• 更新日 : 2022年9月1日

早見表つき!年収から手取りを計算する方法

給与は、支給額から税金と各種保険料が控除され支払われます。正確な手取りの計算には健康保険料・介護保険料厚生年金保険雇用保険に加え、所得控除を考慮にいれた所得税の算出、住民税の計算が必要です。ただし早見表があれば、手取りが一目でわかります。今回は手取り計算の基本と、手取りが少ないと感じた場合の対策について紹介します。

年収から手取りを計算する方法

会社勤めの人の場合、支払われた給与のうち、手取りとして実際に手元に入ってくる額は、「額面給与のおよそ75%~85%」になるといわれています。変動があるのは、年収によって税率や保険料の割合が変わるためです。

「額面給与」とは基本給や残業代、役職手当やその他手当など、会社から支払われる全てのお金の総額をいいます。そこから、税金と各種保険料など「控除」される額を引いたものが「手取り金額」です。

たとえば、額面給与の合計となる年収が400万円であれば、イメージとしてざっくりとした手取りの計算方法は以下のようになります。

400万円×0.75~0.85=300万円~340万円

額面の給与から控除されるお金

では、具体的にどのような項目が額面給与から控除されているのかを見てみましょう。給与から差し引かれる金額には、大きくわけて「税金」と「社会保険料」の2つがあります。

税金には「住民税」と「所得税」が含まれ、社会保険料には「健康保険」「介護保険」「厚生年金」「雇用保険」が含まれています。控除される金額は収入によって変動しますが、それぞれの項目毎に計算方法が定められています。

【額面給与から控除されるお金の種類】

「金額例」は、年収500万円(賞与なし・月額41.6万円)40歳・扶養家族なし・東京在住を想定した概算

区分項目解説金額例/月
税金所得税所得に対してかかる税金。手取りを含め毎月の給与にあわせて所得税は変動するが、会社員は国税庁の源泉徴収税額表により源泉徴収し、12月の年末調整で正確な金額を計算し差額を精算する。14.1万円
住民税居住している都道府県・市区町村に納める税金。前年の年収によって決まった額を翌年6月から均等割り(分割)して納める。24.6万円
社会保険料健康保険病院に3割の自己負担でかかれる国の医療保険制度。保険料は標準報酬月額と標準賞与額によって決まり、会社が加入する健康保険組合によっても変動する。会社が半額を負担する。24.2万円
介護保険国の各種介護サービスを1~3割の負担で受けられる制度。40歳以上で加入義務となり健康保険料と共に納める。会社が半額を負担する。4.4万円
厚生年金年金のために支払う保険。保険料は標準報酬月額と標準賞与額によって決まり、会社が加入する厚生年金基金によっても変動する。会社が半額を負担する。45万円
雇用保険一定期間加入していると、失業時に失業手当を受給できる。事業の種類によっても保険料率がが異なる。1.5万円

参考:令和3年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京都)|協会けんぽ
参考:雇用保険料率について|厚生労働省

所得税は所得総額から所得控除を引いて計算する

企業は、毎月暫定的な所得税額を従業員に支払う給与から天引きして納付しています。これを、源泉徴収といいます。源泉徴収で暫定的な金額を収め、年末調整で正確な所得税額を精算するため、12月(もしくは1月)の給与では、支払過ぎた所得税が還付される、もしくは足りない分を追加で支払うことが発生します。

なお、所得税は単純に全ての収入に税率をかけて計算されるわけではありません。給与から「給与所得控除」を差し引いて「所得金額」を算出し、さらにそこから「基礎控除」や「配偶者控除」、「扶養控除」などといった「所得控除」を差し引いて「課税される所得金額」を計算します。

最後に、算出した「課税される所得金額」に所得税率を掛けて計算したものが所得税の金額なります。

このように、所得税は稼いだ金額に加え、最終的に何をどれだけ控除するかで課税対象となる「課税される所得金額」が決まるため、1年の区切りに正確な計算をしてようやく金額が確定するものといえます。

所得控除についての詳細は、以下の記事を参考にしてください。

新卒1年目は発生しない住民税

住民税は1月1日に住民票があった都道府県・市区町村に対して支払う税金です。前年の年収をもとに税額が計算されます。新卒1年目の給与で住民税が天引きされないのは、計算のもととなる前年の年収がないからです。2年目から住民税控除が発生するため、ぐっと手取りが少なくなると感じることもあるでしょう。

社会保険料の標準報酬額

健康保険、介護保険、厚生年金では、月収に対して紐づけられた等級表をもとに決められた「標準報酬月額」とボーナスとして支払われた金額から1,000円未満の端数を切り捨てた「標準賞与額」をもとに保険料が計算されます。雇用保険は月収とボーナスに、厚生労働省の定める雇用保険料率をかけて算出されます。

標準報酬月額と標準賞与額には上限があります。健康保険・介護保険の標準報酬月額は50等級に該当する139万円、厚生年金の標準報酬月額は32級に該当する65万円が上限となります。また、標準賞与額については、健康保険・介護保険の場合は年間573万円(4月1日から翌年3月31日までの累計)、厚生年金保険月間150万円となります。賞与から天引きされる健康保険や厚生年金の保険料にも上限があることも覚えておきましょう。 

参考:社会保険料の計算方法

年収から手取りを計算できる早見表

健康保険料や住民税のように、前年度の年収に基づいて計算される性質のものは、「この年収に対していくらぐらい引かれるのか」と比較的イメージできますが、各種所得控除を考慮して算出される所得税の計算を即座にするのは至難の業です。

そこで、転職の検討時など、年収が変動した場合の手取りを予測するには、下記のような早見表が役立ちます。「年収×75%~85%」の計算式を元に、想定される手取りの範囲を「年収300万円」から「年収2000万円」まで早見表にまとめました。

【年収早見表(300万円~2000万円)】

年収おおよその手取り(75%)おおよその手取り(85%)
300万円¥2,250,000¥2,550,000
350万円¥2,625,000¥2,975,000
400万円¥3,000,000¥3,400,000
450万円¥3,375,000¥3,825,000
500万円¥3,750,000¥4,250,000
550万円¥4,125,000¥4,675,000
600万円¥4,500,000¥5,100,000
650万円¥4,875,000¥5,525,000
700万円¥5,250,000¥5,950,000
750万円¥5,625,000¥6,375,000
800万円¥6,000,000¥6,800,000
850万円¥6,375,000¥7,225,000
900万円¥6,750,000¥7,650,000
950万円¥7,125,000¥8,075,000
1,000万円¥7,500,000¥8,500,000
1,050万円¥7,875,000¥8,925,000
1,100万円¥8,250,000¥9,350,000
1,150万円¥8,625,000¥9,775,000
1,200万円¥9,000,000¥10,200,000
1,250万円¥9,375,000¥10,625,000
1,300万円¥9,750,000¥11,050,000
1,350万円¥10,125,000¥11,475,000
1,400万円¥10,500,000¥11,900,000
1,450万円¥10,875,000¥12,325,000
1,500万円¥11,250,000¥12,750,000
1,550万円¥11,625,000¥13,175,000
1,600万円¥12,000,000¥13,600,000
1,650万円¥12,375,000¥14,025,000
1,700万円¥12,750,000¥14,450,000
1,750万円¥13,125,000¥14,875,000
1,800万円¥13,500,000¥15,300,000
1,850万円¥13,875,000¥15,725,000
1,900万円¥14,250,000¥16,150,000
1,950万円¥14,625,000¥16,575,000
2,000万円¥15,000,000¥17,000,000

年収に比べて手取りが少ないと感じたら?

早見表を確認し「手取りが年収に比べて少ない…」と感じた場合、年収を上げる以外でも手取りをアップさせる方法があります。それは、各種適用される所得控除や税額控除を活用することです。控除には2種類があり、「所得金額」から一定のものを差し引く所得控除と「所得税額」から直接一定額を控除する税額控除があります。

先に述べた通り、所得税は、給与所得控除に加え各種所得控除額を差し引いた金額に対して所得税率をかけて計算します。つまり、「課税される所得金額」が小さくなればなるほど、支払う所得税が少なくなり、代わりに手取りがアップします。また、所得控除で抑えた「課税される所得金額」は、翌年の住民税の軽減という形でも影響します。

たとえ所得控除の条件を満たしていても、年末調整で企業に申告したり、自ら確定申告をしたりしなければ、税金対策のチャンスは得られません。以下の活用できる所得控除や税額控除の中から、利用頻度の高い代表的なものについて、ポイントを解説します。

社会保険料控除

社会保険料控除とは、健康保険料や厚生年金など、支払った各種保険料を所得から控除できるものです。一般的な会社勤めの場合、毎月の給与から天引きされている各種保険料が社会保険料控除として計算され、年末調整時に会社が申告します。

税金対策としてのポイントは、控除を受けられる社会保険料の対象が、自分だけでなく、「生計を一つにする配偶者やその他親族」である点です。たとえば、20歳以上の子の国民年金の保険料を親が代わりに支払っている場合、社会保険料控除に含めることができます。また、高齢者の親についても同様です。同居など「生計を一つにする」条件を満たしていれば、支払っている親の介護保険料などの社会保険料を社会保険料控除に含めることが可能です。

参考:No.1130 社会保険料控除|国税庁

生命保険・地震保険控除

支払った生命保険料や地震保険料も控除の対象となります。両方とも、年末調整で申告できる控除です。

生命保険料控除では、生命保険、介護医療保険、個人年金保険が対象となり、最大で12万円の控除を受けることができます。地震保険控除は、最大で5万円の控除が受けられます。

参考:No.1140 生命保険料控除|国税庁
参考:No.1145 地震保険料控除|国税庁

iDeCo(小規模企業共済等掛金控除)

個人型確定拠出年金であるiDecoで支払った掛金は、全額所得控除を受けることができます。掛金を納付した国民年金基金連合会より、「小規模企業共済等掛金払込証明書」を受け取り、企業の年末調整で申告します。

参考:No.1135 小規模企業共済等掛金控除|国税庁

医療費控除

1月1日から12月31日までの間、支払った医療費が原則10万円を超えた場合、医療費控除として所得から差し引くことができます。自分だけでなく、生活を一つにする配偶者やその他親族が支払った医療費も含めることが可能です。

出産に伴う定期検診や通院費用、不正咬合など歯科矯正の必要が認められる場合の歯科治療費、付き添いも含む通院交通費、対象となる医薬品の費用などを医療費控除に含めることができます。美容目的の手術や、ビタミン剤など病気予防として購入した医薬品の費用は対象にはなりません。

参考:No.1122 医療費控除の対象となる医療費|国税庁
参考:No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)|国税庁

医療費控除の計算は、以下のように「(AーB)ーC」で行います。

A.年間で自己負担で支払った保険料
B.生命保険会社や高額療養費など、保険金で補填された金額
C.10万円

この際、年間総所得金額が200万円以下の場合はCの値は「年収×5%」の金額を用います。つまり、年間総所得金額100万円の場合は「100万円×5%」で5万円以上の医療費を支払った場合に医療控除を受けられることになります。

また、条件を満たした場合、ドラックストア等で購入できる市販の特定の医薬品にかかる費用を控除できる「セルフメディケーション税制」を活用することも可能です。なお、医療費控除とセルフメディケーション税制の両方を活用することはできません。どちらかを選び、確定申告を行う必要があります。

参考:No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)|国税庁

住宅ローン控除

マイホームを住宅ローンを組んで購入したり、増築などの改修工事をしたりする場合、一定の要件を満たせば、住宅ローンの残高に応じた税金の控除を受けることができる税額控除の1つです。「所得金額」から差し引く所得控除とは仕組みが異なりますが、銀行などの住宅ローンを利用してマイホームを購入・建築したときに多くの方が利用している制度です。

住宅ローン控除を受けるには、年間の合計所得や住宅ローンの返済期間、住宅の床面積など細かな規定があります。要件を満たした場合、最大13年間、5000万円を上限としたローン残高の1%にあたる金額の控除を受けることが可能です。

住宅ローン控除を受けるには、会社員の場合1年目は確定申告を行い、翌年からは会社の年末調整で必要書類を提出し手続きします。

参考:マイホームの取得や増改築などしたとき|国税庁

ふるさと納税(寄付金控除)

「生まれ育った故郷にも何か貢献したい」「お世話になった自治体に何かしたい」そうした、居住地以外の場所に納税という形で貢献できる「ふるさと納税」を行った場合、寄付金控除の対象となります。寄付金控除は、確定申告が必要です。

控除できる金額は、以下のいずれかで算出した低い方の金額から2000円を差し引いた額になります。

  • その年に支出した特定寄附金の額の合計額
  • その年の総所得金額等の40%相当額

参考:No.1150 一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)|国税庁

ふるさと納税だけでなく、国や地方公共団体、社会福祉法人や公益財団法人、私立学校等への寄付金も、寄付金控除の対象となります。

転職の際などには額面の年収から手取りを確認しておこう!

給与が支払われる際、税金や各種保険料が引かれ、その上で手取りとして支払われます。転職や昇格で年収がアップしても、そのままの金額が自らの収入になるとは限りません。そのため、年収に対する手取りの目安を知っておくことは、キャリアや生き方を考える上での参考になります。

また、所得控除の種類を知っておくことで、住宅を購入したり、出産したりといった、ライフイベントに合わせて控除を活用し、納める税金額を抑えることができます。どのような方法で税金が計算され、自分の手取りに反映されているのか、正しく知ることは社会人として重要です。

所得控除や確定申告という単語には難しいイメージがあるかもしれませんが、一度制度を理解すれば翌年度からの手続きがぐっとスムーズになります。

よくある質問

額面の年収から控除されるお金にはどういったものがありますか?

大きく分けて、税金と社会保険料が控除されます。税金には所得税と住民税、社会保険料には健康保険、介護保険、厚生年金、雇用保険の保険料が含まれます。 詳しくはこちらをご覧ください。

年収に比べて手取りが少ないと感じたらどうしたらよいですか?

申請できる所得税控除を確認しましょう。控除を受けるために、医療費控除や住宅ローン控除など確定申告が必要となるものあります。iDeCoなど掛金が全額控除される資産運用を検討するのもいいでしょう。 詳しくはこちらをご覧ください。


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