• 作成日 : 2023年1月13日

生命保険への加入は必要?社会保険をはじめとする社会保障制度との違いも解説!

生命保険への加入は必要?社会保険をはじめとする社会保障制度との違いも解説!

日本では、9割近い世帯が生命保険に加入しているといわれています。テレビでも、生命保険のCMを見ない日はありません。

これほど普及している生命保険ですが、本当に加入する必要があるのでしょうか。

本稿では生命保険の概要、社会保険との違い、一部で「生命保険は不要」という声もある理由について解説します。

生命保険への加入は必要?

「生命保険に加入する必要はあるのか」を考える前に、生命保険の概要を確認しておきましょう。

そもそも生命保険とは?

「生命保険」という言葉を日常的に使っているものの、「自分が加入している保険の内容さえよくわからない」という人もいるのではないでしょうか。

保険業法という法律では、保険業を生命保険、損害保険、その他の第三分野の3つに分けていますが、生命保険については「人の生存又は死亡に関し一定額の保険金を支払うことを約し保険料を収受する保険」と定義し、生命保険会社だけが引き受けることができるとしています(保険業法第2条、第3条)。

法律上の保険給付の原因となる保険事故は「人の生存又は死亡」であることから、生命保険は基本的に以下の3種類に分けることができます。

  1. 死亡保険

    死亡した場合や高度障害状態になった場合に保険金が支払われる保険で、以下の2種類に分けられます。

    • 定期保険

      保険期間は一定で、その期間に死亡した場合に死亡保険金が支給されます。満期保険金はなく、掛け捨て保険とも呼ばれます。

      保険期間については「年満了」と「歳満了」があり、前者は「10年」「15年」など、後者は「60歳まで」「70歳まで」などと定められます。

      日常生活で起こり得る傷病、障害、死亡などのリスクに備え、これらが実際に生じたときには保険会社が保険金を支払う代わりに、加入者は保険料を支払うという内容の契約です。

      その仕組みは、多くの人が保険料を出し合って資金を作り、保険事故が発生した際はその資金から保険金を支払うというものです。

    • 終身保険

      こちらも、死亡した場合に死亡保険金が支給されます。保険期間は定期保険と異なり、一定ではありません。一生涯死亡保障が続き、貯蓄性がある生命保険です。

  2. 生存保険

    契約してから満期まで生存していた場合に保険金が支給される保険で、個人年金保険が該当します。

    • 個人年金保険

      契約時に定めた「60歳」や「65歳」など、一定の年齢まで保険料を積み立て、その後は積立金をもとに年金が支給される貯蓄タイプの保険です。

      年金受取開始前に被保険者が死亡した場合は、死亡給付金が支給されます。

  3. 生死混合保険

    死亡したとき、高度障害状態になったときに死亡保険金が支給される保険です。満期まで生存していた場合は生存保険金が支給されます。養老保険が該当します。

    • 養老保険

      保険期間は一定であり、その間に死亡したときには死亡保険金、満期時に生存していたときには死亡保険金と同額の満期保険金が支給されます。

上記の3種類が生命保険の基本形ですが、保険業法では、その他の第三分野である傷害や疾病を保険事故とする傷害保険・医療保険なども生命保険会社が取り扱うことを認めています。

そのため、入院・手術時の費用に備える医療保険や、介護などの生前給付保険などを組み合わせた生命保険もあります。

「生命保険は不要」といわれる理由は?

日本では1961年に国民皆保険・国民皆年金の体制が実現し、すべての国民が公的医療保険・公的年金制度に加入することになっています。

日本の社会保険制度、特に医療保険制度では自己負担額が原則3割で、これが高額になったとしても高額療養費制度で自己負担額の上限が設けられており、負担が軽くなる仕組みになっています。そのため、「生命保険は不要」という声もあります。

アメリカでは公的医療保険制度は国民皆保険ではなく、65歳以上の高齢者や障害者を対象とするメディケアと低所得者を対象とするメディケイドしかありません。

無保険者が盲腸(虫垂炎)にかかった場合、アメリカ(ニューヨーク)では患者本人の医療費負担額は152.2万~440.9万円に上ります。

参考:日本と諸外国の医療水準と医療費|日本医師会

同じ盲腸の治療でも日本では30万円と、患者の負担額がかなり小さくなっています。

健康保険や国民健康保険の自己負担額が原則3割で、さらに高額療養費制度もあるからです。

負傷・疾病によって働けなくなった場合も、業務外の事故では健康保険から通算1年6ヵ月の傷病手当金(給与の約3分の2)が支給され、業務中・通勤途中の事故では労災保険から給与の約8割の休業補償給付(通勤災害は休業給付)・休業特別支給金が治癒するまで支給されます。

公的年金については、65歳から支給される国民年金の老齢基礎年金と老齢厚生年金がよく知られていますが、業務外で障害状態になったり、死亡したりしたときも本人や遺族に労災保険や厚生年金保険、国民年金から障害年金が支給されます。

そのため、「社会保険料とは別に保険料を払ってまで生命保険に加入する必要はない」という声があるのです。

社会保険をはじめとする社会保障制度との違いは?

では、生命保険と社会保険の違いは何でしょうか。

社会保険制度の特徴とは

社会保険(公的保険)は、政府が設立した公法人などが運営主体(保険者)となっています。

具体的には、労災保険・雇用保険は政府、健康保険は全国健康保険協会と大手企業が設立する健康保険組合、厚生年金保険・国民年金は日本年金機構が保険者です。

社会保険はそれぞれの法律を根拠として原則的に強制適用であり、すべての国民に加入を義務付けています(国民皆保険・国民皆年金)。社会連帯を基本原理とし、給付水準は最低保障、従前取得の保障で、決して十分とはいえません。

財政方式には、一般的に給付に必要な費用をその都度加入者からの保険料で賄う賦課方式と、給付に必要な原資をあらかじめ保険料で積み立てる積立方式があります。

社会保険は現役世代が高齢世代を支える「世代間扶養」を基本とし、賦課方式を採用しています。また、加入者本人だけでなく雇用する事業主も本人と同額を負担し、国や地方公共団体も費用の一部を負担しています。

生命保険の特徴とは

生命保険は、民間企業が市場の競争原理をもとに運営しています。

生命保険は、希望する人が保険会社と契約を結ぶことで加入でき、脱退も自由な任意加入です。給付水準も、個人の希望と支払い能力に応じて自由に決められます。

財政方式は加入者の保険料による積立方式で、仕組みの維持は保険料の完全な積立が前提となります。

そのため、保険料はリスクの程度に見合った額でなければならず、「給付・反対給付の原則」が基本となります。

医療保険であれば、病歴のある人は保険料が高くなり、健康な人は低くなります。希望者のリスクが非常に高く、採算が合わないと保険会社が判断した場合は、保険に加入できないケースもあります。

社会保険の種類は?

ここで、社会保険の種類と概要を確認しておきましょう。

医療保険

医療保険には、会社員などを対象とする健康保険、自営業者などを対象とする国民健康保険、75歳以上の人と後期高齢者医療広域連合が認定した65歳以上の障害者を対象とする後期高齢者医療制度があります。

年金保険

公的年金には、国民年金と厚生年金があります。1961年に国民皆年金が実現し、すべての国民が年金に加入することになり、自営業者は国民年金、会社員は厚生年金、公務員は共済年金という縦割りの制度となりました。

しかし、1985年からは将来の年金一元化に向けて、すべての国民は基礎年金である国民年金(1階部分)に加入し、会社員などは2階部分となる厚生年金(その後共済年金も統合)にも加入するという2階建て構造になっています。

介護保険

介護保険は2000年に施行された、比較的新しい社会保険制度です。

40歳以上の人が加入して介護保険料を納付し、介護が必要になったときに所定の介護サービスを受けられます。保険料は、健康保険料に加算されて徴収されます。

雇用保険

雇用保険は失業したときの他、高齢や介護など雇用の継続が困難になったとき、育児で休業するときなどに、生活および雇用の安定と就職の促進のために必要な給付を行います。

労災保険

業務上あるいは通勤途上の傷病や、それによる障害、死亡に対して本人や遺族に必要な給付を行います。

付帯事業として社会復帰促進等事業があり、保険給付では十分でない部分を補っています。前述の休業特別支給金などが該当します。

社会保険制度の詳細については、こちらを参照してください。

社会保障制度により将来受け取れる金額は?

社会保険では、公的年金として国民年金と厚生年金がありますが、将来どの程度の年金を受け取れるのでしょうか。

ここでは、政府が試算したモデル年金を紹介します(令和4年4月分~)。モデル年金では、以下のような世帯を想定しています。

  • 夫が厚生年金に加入して40年間勤務
  • 収入は平均標準報酬(賞与含む月額換算)43.9万円
  • 妻は40年間専業主婦

〇モデル年金の年金額(月額)

老齢基礎年金(1人分)① 6万4,816円
老齢厚生年金 ② 8万9,961円
合計(①×2+②) 21万9,593円

年金額は固定されているわけではなく、改定されることがあります。その仕組みは非常に複雑です。

名目手取り賃金変動率がマイナスとなり、なおかつ名目手取り賃金変動率が物価変動率を下回る場合、新規に受給が開始される年金額(新規裁定年金)だけでなく、すでに受給中の年金額(既裁定年金)にも名目手取り賃金変動率を用いることが法律で定められています。

令和4年度の例では、名目手取り賃金変動率がマイナス0.4%、物価変動率がマイナス0.2%であったため、前年度よりも0.4%引き下げられています(令和3年度の合計は21万9,593円)。

このように、公的年金は減額となることもあります。

生命保険に加入すべきか判断する方法は?

生命保険と社会保険の特徴を見てきましたが、社会保険に加えて生命保険にも加入すべきなのでしょうか。

判断する際のポイントは以下のとおりです。

加入するデメリットとメリットを知ること

生命保険に加入すべきかどうかを判断する際は、そのメリットとデメリットを正しく理解しておくことが大切です。

主なデメリットは以下の2つです。

1つは、強制加入の社会保険の保険料以外に、毎月生命保険料を支払う必要があることです。

もう1つは、病歴がある場合は保険料が高くなることです。生命保険は民間会社が営利目的で運営しているため、採算が重視されます。採算が合わないと生命保険会社が判断した場合は、保険に加入できないこともあります。

主なメリットは、社会保険の給付を補完できることです。社会保険は、社会連帯を基本原理としているため、給付水準は生活に困らない最低限の保障にとどまります。

保険会社によっては、入院給付金や手術を受けたときに一時金が支払われる保険商品もあります。加入することで、これらの出費を抑えられます。

自分の置かれた状況を認識すること

以上を踏まえた上で、自分が置かれている状況を客観的に見てみましょう。

  1. 貯蓄は十分にあるのか
  2. 扶養すべき家族はいるのか

貯蓄が十分ではなく、扶養家族がいる場合は、社会保険だけでなく生命保険にも加入することをおすすめします。

「老後資金を低リスクで積み立てたい」という人も、個人年金保険など貯蓄性のある保険への加入を検討するとよいでしょう。

生命保険に加入する必要があるのか考えてみよう!

生命保険の概要、社会保険との違い、一部で「生命保険は不要」という声もある理由について解説しました。

民間保険である生命保険には、社会保険を補完する役割があります。アメリカと比べて日本の社会保険制度は非常に手厚いといえますが、他の先進諸国と比べると突出して高い水準とはいえません。

経済成長率が低く、少子高齢化が加速する中、多くの日本人が将来に不安を覚えていることも生命保険の加入率が高い理由の一つでしょう。

生命保険に加入していない人は、この機会に自分が本当に加入する必要があるかどうか、考えてみてはいかがでしょうか。

よくある質問

生命保険への加入は必要?

貯蓄が不十分で扶養家族がいる人は、加入したほうがよいでしょう。詳しくはこちらをご覧ください。

社会保険をはじめとする社会保障制度との違いは?

社会保険は強制加入ですが、生命保険は任意加入という違いがあります。詳しくはこちらをご覧ください。


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