• 作成日 : 2022年10月28日

厚生年金保険料が引かれすぎ?計算して確かめる方法を解説!

厚生年金保険料が引かれすぎ?計算して確かめる方法を解説!

会社員に支払われる給与と賞与からは、所得税(源泉徴収税)などが差し引かれています。厚生年金保険料も控除されているものの1つで、給与からは標準報酬月額に厚生年金保険料率をかけた金額、賞与からは標準賞与額に厚生年金保険料をかけた金額が天引きされます。誤って多く引かれすぎていた場合は、返還を受けることができます。

厚生年金保険料が引かれすぎ?計算して確かめましょう!

厚生年金保険料が給与から多く引かれすぎていると感じた際は、間違いがないか確認してみる必要があります。厚生年金保険料の金額は自分でも確認できます。間違いがあった場合は訂正する必要があるため、計算して確かめてみましょう。

確認の結果、間違いがなければ何もする必要はありませんが、もし間違いがあった場合は会社に直ちに連絡しましょう。連絡が遅くなると次に支払われる給与でも同じ間違いが引き起こされる可能性が高くなります。間違いを修正して正しい給与支払いを受けるために、厚生年金保険料がおかしい場合はそのままにせず、確認してみることが大切です。

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そもそも厚生年金保険とは?

厚生年金保険は、会社員や公務員が加入する公的年金制度です。被保険者や被保険者であったものに対して老齢厚生年金や障害厚生年金、遺族厚生年金といった給付を行います。
厚生年金保険について詳しくは、こちらの記事で説明しています。

厚生年金保険は社会保険の1つ

事業主などのもとで働く労働者は、健康保険や雇用保険といった社会保険に加入します。厚生年金保険もこうした社会保険の1つです。社会保険には狭義の社会保険と広義の社会保険があり、労災保険・雇用保険・健康保険・厚生年金保険が広義の社会保険、広義の社会保険のうち健康保険・厚生年金保険が狭義の社会保険とされます。

厚生年金保険と国民年金の違いは?

公的年金制度は、2階建ての仕組みになっています。1階部分は全国民共通の国民年金(基礎年金)、2階部分は会社員・公務員の上乗せ部分である厚生年金になります。自営業者や学生などは1階部分だけです。国民年金の年齢要件は20歳以上ですが、厚生年金には下限年齢はありません。学生であっても、20歳になると国民年金には必ず加入しなければなりません。厚生年金保険は適用されている事業所で働くことになった場合に加入するため、18歳であっても厚生年金被保険者になる場合があります。

保険料については、国民保険では全額を加入者が負担しなければならないのに対し、厚生年金保険では加入者と会社が折半して半分ずつ負担します。また国民年金保険料は一律で、国民年金保険料納付義務がある第一号被保険者は、基本的に同じ金額(3/4免除・1/2免除・1/4免除の場合はそれぞれの金額)を支払います。厚生年金保険料は計算に基づいて、それぞれ算出された金額を支払います。

なお、厚生年金保険の加入者および被扶養配偶者は、国民年金保険料は納付しません。厚生年金制度から国民年金制度に拠出する仕組みになっています。

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厚生年金保険料の計算方法は?

厚生年金保険料の金額は、一律に定められたものでないため、計算によって求めなければなりません。給与から支払う厚生年金保険料、賞与から支払う厚生年金保険料、それぞれの方法で計算する必要があります。

保険料率は一律18.3%

厚生年金保険料の計算には、厚生年金保険料率が用いられます。2022年(令和4年)度の厚生年金保険料率は18.3%です。厚生年金保険料率は必要に応じて改定が行われ、2004年(平成16年)から2017年(平成29年)までは年金制度の改正に基づき、段階的に引き上げられてきました。この引き上げも2017年(平成29年)9月をもって終了し、以降は18.3%で固定されています。

保険料は会社が半分負担

厚生年金保険料は、加入者と会社が折半して半分ずつを負担します。現在の厚生年金保険料率は18.3%ですから、1/2の9.15%ずつを加入者・会社がそれぞれ支払うことになります。

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標準報酬月額と標準賞与額の金額は?

厚生年金保険料は、従業員が会社から支払いを受けた給与や賞与と、厚生年金保険料率から計算されます。給与や賞与の額は、実際の支払額そのものではなく、給与や賞与の額を算定の基礎とする標準報酬月額・標準賞与額を使って計算します。

標準賞与額は、賞与の金額を千円単位とした金額です。千円未満を切り捨て、例えば281,300円の場合は281,000円、325,900円の場合でも325,000円とした金額は、標準賞与額になります。

標準報酬月額は、毎月の給与から控除される社会保険料を計算するために必要な金額です。
詳しくは以下の記事で説明しています。

社会保険の標準報酬月額・標準賞与額とは?保険料を求める計算方法

標準報酬月額の定時決定

標準報酬月額の定時決定とは、標準報酬月額を新たに決定するために1年に1度行われる手続きのことをいいます。7月1日に厚生年金保険に加入している者に対して行われ、7月1日より前の4月・5月・6月に支払われた給与から標準報酬月額が決定されます。定時決定により算定された標準報酬月額は、9月から翌年8月までの厚生年金保険料計算に用いられます。

標準報酬月額の随時改定

標準報酬月額の随時改定とは、給与の金額が大きく変わった場合に行われる手続きのことです。一般的に4月に行われる昇給は、定時決定により標準報酬月額に反映されますが、他の時期に昇給(あるいは降給)があった場合などは、次の定時決定まで待つ必要が生じます。こうした場合に行われるのが随時改定で、次の要件を満たす場合に対象になります。

  1. 基本給や家族手当などの固定的な部分に変動があったこと
  2. 続けて3カ月以上、2等級以上の変動があったこと
  3. 3カ月とも賃金支払基礎日数が17日以上あること

標準報酬月額の産前産後・育児休業終了時改定

産前産後・育児休業終了時改定とは、産前産後の休業や育児休業から復職した従業員を対象に行われる手続きのことです。

基本的に産前産後の休業・育児休業から復職した従業員の社会保険料の計算には、休業前に決定した標準報酬月額が用いられます。しかし、労働時間などに制約を受けるため報酬は下がる場合が多く、社会保険料とのアンバランスが生じます。報酬と均衡が取れる社会保険料とするために行われるのが、産前産後・育児休業終了時改定です。

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給与から天引きされる厚生年金保険料の金額シミュレーション

それでは給与から天引きされる厚生年金保険料の金額を、シミュレーションしてみましょう。

標準報酬月額16万円(報酬月額155,000~175,000円)の場合
150,000×91.5/1000=14,640円

標準報酬月額26万円(報酬月額250,000~270,000円)の場合
260,000×91.5/1000=23,790円

標準報酬月額44万円(報酬月額425,000~455,000円)の場合
440,000×91.5/1,000=40,260円

実際に厚生年金保険料が引かれすぎていた場合は返還してもらえる?

厚生年金保険料が引かれすぎていた場合には、返還が受けられます。返還方法は、次の2つのうちいずれかになります。

  1. 翌月の給与で精算
    翌月の給与での給与で差額分の返還を受けます。
  2. 現金精算
    引かれすぎが発覚してすぐ、差額分が現金で返還されます。いずれの場合も返還された金額が、きちんと厚生年金保険料として処理されていることが必要です。

1年間に支払った厚生年金保険料などの社会保険料の金額は、社会保険料控除の金額として年末調整で用いられます。誤って引かれすぎていた社会保険料が異なるものとして返金されると合計が合わなくなるため、社会保険料が引かれすぎた場合や返還があった場合には、年末調整時に必ず確認が必要です。

厚生年金保険料の引かれすぎが疑われる場合は確認してみよう

毎月の給与から差し引かれている厚生年金保険料は、標準報酬月額と厚生年金保険料率を使って計算されています。2022年度(令和4年度)の厚生年金保険料率は183/1000です。一律で、都道府県や年齢による違いはありません。

厚生年金保険料は、従業員と会社が折半して1/2ずつ負担することになっているので、従業員負担分は91.5/1000になります。標準報酬月額は、支払われた報酬をもとに算定される額です。

基本的には年に1回の定時決定で算定された額を、9月から翌年8月まで使用します。ただし報酬に大きく変動があった場合は、随時改定が行われます。標準報酬月額と厚生年金保険料率から、厚生年金保険料の控除額が正しく計算されているかどうかを確認することができます。

厚生年金保険料が引かれすぎていた場合は、翌月の給与での精算、あるいは現金精算により返還を受けることができます。疑問に思う場合は、確認してみましょう。

よくある質問

厚生年金保険料の計算方法は?

報酬額をもとに算定される標準報酬月額に、厚生年金保険料をかけて厚生年金保険料が計算されます。 詳しくはこちらをご覧ください。

厚生年金保険料が引かれすぎていた場合は返還してもらえる?

翌月給与で精算されるか、現金で精算されるか、いずれかの方法で返還してもらえます。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

執筆:坪 義生(社会保険労務士)

じんじ労務経営研究所代表(社会保険労務士登録)、労働保険事務組合 鎌ヶ谷経営労務管理協会会長、清和大学法学部非常勤講師、「月刊人事マネジメント」(㈱ビジネスパブリッシング)取材記者。社会保険診療報酬支払基金、衆議院議員秘書、㈱矢野経済研究所、等を経て、91年、じんじ労務経営研究所を開設。同年より、企業のトップ・人事担当者を中心に人事制度を取材・執筆するほか、中小企業の労働社会保険業務、自治体管理職研修の講師など広範に活動。著書に『社会保険・労働保険の実務 疑問解決マニュアル』(三修社)、『管理者のための労務管理のしくみと実務マニュアル』(三修社)、『リーダー部課長のための最新ビジネス法律常識ハンドブック』(日本実業出版社、共著)などがある。

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