• 更新日 : 2024年6月18日

【2024年6月開始】定額減税とは?給与計算の方法と具体例をわかりやすく解説(令和6年6月開始)

政府の経済政策の一環として、定額減税が導入されることになりました。この制度は、従業員の税負担を軽減し、経済活性化を図るための取り組みです。給与計算の現場では、この定額減税の適用に際し、さまざまな対応が求められることになります。

本稿では、定額減税の概要や給与計算の具体的な方法、そして人事労務担当者が取り組むべき重要な業務について、わかりやすく解説していきます。

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定額減税とは?

まず、概要と背景、給与計算の担当者の業務に与える影響についてみていきましょう。

所得税・個人住民税が対象(令和6年分)

「定額減税」は、日本政府が「デフレ完全脱却のための総合経済対策」の一環として導入した制度です。この制度は、賃金上昇が物価高に追いついていない国民の負担を緩和する目的で、令和6年分の所得税及び令和6年度分の個人住民税の減税を実施しました。具体的には、納税者及び配偶者を含めた扶養家族1人につき、令和6年分の所得税3万円、令和6年度分の個人住民税1万円の減税を行うこととされました。

定額減税の対象は、令和6年分の所得税及び令和6年度分の個人住民税です。対象となるのは、令和6年分の所得税の納税者である居住者で、令和6年分の所得税に係る合計所得金額が1,805万円以下である人です。この合計所得とは、所得税法上の令和6年分の合計所得金額で、退職所得金額も含みます。退職所得の源泉徴収の際には定額減税を実施されません。令和6年分の退職所得を有する居住者は、確定申告により定額減税額の控除を受けることができます。給与所得者の場合、給与収入(賞与も含む)が2,000万円以下の場合に、定額減税の対象となります。

なお、役員に支払われる退職慰労金は、退職金とは全く同じものではありません。

役員退職慰労金についての詳しい解説は、こちらをご覧ください。

では、給与計算担当者の業務にどのような影響を与えるのでしょうか。給与計算担当者は、従業員の給与計算を行う重要な役割を担っています。その業務は、従業員の労働時間の集計、給与支給額の計算、保険料と税金の計算、給与の振込処理、社会保険料・税金の納付など、多岐にわたります。定額減税の導入により、給与計算担当者は新たな税制の適用とそれに伴う給与計算の変更を理解し、適切に反映させる必要があります。また、法律や社会保険制度の変更に対応するための知識更新も求められます。

定額減税の対象者と減税額

ここでは、定額減税の対象者と減税額について確認していきます。

定額減税の対象者

定額減税の対象者は、令和6年分所得税の納税者である居住者であり、かつ、令和6年分の所得税に係る合計所得金額が 1,805 万円以下である人です。

なお、 ここでいう「令和6年分の所得税額」とは、令和6年分所得税について、所得税法の規定等によって、所得控除、税率及び税額控除を適用して算出した所得税の額で、復興特別所得税の額は含まれません。

ただし、年末調整を除く給与等に係る源泉徴収税額からの控除の際には、所得税及び復興特別所得税が一体として納税されているため、その合計額から定額減税額を控除します。

定額減税額はいくら

定額減税額は、次の金額の合計額となります。

① 本人(居住者のみ) 30,000 円
② 同一生計配偶者または扶養親族(いずれも居住者のみ。以下「同一生計配偶者等」といいます) 1人につき 30,000 円

その合計額がその人の「令和6年分の所得税額」を超える場合には、控除される金額は、その所得税額が限度となる点は注意が必要です。

なお、「居住者」とは、国内に住所を有する個人、または現在まで引き続き 1 年以上、居所がある個人のことです。また、「同一生計配偶者」とは、その年の 12 月 31 日の現況で、納税者と生計を一にする配偶者で、年間の合計所得金額が 48 万円(給与所得だけの場合は給与等の収入金額が 103 万円)以下の人をいいます。

「扶養親族」についても、補足すると、その年の 12 月 31 日の現況で、次の4つの要件のすべてに該当する人を意味します。

① 配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族をいいます。)または都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人であること。
② 納税者と生計を一にしていること。
③ 年間の合計所得金額が 48 万円以下であること。
青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと、または白色申告者の事業専従者でないこと。

定額減税の給与計算方法(所得税)

給与所得、つまり扶養控除等申告書を提出している甲欄適用者については、その主たる給与の支払者のもとで、「月次減税」と「年調減税」の2つによって実施されます。事例を挙げてみていきましょう。

月次減税-6月からの給与計算で減税

月次減税は、令和6年6月1日以後、最初に支払を受ける給与等(賞与を含む)に係る源泉徴収税額からの控除(令和6年6月1日において主たる給与の支払を受ける人が対象)によって行います。

具体的には、源泉徴収すべき所得税及び復興特別所得税の合計額(控除前税額)から月次減税額を控除します。ここで控除しきれない部分の金額については、以後、令和6年中に支払う給与等に係る控除前税額から順次控除することになります。

月次減税額は賞与が先にある場合は賞与から減税処理しますが、例えば、月次減税額(定額減税)が30,000円、6月最初に支払う賞与の控除前の源泉徴収税額が36,556円の場合、月次減税額の全額を控除しきることができます。その後は、月例給与から従来の方法で源泉徴収します。

一方、6月に減税しきれなかった場合、その部分はそれ以降に支払う月例給与や賞与から順次控除します。本人のほか、同一生計配偶者や子などの扶養親族がいる場合は、月次減税額が高額になるため、このようなケースになることがあります。

年調減税-月次減税で精算できない分を控除

毎年12月に実施される年末調整の対象者であり、かつ、令和6年中に支払の確定した給与等を基に年末調整によって計算した年調所得税額がある人は、その年調所得税額から年調減税額を控除することになります。年調減税額は、年末調整時までに提出された扶養控除等申告書、配偶者控除等申告書及び「年末調整に係る申告書」の記載内容に基づいて計算します。

そして、年調所得税額から年調減税額を控除した後の金額(定額減税控除後の所得税額)に 102.1%を乗じて、復興特別所得税を含めた年調年税額を計算します。

定額減税の給与計算での留意点(所得税)

定額減税の計算方法についてみてきましたが、次に計算するに際しての留意点をいくつか挙げてみます。

合計所得金額が1,805万円を超える場合

例えば、給与収入が2,000万円など、合計所得金額が1,805万円を超えることが見込まれる場合、月次減税の対象となる基準日在職者であれば、月次減税の対象となります。

基準日在職者とは、令和6年6月1日現在、給与の支払者のもとで勤務している人のうち、給与等の源泉徴収において源泉徴収税額表の甲欄が適用される居住者の人であり、給与の支払者に扶養控除等申告書を提出している居住者の人のことです。

令和6年6月2日以降に就職をした場合

令和6年6月2日以後に就職した人は、月次減税の対象となる基準日在職者には該当しません。そのため、月次減税で精算できない分を控除する「年調減税」によって行います。

扶養親族の数に変更があった場合

月次減税額の計算は、あくまでも基準日在職者の提出した扶養控除等申告書に氏名等が記載されている「控除対象扶養親族」において、居住者である人を基準によって判定して行います。

したがって、令和6年7月以降に扶養親族の数が変わる場合は、扶養親族の数に変更があっても月次減税額の増額は行いません。この場合の定額減税額の差額の清算は、年末調整または確定申告によって行います。

定額減税後の個人住民税の徴収方法

定額減税では、令和6年分所得税だけでなく、令和6年度分個人住民税10,000円の減税を実施します。これは、所得税に比べて個人住民税の方が納税義務者数が多いことを踏まえ、減税効果を波及させることを視野に入れた措置です。

住民税は「普通徴収」と「特別徴収」のいずれかの方法で徴収されますが、両者では定額減税の徴収方法も異なります。

まず、給与所得に係る特別徴収では、令和6年6月分は徴収せず、「定額減税「後」の年税額」を令和6年7月分~令和7年5月分の 11 か月で均した税額を徴収することとされています。

一方、普通徴収の場合は、「定額減税前の年税額」をもとに算出した第1期分(令和6年6
月分)の税額から控除し、第1期分から控除しきれない場合は、第2期分(令和6年8月分)以降の税額から、順次控除して徴収するという流れになります。

定額減税で給与計算担当者が取り掛かること

最後に定額減税において、給与計算担当者の恒例業務との関係でいくつかポイントを挙げておきます。

控除対象者の確認(扶養控除等申告書)

定額減税の適用を受けるには、従業員一人ひとりの状況を確認する必要があります。特に重要なのが「扶養控除等申告書」の確認です。

この申告書には、従業員の扶養家族の有無や、所得の有無など、定額減税の適用条件に関する情報が記載されています。例えば、扶養親族がいる場合は控除額が減額される可能性があります。また、給与以外の所得がある場合も同様です。

給与計算担当者は、年初にこの申告書を確認し、従業員ごとの状況を把握する必要があります。さらに、年の途中で状況に変更があった場合も、随時申告書の更新を促す必要があります。

こうした申告内容の確認と管理は、定額減税の適用を正確に行うための不可欠な作業です。担当者は申告書の意味を十分に理解し、適切な対応を取らなければなりません。

帳簿(各人別控除事績簿)の作成

従業員ごとの定額減税適用状況を記録・管理するため、「各人別控除事績簿」の作成が重要となります。

この帳簿には、従業員の氏名、社員番号、扶養親族の有無、給与以外の所得の有無など、定額減税の適用条件に関する情報を記載します。そして、毎月の給与計算時に、実際に適用された控除額も記録していきます。

この帳簿を作成・管理することで、担当者は従業員の状況を一覧で把握できるようになります。また、年末調整時の計算根拠としても活用できます。

定額減税の導入により、給与計算業務は大幅に複雑化します。この帳簿の作成と適切な管理が、業務を適切に遂行するうえで欠かせません。

給与明細にも控除額を記載

定額減税の適用額は、従業員にとって重要な情報です。そのため、給与明細書にも控除額を明記する必要があります。

給与明細書には通常、所得税や社会保険料の控除額が記載されていますが、ここに定額減税の控除額を追加することが求められます。これにより、従業員は自身の手取り収入が増加したことを確認できるようになります。

また、給与明細に控除額を記載することで、従業員からの問い合わせにも迅速に対応できます。定額減税の導入に伴い、従業員から所得税額の変更に関する質問が多く寄せられることが予想されます。給与明細に控除額を明示しておけば、その情報提供に活用できるでしょう。

さらに、年末調整の際にも、給与明細の控除額情報が重要な根拠資料となります。この情報に基づいて、最終的な所得税や住民税の精算を行うことができます。

定額減税への対応を確実に行いましょう!

定額減税は、2024年の税制改正により導入された給与所得者向けの新しい所得税控除制度です。全ての給与所得者が対象となり、ほとんどの従業員の手取り収入が確実に増えることになります。

一方で、この制度の導入により、給与計算の現場では大きな業務変革が求められます。システム変更や年末調整の見直し、扶養控除の確認など、人事労務担当者には多くの新たな対応が必要となります。制度の理解と適切な業務プロセスの構築が重要になってきます。


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