• 更新日 : 2023年7月28日

契約社員とは?パートとの違いやメリット・デメリットを解説

契約社員とは、契約期間に定めのある有期労働契約の社員です。正社員は契約期間に定めのない無期雇用なのが契約社員との違いとなります。

有期契約社員にはデメリットしかないと思われがちです。正社員を雇用せず契約社員にする理由はどこにあるのでしょうか。

当記事では契約社員とパートの違い、企業が契約社員を雇用する理由などを紹介します。

契約社員とは?

近年、働き方が多様化しており、正社員だけでなく契約社員、派遣社員、パート、アルバイトなどさまざまな雇用形態があります。多様な業務形態や幅広い事業展開を実現するためには、正社員以外の人員も必要不可欠です。人件費を抑えるという意味でも、これらの雇用形態は必須といえるでしょう。ここでは、契約社員の概要とともに、正社員やパートとの違いを解説します。

契約社員と正社員の違い

契約社員とは、労働契約法に基づき雇用期間に定めのある有期労働契約を結んだ労働者を指します。契約社員は法律で定められた名称ではないため、準社員や限定社員、期間社員、臨時社員、嘱託社員、非常勤、期間工など、その呼び方は会社や業種・業態によってさまざまです。

一方、正社員は、民法623条に基づき雇用期間に定めのない無期労働契約を結んだ労働者を指します。契約社員と同様、正社員も法律で定められた名称ではありません。非正規雇用に該当し契約期間が有限の契約社員に対し、正規雇用で契約期間が無限の正社員は、途中で退職などをしない限りは定年まで働き続けるのが一般的です。

契約社員の業務内容や労働形態については、企業と労働者の労使間で取り交わす労働契約に従い決まります。労働時間については、正社員と同様にフルタイムで働くのが一般的です。労働条件通知書や雇用契約書などに残業命令について規定されている場合は、36協定に従い残業もしなければなりません。

なお、契約社員には残業代が出ないという風説もありますが、契約社員は正社員と同様に労働基準法が適用されるため、時間外労働割増賃金が支給されます。残業代を支給しないと労働基準法違反に問われるため、注意しましょう。

健康保険や厚生年金保険などの社会保険については、一定の条件を満たすことで契約社員も加入が可能です。福利厚生については会社によって対応が異なりますが、契約社員には一部の制度が適用されない場合もあります。退職金の支給は会社の義務ではなく、退職金制度がある場合でも3年以上働いた労働者が対象の場合が多いため、契約社員には支給されないのが一般的です。

参考:労働契約法(第四章) | e-Gov法令検索
参考:民法(第六百二十三条) | e-Gov法令検索

契約社員とパートの違い

パートタイム労働者は、同じ事業所に雇用されている通常の労働者より1週間の所定労働時間が短い労働者です。「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」いわゆるパートタイム・有期雇用労働法においては、短時間労働者として定義されています。パート、パートタイマー、アルバイト、準社員、臨時社員など呼び方さまざまですが、この定義に該当するすべての労働者は短時間労働者という扱いです。

契約社員は一般的にフルタイムで働くケースが多いため、短時間労働のパートタイマーと最も大きな違いは労働時間となります。また、契約社員は月給制の場合が多いため、時給制で働くことの多いパートタイマーより収入を得やすい点は大きなメリットです。契約期間内であれば、カレンダーやシフトに影響されず、安定して毎月一定の収入を得られます。

業務内容については、労働契約の内容に従い労務を提供する契約社員に対し、パートタイマーは正社員の指示監督に従い働くのが一般的です。契約社員は、正社員に準ずるより高度な業務を任せられる可能性もあるため、パートタイマーより責任が重い雇用形態といえます。

また、一定の条件を満たせばパートやアルバイトでも社会保険に加入できますが、所定労働時間の長い契約社員は健康保険や厚生年金保険に加入しやすい点はメリットです。

なお、前述のパートタイム・有期雇用労働法は、正社員との不合理な待遇格差を是正し、短時間労働者や有期雇用労働者の労働環境改善を目指す法律となっています。対象には有期雇用の契約社員も含まれるため、契約社員を雇用する場合は労働基準法や労働契約法だけでなく、パートタイム・有期雇用労働法の遵守にも努めましょう。

参考:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(第二条) | e-Gov法令検索
参考:パートタイム労働者、有期雇用労働者の雇用管理の改善のために|厚生労働省
参考:さまざまな雇用形態|厚生労働省

契約社員の契約期間について

契約社員の契約期間は、労働基準法第14条に基づき原則3年が上限と定められています。専門的な知識・技術・経験などを有する労働者や、満60歳以上の労働者の場合は、最長5年の契約が可能です。

企業と労働者の労使間合意に基づき契約期間を定めた労働契約は、契約期間の満了をもって更新又は終了することになります。なお、有期契約社員を合理的な理由なく契約期間の満了前に解雇することは、権利を乱用したとして無効です。やむを得ず解雇する場合は、30日前までに解雇予告を行うか、解雇予告手当を支給しなければなりません。

なお、労働基準法には契約期間の上限については規定されているものの、下限に関する記載はない点に注意が必要です。例えば、2ヶ月、1ヶ月、1週間などの短期間だけでなく、1日単位の労働契約、いわゆる日雇いなども有効とされています。このような短期間の雇用契約は、民法第521条に基づく契約自由の原則や、さまざまな労働需要に対応するためのものです。ただし、突然の雇い止めなどを防止するため、労働契約法第17条には、必要以上に短い契約期間を定め、反復して更新しないよう配慮しなければならない、と定められています。

有期労働契約が5年を超えて更新された場合は、労働者の申し出により労働契約法第18条に従い無期契約に転換することが可能です。申し出を受けた企業は、合理的な理由なくこれを拒否することはできません。ただし、無期契約に転換したからといって、ただちに正社員になれるというわけではありません。

参考:労働基準法(第十四条) | e-Gov法令検索
参考:労働契約(契約の締結、労働条件の変更、解雇等) |厚生労働省
参考:民法(第五百二十一条) | e-Gov法令検索

契約社員のメリット・デメリット

まず、契約社員として働く従業員側のメリット・デメリットを説明します。契約社員のメリットとして挙げられるのは、正社員と同等水準の給与が得られる可能性がある、ということです。パートタイム・有期雇用労働法の施行に伴い、同一労働同一賃金が原則となったため、正社員に準ずる業務を担っている場合は、同等水準の給与が期待できます。また、契約社員は原則転勤や異動がないのも大きなメリットです。入社が比較的簡単でライフプランに合わせてさまざまな職種を経験しやすく、ワークライフバランスを取りやすい契約社員は、今どきの働き方といえるかもしれません。

一方、契約期間が有限で雇用が安定しないことが最大のデメリットです。契約が更新されない可能性もあるため、身の振りについては常に考えておかなければなりません。また、正社員に比べると賞与や退職金が少ないこと、福利厚生に一部制限があるケースなどもあります。

続いて、企業が契約社員を雇用する最大のメリットは、雇用調整がしやすくなることです。人員が不足しているときは雇用を増やし、不要な際には減らすといった調整が比較的簡単に行えます。また、正社員に比べると人件費を抑えられる点も、企業にとってはメリットです。

デメリットとしては、契約社員には責任の伴う業務を任せにくく、契約終了に伴い貴重な人材が流出してしまう恐れがあることなどが挙げられます。契約社員の入れ替わりが激しいと、教育・指導を行う負担も増えてしまうでしょう。また、契約を更新しない場合でも、一定の配慮をしなければならない点には注意が必要です。

参考:同一労働同一賃金特集ページ |厚生労働省

企業が正社員ではなく契約社員を採用する理由

企業が正社員ではなく契約社員を雇用するには、さまざまな理由があります。1つ目の理由は、変動する需要に対応するためです。契約社員は正社員に比べ雇用調整が行いやすいため、繁忙期や閑散期などのニーズに対応しやすくなります。

2つ目の理由は、正社員登用を前提としたトライアル目的です。求めるスキルや知識を有しているか、社風や職場環境に馴染めるかなどを、契約期間内に確認します。3つ目の理由は、業務の遂行に高度なスキルが求められる場合です。経験豊富で即戦力となる契約社員を雇用することで、社員を育成する時間とコストを削減できます。

契約社員は雇用期間に定めのある労働者

今回は契約社員について解説しました。契約社員とは、雇用期間が原則3年、最長5年と定められた有期労働契約の社員です。無期労働契約の正社員とは、契約期間の有無が異なります。

契約社員は雇用が安定しないため、デメリットしかないとの風潮があるのも事実です。しかし、法改正によって急な雇い止めがしにくくなり、同一労働同一賃金の原則に従い給与水準も正社員に近づきつつあります。

さらに、原則転勤や異動がない、入社しやすくさまざまな職種を経験しやすい、ワークライフバランスを取って働きやすい点なども、契約社員ならではのメリットです。企業にとっても、雇用調整がしやすく人件費が抑えられるなどのメリットがあります。

ネガティブに捉えられがちな契約社員ですが、今どきの働き方として再考してみるのもよいでしょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事