- 更新日 : 2024年6月21日
縁故採用とは?導入のメリット・デメリット、面接の注意点を解説
縁故採用とは、自社の社員の紹介でその血縁者や友人などを採用することです。縁故採用を検討中の人の中には、「縁故採用とリファラル採用の違いは?」「違法ではない?」などの疑問を感じる人もいるでしょう。
本記事では、縁故採用の意味やメリット・デメリットについて解説します。縁故採用を成功させる方法も紹介しますので、採用対策の1つとして検討してみましょう。
目次
縁故採用とは?
縁故採用とは、自社の役員や社員、取引先などの紹介でその血縁者や友人、知人などを採用することです。個人的なつながりを利用した採用方法の1つです。
企業が縁故採用する理由はさまざまですが、社内の役職者や有力取引先の縁故者の就職先確保が主な目的であると見られることもあります。そのため、実力よりもコネ(コネクション)で採用されたという意味の「コネ採用」という言葉が良くないイメージで使われます。
採用選考については、形式的な面接だけで採用に至るケースや、ほかの採用候補者と同じように書類選考や試験、面接をした上で採用するケースなど、さまざまです。
縁故採用の由来
縁故とは、「血縁・姻戚(いんせき)などによるつながり」「人と人との特別なかかわりあい」という意味です。血縁者や特別なかかわりを持つ友人・知人を採用することから、縁故採用という言葉が生まれました。
縁故採用は古くから行われていましたが、企業規模が大きくなり大量の従業員を採用するために人材の公募が主流となりました。そのため、公募と区別するために縁故採用という言葉が使われます。
縁故採用の法律的な問題、違法性や禁止について
一般公募で採用活動する人の中には「縁故採用は不公平だ」という人もいますが、法律的に問題はないのでしょうか。違法性や企業の対応について解説します。
民間企業は縁故採用を規制する法律はない
民間企業の採用については、縁故採用を規制する法律はありません。つまり、民間企業での縁故採用は違法ではないということです。
ただし、採用内定者が縁故採用によって内定取り消しになった場合など、他人に不利益を与えたり、労働法上の権利を害したりすると判断されれば、法律上の責任を問われる可能性があります。
縁故採用を禁止する企業も多い
民間企業の縁故採用は違法ではありませんが、縁故採用を禁止する企業も多いのが現実です。内規や慣習として縁故採用を禁止する企業や、募集要項で縁故採用の禁止を明確にしている企業があります。従業員や採用候補者から縁故採用に対する不満が生じやすいなど、さまざまなデメリットがあるためです。デメリットの詳細は後述します。
公務員の縁故採用は禁止
公務員の採用では、「国家公務員法」や「地方公務員法」で縁故採用が禁止されています。そのため、公務員の縁故採用は違法です。
国家公務員法では、職員の任用は「受験成績、人事評価又はその他の能力の実証」に基づいて行い、採用は「競争試験」により行うとされています。
縁故採用とリファラル採用との違い
縁故採用とよく似た採用方法に、リファラル採用というものがあります。リファラル採用とは、自社の役員や社員から紹介・推薦された人材を採用することです。社員などの個人的つながりを採用活動に活かすという点は縁故採用と同じですが、違いも多くあります。
一概に言えませんが、縁故採用とリファラル採用では次の傾向があります。
(縁故採用とリファラル採用の違い)
縁故採用 | リファラル採用 | |
主な目的 | 紹介者の縁故の就職先確保 | 企業に必要な人材の確保 |
採用選考 | 選考過程の一部が省略される | 通常の採用選考 |
選考基準 | 紹介者とのかかわり | 経験や能力、スキル |
採用の可能性 | 可能性が高い | 本人の実力次第 |
採用することを前提とした縁故採用に対し、リファラル採用は優秀な人材を採用選考に送り込むことを目的としていると言っていいでしょう。
縁故採用のメリット
コネ採用と呼ばれるように縁故採用には良くないイメージもありますが、メリットもあります。応募者と企業それぞれのメリットについて解説します。
応募者側のメリット
応募者のとって大きなメリットは、応募する前に紹介者から仕事内容や職場の雰囲気などを教えてもらえることです。一般の応募者では得られない情報も期待できるため、希望や適性に沿う会社であるか判断しやすくなります。入社後のギャップも少なくて済みます。
また、選考過程の一部が省略されたり、採用されることが事前に決まっていたりすることもあるでしょう。入社後も、紹介者がいることで安心して働けます。
企業側のメリット
企業にとっては、応募者に関する詳しい情報を入手できるため自社への適性を判断がしやすくなるというメリットがあります。入社後のミスマッチを減らすことにより、早期退職のリスクを減らす効果も期待できます。
また、縁故採用で人材が確保できれば、求人広告などの採用コストが削減できるでしょう。選考過程の一部を省略すれば、採用選考に要する手間や時間も減らせます。
縁故採用のデメリット
縁故採用を禁止する企業も多いことからわかるように、縁故採用には大きなデメリットもあります。応募者と企業にとってのデメリットを解説します。
応募者側のデメリット
縁故採用に対して不公平感や不満を抱く人がいて、入社後の人間関係がうまくいかないこともあります。先輩からきつい態度を取られたり、周囲の目が気になったりすると、仕事に集中できないだけでなく会社に行くのが嫌になることも考えられます。
また、紹介者の期待がプレッシャーになることや、退職したくても紹介者の手前、自由に決断できないこともあるでしょう。
企業側のデメリット
縁故採用に対しほかの社員が不満を感じ、モチベーションやロイヤリティが下がるリスクがあります。その結果、組織の一体感がなくなり生産性が下がるなどすれば、企業にとって大きな損失です。
紹介者が社内で力を持っていた場合、縁故者に問題があっても、不採用にしにくい、厳しく注意しづらい、解雇するのが難しい、などの問題も発生します。
また、企業が多様な人材の確保や大人数の採用を望む場合、縁故採用という採用方法はあまり効果的ではありません。
縁故採用の導入が向いている企業
縁故採用にはメリットとデメリットがあるため、縁故採用の有用性は企業によって異なります。縁故採用の導入が向いている企業の主な特徴は次の通りです。
- 人材確保に苦戦している
- 従業員の定着化を図りたい
それぞれについて解説します。
人材確保に苦戦している
求人募集しても応募者が少なく人材確保に苦戦している企業にとっては、縁故募集で採用チャネルを増やすことは有効です。
人手不足が深刻化し人材獲得競争が激しくなっているため、中小企業や知名度の低い企業では求人サイトや人材紹介会社を利用しても応募者が集まりにくい状況です。採用対策で手詰まりになっているなら、縁故採用の導入を検討してみましょう。
また、就職活動は売り手市場で、応募があっても採用に至らないことが多いでしょう。縁故採用なら、人間関係を活用して採用につながる確率が高くなります。
従業員の定着化を図りたい
苦労して採用した従業員がすぐに辞めてしまい、人材の定着化を図りたいと考える企業にとって、縁故採用は選択肢の1つだといえます。事前に紹介者から仕事内容や職場の雰囲気が聞けるため入社後のギャップも少なく、仕事でも紹介者のフォローが期待できるためです。
また、紹介者の立場を考慮して、安易な気持ちでの退職や転職を思いとどまることもあるでしょう。
縁故採用を成功させるコツや注意点
縁故採用のデメリットを抑えて成功させる主なポイントは次の通りです。
- 公平性を確保する
- 社内の協力を得る
- 面接時の質問内容
- 不採用時の対応
各ポイントについて解説します。
公平性を確保する
縁故採用でもっとも気をつけたいのは、採用者の入社後の取扱いです。配属や仕事内容、昇進などについて、ほかの社員との公平性を確保するようにしましょう。
紹介者がいることで特別扱いするとほかの従業員の反発を招き、職場の雰囲気が悪くなったり、採用者が職場や仕事になじめなくなる恐れがあるからです。
社内の協力を得る
採用者が職場や仕事に早く慣れるように、社内の協力を得て適切にフォローすることも重要です。縁故採用ということで、肩身の狭い思いをしたり、周囲に気を使ったりしていることもあるためです。逆に、周囲の人が採用者に気を遣いすぎることも考えられます。
配属前に上司や所属員と話し合い、縁故採用として特別視せず、ほかの新入社員と同様に企業の将来を担う人材として育成するというコンセンサスを得ましょう。
面接時の質問内容
縁故採用の場合、応募者も企業も事前にお互いの情報をある程度知っているため、選考過程の一部を省略することや、面接も世間話程度に終えることもあります。
しかし、企業の戦力として期待し適性を見て配属・育成する必要があるため、ほかの応募者と同様に知識やスキル、志望動機、希望などについて確認しましょう。紹介者に声を掛けられたから、軽い気持ちで応募したということも考えられます。
不採用時の対応
社内の従業員から紹介された応募者を不採用にする場合、事前に紹介者に伝えるのが一般的です。不採用の理由も伝えますが、紹介者に不快感を与えずに納得してもらえるよう気をつけましょう。
事前に、応募したからと言って必ずしも採用できるわけではないことを紹介者に伝えておくことも重要です。
縁故採用を採用チャネルの1つとして検討してみよう
縁故採用には入社後のミスマッチを減らし採用コストを削減できるというメリットがある反面、ほかの社員が不公平感を与えるというデメリットもあります。
縁故採用を禁止する企業もありますが、新規採用が難しい企業は採用チャネルを増やすことも検討しなければなりません。少子高齢化で人手不足がさらに深刻化することも予想されるため、従来の採用方法に加え縁故採用の導入を検討してみましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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