• 更新日 : 2024年2月9日

特定求職者雇用開発助成金とは?対象者や各コースの詳細、申請方法を解説!

特定求職者雇用開発助成金とは?対象者や各コースの詳細、申請方法を解説!

特定求職者雇用開発助成金とは、障害者や高齢者などの就職困難者を採用した事業主に向けた助成制度です。令和5年度からは生涯現役コースと被災者雇用開発コースが廃止され、コースの種類や対象者も大きく変わりました。助成金の支給要件や各コースの詳細、申請方法、注意点について解説します。

特定求職者雇用開発助成金とは

特定求職者雇用開発助成金とは、ハローワークなどの職業紹介では就職が困難と考えられる障害者や高齢者などを採用し、継続して雇用する事業主向けの助成制度です。就職困難者の雇用機会の増大と、雇用安定を図ることを目的として実施されています。

後述しますが、特定求職者雇用開発助成金にはいくつかコースがあり、対象者や受給条件が異なります。また、インターネット上に情報が残っていても、コースによってはすでに廃止されているものもあるため注意が必要です。以下を参考に新しい情報を入手し、条件を確認するようにしてください。

参考:厚生労働省|事業主の方のための雇用関係助成金

特定求職者雇用開発助成金の対象者

特定求職者雇用開発助成金は、就職困難者を採用し、継続して雇用する事業主を対象とした助成制度です。

なお、コースによって就職困難者の定義は異なります。詳しくは後述しますが、いくつか例を紹介します。

  • 高年齢者、障害者、母子家庭の母親
  • 発達障害者、難治性疾患患者
  • 雇用機会を逸したことで正規雇用に就くことが困難な者
  • 自治体から就労支援の要請があった生活保護受給者

特定求職者雇用開発助成金の支給要件

特定求職者雇用開発助成金の支給要件は、コースによって異なります。コースごとの要件については詳しくは後述しますが、一例として特定就職困難者コースの支給要件を紹介します。

  • ハローワークもしくは民間の職業紹介事業者などの紹介により雇用すること
  • 雇用保険一般被保険者もしくは高年齢被保険者として採用すること
  • 65歳以上に達するまで継続して雇用し、なおかつ雇用期間が継続して2年以上あること
  • 対象労働者の賃金を支払っていること
  • 労働保険料を滞納していないこと
  • 採用日前後の6ヶ月間に事業者都合による解雇・勧奨退職をしていないこと

また、特定求職者雇用開発助成金に限らず、雇用関係の助成金に申し込む事業者は、以下のすべての条件を満たしていなくてはいけません。

  • 雇用保険適用事業所の事業主であること
  • 支給のための審査に必要な書類を提出し、整備・保管すること
  • 必要に応じて、労働局などによる実地調査を受け入れること
  • 既定の申請期間内に申請すること

一方、以下のいずれかに該当する事業主は、特定求職者雇用開発助成金に限らず、雇用関係の助成制度を利用できません。

  • 2019年4月1日以降に雇用関係の助成制度に申請し、不正受給により不支給決定もしくは支給決定取消を受け、不支給決定日もしくは支給決定取消日から5年を経過していない
  • 2019年4月1日以降に申請した雇用関係の助成制度において不正受給に関与した役員がいる
  • 支給申請日が属する年度の前年度より前に労働保険料を納入していない年度がある
  • 支給申請の前日から1年以内に労働関係の法令違反がある
  • 性風俗関連や接待を伴う飲食等の営業を行っている
  • 事業主や役員などが暴力団とかかわりがある
  • 事業主や役員などが暴力主義的破壊活動を行った、もしくは行う恐れのある団体に所属している
  • 支給申請日もしくは支給決定日の時点で倒産している
  • 労働局などによる調査に協力しない、あるいは不正受給が発覚した場合に事業主名などを公表・請求金返還することについて承諾していない
  • 支給申請書などに事実と異なる内容を記載した

特定求職者雇用開発助成金のコース

特定求職者雇用開発助成金はコースごとに支給要件や支給額が異なります。以下のコースについて解説します。

  • 特定就職困難者コース
  • 発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース
  • 生活保護受給者等雇用開発コース
  • 就職氷河期世代安定雇用実現コース
  • 成長分野等人材確保・育成コース

※いずれも2024年1月時点の情報です。

特定就職困難者コース

特定就職困難者コースは、高年齢者や障害者などを採用し、継続して雇用する事業者向けの助成制度です。

<支給要件>

以下のすべての要件を満たした場合に、申請できます。

  • ハローワークもしくは民間の職業紹介事業者などの紹介により雇用すること
  • 雇用保険一般被保険者もしくは高年齢被保険者として採用すること
  • 65歳以上に達するまで継続して雇用し、なおかつ雇用期間が継続して2年以上あること

<支給額>

対象労働者支給額助成対象期間
60歳以上の高年齢者、母子家庭の母など(短時間労働者以外)60万円(50万円)1年(1年)
重度障害者などを除く身体・知的障害者(短時間労働者以外)120万円(50万円)2年(1年)
重度障害者など(短時間労働者以外)240万円(100万円)3年(1年6ヶ月)
60歳以上の高年齢者、母子家庭の母など(短時間労働者)40万円(30万円)1年(1年)
重度障害者などを含む身体・知的障害者(短時間労働者)80万円(30万円)2年(1年)

※カッコ内は中小企業事業主以外の支給額・助成対象期間

※短時間労働者とは1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者

発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース

発達障害者や難治性疾患患者を雇用するときに適用される助成制度です。雇用から約6ヶ月後にハローワーク職員などが職場を訪問します。

<支給要件>

以下のすべての要件を満たした場合に、申請できます。

  • ハローワークもしくは民間の職業紹介事業者などの紹介により雇用すること
  • 雇用保険一般被保険者として採用すること
  • 65歳以上に達するまで継続して雇用し、なおかつ雇用期間が継続して2年以上あること

<支給額>

対象労働者支給額助成対象期間
短時間労働者以外120万円(50万円)2年(1年)
短時間労働者80万円(30万円)2年(1年)

※カッコ内は中小企業事業主以外の支給額・助成対象期間

※短時間労働者とは1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者

生活保護受給者等雇用開発コース

ハローワークや地方公共団体により通算3ヶ月超のサポートを受けている生活保護者、生活困窮者を雇用する事業主向けの助成制度です。

<支給要件>

以下のすべての要件を満たした場合に、申請できます。

  • ハローワークもしくは民間の職業紹介事業者などの紹介により雇用すること
  • 雇用保険一般被保険者として採用すること
  • 65歳以上に達するまで継続して雇用し、なおかつ雇用期間が継続して2年以上あること

<支給額>

対象労働者支給額助成対象期間
短時間労働者以外60万円(50万円)1年(1年)
短時間労働者40万円(30万円)1年(1年)

※カッコ内は中小企業事業主以外の支給額・助成対象期間

※短時間労働者とは1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者

就職氷河期世代安定雇用実現コース

就職氷河期に正規雇用の機会を逃し、正規雇用に就くことが困難な人を正規雇用労働者として雇用する事業者向けの助成制度です。

<支給要件>

以下のすべてにあてはまる人を雇用することが求められます。

  • 1968年4月2日~1988年4月1日に生まれた
  • 雇用前日から起算して過去5年間に正規雇用労働者として雇用された期間が通算1年以下
  • 雇用前日から起算して過去1年間に正規雇用労働者として雇用されていない
  • 安定した職業に就かず、ハローワークで個別支援を受けている
  • 正規雇用労働者としての雇用を希望している

上記をすべて満たした人を以下の条件で雇用した場合に申請できます。

  • ハローワークもしくは民間の職業紹介事業者などの紹介により雇用すること
  • 雇用保険一般被保険者として採用すること

<支給額>

対象労働者支給額助成対象期間
大企業50万円1年
中小企業60万円1年

成長分野等人材確保・育成コース

成長分野等人材確保・育成コースには、助成メニュー【成長分野】と助成メニュー【人材育成】があります。【成長分野】とは、情報処理・通信技術者、データサイエンティスト、研究・技術に該当する業務を指します。一方、【人材育成】とは人材開発支援助成金を活用して人材育成を行うことです。人材育成後、賃上げを実施した場合は、特定求職者雇用開発助成金のほかのコースよりも高額な助成金を受給できます。

<支給要件>

要件は以下の通りとなっています。共通の要件1)を満たしたうえで、メニューごとの要件2)、3)を満たすことが必要です。

  1. 対象労働者の種別に応じて、特定就職困難者コース、発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース、就職氷河期世代安定雇用実現コース、生活保護受給者等雇用実現コースのいずれかの支給要件をすべて満たすこと※生涯現役コース及び被災者雇用開発コースについては、対象労働者の雇用日が2023年3月31日までの場合であれば支給対象
  2. 助成メニュー【成長分野】の場合は、対象労働者を成長分野等の業務に従事させ、雇用管理改善や職業能力開発に対する取り組みを行い、実施結果を報告書として提出すること
  3. 助成メニュー【人材育成】の場合は、対象労働者が就労した経験のない職業に就くことを希望し、人材開発支援助成金を活用した訓練を行い、雇用日から3年以内に賃金を5%以上引き上げること

<支給額>

対象労働者支給額助成対象期間
60歳以上の高年齢者、母子家庭の母等、就職氷河期世代、生活保護受給者等(短時間労働者以外)90万円(75万円)1年(1年)
身体・知的障害者、発達障害者、難治性疾患患者(短時間労働者以外)180万円(75万円)1年(1年)
重度障害者等(短期労働者以外)360万円(150万円)3年(1年6ヶ月)
60歳以上の高年齢者、母子家庭の母等、就職氷河期世代、生活保護受給者等(短時間労働者)60万円(45万円)1年(1年)
障害者、発達障害者、難治性疾患患者(短時間労働者)120万円(45万円)2年(1年)

※カッコ内は中小企業事業主以外の支給額・助成対象期間

※短時間労働者とは1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者

特定求職者雇用開発助成金の申請方法

特定求職者雇用開発助成金は、次の手順で申請します。

  1. ハローワークや有料・無料の職業紹介事業者などから労働者の紹介を受ける
  2. 対象労働者を雇用する
  3. 支給対象期ごとに労働局もしくはハローワークで申請手続きをする
  4. 支給申請書の内容についての調査・確認を受ける
  5. 支給・不支給の決定が通知される
  6. 助成金を受給する

申請手続きでは、次の書類を提出します。ただし、下記以外の書類の提出を求められることもあるため、速やかに準備して提出しましょう。

  • 支給申請書
  • 賃金台帳など
  • 出勤簿など
  • 対象労働者であることを証明する書類
  • 雇用契約書もしくは雇入れ通知書
  • 対象労働者雇用状況等申立書
  • 支給要件確認申立書

特定求職者雇用開発助成金の注意点

特定求職者雇用開発助成金は規定が多く、見落としがあると受給できない可能性もあります。申請・受給するときに注意したいポイントを紹介します。

支給対象期ごとに申請手続きを行う

助成金は、一度にまとめて支給されません。それぞれ2~6回に分けて支給されます。

また、支給対象期ごとに、その期の末日の翌日から2ヶ月以内に申請手続きが必要です。申請手続きでは前章で紹介した書類を提出しますが、支給対象期ごとに提出しなくてはいけない点に注意しましょう。

ほかの助成金を受給している場合は対象外となることがある

特定求職者雇用開発助成金は、ほかの助成金を受給している場合は対象外となることがあります。また、国や地方公共団体、行政執行法人などは、助成金受給の有無にかかわらず支給対象外となることがあります。

試用期間を設ける場合は助成対象外となることがある

正規雇用労働者として雇用する場合に、試用期間を設けることがあります。試用期間を設けたからといって、すぐに助成対象外となることはありません。しかし、第1期の支給対象期間の支給申請時も試用期間が継続している場合や、試用期間と本採用後の雇用契約が異なる場合は助成対象外となります。

雇用後に助成対象労働者と判明した場合は助成対象とはならない

特定求職者雇用開発助成金は、助成対象労働者であることを理解して雇用することが前提となります。そのため、助成対象労働者であることに気づかず、雇用後に対象労働者であることが判明した場合は、助成金の申請ができません。

直接雇用した場合は助成対象とならない

特定求職者雇用開発助成金は、対象労働者をハローワークなどの職業紹介により雇用する場合のみ適用される助成制度です。そのため、直接募集して採用した労働者に対しては、たとえそれ以外の条件を満たしていても助成対象とはなりません。

雇用関連の助成制度を活用しよう

特定求職者雇用開発助成金以外にも、雇用関連の助成制度は多数あります。申請条件や対象が変わることもあるため、こまめに厚生労働省の情報を確認し、適用できる制度があるときは申請を検討してください。

助成制度は基本的に返還不要です。雇用・経営に活用していきましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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