• 更新日 : 2023年5月24日

厚生年金における32等級とは?改定や保険料を解説

厚生年金保険料は毎月の給与によって納める金額が異なり、わかりやすいように等級で区分されています。2020年9月1日より、厚生年金保険の等級の上限が「第32等級」に引き上げられました。この記事では、厚生年金における等級や2020年の標準報酬月額の変更、32等級以上の場合の保険料計算方法についてわかりやすく解説します。

厚生年金における等級とは?

厚生年金における等級は、保険料を計算する際の基礎となるものです。

厚生年金保険料は、被保険者の報酬月額に基に1~32等級まで区分されていて、この等級に該当する金額に応じて標準報酬月額が決定されます。日本年金機構の「厚生年金保険料額表」にて、自分が毎月どのくらい納めているのか、給与が上がることによって保険料がどのくらい高くなるのかといった内容を確認してみましょう。

報酬月額とは、毎月の基本給に「役付手当」「勤務地手当」「家族手当」「通勤手当」「時間外手当」「住宅手当」「物価手当」など各種手当を含む1ヶ月の総支給額のことです。年4回以上支給される賞与や、現物で支給される食券や社宅、独身寮なども報酬に含まれるため注意しましょう。

ちなみに、標準報酬月額は毎月の給与を等級で区切った報酬月額にあてはめて決定するため、必ずしも毎月の給与と一致するわけではありません。例えば、毎月の給与が23万円の人は、報酬月額が23万円以上25万円未満(第16等級)に該当するため、標準報酬月額は24万円、毎月の保険料は2万1,960円となります。

標準報酬月額は、原則として毎年4~6月の給与総額を基に決定され、その年の9月から翌年の8月まで適用されるということを覚えておきましょう。この決定方法を「定時決定」と言います。標準報酬月額の決定方法を覚えておくと、4~6月の残業を控えることで年間の保険料を安く抑えられます。

ただし、年内の給与(固定的賃金)が大きく変動した場合(①)や、中途入社で4~6月の給与がない場合(②)などは、随時改定(①)や資格取得時の決定(②)によって等級と保険料が変わることに留意しましょう。

従業員側としては、保険料が高ければその時点での手取りは減るものの、老齢厚生年金・障害厚生年金・遺族厚生年金など各種厚生年金の受給額が増えるというメリットがあります。とはいえ、保険料を半分負担している企業側としては保険料を抑えたいという考えもあるでしょう。もし保険料を抑えたいのであれば、前述のとおり、4~6月の残業を少なくするように試みることを推奨します。

そして、さらに覚えておかなければならないのが「標準賞与額」です。こちらは1回当たりの税引き前総支給額から1,000円未満の端数を切り捨てたもので、支給1回につき150万円が上限となっています。同じ月に2回以上支給された場合は合算です。賞与やボーナス、期末手当など年3回以下の回数で支給されるものが該当します。

等級の詳細について、詳しくは以下の記事を参照してください。

参考:令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和5年度版)|日本年金機構

2020年の標準報酬月額の変更について – 上限が32等級に

2020年9月1日より、厚生年金保険の標準報酬月額の上限が「第32等級」に引き上げられました。それまでは第31等級が標準報酬月額の最高等級でした。改定前と改定後の比較は以下のとおりです。

<改定前>

月額等級標準報酬月額報酬月額
第31級62万円60万5,000円以上

<改定後>

月額等級標準報酬月額報酬月額
第31級62万円60万5,000円以上
63万5,000円未満
第32級65万円63万5,000円以上

標準報酬月額に上限が設けられている理由は、高額所得者や事業主の保険料負担に対して配慮しているためです。また、年金給付額の格差が大きくなりすぎないようにするためでもあります。では、なぜ今回、標準報酬月額の上限が改定されたのでしょうか。それは、厚生年金保険法第20条第2項において、以下のように定められているためです。

  • 年度末における全厚生年金被保険者の平均標準報酬月額の2倍に当たる金額が最高等級の標準報酬月額を上回り、その状態が継続すると認められる場合は最高等級の上に等級を追加できる

現在では厚生年金に加入しているすべての人の標準報酬月額平均金額の2倍となる金額が、第31級の標準報酬月額の62万円を上回りました。今後もこの状態が続くと考えられるため、最高等級の上限が引き上げられたのです。最高等級に該当する人は日本の人口から見るとあまり多くないとはいえ、等級の上限引き上げによって、事業主および被保険者の1ヶ月当たりの負担額がそれぞれ増加することになります。

参考:厚生年金保険における標準報酬月額の上限の改定|日本年金機構
参考:標準報酬上限の引上げについて|厚生労働省

32等級以上の場合の保険料計算方法

厚生年金保険料の従業員負担額の計算式は以下のとおりです。

32等級の標準報酬月額×厚生年金保険料率(18.3%)÷2

賞与の保険料額の計算式は以下になります。

標準賞与額×厚生年金保険料率(18.3%)÷2

32等級以上は、標準報酬月額が65万円、報酬月額が63万5,000円以上、保険料は全額11万8,950円です。厚生年金保険料は会社が半分負担するため、毎月の給与が63万5,000円以上の人の厚生年金保険料は毎月5万9,475円となります。年3回以下の賞与やボーナス、手当の名称があっても賞与と算定される場合はその分加算されるため注意しましょう。

標準報酬報酬月額厚生年金保険料
等級月額全額(18.3%)折半額(9.15%)
3265万円63万5,000円~11万8,950円59,475円

前述のとおり、標準報酬月額は高額所得者や事業主の保険料負担への配慮や、保険料給付額の格差が大きくなりすぎることを防ぐために上限が設けられています。従って、毎月の給与が仮に70万円だったとしても、保険料は11万8,950円となり、事業主と従業員の負担額はそれぞれ5万9,475円でそれ以上高くなることはありません(標準賞与額を除く)。

また先ほども少し触れましたが、等級が32等級に変更になった場合、厚生年金保険料の負担額は被保険者と事業主ともに1ヶ月当たり約2,700円、年間約3万3,000円増えることになります。納付する厚生年金保険料が高くなると手取りは減ってしまうものの、将来受け取れる年金が増えるため、被保険者は長期的にはメリットがあることを覚えておきましょう。

仮に、32等級の厚生年金保険料を1年間納めたとすると、将来受給できる老齢厚生年金はいくらに増えるのでしょうか。平均標準報酬額は以下の計算式になります(標準賞与額を上限の150万円を上限回数3回とした場合)。

(標準報酬月額 65万円 × 12月 + 標準賞与額 150万円 × 3回) ÷ 12月

老齢厚生年金の年金額は以下です。

平均標準報酬額 102万5000円 × 0.005769 × 12月

この計算から、将来受給できる老齢厚生年金は7万959円増やせることがわかります。年間3万3,000円の厚生年金保険料の負担額増額は大きいものの、老後安心して暮らすための投資として考えるようにしましょう。

参考:令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和5年度版)|日本年金機構

厚生年金における自分の等級を把握しておきましょう

厚生年金保険料は等級によって金額が異なります。日本年金機構の「厚生年金保険料額表」を基に、自分が1~32等級のどの等級に該当するかを確認しましょう。標準報酬月額は定時決定に基づき、原則として、毎年4~6月の給与を基に決定され、その年の9月から翌年の8月までの1年間適用されます。
年内の給与が大きく変動した場合や、中途入社の場合は定時決定以外の方法で等級と保険料が決定されることに留意してください。今まで最高等級の31等級に区分されていたものの、今後は新等級の32等級になる人は保険料の増額分を確認しておきましょう。

よくある質問

厚生年金における等級とはなんですか?

保険料を計算する際の基礎となるもので、1~32等級まで区分されています。詳しくはこちらをご覧ください。

厚生年金の32等級とは何ですか?

2020年9月1日(10月納付分)からの厚生年金保険の新等級です。詳しくはこちらをご覧ください。


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