• 更新日 : 2024年12月27日

再雇用制度とは?導入メリットや定年後の契約の流れ、注意点や助成金を解説!

働き手の確保が企業にとって大きな課題となっています。そこで注目されているのが「再雇用制度」です。定年後も引き続き優秀な人材を活用できるだけでなく、技術やノウハウの継承にも役立つ制度です。

この記事では、導入メリットから運用上の注意点、関連する助成金まで、再雇用制度について、わかりやすく解説します。

再雇用制度とは?

再雇用制度とは、一般的に雇用している高年齢の従業員が希望した場合、定年後も引き続き雇用する制度のことをいいます。ここでは、法的な扱いと、再雇用制度と勤務延長制度との違いについて見てみましょう。

2021年度改正で「高年齢者就業確保措置」が追加

2021年4月から、高年齢者雇用安定法が改正され、従来の「高年齢者雇用確保措置」に加え、新たに「高年齢者就業確保措置」が努力義務化されました。どのような違いがあるのか整理してみます。

<従来の高年齢者雇用確保措置>

(1)60歳未満の定年禁止
・定年を定める場合は、60歳以上としなければなりません。
(2)65歳までの雇用確保措置
・65歳までの定年引き上げ、定年制の廃止、65歳までの雇用継続制度を導入しなければなりません。

この「高年齢者雇用確保措置」に加え、2021年度改正で追加されたのが以下の「高年齢者就業確保措置」です。

<高年齢者就業確保措置>

・次のいずれかの措置(高年齢者就業確保措置)を講じるよう努めるという努力義務が規定されました。

(1)70歳までの定年引き上げ
(2)定年制の廃止
(3)70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
(4)70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
(5)70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入

①事業主が自ら実施する社会貢献事業
②事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

高年齢者就業確保措置の努力義務を負う事業主は、 定年を65歳以上70歳未満に定めている事業主、または 継続雇用制度(70歳以上まで引き続き雇用する制度を除く)を導入している事業主とされています。

この改正により、定年退職後の高年齢者の就業機会が大幅に拡充されることが期待されるとともに、高年齢者雇用への取り組みが一層強化されることになります。

再雇用制度と勤務延長制度との違いは?

高年齢者の就業を確保する制度として、再雇用制度と勤務延長制度の2つがありますが、両者には違いがあります。

<再雇用制度>

  • 一旦定年退職し、退職金を支給した後に再び雇用する制度
  • 新たな雇用契約を締結する
  • 雇用形態や労働条件は新たに設定される

 

<勤務延長制度>

  • 定年に達しても契約期間を延長し、引き続き雇用が継続される
  • 従前の労働条件が継続する
  • 退職金は支給されない

つまり、再雇用制度は一旦退職して新たな契約を結ぶのに対し、勤務延長制度は定年を迎えても雇用契約が継続するという違いがあります。

再雇用の場合は、退職金の支給や新たな労働条件の設定が必要になりますが、制度の運用が柔軟にできるメリットがあります。一方、勤務延長は現行の労働条件が継続するため、働き方に変化がない分、安心感があります。

従業員のニーズや企業の状況に合わせて、どちらの制度を採用するかを検討する必要があります。場合によっては、両制度を組み合わせて運用することも可能です。

高年齢者の活躍の場を確保するうえで、企業は最適な制度設計とその適正な運用が求められています。法改正を踏まえ、制度の違いを十分理解したうえで検討を進めることが重要になります。

再雇用制度を導入するメリットは?

再雇用制度を導入することには、企業にとってさまざまなメリットがあります。主なものとして以下の5点が挙げられます。

熟練人材の確保と活用

再雇用により、企業に長年在籍し培った経験やノウハウを有する熟練人材を確保し、継続して活用できます。若手育成の面でも貢献が期待できます。

人材不足への対応

人手不足が深刻化する中、高年齢者を再雇用することで労働力を確保できます。特に、熟練技能職などでは有効な対策となるでしょう。

人件費の抑制

再雇用者は定年前に比べて賃金水準が低くなる傾向にあるため、人件費の抑制につながります。退職金の支給後に契約更新するため、コストメリットになります。

企業価値の向上

多様な人材が活躍できる職場環境が整うことで、企業のイメージアップや優秀な人材確保にもつながり、企業価値の向上が期待できます。

法令遵守と労務リスクの低減

高年齢者就業確保措置への対応が求められる中、再雇用制度の導入は法令遵守にもつながります。また、高年齢者の継続雇用を拒否することによる訴訟リスクを回避できるでしょう。

これらのメリットの一方で、以下のようなデメリットにも留意が必要です。

  • 賃金のコスト削減を優先し、処遇が不当に低くなるリスク
  • 若手の育成や登用が阻害される恐れ
  • 高年齢者に適した業務が確保できないケース
  • 労務管理が複雑化する

こうしたデメリットを踏まえつつ、再雇用制度を適切に設計・運用することが重要となります。メリットを最大限に活かしながら、高年齢者が活躍できるダイナミックな職場づくりを推進する必要があるでしょう。

再雇用制度を導入から契約までの流れは?

では、企業が再雇用制度を導入する場合の手続きの流れはどのようになるのでしょうか。3つのステップについて説明します。

対象者へ通達し、継続雇用の意思を確認

再雇用制度の対象となる定年退職予定者へ、制度の内容と運用方法を事前に通知・説明することが重要です。具体的には以下のようなプロセスを経ます。

(1) 制度概要の通知
定年到達前の一定期間前までに、再雇用制度の概要や対象者の要件などを文書で通知します。対象者全員に制度の存在を周知徹底するためです。

(2) 個別の説明会実施
文書通知後、制度の詳細や再雇用時の就業条件などについて、個別の説明会を開催します。質疑応答の機会も設け、丁寧な説明に努めましょう。

(3) 継続就労の意思確認
説明会後、継続就労の意思を書面で確認します。再雇用を希望する・しない、の意思表示をしてもらいます。

このように、事前に十分な説明と意思確認を行うことが重要です。制度の透明性を確保し、トラブル未然防止にもつながります。
また、就労意思確認時には、健康状態や家族状況など、個別のニーズを把握することも欠かせません。柔軟に対応できる体制づくりが求められます。

対象者と面談し、雇用条件を提示

再雇用制度の対象者との十分な面談を経て、具体的な雇用条件を提示する必要があります。

(1) 個別面談の実施
再雇用希望者と個別に面談し、スキルや経験、健康状態などを確認します。今後の就業希望や職務適性についても、十分にヒアリングを行います。

(2) 雇用条件の決定
面談内容を踏まえ、担当予定業務や賃金水準、就業時間などの雇用条件を具体的に決定します。公平性や適正な処遇の観点から、一定の基準を設けることが重要です。

(3) 雇用条件の提示
決定した雇用条件について、書面で対象者に提示します。内容を丁寧に説明し、質疑に応じる機会を設けましょう。

(4) 合意形成
対象者と雇用条件について合意に至った場合は、正式に内定通知を行います。条件交渉の結果、合意に至らない場合もあり得るでしょう。

一人ひとりのニーズに合わせて、きめ細かい対応が求められます。公正な評価と処遇を心がけながら、納得性の高い雇用条件を提示することが大切です。

再雇用の決定後、各種手続きを実施

再雇用が正式に決定した後は、各種の手続きを適切に行う必要があります。

(1) 新規雇用手続きの実施
退職後の再雇用となるため、新規雇用と同様の手続きを行います。労働条件通知書の交付、社会保険雇用保険の手続き、従業員の登録など、法令に則した手続きが求められます。

(2) 労働契約書の作成・締結
合意に至った雇用条件を明記した労働契約書を作成し、再雇用者との間で締結します。有期雇用か無期雇用かについても明記する必要があります。

(3) 賃金・評価制度への反映
賃金規定の改定や賃金テーブルへの再雇用者の位置付けなど、賃金制度上の手続きを行います。また、評価制度についても検討が必要です。

(4) 社内周知と研修の実施
再雇用者の役割や就業場所など、関係部署への周知を徹底します。再雇用者に対しても、就業ルールなどの研修を改めて行います。

再雇用制度の契約時に注意すべきポイントは?

実際に定年後の社員を再雇用する場合、どのような注意点があるのか挙げてみましょう。

雇用形態

再雇用制度における雇用形態は、通常の正社員とは異なり、嘱託社員やパートタイマーなどといった非正規雇用が一般的です。

(1)嘱託社員
定年退職後の社員を企業が直接雇用する有期雇用の形態です。契約社員と称する場合もありますが、法的に明確に区別しているわけではなく、一般的には定年退職後以外のケースで個別の雇用契約に基づき有期雇用するときに使われる名称です。

(2)パートタイマー
短時間労働者として、時給制の雇用形態となります。

雇用形態によって、労働条件や社会保険・退職金の取り扱いが異なります。

契約更新期間

再雇用契約の期間は有期となるため、契約更新の条件や上限期間を明確にしておく必要があります。

(1)契約期間
1年契約が一般的ですが、6ヵ月や2年など企業により異なります。

(2)更新条件
健康状態や業績評価など、更新の要件を明記します。

(3)上限期間
最長で雇用できる期間を設けることが望ましいでしょう。

契約更新の可否が不確定だと、再雇用者の生活設計に影響を与えかねません。明確な基準を設けることが重要です。

給与・賞与

再雇用者の給与水準は、通常の正社員とは異なる設定となります。

(1)給与体系
年俸制や月給制、時給制など、雇用形態に応じた体系を採用します。

(2)給与水準
定年前の賃金カーブから大幅に下げられることが一般的です。

(3)賞与
支給する場合とそうでない場合があります。支給する際は、支給時期や算定基準を明確にします。

給与水準の設定は難しい課題ですが、年齢、役職、職務内容を考慮し、適正な水準を検討する必要があるでしょう。

有給休暇

再雇用者の年次有給休暇は、付与日数など労働基準法に従って適切に行う必要があります。

各種手当

再雇用者に支給する手当については、業務内容や責任の変更に合わせて見直す必要があります。特に以下の手当については、注意が必要です。

(1)通勤手当
再雇用前と同一の職場で勤務する場合は、従前の運用を継続することが一般的です。勤務地変更の際は、新たに算定が必要です。

(2)住宅手当
基本的に従前の支給額を継続するケースが多いようです。ただし、住宅費の変更があれば、それに合わせて支給額を見直すべきでしょう。

(3)役職手当・職能手当
再雇用時に役職や職責が変更になることが一般的です。新しい役職・職能に応じて、支給額を改めて設定する必要があります。

再雇用後の業務内容や責任の変更に合わせ、諸手当の設定を柔軟に見直すことが不可欠です。公平性や従業員のモチベーションの維持にも配慮が求められます。

再雇用制度で活用できる助成金は?

再雇用制度を導入する際に活用できる助成金には、高齢者の雇用機会拡大やキャリアの継続を支援するものがあります。以下では、それぞれの助成金について詳しく解説します。

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)

この助成金は、高年齢者や障害者など就職が困難な方をハローワークなどから紹介され、継続して雇用保険の一般被保険者として雇い入れる事業主を対象にしています。就職困難者の継続的な雇用を支援することを目的としています。

主な支給要件は、次の通りです。

(1)ハローワークや民間の職業紹介事業者等から対象者を紹介され雇い入れること。

(2)雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者として継続雇用することが確実と認められること。具体的には、対象者の65歳到達までの継続雇用が見込まれ、かつ2年以上の雇用期間が見込まれること。

(3)その他、雇用関係助成金共通の要件を満たすこと。

対象となる職業紹介機関は、 ハローワーク、地方運輸局(船員として雇う場合) 、適正運営が期待できる有料・無料の職業紹介事業者 (特定地方公共団体、許可業者、届出業者など一定の条件を満たす者)となっています。支給額については、対象労働者の類型と企業規模に応じて金額が異なります。

高年齢者処遇改善促進助成金

この助成金は、60歳から64歳の高年齢労働者の処遇改善を支援するものです。企業が就業規則などで定める賃金規定を改定し、60歳時点の賃金水準から75%以上引き上げた場合に支給されます。高年齢者の公正な待遇の確保を目的としています。

主な支給要件は、次の通りです。

(1)就業規則などで賃金規定を改定し、すべての対象労働者の時給を60歳時点から75%以上増額すること。

(2)賃金規定改定により増額された賃金が支払われた月の前後6ヵ月間を比較し、後の6ヵ月間に高年齢雇用継続基本給付金の総額が減少していること。

(3)支給申請日時点で改定後の賃金規定を継続して運用していること。

(4)その他、雇用関係助成金共通の要件を満たすこと。

支給額は、事業所の労働者について、賃金規定改定前後での高年齢雇用継続基本給付金の減少額に対し、以下の助成率を乗じた額が支給されます。
– 中小企業以外: 1/2
– 中小企業: 2/3

再雇用制度を整備し、定年後の優秀な人材を活用しよう!

再雇用制度の導入は、定年を迎えた人材が持つ貴重な経験とスキルを企業内で活かし続けることを可能にします。この制度を通じて、高齢者の雇用を積極的に推進することは、労働市場の活性化はもちろん、社会全体の持続可能な発展にも寄与します。

また、助成金の活用による経済的支援は、再雇用制度の導入と運用をよりスムーズに行うための強力な後押しとなるでしょう。企業の人事担当者は、今回の連載を参考に再雇用制度を最大限に活用し、多様な人材が輝く職場環境を実現していくことが大切です。


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