• 作成日 : 2022年10月21日

賞与明細とは?見方や作成方法について解説!

一般的に賞与(ボーナス)は、年2回、夏と冬に支給され、毎月の給与明細とは別に賞与明細が発行されます。なかには普段から「給与明細はほとんど見ない。振込額を確認するだけ」という人も少なくないようですが、源泉控除されている所得税、社会保険料などは大切な情報であり、確認しておく必要があります。本稿では、賞与明細の見方や給与明細書との違いについて解説していきます。

賞与明細とは?

賞与明細とは、事業主が従業員に賞与を支払った際に交付する支払明細書のことです。法律的には、労働基準法において賃金台帳を整備することは義務付けていますが、賞与明細も含めて支払明細の作成および交付は義務付けていません。

しかし、所得税法231条には、「給与等、退職手当等又は公的年金等の金額その他必要な事項を記載した支払明細書を、その支払を受ける者に交付しなければならない」と規定されています。

賞与明細と給与明細の違い

では、賞与明細と月例の給与明細とは違いがあるのでしょうか。労働基準法では、そもそも賞与の支払は義務とはなっておらず、実際のところ支給しない企業もあります。

しかしながら、健康保険・介護保険料厚生年金保険では、名称を問わず、労働の対償として受けるすべてのもののうち、年3回以下のものを賞与とし、保険料の対象としています。

また、労働保険と総称される労災保険・雇用保険では、事業主がその事業に使用する労働者に対して賃金、手当、賞与、その他名称の如何を問わず労働の対償として支払うすべてのものを賃金総額として労働保険料を徴収します。

つまり、社会保険料については、賞与、給与いずれも支払いの際に控除されているため、ともに支払明細書には記載されています。言うまでもなく、所得税も同様です。

控除で異なるのは住民税です。住民税が控除されるのは給与のみです。。住民税は前年度に支払われた実績をもとに金額が確定するためです。

もう一つ、賞与と給与との違いとして、賞与は通常、業績評価、能力評価などで支給額が決定され、給与のように労働時間や労働日数を基準としないため、勤務時間の記載欄はないことになります。

時間外労働時間、深夜労働時間、休日労働時間についても同様であり、給与明細では不可欠ですが、賞与明細には記載しません。

賞与明細の見方

上記の理由によって、給与明細には、出勤日数、欠勤日数、有給日数などの勤怠欄がありますが、賞与明細には支払額欄と控除欄しかありません。

支給額欄には、支払われた賞与金額のほか、就業規則などの社内規定によって同時期に支払われた諸手当と合計額が記載されます。いずれも控除前の金額です。

控除額欄には、法律に基づいて源泉控除された雇用保険料、厚生年金保険料、健康保険料、介護保険料、所得税の金額と合計額が記載されます。労災保険料については、全額、事業主が負担するため、控除額欄にはありません。

そして、支払額欄の合計から控除額欄の合計を差し引いた金額が差引支給額として最後に記載されています。

賞与から控除される項目は?

改めて賞与から控除される、社会保険料と税金の項目の内容について確認しておきましょう。

健康保険料・介護保険料

健康保険の適用されている事業所に雇用されていれば、健康保険の被保険者となり(週の所定労働時間が20時間未満の場合は除きます)、健康保険料を納付する義務があります。

また、40歳以上であれば、介護保険の被保険者となるため介護保険料を納付しなければなりません。ともに負担は事業主と折半になっており、両方を一括して納付します。

厚生年金保険料

日本の公的年金制度は、2階建てになっています。1階部分はすべての国民が加入する国民年金(基礎年金)であり、会社員は2階部分に厚生年金が上乗せされています。健康保険料と同様、負担は事業主と折半です。

なお、会社員は国民年金にも加入していますが、国民年金保険料は納付しません。

雇用保険料

雇用保険は、失業時の生活保障として浸透していることもあり、失業保険といわれることが少なくありません。保険給付以外に、能力開発事業、雇用安定事業の二事業も行っています。保険料は、保険給付事業分は事業主と折半、二事業の分は全額事業主負担です。

所得税

所得税は、額面の賞与額から上記の社会保険料を差し引いた額が対象となります。

賞与明細の作成方法 – 実際に使えるテンプレート付き

賞与明細を作成するには、以下の所定の手順があります。

  1. 必要な書類の準備
  2. 支給額の計算
  3. 控除額の計算
  4. 賞与明細の記入

1.の必要書類としては、健康保険・介護保険・厚生年金保険の保険料額表、雇用保険料率表、扶養控除等申告書、賞与支払月の前月の給与明細、賞与の源泉徴収税額表があります。

2.の支給額の計算は、会社の賞与の支払基準によって算出します。

3.の控除額の計算では、健康保険・介護保険料・厚生年金保険、雇用保険料、所得税について、それぞれ1.で準備した保険料額表、保険率表、税額表を用いて所定の料率を掛けて算出します。

健康保険等の保険料額表は、毎年改定されるため、正しい保険料額表になっているか確認する必要があります。また、健康保険料については都道府県によって異なり、雇用保険料は年度によって料率が改定されることがあり、こちらも注意が必要です。

所得税は、前述のように額面の賞与支払額から社会保険料を差し引いた額に所定の源泉徴収税率を掛けて算出します。

源泉徴収税率は、国税庁による「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」で確認して適用します。

賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表|国税庁

その際、適用する賞与の料率は、支払月の前月の給与と扶養親族の人数をもとに決定されます。次のような流れになります。

イ.その人の前月中の給与等の金額から社会保険料を控除した金額を求めます。
ロ.扶養控除申告書で申告された扶養親族等の数と「イ」で求めた金額とに応じて、「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」の甲欄の横軸にある「前月の社会保険料等控除後の給与等の金額」欄の該当する行を求めます。
ハ.「ロ」で求めた行と縦軸の「賞与の金額に乗ずべき率」欄との交差するところに記載されている率が源泉徴収税率になります。
ニ.賞与の所得税を計算します。次の算式で求めます。
賞与の所得税=(額面の賞与額-賞与の社会保険料)×源泉徴収税率

以上の作業を経て、賞与明細に金額を記載します。賞与明細のテンプレートを用意していますので、必要に応じて利用してください。

賞与明細の見方を知っておこう!

支払明細書は、賞与明細に限らず、本来重要な書類です。支払いに誤りがある可能性もあり、その場合、早急に是正する必要があるからです。そのためにも、賞与明細の項目である支給額欄、控除額欄にどのようなものが記載され、どのように算出されているかなど、賞与明細の見方を知っておくことが大切になります。

よくある質問

賞与明細とはなんですか?

賞与が支払われた際に従業員に交付される支払明細書のことです。詳しくはこちらをご覧ください。

賞与から引かれる控除項目について教えてください。

健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、所得税です。詳しくはこちらをご覧ください。


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