• 更新日 : 2024年11月1日

タイムカードの計算ガイド【電卓・Excel対応】

正確な賃金支払いには、正確な労働時間の把握が欠かせません。タイムカード等を用いて把握した労働時間を基にして、支払うべき賃金が算出されます。

当記事では、タイムカード等を用いて把握した勤怠情報の計算について解説します。計算時の注意点や効率化のための施策などを紹介するため、ぜひ参考にしてください。

タイムカードの計算方法

従業員の勤怠管理には、タイムカードや勤怠管理システムなどが一般的に使用されています。従業員の出退勤時刻など、タイムカード等によって把握した勤怠情報は、電卓やExcelなどを用いて集計されます。それぞれの方法の特徴を把握しましょう。

2019年4月より、タイムカード等による客観的な方法による労働時間の把握が会社に義務付けられています。そのため、現在では自己申告による労働時間の把握は、原則として認められません。

参考:客観的な記録による労働時間の把握が法的義務になりました|厚生労働省

電卓による集計

タイムカードの集計に、電卓を用いる会社もまだまだ多く存在します。電卓は、普段の業務でも使用されており、勤怠情報の集計のために特別の訓練や教育は不要です。使い慣れた方法であり、すぐに導入可能な点がメリットでしょう。また、通常電卓はそれほど高額なものではないため、導入におけるコストが低い点もメリットです。

しかし、電卓を用いた集計は、手作業で行われるため、抜け漏れなどの集計ミスが起きてしまいがちです。また、時間も多く要してしまい、他の業務の妨げにもなりかねません。ミスが起こりやすく、非効率的である点は、電卓による集計のデメリットといえるでしょう。

Excelによる集計

Excelなどの表計算ソフトもタイムカードの集計に広く採用されています。Excelも通常の業務で使用されており、電卓同様導入に当たって特別の訓練や教育が不要なことが多い点がメリットです。また、関数などを用いると自動で集計できるため、電卓に比べて効率的な集計作業を行えるでしょう。

ただし、人の手による入力が必要な点は変わりがないため、ミスをなくすことは難しいです。また、Excelの使用に長けた従業員ばかりではないため、不慣れな従業員に対しては、指導等が必要です。PC等がない勤務先で導入する場合には、新たな端末の購入が必要な点もデメリットとなります。

タイムカードの計算時に注意すべきポイント

タイムカードの計算では、いくつかの注意すべきポイントが存在します。ポイントごとに解説するため、正確な計算に役立ててください。

15分・30分単位の切り捨ては違法

労働時間の計算は、原則として1分単位で行わなければなりません。労働時間の切り捨てを行ってしまえば、従業員が実際に働いた時間よりも短い時間に対して賃金が支払われることになってしまいます。また、正確な労働時間も把握できません。

たとえば、本来の労働時間が7時間30分であるにもかかわらず、30分を切り捨て7時間として集計した場合、切り捨てられた30分に対しては賃金が支払われないことになります。このような行為は、労働基準法第24条に定められた「賃金全額払いの原則」に違反する行為です。労働時間の計算は1分単位で行いましょう。

参考:労働基準法|e-Gov法令検索

着替えなどの準備時間も労働時間に含める

労働時間とは、会社や個人事業主などの雇用主の指揮命令下に置かれた時間を指します。業務を行うために必要な着替えの時間や、業務後の清掃時間、参加を強制される社内行事の時間なども労働時間として含めて集計することが必要です。本来労働時間に含めるべきこれらの時間を除いてしまうと、正確な労働時間が把握できず、不正確な賃金支払いにつながってしまいます。

月単位での端数処理は可能

すでに述べた通り、タイムカードによる労働時間の計算は、1分単位で行うことが原則です。しかし、時間外労働や、休日労働、深夜労働の場合であれば、例外的な処理方法が認められています。1か月における時間外労働等の合計時間に、1時間未満となる端数が存在するのであれば、30分未満となる部分は切り捨て処理を行い、それ以上の時間を1時間として切り上げることが可能です。

ただし、これは時間外労働時間等に限定された処理です。通常の労働時間であれば、原則通りの1分単位で把握し、計算することが求められ、このような取扱いは許されません。

残業等の割増賃金は別途計上する

タイムカードの計算では、通常の労働時間だけでなく、時間外労働や深夜労働、休日労働などの時間も別途把握しなければなりません。これは、時間外労働等の時間が、通常の労働時間とは異なり、割増賃金の支払いが必要となるためです。

割増賃金の支払いが必要となる時間と、割増率は以下のとおりです。

対象となる労働時間割増率

時間外労働

月60時間以下25%
月60時間超50%

休日労働

35%

深夜業

25%

時間外+深夜業

月60時間以下50%
月60時間超75%

休日労働+深夜業

60%

2023年4月より、大企業だけでなく、中小企業に対しても、月60時間超の時間外労働に対する50%の割増率が適用されています。正確に労働時間を把握し、法定の割増率を適用しましょう。

参考:月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます|厚生労働省

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タイムカードの計算を誤った場合のリスク

タイムカードの計算を正確に行わなければならないことは、言うまでもありません。しかし、タイムカードの計算ミスなどがあった場合には、どのようなリスクがあるのでしょうか。

従業員のモチベーション低下

タイムカードの計算ミスなど、不正確な勤怠管理が行われれば、不正確な賃金計算につながってしまいます。賃金は、従業員の生活に直結する最重要の労働条件です。その賃金の支払いにミスがあれば、従業員の業務に対するモチベーションも大きく下がってしまい、最悪の場合には、離職という選択肢を選んでしまうかも知れません。不正確な勤怠管理は、従業員の信頼を大きく損なうことであると理解しましょう。

労働基準監督署からの指導

タイムカードの計算ミスによる不正確な勤怠管理によって、本来支払われるべき賃金が支払われなかった場合には、労働基準監督署から指導を受ける場合もあります。未払いとなった従業員から申告を受けた労働基準監督署は、会社に対して調査を行い、法令違反がないか確認します。法令違反があると判断した場合には、是正勧告書を交付し、期日までに違反事項の解消を求めるのです。

是正勧告は、行政指導であり強制力はありませんが、法令違反があった事実は消えません。労働基準監督署から指導を受けた会社は、大きく信頼を落としてしまうでしょう。

6カ月以下の懲役、または30万円以下の罰金

タイムカードの計算ミスによって、賃金の未払いが起きた場合には、罰則が科される恐れもあるため注意が必要です。賃金の未払いは、労働基準法第24条違反であり、同法第120条により、30万円以下の罰金が予定されています。

また、割増賃金の対象となる時間外労働時間等を正確に把握せず、正しく割増賃金が支払われなかった場合には、労働時間基準法第37条違反となります。この場合には、同法第119条により、6カ月以下の懲役、または30万円以下の罰金が科されるため、正確な把握を心掛けなければなりません。

実際に罰則を科された場合には、会社の評価を落とすことになり、その後の事業活動にも影響を及ぼしてしまうでしょう。また、賃金の未払いを行うような会社であると知られれば、求人活動にも影響が出てしまいます。

参考:労働基準法|e-Gov法令検索

タイムカードの勤怠管理を正確に行うコツ

勤怠管理を正確に行うためには、どのような施策を取り入れればよいのでしょうか。勤怠管理を正確に行うためのコツをご紹介します。

ダブルチェック体制を敷く

電卓やExcelでの計算など、タイムカードの集計が人の手によるものである以上は、ヒューマンエラーを完全になくすことはできません。しかし、作業者だけではなく、他の者も計算結果を確認をすれば、誤りに気付く可能性も高まります。正確に勤怠管理を行うためには、計算結果に対して、ダブルチェックが可能となる体制を敷くことが有効です。

環境構築や従業員の教育

タイムカードの押し忘れなどがあれば、記憶に頼った自己申告による労働時間の把握を行わなければなりません。これでは、正確な勤怠管理は望めないでしょう。タイムレコーダーを従業員の目に付きやすい場所に設置し、押し忘れしにくい環境を構築しましょう。

また、正確な勤怠管理の重要性を説明し、従業員の意識を高めることも有効です。正確な勤怠管理の重要性を理解すれば、自ずと押し忘れも減っていくはずです。

アウトソーシングを行う

正確な勤怠管理には、労働基準法をはじめとする労働関係法令の知識が不可欠です。労働時間の上限や、適用される割増率などについて、担当者が正確な知識を持っていなければ正確な勤怠管理も望めません。

しかし、改正の多い労働関係法令の知識を習得し維持することは容易ではなく、担当者の負担も大きくなります。そのため、専門的な知識を持つ社会保険労務士や、代行業者へアウトソーシングすることも検討に値します。アウトソーシングを行うことで、正確な勤怠管理が図れるだけでなく、空いたリソースをコア業務に注力できるようになるため、生産性の向上も望めるでしょう。

タイムカードの計算を効率化する方法

タイムカードの集計など、勤怠管理は多くの手間が掛かる業務です。勤怠管理を効率化する方法を紹介します。

クラウドベースの勤怠管理システムを導入する

勤怠管理を効率化するためには、クラウドベースの勤怠管理システムを導入する方法がおすすめです。たとえば、「マネーフォワード クラウド勤怠」では、PCやスマートフォンなどの複数の打刻方法が選択可能なため、出先であっても打刻が可能です。アラート機能も備えられており、打刻漏れの防止も図れます。

マネーフォワード クラウド勤怠では、勤怠データは自動的に集計されます。手作業による集計よりも効率的に勤怠管理を進められるでしょう。外部のソフトとも連携可能であり、データ連携することで、集計と転記の自動化も可能です。自動化による効率化だけでなく、転記ミスを減らすことで、正確な勤怠管理にもつながります。

参考:脱タイムカード!直感的に操作できるクラウド勤怠管理システム|マネーフォワード クラウド勤怠

給与計算ソフトを導入する

正確な賃金計算を行うためには、頻繁に行われる法改正にも対応する必要があります。健康保険料率などは毎年見直されるため、確認が欠かせません。時間外労働等の割増率が見直される場合もあります。Excelなどの表計算ソフトを使っている場合には、これらの保険料率や割増率を毎回変更することが必要です。しかし、非効率的であるだけでなく、計算ミスも誘発してしまいます。

給与計算ソフトを導入すれば、法改正にも自動的に対応してくれるため、改正のたびに保険料率や割増率を確認する必要もなくなり、効率化が図れます。また、給与計算ソフトのサポートがあるため、専門的な知識を持っていなくても業務を担当できるようになるでしょう。給与計算ソフトを導入すれば、業務の効率化を阻む属人化の解消も望めます。

効率的なタイムカードの計算で正確な賃金の支払いを

正確な勤怠管理は、正確な賃金の支払いのためにも欠かせません。しかし、タイムカードの計算を手作業で行っていては、勤怠管理も非効率的なものになってしまいます。当記事で紹介した勤怠管理システムなど、効率化を助ける方法を取り入れ、業務の効率化を図るとともに、正確な知識を身につけて、ミスのない賃金支払いにつなげましょう。


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