• 更新日 : 2024年2月29日

障害者雇用の給料は低い?平均給料や減額の特例について解説!

障害者雇用の給料は低い?平均給料や減額の特例について解説!

障害者雇用の労働者の給料は、一般雇用の労働者と比べ低いと言われています。

本記事では、障害者雇用の労働者の給料の現状、給料の水準が低い理由、給料の決め方などについて解説します。障害者雇用の労働者の給料に関するこれらの情報を踏まえ、意欲や能力の高い障害者雇用の労働者の待遇を改善し、自社の人材確保につなげましょう。

障害者雇用の給料は低い?

障害者雇用の労働者の給料は一般雇用の労働者と比べ低いのが実態です。障害者雇用の労働者の給料の水準は、厚生労働省が5年ごとに実施する障害者雇用実態調査に基づき公表されています。

以下では直近の平成30(2018)年度の調査結果をもとに、障害者雇用の給料の水準について解説します。

障害者雇用の平均給料

厚生労働省の「障害者雇用実態調査」によると、平成30年(2018年)5月の障害者の種類別の平均賃金は以下の通りです。

  • 身体障害者 215,000円(超過勤務手当を除くと204,000円)
  • 知的障害者 117,000円(超過勤務手当を除くと114,000円)
  • 精神障害者 125,000円(超過勤務手当を除くと122,000円)
  • 発達障害者 127,000円(超過勤務手当を除くと123,000円)

参考:平成30年度障害者雇用実態調査の結果を公表します|厚生労働省

障害者雇用と一般雇用の給料の違い

一方、障害者雇用ではない労働者の賃金(超過勤務手当を除く)については、厚生労働省の平成30年(2018年)賃金構造基本統計調査(平成30年6月の賃金に基づく調査)によると以下の通りです。障害者雇用と比較し、一般雇用の給料の水準が高いことが分かります。

  • 一般雇用全体:306,200円
  • 正社員   :323,900円
  • 正社員以外 :209,400円

参考:「平成30 年賃金構造基本統計調査」の結果を公表します。|厚生労働省

障害者雇用の労働者の給料の算定方法は基本的には一般の労働者と同じですので、給料の水準の違いは、働き方や業務内容の違いに理由があります。障害者雇用の労働者の給料が低い理由については次章で解説します。

障害者雇用の給料が低い理由は?

障害者雇用の労働者の給料が低い理由は、主に以下の3つが挙げられます。

非正規雇用で働くケースが多い

障害者雇用の労働者は、一般の労働者と比較して非正規雇用で働くケースが多いと言われています。

平成30年(2018年)障害者雇用実態調査によると、障害者雇用の労働者のうち正社員の比率は以下の通りです。身体障害者以外は過半数を大きく割り込んでおり、非正規雇用で働く労働者が多い実態がうかがえます。

  • 身体障害者:52.5%
  • 知的障害者:19.8%
  • 精神障害者:25.5%
  • 発達障害者:22.7%

参考:平成30年度障害者雇用実態調査の結果を公表します|厚生労働省

労働市場全体で見ると、正規雇用の労働者よりも非正規雇用の労働者の給料は低いのが実態です。平成30年(2018年)賃金構造基本統計調査の結果では、正規雇用の労働者で323,900円、非正規雇用の労働者で209,400円と大きな開きがあります。

参考:「平成30年賃金構造基本統計調査」の結果を公表します。|厚生労働省

したがって、非正規雇用が多い障害者雇用の労働者の給料は、一般の労働者よりも低い水準になります。

勤務時間が短い

障害を持つ労働者が業務を行うにあたり、心身への負担等に配慮し、短時間勤務等の勤務時間への配慮を行っている事業所が多いのが実態です。障害者雇用実態調査で雇用している障害者への配慮事項を調査したところ、知的障害者、精神障害者、発達障害者においては「短時間勤務等の勤務時間への配慮」の回答が最も多くなっています。

その結果、週あたりの所定労働時間についても、週30時間未満の短時間勤務の労働者の割合が以下の通り高くなっています。

  • 身体障害者:20.2%
  • 知的障害者:34.5%
  • 精神障害者:52.8%
  • 発達障害者:40.2%

参考:平成30年度障害者雇用実態調査の結果を公表します|厚生労働省

短時間勤務の場合は、労働時間が短縮された分だけ給料が減額されるため、短時間勤務が多い障害者雇用の労働者の給料は低くなります。

最低賃金が減額される特例がある

最低賃金法に定める最低賃金は、障害者雇用であっても一般雇用と同様に適用されます。この最低賃金は、一定の要件を満たすと減額ができる特例が最低賃金法に定められています。

最低賃金法に定める減額の要件には、身体または精神の障害により、一般の労働者と比較して、業務を遂行するにあたって労働の能率などに著しい支障がある場合という要件が定められています。一般の最低賃金の適用を前提にした場合に、雇用されない可能性のある労働者が働く機会を得るための特例とも言えるでしょう。

この特例を適用するには、事業場を管轄する都道府県労働局長の許可を得なければならず、申請書を所轄の労働基準監督署に提出する必要があります。障害者である労働者の全てに適用されるわけではなく、それぞれの業務遂行能力などに基づき個別に許可を得るものです。

また、許可された対象業務以外に従事させる場合には、特例は適用されず一般の最低賃金の額が適用されることにも注意が必要です。

詳細は以下のリンクを参考にしてください。

参考:最低賃金の減額の特例許可申請について|厚生労働省

障害者雇用の労働者には最低賃金の減額特例が適用されることがあるため、一般雇用の労働者と比較して給料が低くなることがあります。

障害者雇用の給料の決め方は?

障害者雇用の労働者の給料の決め方は、一般の労働者と同じです。障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)第35条には、障害者であることを理由として賃金の決定その他の待遇を不当に差別してはならないことが定められています。

参考:障害者の雇用の促進等に関する法律 | e-Gov法令検索

給料(賃金)の決め方は、就業規則などに必ず規定するもので、その規定内容に従います。基本給はもちろん、諸手当の決定方法も同様です。

また、障害者雇用の労働者に対しては、障害者雇用促進法により合理的配慮義務が定められています。「合理的配慮義務」とは障害者が円滑に業務を進めるために必要な設備を整備したり、障害者の業務を援助する人員を配置したりするなどの配慮を行う義務です。この合理的配慮は企業にとって事業への影響度、実現困難度、費用負担等を踏まえ、過重な負担にならない範囲で行います。

障害者と企業の間で必要な措置について話し合いを行って合理的配慮の内容を確定し、関係する従業員に配慮内容の説明を行う形で進めます。

参考:雇用分野における障害者差別は禁止、 合理的配慮の提供は義務です。|厚生労働省

先述の通り、障害者雇用の労働者に対しては、一般の労働者と同様の決定方法に基づき給料の支払いが必要となります。それに加えて上記の合理的配慮を行うために一定の費用を要する場合があります。

このような追加的なコストを負担する企業を支援するために、助成金制度が設けられています。また、障害者や企業に対して様々なアドバイスを行うジョブコーチによる支援を受けることも可能です。これらの制度を活用すれば積極的に障害者雇用を進めることができるでしょう。

詳細は以下のリンクをご確認ください。

参考:障害者雇用のご案内|厚生労働省

障害者雇用の給料が上がるケースは?

障害者雇用の労働者の給料が低い理由として、非正規雇用が多いことと勤務時間が短いことを挙げました。このうち、勤務時間が短いことについては障害者という特性上、短時間勤務の必要がある場合が多いため、解消が難しいかもしれません。

一方、非正規雇用で働いている障害者雇用の労働者が正社員に登用されることは給料が上がることにつながります。正社員はフルタイム勤務のイメージがありますが、フルタイム勤務ではない短時間正社員制度を設けることも可能です。

この制度を設けると、障害者雇用の労働者であっても勤務時間が一般の労働者より短いまま正社員として働くことができます。フルタイムの正社員と同じレベルの意欲や能力を持つ障害者雇用の労働者を活かす良い方策と言えるでしょう。

非正規雇用の労働者を正社員化する取り組みに対する助成金として、キャリアアップ助成金(正社員化コース)が設けられています。正社員化の制度や、短時間正社員など多様な正社員制度を新設し、実際に非正規雇用の労働者を転換させた場合には、助成額が加算されます。

人材不足が叫ばれる昨今においては、助成金を活用して意欲や能力の高い障害者雇用の非正規雇用の労働者を正社員化することを検討したいところです。

キャリアアップ助成金(正社員化コース)の詳細については、下記リンクも参照してください。

参考:キャリアアップ助成金 「正社員化コース」を拡充しました!|厚生労働省

障害者雇用の労働者に選ばれる企業作りを

障害者雇用の労働者の給料は一般の労働者と比べると低いのが実態です。その大きな理由としては、非正規雇用の労働者が多いことや、短時間勤務で働かざるを得ないことが挙げられます。

一方、人材確保がますます困難になる中、障害者雇用の労働者の意欲や能力を活かすことは自社の発展にとって非常に重要です。

本記事の内容をもとに、障害者雇用の労働者の正社員転換等により給料を高める人事制度や働きやすい職場環境を整備し、障害者雇用の労働者に選ばれる企業作りを目指しましょう。


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