- 更新日 : 2024年9月13日
被保険者資格喪失届とは?提出先や記入例、雇用保険の喪失届との違いも解説!
健康保険・厚生年金保険の被保険者が資格を喪失する際は、被保険者資格喪失届を提出する必要があります。被保険者資格喪失届の提出期限は、資格を喪失した日の翌日から5日以内に、会社を管轄する年金事務所に持参するなどして提出します。インターネットでpdf形式の用紙がダウンロードでき、持参する以外に郵送や電子申請でも提出可能です。
目次
健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届とは?
従業員の退職に際しては、退職金の計算・支払い、制服などの貸与物の返却受付など、さまざまな処理を行う必要があります。雇用保険の被保険者資格喪失届を提出し、離職票の発行手続きをして失業等給付が受給できるようにすることも、欠かせない処理の1つです。
また、社会保険の被保険者資格を喪失する手続きも必要です。健康保険・厚生年金保険の資格喪失届とは、どのような届出なのでしょうか?雇用保険の被保険者資格喪失届との違いから考えてみましょう。
従業員が社会保険資格を喪失した場合に提出する書類
健康保険・厚生年金保険資格喪失届とは、従業員が退職し、被保険者資格を喪失する際に提出が必要になる書類です。健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届を提出することで今まで勤務していた会社での被保険者資格を喪失し、国民健康保険や国民年金第1号被保険者への切替手続き、あるいは転職先で新たに社会保険に加入する手続きができるようになります。また、次のような場合にも健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届の提出が必要です。
- 従業員が死亡した場合
- 従業員が転勤した場合
- 65~75歳の従業員が障害認定を受けた場合
- 従業員が70歳に到達した場合(厚生年金保険の「70歳到達届」ただし、一定の要件に該当すれば提出不要)
- 従業員が75歳に到達した場合(健康保険の「資格喪失届」)
雇用保険被保険者資格喪失届との違いは?
健康保険・厚生年金保険資格喪失届が、公的医療保険と公的年金制度の被保険者資格を喪失する手続きであるのに対して、雇用保険被保険者資格喪失届は、労働保険のうち、雇用保険の被保険者資格を喪失する手続きです。届出の提出期限・提出先は以下のように異なります。
社会保険 | 雇用保険 | |
---|---|---|
資格喪失届の 提出期限 | 事実発生から5日以内 | 被保険者でなくなった日の 翌日(退職日の翌々日)から 10日以内 |
資格喪失届の 提出先 |
|
|
資格喪失届を 提出するとき |
|
|
健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届の提出までの流れは?
健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届の提出期限は、資格を喪失した日の翌日から5日以内です。期間が短いため、迅速に処理しなければなりません。このため届出方法をしっかりと理解し、具体的にどのように健康保険・厚生年金保険資格喪失届を準備するのかを把握しておく必要があります。健康保険・厚生年金保険資格喪失届の入手方法から必要書類の準備まで、流れを理解しましょう。
被保険者資格喪失届のPDFファイルをダウンロードする
健康保険・厚生年金保険資格喪失届は、日本年金機構ホームページから入手できます。PDFがダウンロードできるので、実行して印刷します。
健康保険・厚生年金保険資格喪失届(厚生年金保険70歳以上被用者不該当届)|日本年金機構
また日本年金機構ホームページからは、エクセル形式の健康保険・厚生年金保険資格喪失届もダウンロード可能です。実行するとエクセルで開くことができ、直接、必要事項を入力することができます。
被保険者資格喪失届に必要事項を記入する
健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届の白紙が準備できたら、必要事項を記入していきます。事業所整理番号や被保険者番号なども記入が必要なため、間違えないよう注意が必要です。
保険証などの必要書類を準備する
健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届は、基本的に全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)の健康保険証も添えて提出することが求められます。従業員から本人分と扶養家族全員分の健康保険証の返却を受け、健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届と一緒に窓口へ提出する必要があります。
70歳以上の従業員が交付を受けていた高齢受給者証や、特定の従業員に対して交付されていた健康保険特定疾病療養受給者証、健康保険限度額適用・標準負担額軽減認定証も、健康保険証と同じように提出が必要です。
健康保険が組合管掌健康保険(組合健保)の場合は、健康保険証などの返却は組合健保に対して行うため、健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届に添えて提出する必要はありません。
協会けんぽであっても従業員から健康保険証の返却を受けられない場合は、健康保険被保険者証回収不能届の提出が必要です。健康保険被保険者証回収不能届も日本年金機構ホームページからダウンロードできます。
健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届の記入例
参照:健康保険・厚生年金保険資格喪失届(厚生年金保険70歳以上被用者不該当届)|日本年金機構
健康保険料・厚生年金保険資格喪失届の各記入欄に記入する内容は、以下の通りです。
- 事業所整理番号・事業所番号
新規適用時、または名称・所在地変更時に付与された記号・番号を記入します。
- 事業所整理番号・事業所番号
- 被保険者番号
健康保険・厚生年金保険資格を喪失する従業員の資格取得時に付与された番号を記入します。
- 被保険者番号
- 氏名
住民票に登録されている氏名を記入します。
- 氏名
- 生年月日
- 個人番号・基礎年金番号
個人番号は本人に確認の上、正確に記入します。基礎年金番号は基礎年金番号通知書に記載されている番号を、左詰で記入します。
- 個人番号・基礎年金番号
- 資格喪失年月日
資格喪失理由により、次の日付を記入します。- 職等によって資格を喪失する場合:退職日の翌日・転勤日の当日・雇用契約変更の当日
- 死亡によって資格を喪失する場合:死亡日の翌日
- 75歳到達による健康保険資格喪失の場合:誕生日の当日
- 障害認定による健康保険資格喪失の場合:移行日の当日
- 資格喪失年月日
- 資格喪失の原因
資格喪失理由により次の番号に○を付けます。- 退職等によって資格を喪失する場合:4
- 死亡によって資格を喪失する場合:5
- 75歳到達による健康保険資格喪失の場合:7
- 障害認定による健康保険資格喪失の場合:9
- 資格喪失の原因
- 保険証の枚数
保険証回収の項目には、資格喪失届に添付して返却する保険証枚数と、回収できなかった保険証枚数を記入します。
- 保険証の枚数
- 70歳不該当
70歳以上の被保険者が退職・死亡により資格を喪失する場合にチェックを記入します。
健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届の資格喪失年月日はいつにすべき?
健康保険・厚生年金保険の資格喪失届には、資格喪失年月日を記入する欄があります。混同して間違えないように注意し、資格喪失の理由により以下の日付を記入します。
退職・死亡した場合:翌日
従業員が退職、または死亡によって健康保険・厚生年金保険資格を喪失する場合、資格喪失届の資格喪失年月日は退職日・死亡日の翌日の日付を記入します。ただし転勤や雇用契約による資格喪失の場合は、同日付で資格取得の手続きが行われるため、転勤日・雇用契約変更日の当日が資格喪失年月日になります。
障害認定を受けた場合:障害認定日の当日
65~75歳の被保険者が障害認定を受けると後期高齢者医療制度に移行するため、健康保険被保険者資格を喪失します。後期高齢者医療制度への移行によって健康保険被保険者資格を喪失する場合の資格喪失年月日は、障害認定日の当日になります。
70歳に到達する場合:誕生日の前日
70歳到達時に提出する資格喪失届(70歳到達届)では、資格喪失年月日は誕生日の前日の日付になります。70歳到達届は、厚生年金保険の被保険者資格を喪失する70歳以上に該当することを届け出るものです。ただし、平成31年4月から、①被保険者が70歳に到達し、引き続き同じ事業主に雇用される場合、かつ②70歳到達日時点の標準報酬月額相当額が、70歳到達日の前日における標準報酬月額と同額の場合は、70歳到達届は不要となりました。
75歳に到達する場合:誕生日の当日
75歳に到達すると後期高齢者医療制度の被保険者となるため、健康保険被保険者資格を喪失します。日本年金機構から対象となる被保険について送付される健康保険被保険者資格喪失届を用いて、届け出ます。75歳到達による健康保険被保険者資格喪失年月日は、誕生日の当日です。
健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届の提出先は?
健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届は、持参する場合は管轄する年金事務所に提出します。郵送する場合は事務センターが提出先になります。
健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届の提出期限は?
健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届は、事実発生の日から5日以内に提出しなければなりません。提出が遅れると退職した従業員がほかの健康保険への加入手続きができない、といった不都合が生じます。またタイミングによっては保険料の計算にも影響します。
健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届提出後の社会保険料控除は?
健康保険料・厚生年金保険料(社会保険料)は、月末に在籍している場合に支払いが必要になります。そのため、退職日が20日や25日のときは社会保険料を支払う必要はありませんが、月末日の場合は支払わなければなりません。
給料からは前月分が控除されているため、退職日と給料計算サイクルとの関係によっては、最後に支払う給料から2カ月分の社会保険料を控除するといった対応が必要になります。
健康保険・厚生年金保険資格喪失証明書のテンプレート(無料)
以下より無料のテンプレートをダウンロードしていただけますので、ご活用ください。
健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届は期限内に提出しましょう!
従業員が退職や死亡によって健康保険・厚生年金の被保険者でなくなるときは、健康保険被保険者資格喪失届を提出する必要があります。提出先は、持参する場合は年金事務所、郵送する場合は事務センターで、提出期限は事実があった日から5日以内です。未提出だと資格喪失後の手続きが行えないため、提出は遅れないようにしなければなりません。持参だと業務の都合で期限内に出向けないこともあり、郵送のほうが確実に期限内に提出することができるでしょう。
よくある質問
健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届とはなんですか?
健康保険・厚生年金の被保険者でなくなる旨を届け出るもので、従業員の退職や死亡時に提出が必要です。詳しくはこちらをご覧ください。
健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届の提出先について教えてください。
持参する場合は管轄する年金事務所、郵送する場合は事務センターに提出します。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
厚生年金の最高額は?いくらもらえる?
老齢厚生年金の受給額は支払ってきた保険料に応じて決まるため、基本的には現役時代の年収が多い人ほど、また加入期間が長いほど多くの年金を受け取れます。 ただし、保険料の計算の基礎となる標準報酬月額と標準賞与額には上限があることに注意しましょう。…
詳しくみる特定疾病とは?介護保険の観点から解説!
介護保険の制度は65歳以上の高齢者を対象としたものですが、16の特定疾病に罹患した場合には40歳以上65歳未満でも公的介護保険サービスを受けられます。また、上記に該当しない場合でも「厚生労働大臣が定める疾病等」の場合、医療保険により訪問看護…
詳しくみる失業保険とは?手当の受給資格と手続きを解説!
毎月の給与から天引きされている「失業保険」ですが、どのようなときに受け取ることができるのでしょうか。一般的には、急な解雇や会社が倒産した際に受け取ることが可能です。また、転職のため自己都合退社した場合でも、一定条件のもと受給することができま…
詳しくみる厚生年金加入者の配偶者でも国民年金への加入は必要?
会社員や公務員などは、厚生年金に加入するのが一般的です。厚生年金には扶養制度があるため、専業主婦など条件を満たした被扶養配偶者は扶養加入することができます。しかし、収入が一定以上ある場合や、年齢が60歳以上の場合は条件から外れるため注意が必…
詳しくみる年金の3階建てとは?1階・2階との違いなどをわかりやすく解説!
年金制度の仕組みは建物の構造に例えられ、日本は2階建てや3階建てであるといわれます。国民年金と厚生年金で構成される公的年金が2階建てになっていて、その上に私的年金を積み上げることで3階建てになります。個人型確定拠出年金を正式名称とするiDe…
詳しくみる社会保険における「130万円の壁」とは?扶養の注意点を解説
会社員などの扶養家族となっている配偶者でも、一定金額を超えなければ扶養のまま、パート収入などを得ることができます。しかし、定められている金額を超えてしまうと、扶養から外れなければなりません。 扶養といわれているものには「税の扶養」と「社会保…
詳しくみる