• 更新日 : 2023年8月4日

執行役員とは?取締役や管掌役員との違いについて解説!

執行役員とは?取締役や管掌役員との違いについて解説!

執行役員とは、取締役が決めた経営方針に従い、業務を執行する役職です。役員という名前のため間違えやすいですが、会社法で定義された役員ではなく、各企業が任意で設置します。執行役員の定義や役割、取締役や管掌役員との違いに加え、執行役員制度を導入する際の注意点などをまとめました。

執行役員とは?

執行役員とは、取締役が決定を下した方針に従い、業務を遂行する役職です。役員という名称が入っているため間違えやすいですが、会社法上の役員には含まれない点に注意しましょう。

とくに規模が大きい企業では、取締役が経営と業務の執行を両立することが現実的ではないといった理由により、取締役と現場のパイプ役となる執行役員を置くケースが増えてきています。

ここでは、執行役員と混同しやすい「取締役」「管掌役員」「執行役」との違いについて、確認していきましょう。

取締役との違い

取締役とは、経営に関する意思決定を行う役員のことです。一方、執行役員は、取締役の決定した方針に沿って業務を遂行する役職で、両者はその役割に違いがあります。

また、取締役は会社法で定義されている役員ですが、執行役員はそれぞれの企業の裁量に基づいて置かれているポジションで、法律のうえでは従業員と位置づけられている点も異なります。

管掌役員との違い

管掌役員とは、その言葉どおり、人事部門や財務部門などの担当する部門を持つ取締役のことです。ただし、会社法において管掌役員に関する定義はなく、単に取締役と登記される点をおさえておきましょう。

管掌役員と取締役は同義であることを前提にすると、管掌役は経営の意思決定を、執行役員は業務執行を担う点が違います。そのほか、会社法上で定義されているかどうか、企業と雇用契約を締結しているか否かという点も異なります。

執行役との違い

本来は取締役会の権限である業務執行の決定と、業務の執行を行うのが執行役です。執行役は会社法上で定義づけられているのに対し、執行役員は会社法で定められていない点が異なります。ただし、いずれも、業務の執行を行う点は共通しています。

参考:e-Gov法令検索(会社法)|デジタル庁

執行役員制度とは?意味や目的

執行役員制度を導入する主な目的は、取締役が担う会社経営に関わる職務と、現場の業務執行を切り分けるためです。会社経営と現場の業務執行を明確に切り分けることで、取締役は事業の意思決定に注力でき、効率的かつ円滑な企業経営が可能になります。

1990年代後半から2000年代中頃までの期間に、執行役員制度が普及したとされています。現在では上場企業を中心に、多くの企業に定着している制度といえるでしょう。

執行役員制度のメリット・デメリット

執行役員制度のメリットとしては、主に以下の3点が挙げられます。

  • 取締役が経営に注力でき、意思決定が速くなる
  • 経営人材の育成につながる
  • 執行役員の給与は経費に計上できる

ここまでお伝えしてきたとおり、業務の執行を行う執行役員というポジションを設けることで、取締役が経営に注力できるようになり、意思決定が速くなると考えられます。

経営人材の育成につながる点もメリットです。執行役員は従業員の最上位という位置づけで、経営層と近い立場で業務を行います。それにより、経営的な視点で考える機会も増えるでしょう。執行役員としての経験を積むことで、取締役に就任した際にもスムーズに対応できます。

また、執行役員は従業員の立場であるため、支払われる給与は経費計上が可能です。ほかの従業員と同じように会計処理ができるため、会計における業務負荷が軽減されます。

一方、執行役員制度のデメリットとして考えられるのは、次の3点です。

  • 組織は複雑化する可能性がある
  • 経営陣と現場の間にギャップが生じる
  • 立場が曖昧になりやすい

執行役員制度の導入によって階層が1つ増えることで、組織の重層化が進む可能性はあります。執行役員の設置により専務執行役員や常務執行役員などの役職が増え、それに伴い承認プロセスも増えてしまうケースも散見されます。

経営陣と現場の間にギャップが生じやすい点にも、注意が必要です。執行役員と取締役が職務の切り分けを行うと、経営陣が現場の状況を捉えにくくなる場合があるためです。結果的に、取締役が現場の状況と乖離した経営判断を下したり、執行役員による業務執行の方向性が経営戦略とズレてしまったりするリスクが生じます。

執行役員制度のデメリットとしては、執行役員の立場が曖昧になりやすい点も挙げられるでしょう。たとえば、現場の業務に深く入り込む取締役や経営陣に意見ができる部長・事業部長がいるような場合などは、その存在意義を問われてしまう可能性があります。役職が形骸化し現場に混乱が起きないようにするためにも、それぞれの権限の範囲や役割を明確にしておくことが不可欠です。

執行役員の権限は?取締役よりも偉い?

執行役員には、経営陣が決定した方針に従い業務を遂行するという権限が与えられています。取締役が持つ、経営に関する重要事項を決定する権限はありません。

ただし、一般的な定義と、各企業における実際の業務内容や責任の範囲が異なることは珍しくありません。そのため、執行役員と取締役のどちらが偉いかを、一概に決めることは困難といえるでしょう。

執行役員の役割

執行役員は、取締役会で決定された現場の業務を執行するリーダーとしての役割を担っています。現場で大きな発言権を持ち、取締役に対して現場の状況を伝える役割も持っているのが一般的です。

ただし、会社法などの法律でその役割を定義付けられているわけではないため、企業によって実際の権限の範囲や業務内容は異なるでしょう。

執行役員の給与体系 – 賞与や各種控除はある?

執行役員は企業と雇用契約を結んだ従業員であるため、ほかの従業員と同様に、社内規程に従って決められた額の給与や賞与が支給されます。一方、取締役に支給されるのは、取締役会や報酬委員会などで決められた役員報酬です。

また、たとえば給与所得控除や、基礎控除医療費控除などをはじめとした所得控除も適用されます。

執行役員を解任するときの注意点

執行役員の解任は、雇用契約を結んでおり執行役員の解任後も雇用関係が残るのであれば、通常は労働基準法に抵触する可能性はないと考えられます。

ただし、解任する事由が重大なもので、解雇を伴うものである場合は「解雇予告は解雇の30日前に行う」などの、労働契約の終了に関する基本的なルールに則した対応が必要です。執行役員が企業に与えた損害の大きさや、本人の事情などを一切考慮しない一方的な解雇ではないか、社会通念に照らして解雇理由が不当ではないかなどの確認も怠らないようにしましょう。

参考:厚生労働省 労働契約の終了に関するルール

執行役員制度の導入に際して権限や役割を正しく理解しておこう

執行役員とは、取締役が定めた経営方針に従い、業務を遂行する役職です。役員という名称がつくものの、会社法上の役員には含まれず、各企業が任意に設置するポジションであることをおさえておきましょう。

執行役員制度を導入する主な目的は、取締役が担う会社経営に関わる職務と、現場の業務執行を切り分けるためです。会社経営と現場の業務執行を明確に切り分けることで、取締役は事業の意思決定に注力でき、スピード感のある企業経営が実現します。

ただし、執行役員制度の導入によって階層が1つ増えることで、組織がより複雑化するリスクもあります。また、執行役員の立場が曖昧になりやすい点にも注意が必要です。執行役員制度の導入に際しては、その権限や役割を整理し、社内で共有しておきましょう。


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