- 更新日 : 2024年11月1日
単身赴任手当とは?補助金の相場や条件、給与課税、児童手当について解説
「単身赴任手当」は、転勤によって家族と離れて暮らす社員に支給される手当です。しかし、「どのくらいの金額がもらえるの?」「どんな条件で支給されるの?」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。本記事では、単身赴任手当の基礎知識から、相場、支給条件、単身赴任した場合の児童手当の扱い、手続きの際の注意点までを網羅的に解説します。
目次
単身赴任手当とは?
会社から遠く離れた場所に転勤になった場合、家賃や光熱費、食費などが二重にかかり、経済的な負担が大きくなります。この負担を軽減するために、会社が従業員に支給するものが「単身赴任手当」です。単身赴任手当には、会社によって家賃補助や帰省旅費などが含まれる場合があります。
単身赴任をする主な理由
単身赴任をする理由は、大きく分けて仕事と家庭の二つの側面に分けられます。まず、仕事に関する理由としては、会社の事業所が遠隔地にある場合や、特定のスキルを持った人材が不足している場合などがあげられます。また、新規事業所の立ち上げや拡大など、会社全体の戦略的な理由から、単身赴任を命じられるケースもあります。特に国家公務員や全国に拠点を構える大手企業、銀行などに勤めている場合は、転勤を命じられる可能性が高くなるため、単身赴任となるケースも少なくありません。
一方、家庭に関する理由としては、「子どもを転校させたくない」「配偶者やパートナーが現在勤めている拠点から離れることができない」などの家族の事情があげられます。その他にも、老親の介護が必要な場合や持ち家のため引越しが困難な場合など、単身赴任を余儀なくされる理由は、家庭によって様々です。
単身赴任手当が支給される条件
単身赴任手当が支給される条件は、企業によって異なるものの、一般的には会社から転勤を命じられ、家族と離れて単身で赴任していることが主な支給条件となります。
支給条件は企業によって異なり、例えば、会社が遠隔地にある場合や配偶者の転勤や他の家庭事情で家族と離れて暮らす必要がある場合など、具体的に支給対象となるケースを指定していることも少なくありません。さらには、対象となる単身赴任期間や距離、家族構成など、より詳細な条件を設けている場合もあります。
赴任先への引越しや現地での生活費など、単身赴任によって従業員やその家族には大きな負担が生じます。そのため、企業側にとって単身赴任手当は、従業員の負担を軽減し、円滑に事業を進めるための措置でもあり、福利厚生の一部として位置付けられています。
単身赴任手当の金額の相場
厚生労働省が管轄する中央労働委員会の「令和5年賃金事情等総合調査」では、多くの企業が単身赴任手当を支給しており、特に製造業ではほぼ全ての企業がこの制度を導入していると報告がありました。ただし、手当の支給条件や支給額は企業によって異なり、企業規模や業種によって差があるのが現状です。定額支給の企業もあれば、変動支給制を採用している企業もあり、定額制の平均支給額は35,000円、変動制では30,000〜79,400円と、幅を持たせて支給されています。
一方で、近年の人材獲得競争の激化を背景に、福利厚生の充実を図る企業が増えており、単身赴任や転勤にかかる費用サポートに力を入れる企業が増加しています。これにより、今後は企業間での支給額の格差も縮小することが予想されます。
単身赴任の諸手当や補助金の種類
単身赴任手当が充実することで、従業員の心理的・経済的負担が軽減され、モチベーションを維持したまま新しい勤務地での仕事に取り組むことが可能です。そのため、企業が単身赴任にかかる手当の種類や支給条件、金額を明確に示すことで、従業員に「しっかりとサポートしてくれる会社」という印象を与え、結果として定着率の向上が期待されます。ここからは、単身赴任に伴う代表的な手当について、種類ごとに解説していきましょう。
単身赴任手当
単身赴任手当は、家族と離れて単身で赴任している社員に対して支給される手当です。家賃や光熱費、食費などが二重にかかることによる経済的な負担を軽減することを目的としており、支給額は会社によって異なります。一般的には、基本給の金額や赴任地の物価などを考慮して決定されます。
住宅手当(家賃補助)
住宅手当は、単身赴任者が借りている住居にかかる家賃の一部を会社が負担するための手当です。単身赴任手当とは別に支給されることが多く、赴任地の物価や住居の広さなどを考慮して、支給額が決定されます。住宅手当があることで、社員はより安心して赴任地に居住できます。
帰省手当
帰省手当は、単身赴任者が家族のもとへ帰省する際に支給される手当です。交通費や宿泊費の一部を会社が負担することで、社員が家族と顔を合わせる機会を増やし、精神的な負担を軽減することを目的としています。支給額は、帰省の頻度や距離によって決定されることが一般的です。
地域手当
地域手当は、赴任地の物価や生活水準に応じて支給される手当です。物価の高い地域に赴任した場合、生活費が大幅に増加するため、その差額を補填することを目的としています。地域手当があることで、社員は生活水準を維持しながら、赴任生活ができるというメリットがある一方、赴任先によって支給の有無が生じたり、支給額に差が生じたりすることもあり、制度設計によっては従業員の不満の種となる可能性を含んでいます。
引越し手当(転勤支度金)
引越し手当は、転勤に伴う引越し費用を会社が負担する制度です。引越し業者の費用や荷物の運搬費用などが、引越し手当の対象となることが一般的です。転勤命令は企業側の都合によるものであるため、転勤先への引越しに伴う費用は企業が負担することが一般的です。対象となる費用は主に、「業者の人件費」「荷物運搬料」「車両チャーター費」などがあげられ、転勤先までの距離によって補助額の上限を定めているケースもあります。
外地手当
外地手当は、海外へ赴任している社員に対して支給される手当です。日本と比較して物価が高い地域や治安が不安定な地域への赴任の場合、生活費や安全対策にかかる費用が大幅に増加するため、その差額を補填することを目的としています。一般的には「海外赴任手当」と呼ばれることが多く、事業の特性や赴任先の状況に応じて、危険手当や帰国旅費などが含まれる場合もあります。
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単身赴任手当の公務員と民間会社の違い
単身赴任手当の支給条件や金額は、対象者が公務員か民間企業の従業員かによって大きく異なります。公務員の場合、人事院規則で支給条件や金額が明確に定められており、赴任地と家族の住居との距離に応じて金額が算出されます。一方、民間企業では、会社独自の規定に基づいて支給され、会社によって条件や金額が大きく異なるのが特徴です。一般的に、民間企業の方が柔軟な制度設計が可能であり、手当の種類や金額も多岐にわたる傾向にあります。
単身赴任手当は給与の課税対象か
単身赴任手当は、原則として給与所得に含まれ、所得税の課税対象となります。これは、家族と離れて生活する際の経済的負担を補填するため、給与の一部とみなされるからです。ただし、例外として、会議など職務遂行上の理由で旅行する際に支給される旅費については、帰省を伴う場合でも、主に職務遂行上必要な旅行と認められるなど、一定の条件を満たせば所得税が非課税として扱われます。特に民間企業では、独自の単身赴任手当を設けている場合もあるため、税理士などの専門家に相談しながら適切に処理を進めることが推奨されます。
単身赴任手当や手続きに関する注意点
単身赴任に伴う手続きや手当に関する情報は、従業員からの問い合わせが多く、社員のスムーズな転勤をサポートし、企業の生産性向上にも重要な役割を果たします。しかし、支給額の算定や支給手続きに追われ、他の必要な手続きを見落としてしまうケースも少なくありません。ここでは、単身赴任手当の支給にあたり、必ず押さえておくべき3つの手続きについて解説していきます。
就業規則に明記すること
単身赴任手当に関する内容は、会社の就業規則や賃金規程に明記するのが一般的です。支給額、支給対象者、支給条件、支給期間などの詳細を明記することで、労働基準法などの法令に抵触するリスクを避け、従業員とのトラブルを未然に防ぐことができます。さらに、あらかじめ就業規則に運用ルールを定めておくことで、業務の属人化を防ぎ、効率的に各種手続きを進めることが可能となります。
住民票を移す
単身赴任先の市区町村役場への転入届の提出は、通常、社員が自ら行うのが一般的です。しかし、転勤時には従業員が業務の引き継ぎや多くの手続きを短期間で進めなければならないことが多く、時間が十分に取れないケースもあります。そこで、こうした状況に対応するために、企業によっては以下のようなサポート体制を整えている場合もあります。
- 転入に必要な書類・手続きをリストアップして従業員に配布する
- 様々な手続き代行サービスを紹介する
- よくある質問をまとめたFAQを作成し、全社員がいつでもすぐに参照できるようにする
免許証の住所変更を行う
運転免許証の住所変更は、住民票の移動と同様に社員自身で行ってもらう必要がありますが、後回しにされたり、変更せずに放置されたりするケースも少なくありません。運転免許証は本人確認書類として有効であるため、住所変更がされていない場合、赴任先での自治体サービスの利用や各種手続きがスムーズに進まない可能性が高まります。そのため、企業は必要な手続きの一環として、対象となる従業員にしっかりと説明を行い、サポート体制を整えることが重要です。
単身赴任をすると児童手当はどうなる?
児童手当は、原則として「児童と同居している父または母」が、居住している市区町村に申請する流れとなっています。しかし、父親が単身赴任で別の市区町村に住民票を移した場合でも、父親と母親が同一の生計を維持している場合の手続き先は、転入先の市区町村です。その際、子どもを養育していることを確認する書類の提出を求められることもあります。必要書類は自治体によって異なるため、まずは受給手続きを行う市区町村に確認することが大切です。
単身赴任手当で従業員のワークライフバランスと企業成長の両立を目指そう
単身赴任手当は、従業員のワークライフバランスと企業の成長という、一見相反する二つの目標を同時に達成するための有効な手段です。転勤前後の生活と仕事がスムーズに進むことは、従業員満足度の向上や離職率の低下、さらに企業の生産性向上にも直結します。そのため、企企業側は従業員やその家族の視点に立った制度設計を目指していきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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