• 更新日 : 2024年12月24日

財形貯蓄制度は退職金とどう違う?仕組みやよくある疑問点を解説

財形貯蓄制度と退職金制度の違いは、自分で積み立てるか、会社が支給するかです。

どちらも従業員のモチベーション向上や定着率アップにつながる福利厚生制度です。

しかし、財形貯蓄制度は、種類によって仕組みや特徴が異なります。

そこで本記事では、財形貯蓄制度の種類別の仕組みや特徴を分かりやすく解説し、導入メリット・デメリットも紹介します。

企業の人事労務担当者に役立つ情報をまとめたので、ぜひ参考にしてください。

財形貯蓄制度とは

財形貯蓄制度とは、従業員が会社を通じて金融機関に一定額を積み立て、将来の住宅購入や老後資金などに備えることができる制度です。

積み立て費用は毎月の給与から天引きされるため、無理なく貯蓄を続けられます。

財形貯蓄制度には、下記3つの種類があります。

  • 一般財形貯蓄
  • 財形年金貯蓄
  • 財形住宅貯蓄

次項で、それぞれの仕組みや特徴について詳しく解説します。

一般財形貯蓄

一般財形貯蓄は、財形貯蓄制度の中でもっとも自由度の高い貯蓄方法です。

一般財形貯蓄の主な特徴は、下記の通りです。

  • 住宅購入や老後資金など、目的に縛られずに自由に使える
  • 毎月積み立てる金額を自由に設定できる

一般財形貯蓄は、まとまった資金が必要になった際に、すぐに利用できるというメリットがあります。

そのため、結婚資金や子供の教育費など、さまざまな目的に活用できます。

財形年金貯蓄

財形年金貯蓄は、老後の生活資金を準備するための貯蓄方法です。

この制度は、55歳未満の従業員が対象で、積み立てたお金は、原則として60歳以降に年金として5年以上の期間にわたって受け取れます。

財形年金貯蓄の主な特徴は、下記の通りです。

  • 老後資金を計画的に積み立てられる
  • 貯蓄額が550万円以下であれば、利子に対して非課税措置が適用される

※財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄あわせて上限550万円

  • 金融商品によっては、元本割れのリスクがある

財形年金貯蓄は、公的年金だけでは不安な方や、より充実した老後を送りたい方におすすめです。

なお、一時的に積立金を途中で受け取ることもできますが、非課税措置を適用するためには、年金としての受け取りが必要です。

財形住宅貯蓄

財形住宅貯蓄は、マイホームの購入資金を準備するための貯蓄方法です。

この制度は、55歳未満の従業員が対象で、積み立てたお金は住宅の購入やリフォームに利用できます。

財形住宅貯蓄の主な特徴は、下記の通りです。

  • 住宅購入資金を計画的に積み立てられる
  • 貯蓄額が550万円以下であれば、利子に対して非課税措置が適用される

※財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄あわせて上限550万円

  • 原則用途以外には利用できない

住宅購入やリフォーム以外の用途でも、積立金を引き出すことはできますが、非課税だった利息が課税対象になるため注意しましょう。

なお、財形住宅貯蓄を活用すれば、「財形住宅融資」が受けられます。

財形住宅融資とは、積立金を担保に低金利で融資を受けられる制度で、住宅購入やリフォームの資金調達において大きなメリットとなります。

そのため、財形住宅貯蓄は、住宅購入やリフォームを計画している方におすすめです。

財形貯蓄制度と退職金制度の違い

財形貯蓄制度と退職金制度の違いは、自分で積み立てるか、会社が支給するかです。

財形貯蓄制度は、従業員が自ら給与から天引きして積み立てる制度で、積み立てたお金は、住宅購入や老後資金など、必要に応じて自由に利用できます。

一方、退職金制度は、会社が従業員の勤続年数や貢献度に応じて、退職時に支給する制度です。

そのため、従業員自身で積み立てる必要はありませんが、自由に引き出すことはできません。

つまり、財形貯蓄制度は、従業員が主体的に将来の資金を準備するための制度で、退職金制度は、会社が主体となって従業員の退職後資金を準備する制度と言えます。

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企業が財形貯蓄制度を導入するメリット・デメリット

財形貯蓄制度は、従業員の資産形成をサポートし、定着率の向上が期待される一方で、企業側にも負担や課題が伴う制度です。

次項で、企業が財形貯蓄制度を導入する際のメリット・デメリットについて詳しく解説します。

メリット

企業が財形貯蓄制度を導入するメリットは、下記の通りです。

  • 従業員のモチベーション向上
  • 福利厚生の充実
  • 企業イメージの向上

財形貯蓄制度を通じて、従業員が安心して資産形成を進められる環境を提供できるため、従業員のモチベーションや満足度の向上につながる可能性があります。

また、財形貯蓄制度は、企業独自の福利厚生としてアピールになり、優秀な人材の確保や離職率の低下にもつながります。

さらに、従業員の福利厚生に力を入れている企業として、社会的な評価やブランド価値の向上につながる可能性もあるでしょう。

デメリット

企業が財形貯蓄制度を導入するデメリットは、下記の通りです。

  • 管理負担の増加
  • コスト負担の増加

企業が財形貯蓄を実施する場合、給与からの天引きや金融機関への送金手続き、従業員への説明会の実施など、さまざまな業務が発生します。

また、制度の運用には法令遵守が求められ、法改正や経済状況の変化に柔軟に対応する必要があり、担当部署の負担が大きくなります。

さらに、財形貯蓄制度を導入しても、従業員の利用率が低い場合、管理コストが導入効果に見合わない可能性もあるでしょう。

そのため、自社の従業員ニーズや運用体制を考慮したうえで、財形貯蓄制度の導入を検討しましょう。

退職・転職・休暇を取得をしたら財形貯蓄制度は継続できる?

財形貯蓄制度は、一般的に会社を退職すると解約となるケースが多いですが、状況によっては継続できる可能性もあります。

次項で、転職や休職など、さまざまなケースにおける財形貯蓄制度の扱いについて詳しく解説します。

退職した場合

退職後は、原則として財形貯蓄制度の継続はできません。

財形貯蓄制度は、企業を通じて金融機関と契約する仕組みであるため、退職によって給与からの天引きができないからです。

ただし、契約内容によっては個人契約に切り替えて積立を継続できる場合もあります。

たとえば、財形貯蓄制度で利用している金融機関が、退職後も個人向けに積立契約を継続できる仕組みを提供している場合があります。

そのため、退職を予定している場合は、現在加入している財形貯蓄制度が退職後も継続できるかどうかを、事前に金融機関や会社に相談してみましょう。

なお、財形年金貯蓄や財形住宅貯蓄は、退職後も残しておくことは可能ですが、一定期間経過すると課税扱いとなるため注意してください。

転職した場合

財形貯蓄制度が導入されている企業に転職した場合、退職から2年以内であれば継続可能です。

ただし、新しい会社の制度によっては、前の会社の財形貯蓄をそのまま移管できない場合があります。

たとえば、前の会社では一般財形と財形年金に加入していたが、新しい会社では一般財形しか加入できないケースがあります。

また、前の会社では毎月5,000円から積立できたが、新しい会社では最低積立額が1万円からとなっている場合もあるでしょう。

転職先の条件が異なる場合、積立を終了するか、個人契約に切り替える必要があります。

財形貯蓄制度をスムーズに移管するためにも、転職前に新しい会社の制度について確認しておきましょう。

役員に就任した場合

役員に就任すると、一般的には従業員ではなくなるため、財形貯蓄制度の継続はできません。 

ただし、代表権・業務執行権を持たずに部長職などの職務を兼務し、役員報酬とは別に給与が支払われる場合、特別な取り決めにより継続可能なケースもあります。

しかし、役員向けの貯蓄制度は、企業や金融機関ごとに方針や取り決めが異なるため、継続を希望する方は、事前に確認しておきましょう。

育児休暇を取得した場合

育児休暇中も、財形貯蓄制度の継続は可能です。

ただし、給与が支給されない期間中は、給与天引きによる積立が行えないため、積立は一時停止されます。

休暇終了後に積立を再開するのが一般的ですが、状況に応じて金融機関や会社と相談し、休暇期間中の対応を確認しておくと安心です。

財形貯蓄制度の対象となる雇用形態は?

財形貯蓄制度は、主に正社員を対象に導入されていますが、一定の条件を満たせば非正規雇用者も利用できる場合があります。

財形貯蓄制度が利用できる具体的な雇用形態は、下記の通りです。

  • 正社員
  • 契約社員
  • 派遣社員
  • パート・アルバイト

契約社員や派遣社員は、雇用期間が1年以上であれば、財形貯蓄制度を利用できる場合が多いです。

パート・アルバイトは、一般的に短期間の雇用であるため、対象外となるケースが多いです。

ただし、雇用契約が長期にわたる場合や、企業が柔軟な運用をしている場合は利用できる可能性があります。

一方で、業務委託の場合は、従業員ではないため、原則として加入できません。

財形貯蓄制度の対象となる雇用形態は、企業の就業規則や労働契約によって定められています。

そのため、具体的な対象者や加入条件については、勤務先の担当者に確認してみましょう。

財形貯蓄制度は途中で引き出せる?

一般財形貯蓄の場合は、必要に応じて自由に引き出せます。

一方で、財形年金貯蓄や財形住宅貯蓄は、積立金を引き出せる条件が定められているため、原則途中で引き出すことはできません。

とはいえ、病気や災害など、やむを得ない事情がある場合は、積立金の引き出しが認められるケースがあります。

ただし、非課税措置が適用されなかったり、解約金が発生したりなどのペナルティが発生する可能性もあります。

そのため、途中で引き出すことを検討している場合は、必ず事前に金融機関や会社の担当者に相談しましょう。

財形貯蓄制度による資産形成がおすすめのケース

財形貯蓄制度による資産形成がおすすめのケースは、下記の通りです。

  • マイホーム購入やリフォームを検討している方
  • 老後の資金を確保したい方
  • 貯蓄が苦手な方

財形貯蓄制度は、将来の目標に向かって、計画的に資産形成を行いたい人におすすめの制度です。

そのため、大きな目標がある場合や貯蓄が苦手な人などは、積極的に活用しましょう。

特定の目的がなくても「一般財形貯蓄」で積立をしておけば、急な出費に備える資金として活用できます。

財形貯蓄制度と退職金の違いを理解して適切に活用しよう

財形貯蓄制度と退職金制度は、それぞれ異なる目的と運用方法を持つ制度ですが、企業にとってはどちらも従業員の満足度を高める重要な制度です。

従業員の資産形成や退職後の生活設計を支援すれば、長期雇用を促進し、従業員のモチベーション向上につながります。

また、企業のイメージアップにもつながります。

そのため、財形貯蓄制度と退職金制度それぞれの特徴を理解し、従業員ニーズに合った運用を行いましょう。


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