- 更新日 : 2024年4月26日
雇用とは?雇用形態の種類や関連する制度を解説!
雇用には、さまざまな形態があります。雇用の形態によって、契約期間の有無、フルタイムであるかどうか、給与の体系などが異なり、業務量や内容に応じた使い分けを行うことが効果的です。
今回は、世の中にどのような雇用の形態があるのか、雇用に関してどのような制度が存在するのか、どのような雇用を助成する制度があるのかなどを解説します。
雇用とは?
雇用とは、使用者(事業主)が労働者を雇い入れ、その労働者が退職するまでの管理を行うプロセスのことです。雇用契約の締結、配置、育成、処遇の決定や変更、退職の手続きなどを行います。
雇用契約とは?
雇用契約とは、労働者が使用者の指揮命令下で労働に従事し、それに対して使用者が賃金を支払うことを約束する契約のことです。
雇用契約の方法
雇用契約は、使用者と労働者の双方が合意した場合に成立します。口頭での契約、書面での契約がありますが、雇用後のトラブルを防止する上で書面での契約が望ましいです。
雇用契約の種類:請負・委任・準委任
報酬を支払う側の指揮命令に基づいて労働に従事してもらう契約を雇用契約と言います。これとは別に、報酬を支払う側の指揮命令に基づかずに報酬を支払う側が要求する業務を遂行してもらう契約があります。請負、委任、準委任が該当します。
請負
請負とは、業務を依頼された当事者の一方が、相手方の指揮命令を受けずに業務を遂行し、相手方に成果物を納品し、相手方から報酬を得ることです。業務の外注化(アウトソーシング)が、これに該当します。
委任
委任とは、相手方からの要求に対して法律に基づく行為を行い、その対価として相手方から報酬を得ることです。弁護士への訴訟代理の依頼、税理士への税務申告の依頼などが該当します。
準委任
準委任とは、相手方からの要求に対して法律に基づく行為以外の行為を行い、その対価として相手方から報酬を得ることです。コンサルタントへのコンサルティングの依頼、広告会社への広告宣伝の依頼などが該当します。
雇用契約書について
使用者は、労働者を雇用する際に、法律で定められた労働条件を書面で明示することが義務付けられています。書面で明示をしなければならない労働条件とは、労働基準法施行規則第5条1項に規定された内容です。
法律で定められた労働条件を記載した書面のことを雇用契約書と言います。
雇用形態の種類
世の中には、以下のような雇用形態が存在します。
正社員
正社員とは、雇用の契約期間を定めずに、企業が設定した1日および1週の所定労働時間をフルタイムで勤務する労働者のことです。長期間雇用を継続し、基幹的な業務に従事することが前提とされています。
契約社員
契約社員とは、雇用の契約期間を定めた労働者のことです。1回当たりの契約期間の上限は原則3年となっています。
雇用開始から5年を超えて契約が更新された場合、労働者側から無期雇用契約への転換を申し出ることができます。契約社員であっても、フルタイムで勤務する場合もあります。
派遣労働者
派遣労働者とは、人材派遣会社に雇用され、労働者派遣契約を締結した企業に派遣されて、派遣先企業の指揮命令下で労働する労働者のことです。同一企業内での同一業務に従事できる期間の上限は原則3年となっています。
限定正社員
限定正社員とは、正社員と同等の働き方をするものの、勤務地や職務、勤務時間などの範囲が限定された労働者のことです。労働者の働くことへのニーズが多様化したことを受け、近年このような雇用形態を取り入れる企業が増加しています。
勤務地限定正社員
勤務地を一定の範囲内に限定した正社員のことです。一般的には、転居を伴う転勤のない正社員のことを言います。
職務限定正社員
担当する業務を一定の範囲内に限定した正社員のことです。一般的には、他部門への異動のない正社員のことを言います。
勤務時間限定正社員
所定労働時間がフルタイムよりも短い正社員のことです。1日の勤務時間が所定労働時間よりも短いケースや1週の勤務日数が所定労働日数よりも短いケースがあります。
パートタイム労働者
パートタイム労働者とは、1日もしくは1週の労働時間が同じ事業場で働く正社員よりも短い労働者のことです。非フルタイム労働者とも呼ばれています。
ジョブ型雇用
ジョブ型雇用とは、企業が職務内容を限定した上で、その職務を遂行するために必要なスキルや経験、資格などを有した労働者を雇用することです。入社後に担当職務がなくなった場合や自身のスキルが企業の要求水準に達しなかった場合、離職をしなくてはならなくなる場合があります。
メンバーシップ型雇用
メンバーシップ型雇用とは、企業が職務内容や勤務地を限定せずに労働者を雇用することです。企業の都合に応じて、異動(配置転換)や転勤が発生します。
直接雇用と間接雇用
直接雇用とは、企業が直接雇用契約を締結した労働者を業務に従事させる雇用のことです。
正社員、契約社員、パートタイム労働者などの雇用形態の違いに関係なく企業と直接雇用契約を締結している場合は直接雇用という働き方になります。
間接雇用とは、企業が第三者との間で雇用契約を締結している労働者を業務に従事させる雇用のことです。派遣会社が雇用した労働者に自社内で労働してもらう、請負会社が雇用した労働者に請負会社内で自社業務に関する労働をしてもらうなどがあります。
雇用関係のない働き方
世の中には、企業との間で雇用関係が生じない働き方もあります。
業務委託契約
業務委託契約とは、企業が自社業務の遂行を外部の事業者や個人に委託し、それに対して報酬を支払う契約のことです。先に解説した請負、委任、準委任も、これに該当します。
事業主としての家内労働者
家内労働者とは、自宅を作業場にして、業務の委託者から部品や原材料の提供を受け、個人もしくは同居の家族とともに物品の製造や加工を行う人のことです。自己のペースややり方で作業を行い、出来高に応じた工賃を業務の委託者から受け取ります。
雇用にまつわる諸制度
企業の雇用に関する代表的な制度を、以下に解説します。
雇用管理制度
雇用管理制度とは、労働者の入社から退職までの対応の仕組みを構築した上で、管理を行うことです。採用、入社時の処遇決定、配置の決定、教育の実行、処遇の変更(昇給・昇格等)、退職時の手続きなどに関することです。
勤務制度
勤務制度とは、労働者の働き方の選択肢を明らかにすることです。正社員やパートタイム労働者などの雇用形態に関することと、短時間勤務や在宅勤務などの勤務形態に関することがあります。
退職
退職とは、使用者と労働者との間で締結した雇用契約を終了することです。労働者側の事情で終了する自己都合退職、使用者側の事情で終了する会社都合退職、特定の条件に該当した場合に自動で終了する自然退職があります。
定年制度・再雇用・勤務延長
定年制度とは、一定年齢に達したことを理由に雇用契約を終了することです。再雇用とは、定年を理由に退職した後に新たに雇用契約を締結し、職務内容や処遇をリセットした上で雇用を継続することです。
勤務延長とは、定年後も一定期間、職務内容や処遇をリセットせずに雇用を継続することです。
解雇
解雇とは、特定の理由に該当した労働者との雇用契約を使用者側から解除することです。解雇予告をした上で行う普通解雇と解雇予告をせずに行う懲戒解雇があります。
アウトプレースメント(再就職支援)
アウトプレースメントは、使用者側の事情で雇用契約を終了した労働者の再就職を使用者が支援することです。雇用契約の終了をスムーズに実行することを目的としたものが多いです。
ワークシェアリング
ワークシェアリングとは、労働者一人当たりの労働時間を短縮する形で業務を労働者同士で分け合う対応のことです。業務量が減少したときの解雇を回避することを目的としたものが多いです。
各雇用形態による待遇の違い
正社員と非正社員との間で、賃金や職位を中心とした待遇の違いが存在することが一般的です。非正社員とは、契約社員やパートタイム労働者など、正社員以外の雇用形態全般のことを言います。
賃金の違い
正社員のほうが非正社員よりも、月次の給与や賞与などの金額が高いことが一般的です。正社員は基幹的な業務を担っており、かつフルタイムで雇用契約期間の定めなく働くことが理由とされています。
職位の違い
正社員のほうが非正社員よりも、上位の職位に配置されることが一般的です。賃金面での処遇の違いが生じるのと同じ理由で、業務を管理し組織をマネジメントする立場に正社員が配置されることが多くなります。
同一労働同一賃金
同一の業務に従事し、責任の程度や配置の範囲も同等な正社員と非正社員との間で待遇に違いを設けることが法律で禁止されています。ここでいう待遇には、福利厚生の適用や教育機会の提供なども含まれます。
助成金・給付金制度
世の中には、雇用を推進することを目的とした助成金や給付金の制度があります。以下に、代表的な制度の内容を解説します。
高年齢者雇用継続給付
高年齢者雇用継続給付とは、60歳以上65歳未満の労働者の雇用確保を目的とした給付金制度です。60歳以降の雇用継続で賃金が60歳到達時の75%未満となった場合、60歳以降の再就職で賃金が前職の75%未満となった場合が対象となります。
育児休業給付金
育児休業給付金とは、育児休業を取得する労働者の所得を保障することを目的とした給付金制度です。育児休業開始後半年間は休業開始時の賃金の67%が支給され、それ以降は休業開始時の賃金の50%が支給されます。
介護休業給付金
介護休業給付金とは、介護休業を取得する労働者の所得を保障することを目的とした給付金制度です。介護休業終了後に申請することで、実際の介護休業日数に対して、休業開始時の賃金の67%が支給されます。
特定求職者雇用開発助成金
特定求職者雇用開発助成金とは、一般の労働者よりも就職することが困難な労働者の雇用確保を目的とした助成金制度です。特定の対象者を雇い入れ、一定期間雇用を継続した事業主に対して助成金が支給されます。
雇用調整助成金
雇用調整助成金とは、労働者の失業防止を目的とした助成金制度です。事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、休業や教育訓練の実施などで労働者の雇用を維持した場合、雇用の維持に要した費用の一部が助成されます。
教育訓練給付
教育訓練給付とは、労働者の自己啓発による能力向上を推進することを目的とした給付金制度です。国が指定した資格等を取得するために労働者が座学や通信による教育を受けた場合、要した費用の一部が国から補填されます。
人口減社会における労働力確保に雇用形態の多様化は避けて通れない
少子高齢化の進展により、日本は人口減社会に突入しています。加えて、国民の働き方に対するニーズも多様化しています。そのような中で、企業の存続に必要な労働力を確保し続けるためには、雇用形態の多様化を受け入れる姿勢を持つことが必要不可欠なことになっています。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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