- 更新日 : 2024年8月30日
雇用契約書とは?法的な必要性や作り方をひな形付きで紹介
雇用契約書とは、雇用契約の成立を証明する書類です。働く内容や各種手当など、雇用に関するルールが書かれています。法律上は雇用契約は当事者間の合意のみで成立するため、雇用契約書の作成は法律上の義務ではありません。
本記事では、雇用契約書作成が必要なのかを説明するとともに、雇用契約書に記載するべき内容や作成時の注意点についても解説します。
目次
雇用契約書とは
雇用契約書とは、⺠法第623条に基づき、企業と労働者の合意により雇用契約が取り交わされたことを証明する書類です。雇用期間や業務内容、就業時間などが記載されており、双方が署名捺印をすることでこれに合意したことを証明します。
雇用契約の成立により、労働者には労働に従事する義務が発生し、企業には労働者に対して賃金を支払う義務が発生します。
そもそも雇用契約書の作成は必要?
⺠法第623条は雇用契約について当事者の合意だけで効力が発生すると規定されており、雇用契約書の発行は義務付けられていません。
そのため、雇用契約書を作成しなくても雇用契約は成立します。
雇用契約書の作成は義務ではない
雇用契約書の作成は法律上の義務ではありません。そのため、雇用契約書を作成しなくても雇用契約は成立します。ただし、口頭による契約はあとから「言った・言わない」のトラブルが発生する恐れがあるため、雇用契約書を作成した方が望ましいとされています。
一方、雇用契約書と似ている書類に「労働条件通知書」があります。労働条件通知書とは、労働基準法で賃金、労働時間その他の労働条件を記載することを義務付けられた書類です。労働者を採用する際、企業は労働者に労働条件通知書を発行しなければなりません。
法律上は、労働者に労働条件通知書が発行されていれば問題ないということになります。
雇用契約時における雇用者の義務とは?
雇用契約では、雇用者に労働条件の明示義務があります。
どのような書面であれ雇用者は労働者に対し、「労働条件の明示(労働基準法第15条)」をしなくてはなりません。ここで定められている内容は以下のとおりです。
<絶対に書面で明示する必要があるもの> | <制度がある場合に書面または口頭で明示する必要があるもの> |
---|---|
労働契約の期間 | 休職に関する事項 |
就業場所 | 労働者に負担させるべき食費、作業用品などに関する事項 |
従事する業務 | 安全、衛生に関する事項 |
始業時刻及び終業時刻 | 職業訓練に関する事項 |
所定労働時間を超える労働の有無 | 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項 |
休憩時間、休日、休暇に関する事項 | 表彰、制裁に関する事項 |
交代制勤務に関する事項 | 昇給に関する事項 |
賃金の決定、計算、支払いの方法に関する事項 | 退職金に関する事項 |
賃金の締め切り、支払日に関する事項 | 賞与等臨時に支払われる賃金に関する事項 |
退職に関する事項 | |
有期労働契約を更新する場合の基準 |
絶対に書面で明示する必要があるものを「絶対的明示事項」と呼び、「制度」がある場合に書面または口頭で明示する必要があるものを相対的事項と呼びます。
雇用契約書が必要な理由
明示義務のある労働条件は、労働条件通知書に記載することもできます。しかし、労働条件通知書は、使用者から労働者に対し一方的に交付される書類であり、労働条件の認識違いによるトラブルが起こりがちです。そのような事態を回避するため、労働者の同意を確認する雇用契約書が発行されるケースも少なくありません。
雇用契約書を作成するケース
雇用契約書を作成しないとさまざまなトラブルが生じる可能性があるため、できるだけ作成することが望ましいでしょう。
特に、以下の場合は望ましいと考えられます。
- 休日が変則的
- 残業がある場合
- 在職中に転勤や人事異動、職種変更などがある
- 試用期間がある
通常とは異なる労働条件がある場合、同意のない労働条件通知書のみでは、「休日はもっとあると思っていた」「残業はないと思っていた」など認識の食い違いが起こりがちです。労働者が認識しないことでトラブルに発展する恐れがある場合、労働者の同意として署名・押印がある雇用契約書を作成しておくことが必要です。
雇用契約書のひな形
以下のサイトから、雇用契約書のテンプレートをダウンロードできます。必要事項を記入すれば雇用契約書をすぐに作成できるため、ぜひご活用ください。
雇用契約書にはどのような項目を記載する?
雇用契約書を作成する場合、以下の項目の記載が必要です。
- 絶対的明示事項を記載する
- 労働時間を明記する
- 試用期間がある場合は明記する
まず、絶対的記載事項の記載は必須です。記載項目は上記の表のとおりですが、労働時間や契約内容はできるかぎり明確に記載することが必要です。
たとえば従事する業務について、「営業に関する業務」と大まかな記載をすると、どのような営業なのか明確ではありません。労働者との間で認識のズレが生じる可能性があります。
労働時間についても、通常の労働時間制のほか、フレックスタイム制や裁量労働制など多様な働き方を採用する場合、それぞれの制度や労働時間を明示しなければなりません。
残業がある場合は、残業時間の目安や繁忙期などの記載をしておくと、後日のトラブルを防げます。
試用期間は絶対的明示事項ではありませんが、試用期間中は賃金や解雇条件が本契約時と異なる場合もあるため、絶対的明示事項の「賃金」や「退職」に関する事項に関連します。トラブル防止のため、試用期間や試用期間中の労働条件を明示しておくことも大切です。
雇用契約書作成の注意点
「そんな書類は知らない」を防ぐために
雇用契約書を取り交わす時は労働者用を1部、雇用者用を1部ずつ用意し、両方に労働者と雇用者の承諾の署名・捺印>をするようにします。トラブルが発生した時にどちらかが「そんな書類は知らない」と言いださないようにするためです。
「自社はそんなことは言わないし、新入社員もそのような人物ではない」と思うかもしれませんが、トラブルに対する事前の策を講じている姿勢を労働者に示すことで、双方の信頼感をより強くすることができます。
有期雇用をする場合の注意点
絶対的明示事項には「労働契約の期間」が定められています。当初定めた期間で雇用契約を終了する場合は問題ありませんが、継続して雇用する場合は改めて雇用契約書を取り交わす必要があります。
有期雇用契約期間中に正社員へと契約を更新する場合でも、期間の定めのない雇用契約として、新たに雇用契約書を作成しましょう。
契約を終了する場合は、遅くとも契約満了の1ヶ月前に面談を行い、直接伝えるようにしてください。
絶対的・相対的明示事項に加えて定めておくべき事項
雇用契約書には絶対的明示事項、および相対的明示事項以外にも会社内でのルールを記載できます。その場合にトラブル防止のために定めておくべき事項がいくつかあります。
そのうちの1つが社内での配置転換や社外への出向など、将来的な人事異動についての定めです。この点について契約をかわしていなければ、営業職で入社させたものの製造職の方に適性があったという場合に、会社の都合だけで異動させられなくなってしまいます。
社員の故意または過失によって会社に重大な損失が発生した場合の対応についての事項や、事業不振などで会社都合の臨時休業をせざるを得なくなった場合の対応などについても、雇用契約書に定めておくべき事項です。
トラブル回避のために雇用契約書を作成しよう
雇用契約書は法律上、作成の義務はありません。しかし、口頭の雇用契約では後日にトラブルが起きたときに問題があります。
雇用契約では明示が義務付けられている労働条件の絶対的明示事項がありますが、使用者からの一方的な通知である労働条件通知書では、認識の食い違いが起こりがちです。トラブルを防ぐためにも、雇用契約書を作成することをおすすめします。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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