• 更新日 : 2022年4月18日

年末調整を忘れた場合どうなる?対処法を解説!

年末調整を忘れた場合どうなる?対処法を解説!

年末調整は、会社が従業員に毎月支払う給与から源泉徴収した税額の年間合計額と、年税額を一致させる精算手続です。清算によって払い過ぎた税金があれば還付されます。手続自体は会社が行いますが、従業員側が配偶者控除や保険料控除などの申告に必要な書類を会社に提出しなければなりません。

しかし、会社に書類を提出しないと結果的に自分の年末調整を忘れたことになります。今回は、こうした場合にどうなるのか、また、その対処法についても解説していきます。

年末調整を忘れたらどうなる?

年末調整をしなければ、本来、所得から控除されるはずの金額はそのまま処理されます。税金が過払いとなっていても、その状態は解消されません。つまり、払い過ぎた税金は返ってこないということになります。

年末調整ではなく、確定申告で清算することもできますが、会社が確定申告をしてくれることはありません。

各種控除の申告ができなくなる

年末調整では、会社が把握できる所得控除については本人からの申告は不要ですが、本人しかわからない所得控除や、税金そのものから差し引く税額控除は申告がなければ手続はできません。次の控除については、従業員本人が会社に所定の情報を申告する必要があります。

配偶者控除

「配偶者控除」は、従業員本人の合計所得金額が1,000万円以下であれば、一定の所得控除が受けられるというものです。控除額は配偶者の年収によって違ってきます。

配偶者特別控除

配偶者特別控除」は、従業員本人の合計所得金額が1,000万円以下で配偶者にも48万円超の所得がある場合、配偶者の合計所得金額が133万円以下までは控除を受けることができますが、会社は配偶者の所得の確認が必要です。

扶養控除

扶養控除」「寡婦(寡夫)控除」「勤労学生控除」「障害者控除」は、その年の12月31日時点で従業員が扶養している親族についての情報に基づいて控除されます。

生命保険料控除

生命保険料控除」は、従業員が加入している保険会社に支払った一般生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料を申告し、控除されるものです。

社会保険料控除

社会保険料控除」は、従業員が会社で加入している健康保険や厚生年金保険の社会保険料ではなく、会社では把握できない、本人が子どものために支払った国民年金保険料等が該当します。

地震保険料控除

地震保険料控除」は、従業員が家屋等についての損害保険契約で支払った地震等損害部分の保険料や掛金を所得控除するものです。

住宅借入金等特別控除(2年目以降)

住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)」は、従業員が住宅ローンでマイホームを購入、新築、増改築した場合に受けられる税額控除です。初年度は本人が確定申告によって控除しますが、2年目以降は年末調整で行います。

小規模企業共済等掛金控除(iDeCoなど)

小規模企業共済等掛金控除」は、従業員が個人で支払った小規模企業共済掛金と確定拠出型年金(iDeCo:イデコ)の掛金を控除するものです。

このほかにも、「寡婦(寡夫)控除」「勤労学生控除」「障害者控除」などがあります。これらの控除については、会社に申告しなければ、年末調整もされず、控除されないことを意味します。

税金を過払いすることになる

年末調整しなければ控除もされないため、過払いの所得税があっても還付されないことになります。

過払いになるのは所得税だけではありません。住民税(市民税・県民税)は、前年の収入から算出した所得、所得控除、住宅ローン控除などの税額控除に基づいて計算され、翌年納付する制度となっています。つまり、年末調整で控除されなかった場合、翌年6月以降に納付する住民税は高い金額で決定されてしまいます。

もうひとつ注意してほしいのは、年末調整は1年間の源泉徴収税額の清算手続ですが、すべての人が還付を受けることができるわけではないということです。

還付が発生するのは、源泉所得税額の合計額が実際の所得税額より多い場合だけです。

したがって、賞与の支払い額が例年より多い場合や、給与の支払い額が大幅に増えた場合、あるいは年度の途中で子どもが就職して扶養親族の人数が減ったような場合は、すでに源泉徴収されている所得税では不足します。

年末調整がされていないと、こうした事態が生じて追徴課税が発生します。

追徴課税とは、本来納付すべき税金よりも少なかったときに事後に差額を徴収されることですが、ペナルティーとして本来の納税額に加えて加算税や延滞税が課されることもあります。追徴課税は原則として一括納付であり、納付時の負担は少なくありません。

こうしたことから、従業員が控除申告を忘れた場合、本人の年末調整がなされず過払い分の税金が戻ってこないケースだけでなく、追徴課税によって本来納付すべき税金よりも多く支払う可能性があることも知ってきましょう。

確定申告の手間が増える

年末調整ではなく、別の方法で清算することもできることはすでに述べましたが、その方法というのが「確定申告」です。年末調整は会社がしてくれますが、確定申告は本人自ら手続をしなければなりません。

確定申告の方法やポイントは後述しますが、会社からの帰宅後や大切な休日はゆったりと過ごしたいものです。面倒な作業に時間を使いたくないというのが普通の心情かと思います。また慣れないことをすれば、計算ミスや記入ミスをおかす可能性もあり、さらに手間やトラブルを増やすことにもなりかねません。やはり会社には、各種の控除申告書はきちんと提出し、年末調整を済ませておくのが賢明です。

年末調整を忘れたときの対処法

会社は、原則として12月にその年の1月1日から12月31日までの従業員の給与について所得税を計算し、翌年の1月31日までに年末調整の手続をすることになっています。

したがって、会社が全従業員の年末調整関係書類を所轄税務署に提出前であれば、再計算することによって間に合います。

これができない場合が、2月から3月に実施される確定申告による処理ということになります。

確定申告をする

確定申告をする場合、まず確定申告書を入手します。確定申告書は、税務署で入手できるほか、国税庁ホームページからもダウンロードすることができます。確定申告書「A」「B」の2種類から申告する内容に合わせて選択します。

確定申告書Bは、原則としてすべての所得を対象とした申告書ですが、作成がやや複雑なため、給与所得者であれば、確定申告書Aを使用したほうがよいでしょう。

国税庁ホームページには、「確定申告書等作成コーナー」があり、画面の案内にしたがって金額等を入力することにより、確定申告書を作成することができます。国税庁ホームページの「申告手続の流れ」を一読したうえで「確定申告書等作成コーナー」を利用することをおすすめします。

参考:国税庁「申告手続の流れ」

参考:国税庁 確定申告書等作成コーナー

申告書の記入を終えたら、税務署に書類を提出します。提出方法には、「郵便・信書便」「持参」「e-Tax」の3つの方法があります。郵便・信書便による送付、持参の場合の管轄税務署は、会社の所管ではなく、従業員の住所地となるので注意しましょう。

還付申告制度を利用する

もし確定申告も忘れてしまったときはどうすればよいのでしょうか。過払いの税金は、もはや返ってこないのでしょうか……。

もう打つ手はないのか、といえば、実はあります。「還付申告」と呼ばれる手続です。

その名の通り、還付申告は、本来確定申告の必要のない人が納め過ぎた税金の還付を受けるために行います。手続の方法と手順は、前述の確定申告と同様であり、「国税庁 確定申告書等作成コーナー」で作成することができます。

なお、年末調整や確定申告のように指定された期限はありません。また、申告すべき年の翌年1月1日から5年間は還付申告することができます。

還付金の受け取り方法は、最寄りのゆうちょ銀行や郵便局で直接受け取る方法と、指定預貯金口座への振り込みによる方法の2つがあります。

指定預貯金口座への振り込みの場合、確定申告書に口座を記載する必要がありますが、本人名義の口座に限られますので注意してください。

年末調整で必要な手続は忘れないようにしよう!

従業員の方が、会社に控除申告を忘れて、結果として年末調整されなかったらどうなるのかについて解説してきました。

そのまま放置するわけにはいかないことは明らかですが、自分で確定申告あるいは還付申告をしなければならず、煩雑な手間と時間がかかることがおわかりいただけたと思います。つまり、控除申告は、年末調整を会社にしてもらうのがベストです。控除申告の時期がきたら、確実に所定の書類を会社に提出することを心がけましょう。

よくある質問

年末調整を忘れたらどうなる?

税金の過払いがあっても還付されません。詳しくはこちらをご覧ください。

年末調整を忘れたとき、どうすればいい?

自分自身で確定申告するか、還付申告することで過払いの税金は返ってきます。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

執筆:坪 義生(社会保険労務士)

じんじ労務経営研究所代表(社会保険労務士登録)、労働保険事務組合 鎌ヶ谷経営労務管理協会会長、清和大学法学部非常勤講師、「月刊人事マネジメント」(㈱ビジネスパブリッシング)取材記者。社会保険診療報酬支払基金、衆議院議員秘書、㈱矢野経済研究所、等を経て、91年、じんじ労務経営研究所を開設。同年より、企業のトップ・人事担当者を中心に人事制度を取材・執筆するほか、中小企業の労働社会保険業務、自治体管理職研修の講師など広範に活動。著書に『社会保険・労働保険の実務 疑問解決マニュアル』(三修社)、『管理者のための労務管理のしくみと実務マニュアル』(三修社)、『リーダー部課長のための最新ビジネス法律常識ハンドブック』(日本実業出版社、共著)などがある。

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