• 更新日 : 2024年9月4日

メンター制度とは?効果やデメリット、適した人材の選び方を解説

メンター制度とは、メンターである先輩社員が若手社員との対等な対話を通じて、キャリア形成における課題解決や悩みの解消をサポートする制度です。メンター制度の導入により、職場への定着率の増加や人材育成を図れます。本記事では、メンター制度の概要、メリットやデメリット、メンターに適した人材の選び方などについて解説します。

メンター制度とは?

メンター制度とは、豊富な知識や職業経験のある職場内の先輩社員がメンターとなり、後輩社員であるメンティーに対して問題解決や職場内の悩みのサポートなどを行う個別支援活動です。本項では、メンター制度の由来、メンター制度の概要、メンター制度の導入目的について解説します。

メンター制度の由来

メンターという言葉の由来は、古代ギリシャ神話の長編叙事詩「オデュッセイア」の登場人物である賢者メントール(Mentor)です。賢者メントールは、王の息子に対して帝王学や学問を助言する立場にありました。この賢者メントールの果たした役割から、現代のメンター制度につながっています。

メンター制度の概要

メンター制度では、メンターのサポートを受ける新入社員や後輩社員などのことを「メンティー」と呼びます。メンティーは心理的な悩みやキャリア形成などについて、メンターに相談して問題を解決します。それにより、早期離職やモチベーション低下を防止し、優秀な人材へ成長していく流れです。このようなメンターがメンティーに対して行う一連のサポートやフォローによる指導法定を「メンタリング」と呼びます。

一般的にメンター制度では、メンティーの直属上司ではなく、社歴や年齢が近い部門や部署が異なる先輩社員が担当することが少なくありません。そのため、業務の相談よりも会社全体におけるサポートの意味合いが強いでしょう。

メンター制度の導入目的

メンター制度を導入する目的は、会社ごとに異なるものの、若手社員の定着率を上げることや、若手社員のキャリア形成や人材育成につなげることです。昨今では若手社員の離職率が高く、入社してもすぐに辞めてしまうことが問題になっています。気軽に悩みを相談できる先輩社員がいないことも離職理由の大きな原因です。

メンター制度の導入により、メンティーはメンターに心理的な悩みなどを相談できるため、若手社員の定着率を上げることにつながります。また、メンターがメンティーの課題解決や悩みの解消のサポートをすることで、キャリア形成や人材育成が可能です。

企業のメンター制度の導入状況

メンター制度を導入している企業は、大企業ほど多く、企業規模が小さくなるほど少なくなる傾向にあります。その中で、日本メンター協会が実施した「メンター制度導入実態調査」(メンター制度を導入している企業が対象)によると、メンター制度を導入する目的について、1位は「職場のコミュニケーションの活性対策」、2位は「メンタルヘルス対策」と回答しました。導入効果については、88.2%が「普通」から「非常に効果的」と回答しています。

また、社員の定着促進に有効な対策としては、1位が「コミュニケーションや人間関係に関する教育」、2位が「メンターとの定期的な対話」、3位が「不安や悩みに関する相談窓口の設置」を選んでいます。同調査は人事・総務に携わる業務や、メンター制度を管理・検討する業務に携わる人を対象にしていますが、職場のコミュニケーションの活性化、職場の人間関係に対する対策に課題を感じている人が多いようです。

参考:メンター制度導入目的の1位は、職場のコミュニケーション活性化|日本メンター協会

一方、厚生労働省の「女性社員の活躍を推進するための メンター制度導入・ ロールモデル紹介・ 地域ネットワークへの参加 マニュアル・事例集」よると、メンター制度を導入した効果として「キャリアや仕事に関する不安や悩みの解消」が一番多く、他に多いのは、「モチベーション向上の支援」「知識・スキル獲得の支援」などでした。

参考:メンター制度導入・ロールモデル紹介・地域ネットワークへの参加 マニュアル事例集|厚生労働省

メンター制度のメリット

メンター制度を導入することで、様々なメリットがあります。本項では、メンター制度のメリットについて解説します。

社員の早期育成がしやすい

メンター制度により、メンティーである新入社員や若手社員がメンターに質問や相談がしやすい環境を構築できます。そのため、メンティーはより早く職場環境に馴染み、早期の育成が可能です。また、メンターにとってもメンティーの育成により仕事への責任感が強くなり、自分の成長にもつながります。

コミュニケーションが活発化する

メンター制度により、メンターとメンティーが緊密なコミュニケーションを取る機会が増えることで、職場のコミュニケーションが活発化します。その結果、職場の雰囲気が良くなり、働きやすい職場環境を整えることが可能です。また、メンター制度は、他部署の先輩社員がメンターになることも多いため、広範囲の職場間のコミュニケーションの活発化にもつながります。

離職を防ぐ

新入社員や若手社員は、職場に対する悩みも多く、誰にも相談できないことにより離職するケースも数多くあります。メンター制度を導入していれば、メンティーである新入社員や若手社員は職場環境や業務に関する悩みをメンターに相談できるため、離職を防ぐことも可能です。メンター制度によりメンティーが日頃の悩みをすぐに相談できる環境が整っていることで、離職率の低下を図ることができます。

メンター制度のデメリット

メンター制度には数多くのメリットがありますが、デメリットもあります。本項では、メンター制度のデメリットについて解説します。

成果がわかりにくい

メンター制度を導入したからといって、すぐに効果が出るわけではありません。メンター制度の効果が出るまでには一定の時間がかかり、その間は成果がわかりにくいのがデメリットです。そのため、成果が出ない間も取り組みが疎かにならないように、長期的な視野に立って見ていく必要があります。

メンターとなる社員に負担がかかる

メンターとなる先輩社員は仕事が増えるため、負担がかかってしまうのがデメリットです。メンターの間は通常の業務を減らすなど、一定の配慮が必要でしょう。周囲のサポート体制がなければ、メンターのモチベーションの低下にもつながり、メンター制度の導入がかえって逆効果になる可能性があります。

メンターの質にバラツキがある

メンター制度が成果を上げるかどうかは、メンターを担当する先輩社員の能力によって変わります。メンターの中には、業務に対して力を発揮しても指導能力が低い人もいます。また、メンターと人間的に合わない可能性も捨てられません。必ずしもメンティーの育成や成長を促せるようなメンターばかりではないのです。

メンター制度の実施の流れ

メンター制度を導入するには、正しい流れで運用する必要があります。本項では、メンター制度の実施の流れについて解説します。

①導入目的を明確にする

若手社員の離職率の低下や、職場コミュニケーションの活性化など、会社によってメンター制度の導入目的は様々です。導入目的がはっきりと決まっていないままメンター制度を進めても、その後の運用がうまくいかない可能性が高いでしょう。メンター制度を導入するには、まずは導入目的を明確化することが大切です。

②実施計画を立てる

メンター制度の導入目的を明確化したら、制度が滞りなく進んでいくためにも、実施期間や期間中の目標などの実施計画を立てることが重要です。メンタリングの頻度や期間といったメンター制度の枠組みを作り、運用方法やルールを設定したら、運用マニュアルを作成するとよいでしょう。

③メンターとメンティーの選定

メンター制度の実施計画を作成したら、メンターとメンティーを選定します。メンター制度の成功には、メンターとメンティーのマッチングが重要です。メンターとメンティーの相性が悪ければメンター制度の導入がリスクになり、悪い方向に進んでしまうでしょう。

④事前研修を行う

メンターとメンティーを選定したら、メンターとメンティー両者とも事前の研修を受けるとよいでしょう。メンター制度の目的や進め方を理解していないまま進めても、スムーズにメンタリングが進んでいきません。メンター制度の目的やルールなどを知るためにも、事前研修を行いましょう。

⑤メンタリングを実施する

メンターとメンティー双方の事前研修が終わったら、実際にメンタリングを実施します。メンタリングは、事前に立てた実施計画に従って行います。計画に沿っていないメンタリングはメンターに負担をかけることになるため、避けるようにしましょう。

⑥評価と振り返り

メンタリングの実施期間が終了したら、やりっぱなしではメンター制度の効果は出ません。メンターとメンティーの双方からのアンケートやヒアリングなどにより、意見を集めることが大切です。集めた意見を基に課題やよい点を振り返り評価して、次回の制度運用に活かしましょう。

メンターとメンティーの選び方

メンター制度を導入した場合、メンターとメンティーを誰にするのかを選ばなければなりません。メンターとメンティーは、上下関係ではなく対等な立場で信頼関係を築き上げる必要があります。そのため、メンターは聞く力や受容力の高い、メンティーからの信頼を得られるような人物でなければなりません。

メンターとメンティーのマッチングの方法としては、「アサインメント方式」「ドラフト方式」などが考えられます。アサインメント方式とは、メンターとメンティーの年齢・経歴・思考などの要素から人事部門などの事務局が指定する方法です。一方、ドラフト方式とは、人事部門などの事務局が提示した複数のメンター候補からメンティーが選択し、事務局が最終決定する方法です。

メンターに適した人材とは?適性やスキル

メンター制度では、どのような人材がメンターになるかどうかで、メンティーの育成や成長度合いが変わります。メンターになるには、特別な能力が必要なわけではありません。しかし、一定の適性やスキルを保有している人材は、メンターに適しているといえるでしょう。

本項では、メンターに適した人材とは、どのような適性やスキルを保有しているかについて解説します。

総合的なコミュニケーション能力

メンティーが心を開いて心理的な悩みを打ち明けるには、総合的なコミュニケーション能力が必要です。メンティーと対等な立場を築ける力や話を聴く力、本音を引き出す力など、様々なコミュニケーションスキルが求められます。

マネジメントスキル

メンターに適した人材として、マネジメントスキルを保有している人材があげられます。マネジメントスキルが高い人材は、人材育成への意欲や責任感が強いため、メンティーの育成や成長に前向きに取り組むことが可能です。

業務実績や経験値

メンティーの不安や悩みを解決するのに、メンターに業務実績や経験値がなければ説得力がありません。メンターの今までの業務実績や経験値がメンティーの不安や悩みにマッチすれば、よりよいサポートを行えます。

メンター制度の導入を成功させるポイント

メンター制度を成功させるには、いくつかのポイントがあります。本項では、メンター制度の導入を成功させるポイントについて、解説します。

メンター制度の目的を共有する

メンター制度の目的は決まっているわけでなく、会社の事情によってそれぞれ異なります。メンター制度を導入する際には、メンターになる先輩社員に、制度の目的や実施方法を共有しなければなりません。メンター制度の目的を共有しなければ、メンターごとにメンタリングの方法が異なるため、制度が機能しなくなり成果が上がらない可能性が高いでしょう。

メンターのスキル向上を図る

メンター制度を成功させるためには、メンターのスキル向上が欠かせません。メンターのスキルを向上させるためには、研修や勉強会などを定期的に実施することが大切です。また、メンターのスキル向上には、会社全体で考えていくことも必要です。

定期的に効果測定を行う

メンター制度を成功させるには、メンターやメンティーにヒアリングなどをして、定期的に効果測定を行う必要があります。定期的な効果測定によりメンター制度が機能しているかどうかを客観的に検証することで、メンター制度を成功に導きやすくなります。

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メンター制度を導入するには、導入する目的や事前の制度設計が大切

メンター制度は、若手社員の定着率や人材育成に効果のある制度ですが、導入目的は会社ごとそれぞれ異なります。導入目的も考えずにやみくもにメンター制度を導入しても、うまくはいきません。

メンター制度の導入を考えている企業は、メリットデメリットをきちんと理解して、導入目的や事前の制度設計を構築することが重要です。


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