業員の健康管理のために欠くことのできない産業医について解説しています。産業医の概要や仕事内容、選任要件などについて興味をお持ちであれば、ぜひご参照ください。

産業医とは?

産業医とは、企業で働く従業員の健康管理などを行う医師です。通常の医師とは異なった存在であり、一定の場合には専属の産業医を選任する必要があります。

通常の医師との違い

産業医も医師であることに違いはありません。しかし、産業医は企業における健康管理を職務としており、通常の医師のような医療行為は行いません。また、通常の医師は病気や怪我を負った人を対象としていますが、産業医は企業で働く従業員が対象である点も異なります。

専属産業医と嘱託産業医の違い

産業医は、病院に勤務する医師や開業医が嘱託として務めることが多いです。しかし、常時1,000人を超える従業員を使用する事業場では、その事業場に専属の産業医を選任する必要があります。また、水銀やヒ素などを扱う一定の有害業務で、常時500人以上の従業員を使用する事業場においても、専属の産業医を選任することが必要です。

産業医はなぜ必要?日本の現状

職場における健康管理は、事故防止などの安全管理と並んで重要な要素です。しかし、健康管理には医学の知見が不可欠であり、通常企業内にそのような人材はいないでしょう。そのため、専門家である産業医を選任することにより健康管理を行っています。

現在の日本は、労働安全衛生法制定当初に比べ、健康課題が多様化しています。職場におけるメンタルヘルス対策は今や必須であり、感染症対策もなお重要な課題です。このような健康課題の多様化を受けて、産業医の必要性も増しています。

しかし、必要とされる産業医に対して、実際の産業医の数が足りているとはいえない状況です。たとえば、千葉県において産業医認定証の交付を受けた医師は、2,000人であることに対し、産業医の選任が必要な事業所数は5,700と明らかに産業医の不足傾向が見られます。

現状は、事業所から医師会に産業医の推薦依頼があっても、対応が困難な状況です。背景には、急速な高齢化の進展による医師不足があり、学校医や地域介護などで多忙を極める医師の業務がそれに拍車を掛けています。

参考:千葉県における産業医不足解消のための有効な方策の樹立

産業医の要件には何がある?

産業医となるためには、大前提として医師であることが必要です。その他にも以下のいずれかの要件を満たさなければなりません。

  • 産業医科大学その他の大学が設置する産業医養成課程を修め卒業し、実習を履修した者
  • 労働衛生コンサルタント試験(試験区分保健衛生)の合格者
  • 大学における労働衛生科目の教授、准教授、非常勤講師(これらの職にあった者を含む)
  • 日本医師会や産業医科大学など、厚生労働大臣が指定した者の研修を修了した者

また、産業医は、以下の者以外から選任することが必要です。

  • 事業者が法人の場合は、当該法人の代表者
  • 法人でない場合は、事業を営む個人
  • 事業場において、事業の実施を統括管理する者

産業医の仕事内容はどういったもの

産業医は、原則として毎月1回以上作業場などを巡視することが必要です。巡視の結果、作業方法や衛生状態に問題があれば、直ちに健康障害を防止するための措置を講じることも産業医の職務とされています。

産業医は、巡視の他にも労働安全衛生規則に基づき、以下のような職務を行います。

  • 健康診断の実施とその結果に基づく措置
  • 長時間労働者に対する面接指導・その結果に基づく措置
  • ストレスチェックとストレスチェックにおける高ストレス者への面接指導その結果に基づく措置
  • 作業環境の維持管理
  • 作業管理
  • 上記以外の労働者の健康管理
  • 健康教育、健康相談、労働者の健康の保持増進のための措置
  • 衛生教育
  • 労働者の健康障害の原因の調査、再発防止のための措置

健康診断の結果に基づいて、必要があれば産業医との面談などを行い、時短や配転など就業上の措置を講じることになります。一定以上の長時間労働を行ったり、高ストレスと判定されたりした従業員との面談も産業医の重要な仕事です。

また、産業医は衛生委員会や安全衛生委員会の構成員でもあります。衛生委員会などの構成員として、職場における健康障害防止、労災の原因特定及び再発防止などの対策立案にも関わっています。

産業医を置かなければならない事業所の基準

産業医の選任は、全ての事業場で求められるわけではありません。一定の要件を満たす事業場でのみ選任が義務付けられています。

50名以上の労働者を雇用している

常時50人以上の従業員を使用する事業場では、産業医の選任が義務付けられています。この義務は、業種を問わないため50人以上であれば全業種で選任が必要です。また、選任義務がない事業場であっても、健康管理を行うために必要な知見を有する医師などに健康管理を行わせることが努力義務となっています。

産業医は何名置く必要がある?

産業医は、常時50人以上の従業員を使用する事業場で選任が義務付けられていますが、その人数は一定ではありません。選任する事業場の規模に応じて、必要とされる人数が異なります。必要とされる人数は、以下の通りです。

  • 50人以上3,000人以下:1人
  • 3000人超:2人以上

また、3,000人超の事業場では2人以上の産業医の他にも、6人以上の衛生管理者を選任することが求められています。2人以上の産業医とあわせて、忘れずに衛生管理者の選任も行いましょう。

非正規雇用の従業員は、対象人数に含まれる?

産業医選任義務の要件となる常時50人以上には、パートやアルバイトなどの非正規雇用も含まれます。そのため、選任の要否を考える際には、パート従業員など非正規雇用従業員も忘れずにカウントすることが必要です。また、パート従業員であっても労働時間など一定の要件を満たす場合には、健康診断の対象となるため、あわせて注意しましょう。

産業医と連携して働きやすい環境整備を

職場における健康管理は、安全管理と並んで事業者の重要な責務となります。安全管理はもちろんのこと、健康管理が疎かであれば従業員は十全のパフォーマンスを発揮できず、作業効率も落ちてしまうでしょう。少子高齢化の進展により、労働力人口の減少傾向が続く我が国では、労働力の確保が喫緊の課題です。産業医との連携により、働きやすい環境整備を行い、求職者にとって魅力的な企業となることが求められるでしょう。


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