- 更新日 : 2025年1月17日
パート社員の雇用契約書とは?記載事項や正社員との違いを解説
パート社員の雇用契約書は、会社とパート社員の間で雇用条件や業務内容、勤務期間、雇用契約期間などを記載した書面です。パート社員を雇用する際は、事前に書面で契約を交わしておかなければ、トラブルにつながる可能性が高まります。
そのため、会社とパート社員の間で信頼関係を築くためにも、事前に雇用契約書の作成が重要です。
本記事では、パート社員の雇用契約書の記載項目や正社員との違いについて解説します。
目次
パート社員も雇用契約書は必要?
パート社員を雇用する際に雇用契約書を作成するのは、法律上の義務ではありません。そのため、書面が用意されておらず、口頭で契約を交わした場合でも成立します。
しかし、雇用契約書を作成すると、雇用主と従業員の間で契約内容を明確にし、トラブルを防げます。
そもそも雇用契約書とは、勤務条件や待遇が記載されており、従業員と雇用主が契約を結んだ証拠の書面です。
雇用契約書の作成は義務付けられていませんが、雇用主は労働基準法第15条第1項に基づいて従業員に労働条件を書面で交付するよう定められています。上記の書面は、単体の労働条件通知書として作成される場合もありますが、雇用契約書兼労働条件通知書として作成することも可能です。そのため、従業員と信頼関係を築き、トラブルを防ぐためにも、必要な明示事項を記載した雇用契約書を作成しておきましょう。なお、以下では雇用契約書兼労働条件通知書として、雇用契約書を作成する場合を想定して解説を行っています。
パート社員の雇用契約書に明示すべき内容
パート社員は、正社員よりも1週間の所定労働時間よりも短い時間で働く社員です。正社員とパート社員は、勤務時間の長さが異なります。
しかし、雇用契約書の作成はパート社員や正社員など雇用形態に関係なく必要です。雇用契約書を作成する際は、労働基準法により記載が義務付けられている内容もあるため、事前に確認して必要項目を明記する必要があります。以下では、各項目について解説します。
労働基準法で定められた内容
労働基準法で定められた雇用契約書に記載すべき内容は、以下のとおりです。
- 昇給の有無
- 退職手当の有無
- 賞与の有無
- 相談窓口の案内
- 労働契約の期間
- 契約更新の基準
- 勤務場所と仕事内容
- 勤務時間や休日、所定労働時間を超える残業の有無、休憩時間など
- 給料の計算や支払い方法
- 退職に関する条件
- 退職金のルール
- 臨時支払い・ボーナス・最低賃金の金額
- 費用負担について
- 職場の安全や健康管理に関するルール
- スキルアップのための教育や研修について
- 災害や病気への補償や扶助
- 表彰やルール違反に対する罰則について
- 休職制度
- 就業場所・業務の変更の範囲
- 更新上限の有無と内容
- 無期転換申込機会
- 無期転換後の労働条件
上記の項目は、労働基準法施行規則第5条、短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善などに関する法律施行規則第2条などに基づいて、書面で明示することが求められています。
記載すべき項目を雇用契約書に記載せずに契約を結んだ場合、法律違反として罰則が科されるため注意しましょう。
パートタイム・有期雇用者に必要な内容
労働基準法により、パート社員の雇用契約書には下記の労働条件を明記しなければいけません。
- 労働契約の期間
- 契約更新の基準
- 勤務場所と仕事内容
- 勤務時間や休日、所定労働時間を超える以上の残業の有無、休憩時間など
- 給料の計算や支払い方法
- 退職に関する条件
- 就業場所・業務の変更の範囲
- 更新上限の有無と内容
- 無期転換申込機会
- 無期転換後の労働条件
- 昇給の有無
- 退職手当の有無
- 賞与の有無
- 相談窓口の案内
上記の項目は、労働基準法およびパートタイム・有期雇用労働法に基づき、書面での明示が求められています。
そのため、パートタイム・有期雇用労働者の雇用契約書には、法令で定められた労働条件を明示し、労働者の権利を保護することが重要です。
パート社員の雇用契約書には、正社員よりも記載すべき項目が多いため、注意しましょう。
パート社員の雇用契約書で注意したいポイント
パート社員の雇用契約書を作成する際は、法令違反やトラブルに発展しないために注意すべき点があります。以下では、雇用契約書を作成する際の注意点について解説します。
雇用契約の期間は3年以内
パート社員の雇用契約期間は、法令により原則3年以内と定められています。長期の有期契約は、労働者の自由を制限する可能性があります。そのため、法律で契約期間の上限を設け、労働者の権利を保護しているのです。
労働基準法第14条では、一定の専門的知識や技術を有する労働者や60歳以上の労働者との契約は最長5年の契約が認められています。しかし、特例に該当しないパート社員との契約期間は、原則3年以内です。
そのため、パート社員と雇用契約を締結する際は、契約期間を3年以内とし、法令を遵守することが重要です。
契約更新の有無の明示
パート社員の雇用契約書を作成する際は、契約更新の有無の明示が必要です。
契約更新の有無を明示すると、労働者は自身の雇用継続性を把握でき、将来のライフプランをたてやすくなります。また、事業主にとっても、労働者との間で契約更新に関する誤解やトラブルを未然に防ぐメリットがあります。
労働基準法では、労働契約締結の際に「労働契約の期間」や「契約更新の有無」などの労働条件を記載することが義務です。とくに有期労働契約の場合は、契約更新の基準や上限を明確にしなければいけないため注意が必要です。
更新するか否かの判断を明示
契約更新の有無だけでなく、契約更新の判断基準を明確に記載することが重要です。
厚生労働省の「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」では、使用者が有期労働契約を更新する際には、労働者に対して契約更新の判断基準の明記が必要とされています。
そのため、雇用契約書において契約更新がある場合は、更新するか否かの判断基準を記載してください。適切に記載しておくと、労働者の安心感を高めるだけでなく、円滑な関係性を維持できます。
契約を更新しない場合、30日前までの予告が必要
パート社員と契約を更新しない場合は、契約満了の30日前までに従業員に更新しないことを予告する必要があります。従業員に対して契約終了を事前に通知しておくと、従業員は次の就業先を探す時間の確保が可能です。
労働契約法第17条では、使用者は有期労働契約について、やむを得ない理由がある場合でなければ、契約期間が満了するまでの間に労働者を解雇できないと定められています。また、契約更新を3回以上行っている場合や、雇用期間が1年以上の場合は、契約満了の30日前までに雇止めを予告する必要があります。
パート社員との契約を更新しない際は、必ず契約満了の30日前までに予告するようにしてください。
最低賃金を超えているか確認する
パート社員の賃金は、最低賃金を必ず上回る必要があります。最低賃金は、労働者の生活を保護するための最低限の賃金水準として法律で定められています。もし、最低賃金を下回って支給すると違法となり、企業は法的リスクが伴うため注意が必要です。
そのため、賃金設定の際は最新の最低賃金額を確認し、下回らないことが重要です。
パート社員の雇用契約書を作成する際は、賃金が確実に最低賃金を上回るように設定してください。
パート社員と正社員の待遇の格差とは?
パート社員と正社員の待遇の格差とは、正社員と比べるとパート社員の賃金や賞与、退職金などに差があることです。
従業員に働きやすい環境を提供するためには、パート社員と正社員の間で不当な待遇格差が生じないようにする必要があります。そのため、同じ業務内容であれば、雇用形態に関係なく均等な待遇を提供することが重要です。
待遇格差を作ってしまうと、労働者のモチベーション低下やトラブルの原因となります。
たとえば、交通費支給において、正社員には一律10,000円、パートには一律5,000円を支給していた事例があります。また、精勤手当や食事手当などの福利厚生においても、正社員のみ支給し、パートには支給していなければ問題に発展するため注意が必要です。
そのため、企業はパート社員と正社員の不合理な待遇格差を作らず、定期的に見直し、必要に応じて修正しましょう。
雇用契約書(ワード)のテンプレート
雇用契約書を必ず作成する必要はありませんが、労働者が働きやすい環境を整え、安心して働いてもらうためにも雇用契約書の作成がおすすめです。
マネーフォワードでは、雇用契約書(ワード)のテンプレートをダウンロードできます。パート社員用の雇用契約書ではありませんが、必要に応じてカスタマイズして使用可能です。
テンプレートは下記のフォームを記入すれば、無料でダウンロードできます。
雇用契約書の作成を検討している方や作成方法がわからずお悩みの方は、ぜひ利用してみてください。
パート社員と契約する際は雇用契約書を作成しよう
パート社員と契約する場合、雇用契約書の作成は任意です。しかし、雇用契約書を作成し、書面で条件を明記しておくと、労働者との信頼関係の維持とトラブルの回避につながります。また、パート社員と契約する際は明記すべき項目も増えるため、事前に確認したうえで作成することが重要です。
パート社員と契約するための雇用契約書の作成をご検討の場合は、当記事を参考にトラブルが生じないよう作成してみてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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