- 更新日 : 2024年8月29日
ウェイとは?意味や明文化するメリット、作成方法、企業事例
ウェイは経営理念など、その企業らしさを表す価値観を総称したものです。企業の重要な経営資源の一つとも言われ、明文化した上で従業員に浸透させることで、企業経営の上で様々なメリットをもたらします。この記事ではウェイの概要やメリット、導入方法、導入
事例等を紹介しますので、自社におけるウェイ導入の参考にしてください。
目次
ウェイとは?
ウェイとは、経営理念や企業理念等の形で明文化される「企業らしさ」を表す価値観を総称したものです。「道」以外に「やり方」「方法」などの意味がある英語「Way」に由来しており、ここから派生したものだと考えられています。
最近では企業の4つの経営資源「ヒト、モノ、カネ、情報」にウェイを加え、5つの経営資源と言われるほど、企業経営において注目されている重要な要素です。企業のHP等においても、例えば「トヨタウェイ」のように企業名+ウェイなどの名称で紹介されることも少なくありません。企業事例については後ほど紹介します。
ビジネスの意味
ウェイは、世の中に対するその企業の約束事を表現したものとも言えます。従業員はウェイに表される価値観を遵守して業務を行い、この価値観のもとに組織への帰属意識を高めることが期待されています。
ウェイの類義語
ウェイの類義語として、「クレド」「ミッションステートメント」が知られています。クレドとは企業の価値観、行動規範を短文で簡潔かつ具体的に表したものです。一方、ミッションステートメントとは、企業内で共有すべき行動指針や、社会における企業の役割などを文章化したものです。
クレドとミッションステートメントは、理念的な内容であるウェイに比べ、より具体的な行動指針のような形で定められており、従業員が共有しやすいものになっています。また、ウェイはクレドやミッションステートメントを含む、企業の価値観の総称でもあります。
HPウェイの経営論
HPウェイとは、1939年にアメリカのカリフォルニア州で創業したヒューレット・パッカード社の経営理念と行動指針です。5つの基本的価値観、7つの会社の目的と、4つの行動指針で構成されています。これらの価値観、目的、行動指針は三位一体となっており、世界のヒューレット・パッカードに共通した行動指針です。
この中でも以下の「会社の目的」は意思決定の際の経営指針になるもので、あらゆる企業に共通した普遍的な原則と言えるでしょう。
- 利益
- 顧客
- 事業
- 成長
- 従業員
- マネジメント
- 社会
ウェイを明文化するメリット
企業がウェイを明文化するメリットを以下で4点紹介します。
全社的に価値観が共有できる
ウェイは、企業における全ての仕事に共通した価値観を表します。また、経営陣の考えを表したものでもあります。ウェイを明確化することで、経営陣から一人ひとりの従業員まで同じ価値観を共有して仕事を進められるため、企業全体が進むべき方向にブレが生じません。結果として従業員の帰属意識が高まることから、強固な組織作りにつながるでしょう。
行動の基準が明確になる
ウェイを明文化することで、会社で業務を進める上での行動基準も明確になります。社内で共有されることで、従業員一人ひとりがウェイに従って行動することが可能になります。結果として株主や顧客、取引先といったステークホルダーに対して、ウェイに表した「約束」を守ることができるため、企業の信用度もより高まるでしょう。
また、ウェイに表した行動基準が、従業員の評価の根底に据えられれば、評価基準の納得性が高まり、従業員のレベルアップにもつながります。
従業員のモチベーションアップ
ウェイは曖昧な理念に留まらず、具体的な行動基準も明らかにします。具体的な基準のため従業員に浸透しやすく、ウェイに対する従業員の共感が得られれば、仕事へのモチベーションアップも期待できます。
エンゲージメントの向上
ウェイを通じて自社の価値観や経営陣の考えなどが従業員に共有されるため、自社に対するエンゲージメントを向上させることが可能になります。
エンゲージメントの向上は先述のモチベーションアップにもつながり、業績や生産性の向上にも貢献します。また、従業員の離職率が低下するため、良い人材を囲い込むことが可能です。
ウェイの導入手順・作成の流れ
以下でウェイの導入手順、作成の流れを紹介します。
企業の価値観・行動指針を定義
最初に、ウェイで表現したい企業の価値観や行動指針を定義する必要があります。これらの定義にあたり、経営方針、経営戦略とも整合を図るため、自社の置かれた環境や強み、課題等の分析も必要です。その上で、ステークホルダーに対して何を訴えていくかも考えなければなりません。
また、経営陣の考えや、社員の思い、創業の精神や自社の歩んできた歴史なども踏まえる必要があるでしょう。
ウェイの明文化
上記で定義した価値観や行動指針を明文化します。従業員を含む自社のステークホルダーに十分に浸透させるためにも、分かりやすい言葉で明文化しましょう。先述のメリットを活かすためにも重要なプロセスとなります。
全社員に共有
明文化されたウェイを社内手続きで確定したら、全社員に共有します。単なる共有ではなく十分に浸透させることを目指さなければならないため、十分に時間をかけた取り組みが必要でしょう。
また、啓発ポスターやツール類の制作、研修での教育などだけではなく、普段の業務の中で意識させるための取り組みが求められます。例としては、ウェイで明文化した価値観や行動指針と、人事評価等を連動させることが挙げられます。詳細は次章で紹介します。
ウェイの評価
企業の置かれた環境の変化が著しいため、ウェイが現状に適合するかの評価を行う必要があります。
定期的に改善
ウェイを評価した結果、必要により改善します。評価と改善は定期的に行う必要があるでしょう。
ウェイ導入のポイント
ウェイ導入のポイントを以下で2点解説します。
ウェイと社内の人事制度等をリンクさせる
ウェイを明文化しただけでは、そのメリットを活かせません。ウェイのメリットを活かすためには従業員に浸透させることが重要です。
従業員に浸透させるためには、普段の業務の中でウェイを意識するようになるための仕掛け作りが求められます。ウェイとして定められた内容に基づき従業員の行動を評価する人事制度や表彰制度、業務上の目標管理などの導入を進めることで、ウェイを意識した従業員の自発的な行動につながるでしょう。
経営陣が率先垂範する
経営陣がウェイを重視する姿勢を見せなければ、従業員に浸透させられません。経営陣がウェイに基づく行動を率先垂範することも効果的と言えます。
ウェイを導入している企業事例
ウェイを導入している5つの企業事例を紹介します。
トヨタウェイ
グローバル化の進展に伴い、それまで明文化されていなかったトヨタの経営上の価値観などを共有するために「トヨタウェイ2001」をまとめたことが発端と言われています。
2つの柱は「知恵と改善」「人間性尊重」で、現状に満足せず新しい付加価値提供に向けて知恵を絞り、全てのステークホルダーを尊重しながら、従業員の成長を会社の成果に結びつけようとしているものです。
最新のものは10項目から成る「トヨタウェイ2020」として公開されています。100年に一度の変革期を迎えた中で、次の100年のトヨタ従業員の行動指針を定義したものです。また、トヨタウェイ2020をより具体化する内容としてトヨタ行動指針も定められています。
参考:
トヨタ自動車75年史 第3部 第4章 第7節 第4項 「トヨタウェイ」の編纂|トヨタ自動車株式会社
花王ウェイ
花王ウェイは、花王の創業者の価値観に基づき作成された企業理念です。各国語にも翻訳されており、グローバルな発展のための枠組みとなりました。マニュアルや規則としてではなく、業務を進める上での拠り所として共有しています。
花王グループでは、2030年までにグローバル社会で貢献できる企業となるべく、花王ウェイを確固たるものにすることが重要だと位置づけています。
花王ウェイの浸透に向けては、本社と各部門、グループ会社に花王ウェイ担当を配置し、研修や各種のコミュニケーション活動を推進しています。
参考:
2021 Report Progress Plan Lifestyle Kirei|花王株式会社
エプソンウェイ
エプソンウェイはエプソングループ共通の価値観や行動様式を表し、経営理念、企業行動原則、エプソングローバル社員行動規範の3つを総称したものです。
企業行動原則は創業時から大切にしてきた「誠実努力」「創業と挑戦」の精神に基づき、全役員、従業員の自主的な行動や改善活動のための指針とされています。企業行動原則とエプソングローバル社員行動規範は各国語に翻訳され、HPで公開されています。
ローソンWAY
ローソンWAYは、お客様満足に向けた行動理念である「グループ理念」、グループ理念をもとに目指すべき姿を定めた「ビジョン」を実現するために、行動する際の共通の考え方を定めたものです。ローソンでは、5項目からなるローソンWAYを定めています。
さらにローソンWAYをもとに実際に行動に移す上で、注意すべき点を倫理の視点から具体的に示した「ローソン倫理綱領」も定め、従業員への定着を進めています。
参考:グループ理念・ビジョン・ローソンWAY|株式会社ローソン
コマツウェイ
コマツウェイはグローバルな発展と持続的な成長を目指し、コマツ全社員が共有すべき価値観として2006年に明文化されました。全世界の社員に浸透を図り、これを土台にしつつ人材育成に取り組んでいます。
社内では社長を委員長とする「コマツウェイ推進委員会」を開催し、人事労務諸施策に関する審議、決定などを行っています。社内研修や職場内ミーティングでのコミュニケーションを通して、コマツウェイの社員への定着を進めているほか、2007年からはブランドマネジメント活動にも取り組んでいます。
また、2019年に発行された第3版は、海外グループ会社向けに13か国の言語に翻訳して定着を図っています。
参考:コマツウェイ・人材の育成に関する方針 | 人と共に|コマツ
ウェイの浸透に向けた取り組みが重要
ウェイは経営理念など、その企業らしさを明文化したものの総称です。ウェイを明文化することで、全社的に価値観を共有し、従業員のエンゲージメントやモチベーションを向上させるなどのメリットがあります。ウェイのメリットを活かすためには、従業員に浸透させるための様々な工夫が必要で、時間がかかる取り組みになるでしょう。
昨今、世間を賑わしている様々な不祥事を防ぐ意味でも、ウェイの浸透は大きな役割を果たします。一度明文化したら終わりにするのではなく、この記事で紹介した内容を参考にして、ウェイの浸透に向けた不断の取り組みを進めましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
バランススコアカード(BSC)とは?4つの視点や効果、作成方法まで解説
企業が業績を伸ばし、継続的な成長を続けるためには、複数の観点による多面的な状況把握が必要です。財務や顧客など、ひとつの観点からの評価のみでは正確に状況を把握することは困難でしょう。 当記事では、経営戦略を効率的に推進するために役立つバランス…
詳しくみるパーソナルスペースとは?男女による違いや職場や商談での活用について解説
「パーソナルスペース」という言葉は、プライベートスペースの親密な関係について語られることも多いです。しかし、今回はビジネスパーソンに向けて、職場や商談といったビジネスシーンでのパーソナルスペースに焦点を当てます。本記事で紹介するのは、パーソ…
詳しくみるカーブアウトとは?メリット・デメリット、実施手順や注意点を解説!
カーブアウトとはM&A手法の一つで、事業を切り離して別会社として展開することをいいます。メリットには経営資源の集中化により成長が促せる点などがある一方、デメリットには資本関係の複雑化により意思決定がしにくくなる点や、勤務先の変更によ…
詳しくみるATS(採用管理システム)とは?意味や選び方を解説!
企業における人材採用の効率化は、競争優位を築く鍵となります。最近、注目されているATS(採用管理システム)は、そのための最先端のツールといえるでしょう。 この記事では、ATSの基本的な意味やその注目されている背景、主要機能、選び方のポイント…
詳しくみるピグマリオン効果とは?由来やビジネスにおける活用ついて紹介
教育現場では、周囲の大人の期待が児童の学力やパーソナリティの形成に及ぼす影響が大きいとされています。心理学においてはピグマリオン効果として知られています。この記事では、ピグマリオン効果の基礎知識のほか、ビジネスにおける活用などについて解説し…
詳しくみる産業医とは?医師との違いや設置要件について分かりやすく解説
従業員が安心して働くためには、職場の安全管理はもちろんのこと、健康管理も重要となってきます。当記事では、従業員の健康管理のために欠くことのできない産業医について解説しています。産業医の概要や仕事内容、選任要件などについて興味をお持ちであれば…
詳しくみる