- 更新日 : 2021年10月5日
雇用保険の傷病手当について
健康保険には、傷病手当の制度が設けられています。私傷病により働くことができない被保険者の生活を守るために設けられた制度で、会社を休んでいる間に十分な賃金が受けられない場合に支給されます。
健康保険の傷病手当と同じように、雇用保険にも傷病手当の制度が整えられています。会社を離職して求職の申込をした後に、病気やケガによって求職活動を続けることや就職することができなくなった場合に支給されます。
ここでは、受給資格者の万が一の傷病に備えた雇用保険の傷病手当の内容や、手当金の支給額、支給期間などについて解説します。
雇用保険の傷病手当とは
雇用保険の受給資格者が、離職後に公共職業安定所に求職の申し込みした後、15日間以上引き続いて病気やケガにより職業に就くことができない場合、基本給付が支給されません。傷病手当は、その間の受給資格者の生活を支援するために支給される手当です。
傷病手当は、15日間以上続く病気やケガが支給の要件となるため、14日以内の病気やケガの場合については基本手当の対象となりまます。
また、健康保険の傷病手当金、労働基準法の休業補償、労災保険の休業補償給付を受給している期間は、雇用保険の傷病手当は受けることができません。
雇用保険の傷病手当の支給額は
傷病手当の支給額は、雇用保険(基本手当)と同額です。
基本手当は以下の計算式によって求められます。
給付率は離職時の状況により異なり、45%~80%となります。
基本手当日額は、離職直前の6ヶ月に毎月支払われた賃金(賞与を除く)から算出した「賃金日額」に基づき計算されます。
基本手当日額は、勤労統計に合わせて上限額と下限額を設定し、うち、上限金額については、離職時の年齢区分に応じて設定されます。
離職時の年齢区分による上限額は以下の通りです。
雇用保険の基本手当の日額は毎年8月に見直されます。傷病手当の受給を検討する際、どのくらいの金額が支給されるのかを事前に計算する場合は注意してください。
雇用保険の傷病手当の受給期間について
病気やケガなどで職業に就けない場合、その期間により支給される手当の内容が異なります。
それぞれの期間に応じた手当の内容は以下の通りです。
15日以上30日未満の場合 → 傷病手当を支給
30日以上の場合 → 傷病手当の支給か基本手当の受給期間延長のどちらかを選択
※基本手当の受給期間の延長については4年を限度として定められています。
雇用保険の傷病手当の手続きについて
雇用保険の傷病手当を受ける場合は、職業に就けない理由(病気、ケガなど)がなくなった後の最初の失業認定日までに、管轄の公共職業安定所に「傷病手当支給申請書」を提出し、認定を受ける必要があります。
参考:傷病手当支給申請書|ハローワーク インターネットサービス
また、傷病手当支給申請書は、郵送や代理人による提出も可能です。
傷病手当は離職後の病気やケガに備えた制度
失業後の再就職に向けて活動しようとしても、病気やケガを患っている状態では、しっかりとした再就職への取り組みができません。
傷病手当は、そのような万が一の事態の際に受給できるものです。
受給の条件や手続きの内容をしっかりと理解し、病気やケガによって基本手当が受けられないといった場合には、傷病手当を申請するようにしましょう。
よくある質問
雇用保険の傷病手当とは?
雇用保険の基本手当の受給資格者が、離職後病気やケガにより15日間以上続けて職業に就けない場合の生活保障を行うことを目的として支給される手当です。詳しくはこちらをご覧ください。
雇用保険の傷病手当の支給額は?
基本手当と同額です。基本手当の日額は、(離職前6か月の給与の総支給額の合計÷180)× 給付率で計算します。詳しくはこちらをご覧ください。
雇用保険の傷病手当の受給期間は?
15日未満の場合は基本手当、15日以上30日未満の場合は傷病手当を支給することになっています。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
賞与の計算方法について徹底解説!社会保険料の算出など
給与とは別に一時金として支払われる賞与(ボーナス)の支払いには、法律による規定はなく、企業が独自に支給額や支給基準、支払回数、支払時期を決めることができます。 今回は、賞与から控除する社会保険料、所得税の算出方法や計算時の端数の扱い、賞与に…
詳しくみる労災保険と他の保険の二重取りは可能?自賠責・医療保険・傷害保険の観点から
労災保険と他の保険の給付を両方受けることが可能なのか気になる人も多いのではないでしょうか。結論として、重複受給(請求)できる保険とできない保険があります。いざというときに適切に保険を利用できるように正しい知識を身につけておきましょう。この記…
詳しくみる高額療養費(高額医療費支給制度)とは?社会保険の観点から仕組みを解説!
「高額療養費制度」とは、高額な医療費負担を軽減するための制度で、医療機関で支払った自己負担額のうち限度額を超えた額が手続きによって還付されたり、事前申請によって支払わずに済んだりします。申請方法は加入している医療保険によって異なり、申請しな…
詳しくみる厚生年金基金とは?制度や解散について解説
厚生年金基金とは、企業自らが運用する年金制度です。国が運用している公的年金は、全国民に加入が義務付けられている「国民年金」と、会社員や公務員などが加入する「厚生年金保険」の2階建て方式となっています。厚生年金基金は3階部分に該当する確定給付…
詳しくみる厚生年金保険料が引かれすぎ?計算方法を解説!
会社員に支払われる給与と賞与からは、所得税(源泉徴収税)などが差し引かれています。厚生年金保険料も控除されているものの1つで、給与からは標準報酬月額に厚生年金保険料率をかけた金額、賞与からは標準賞与額に厚生年金保険料をかけた金額が天引きされ…
詳しくみる扶養とは?所得税と社会保険の観点から解説!
所得税の扶養控除や社会保険の扶養など、「扶養」という言葉をよく聞くと思います。そもそも「扶養」という言葉は、所得税でも社会保険でも同じ意味で使われているのでしょうか? 今回は、「扶養」の意味合い、ならびに、所得税と社会保険で使用している「扶…
詳しくみる