- 更新日 : 2025年1月17日
産休・育休の手続きで自分でやることはある?申請時期や必要書類まとめ
産休や育休を取得するには、職場への報告と申請が必要です。
初めて育休・産休を取得する場合、取得する方法や取得に必要な書類がわからず不安な人もいるでしょう。
育休・産休を取得すれば、社会保険料が免除されたり出産手当金が受け取れたりなど、さまざまなメリットがあります。また、申請内容に誤りがあったり書類に不足があったりした場合は、希望日に育休・産休の取得ができない可能性もあるため注意が必要です。
目次
産休に入る前に自分でやること
産休とは、出産や育児のために仕事を休む制度のことで、労働基準法により雇用形態にかかわらずすべての女性が利用できます。また、企業や職場も産休の取得に応じるよう義務付けられています。
妊婦や出産後の母親の健康を守ることが目的とされていますが、産後休業を除き、自動で取得できるわけではありません。あらかじめ産休を取得する前に自身で行うべきことがあります。
会社へ妊娠の報告
産休を取得する前に、必ず会社または職場へ妊娠したことを伝えます。妊娠から8〜12週間後など、妊娠が安定期に入ったら、直属の上司や人事部門に正式に報告しましょう。
報告するタイミングは早ければ早いほど望ましいです。とくに下記などに当てはまる場合は、母体の安全確保または後任者の負担軽減などから、早めに報告したほうがよいでしょう。
- 立ち仕事や力仕事に携わっている場合
- 接客業に携わっている場合
- 属人性が強い業務に携わっている場合
- 薬や放射線など妊婦にとってよくない環境で働いている場合
- 体調不良が続く場合
適切なタイミングで報告することで、復職後の引き継ぎもスムーズに行えるでしょう。
産休を取得する申し出
職場や上司へ妊娠したことを伝えると同時に、下記も伝えましょう。
- 産休を取得する意向であること
- 業務の引き継ぎについて
直属の上司や人事部門に正式に報告し、産休の開始日や期間について明確に伝えます。職場によっては、会社の規定に従って「産前産後休業届」を提出する必要があるでしょう。
次に、業務の引き継ぎについても計画を立てます。自分の担当業務を整理し、後任者にスムーズに引き継ぐようにマニュアルや手順書を作成しておくと安心です。
産休に入る前に必要な手続きや自分でやること
産休に入る前に、休業するための申請や産後に育休を取得するための申請が必要です。
また休業期間中は無給になるため、社会保険料の支払いが免除になります。しかし、住民税の支払いは免除にならないため注意が必要です。
産休中は社会保険料や住民税の支払いにおいて変更が生じるため、あわせて手続きが必要です。
産前産後休業届
産前産後休業届(育児休業申請書)は、妊娠中または出産後の女性労働者が、産前産後休業(産休)を取得するために提出する書類です。
産前産後休業届は、労働基準法にもとづき妊婦が育休を取得するために必要です。また、届出を通じて女性労働者は法的に保護され、休業中の給与や保険料の免除などの制度が利用できるようになります。
妊婦は、産前産後休業届において下記を自身で行わなければなりません。
- 産前産後休業の開始日や終了日などを明確に記入する
- 提出期限内に職場の人事部門または担当者に提出する
産前産後休業届は、職場により定められた形式の用紙を用います。職場によっては産休申請書とよばれることもあるでしょう。
産前産後休業届とあわせて産休中の社会保険料の免除手続きも行います。届出を受け取った担当者により、休業中の給与や保険料の免除手続き、および復帰後のサポートが受けられます。
産休中の社会保険料の免除
産休中の社会保険料の免除とは、妊娠・出産を理由に産休を取得する女性従業員に対して、健康保険や厚生年金などの社会保険料が免除される制度です。
妊婦が産休中の社会保険料の免除を受けるためには、職場から「健康保険・厚生年金保険 産前産後休業取得者申出書」を受け取り、担当者へ提出します。
社会保険料の免除は、産休の開始月から終了日の翌日の属する月の前月まで適用されます。
妊婦が出産に専念できるよう、社会保険料を免除することで経済的な負担を軽減することが目的です。出産に伴う休業中は収入が減少するため、社会保険料の免除により、生活の安定が期待できるでしょう。
産前産後休業届と同時に職場へ提出することが望ましいですが、産休中に職場へ提出することも可能です。もし、自営業などで自身で書類を提出する場合は、最寄りの年金事務所の窓口へ提出します。
育休・産後パパ育休の申出
育休・産後パパ育休は、子どもが生まれたあとに親が育児に専念するための制度です。育休は通常、子どもが1歳になるまで取得可能ですが、産後パパ育休は子どもが出生してから8週間以内に最大4週間まで取得できる育児休業です。
妊婦またはパートナーが、休業を取得する2週間前までに、職場へ産後パパ育休を申請しましょう。
通常の育休と産後パパ育休には下記の違いがあります。
産後パパ育休 | 育休 | |
---|---|---|
休業の取得可能日数 | 出産後8週間以内のうち4週間 | 子どもが1歳になるまで |
申請期間 | 休業予定日の2週間前まで | 休業予定日の1か月前まで |
休業中の就業 | 調整によっては就業が可能 | 原則就業不可 |
分割取得の有無について | 分割して2回取得が可能で、まとめて申請する必要あり | 分割して2回取得が可能で、それぞれ申請が必要 |
育休・産後パパ育休は、親が育児に専念するための時間を確保し、家庭内での育児負担を軽減することが目的です。産後パパ育休は、父親が出産直後に育児に参加することを促進し、母親にとってのサポートとして大きな効果が期待できます。
住民税の支払い方法
社会保険料とは異なり、産休中も住民税の支払いは発生します。産休中の住民税の支払い方法には下記があります。
- 住民税を毎月職場へ支払う
- 産休前の最後の給与から、住民税の見込み金額を一括で天引きしてもらう
- 普通徴収で支払う
住民税は前年の所得にもとづいて計算され、通常は6月から翌年5月まで年に12回または4回に分けて支払われます。産休中は無給であるため、通常なら給与からの天引きができません。そのため、毎月住民税を従業員が企業へ支払うか、産休前の最後の給料から見込み額を一括で天引きできます。
職場で手続きをしない場合は、職場が住民税を支払わないため、普通徴収(自分で納付)に切り替える必要があるのです。普通徴収に切り替えた場合は、育休終了後に特別徴収(給与からの天引き)に戻すための手続きが必要です。
産休中や育児休業中に行う手続きや自分でやること
産休中や無事に子どもが生まれた場合、育児休業に関する手続きも必要です。
育児休業だけではなく、出産育児一時金や児童手当などの給付金を受け取るための手続きも、すべて産休中または出産後に行います。
指定された期間を過ぎたり申請内容に不備が生じたりした場合は、希望日に育児休業が取得できなかったり給付金が受け取れなかったりする場合があるため注意が必要です。
出生の届出
出生届は、子どもが生まれた際に親が役所に提出する公式な書類で、子どもが生まれた日から14日以内に提出することが義務付けられています。
出生届により、子どもの名前・生年月日・性別などが戸籍に記載されます。出生場所が国内外問わず日本へ提出するもので、外国で生まれた場合は在外公館を通じての手続きが必要です。
出生届は、地元の市役所で入手できますが、出産する病院で準備してくれることもあります。出生届を提出するときは、あわせて出生証明書の原本も必要です。
出生届の提出先は子どもの出生地や本籍地または届出人の所在地の市役所です。
出産育児一時金の申請
出産育児一時金は、健康保険法にもとづく保険給付のひとつで、被保険者またはその被扶養者が出産した際に支給されます。
出産育児一時金は、出産にかかる費用の一部を補助することを目的としており、令和5年4月からは支給額が42万円から50万円に引き上げられました。
出産育児一時金の申請は、主に「直接支払制度」と「受取代理制度」の2つの方法があります。
直接支払制度を利用する場合、出産する医療機関で必要な書類を提出するだけで手続きは完了します。
一方で受取代理制度を利用する場合は、以下の書類が必要です。
- 健康保険出産育児一時金支給申請書
- 医療機関からの証明書(出産証明書など)
- 被保険者の健康保険証のコピー
上記の書類を加入している健康保険組合や協会けんぽの支部に提出します。
出産手当金の申請
出産手当金は、妊娠中または出産後に仕事を休んだ際に、健康保険から支給される手当です。出産手当金は、出産日以前42日間および産後56日間の休業期間中に、給与が支給されない場合に受け取れます。
出産手当金の金額は、平均標準報酬日額の3分の2に相当する額が支給され、出産日以前の12ヶ月間の標準報酬月額をもとに計算されます。
出産手当金の申請書は、全国健康保険協会の公式ウェブサイトからダウンロードするか、勤務先の健康保険組合から入手可能です。
出産手当金を申請する際は、下記の書類が必要です。
- 健康保険出産手当金支給申請書
- 本人確認書類(マイナンバーカードのコピーなど)
- 医師または助産師による証明書
上記の書類をそろえたら、加入している健康保険組合または全国健康保険協会に提出します。
育児休業給付金の申請
育児休業給付金は、育児休業を取得した際に、雇用保険から支給される給付金です。育児休業給付金は、原則として1歳未満の子を養育するために育児休業を取得した場合に、育児休業中の生活を支える目的で支給されます。
育児休業給付金の申請書は、主に以下の方法で取得できます。
- 最寄りのハローワークの窓口で取得する
- ハローワークの公式ウェブサイトから、育児休業給付金支給申請書をダウンロードする
育児休業給付金は、申請時に下記の書類が必要です。
- 育児休業給付受給資格確認票
- 育児休業給付金支給申請書
- 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
- 賃金台帳や出勤簿等
- 母子健康手帳のコピーなど
育児休業給付金の申請は、通常は職場へ提出します。受け取った職場の担当者が管轄のハローワークへ提出することで、給付金が受け取れます。
申請は、育児休業開始日から4ヶ月を経過する日の属する月の末日までに行う必要があるため注意が必要です。
出生時育児休業給付金の申請
出生時育児休業給付金は、子どもが生まれた際に、育児休業を取得する被保険者に対して支給される給付金です。
出生時育児休業給付金は、育児休業を取得することで収入が減少することを補うために設けられてた制度です。
出生時育児休業給付金の申請書は、厚生労働省の公式ウェブサイトや各都道府県の労働局、ハローワークなどで入手でき、下記の書類をそろえて申請しましょう。
- 出生時育児休業給付金申請書
- 被保険者の雇用保険被保険者証の写し
- 出生証明書または出生届の写し
- 休業期間中の賃金明細書
上記の書類を職場に提出し、受け取った職場の担当者が管轄のハローワークに提出することで、給付金が受け取れます。
子どもの健康保険の加入
子どもの健康保険は、子どもが医療サービスを受ける際に必要な保険制度です。
日本では、一般的には子どもは親の健康保険に加入することで医療費の負担が軽減できます。健康保険に加入すれば、病院での診察や治療、入院などにかかる費用の一部が保険でカバーできます。とくに、子どもは成長過程で病気や怪我をしやすいため、健康保険の加入は必須です。
子どもは扶養する親の健康保険に加入するため、加入先は、会社の健康保険組合や全国健康保険協会(協会けんぽ)などがあります。
子どもを健康保険へ加入させるには、協会けんぽや健康保険組合へ健康保険被扶養者(異動)届などの必要書類を提出する必要があります。
乳幼児医療費補助
乳幼児医療費補助は、乳幼児が医療機関を受診した際にかかる医療費の一部を助成する制度です。自治体によっては子ども医療費助成制度とよばれており、国民健康保険や健康保険に加入していない乳幼児や、生活保護を受けている乳幼児、施設に入所している乳幼児が対象です。
乳幼児医療費補助を受けるには、お住まいの自治体の公式サイトから申請書をダウンロードし、下記の書類とあわせて申請します。
- 乳幼児医療費補助の申請書
- 申請者の本人確認書類(マイナンバーカードや運転免許証など)
- 子どもの健康保険証のコピー
- 所得証明書(必要な場合)
上記の書類を自治体の窓口へ提出した後、審査が行われて問題がなければ給付金が受け取れます。
児童手当の申請
児童手当は、日本の子育て支援制度の一環として、子どもを育てる家庭に対して支給される給付金です。
児童手当は、子どもの成長を支援し、家庭の経済的負担を軽減することを目的としています。支給対象は0歳から18歳までの子どもで、支給額は子どもの年齢や人数に応じて異なります。
手当は、毎年2月・4月・6月・8月・10月・12月の偶数月に支給され、各支給月には前月分までの手当が支給される仕組みです。
お住まいの自治体から児童手当認定請求書を受け取って必要事項を記載したあと、下記の書類もあわせて提出する必要があります。
- 児童手当認定請求書
- 請求者本人の本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)
- 児童の健康保険証のコピー(必要に応じて)
- 受給者の金融機関の口座情報がわかる書類(通帳のコピーなど)
申請は、出生や転入などの事由が発生した日から15日以内に行うことが推奨されています。遅れた場合でも申請は可能ですが、手当は申請受付日の翌月から支給されるため注意が必要です。
産後休業・育児休業後に復職する手続きや自分でやること
産休・育休を経て職場に復帰する際も、複数の手続きが必要です。
さらに住民税を普通徴収に切り替えていたり社会保険料の免除を受けていたりする場合は、産休・育休を取得する前の状態に戻す必要があります。
手続きが遅れると、住民税を二重で支払ってしまう可能性などがあるため、早めに手続きを済ませましょう。
出勤(復職)の報告
産休・育休からの復帰日が決まったら、できるだけ早めに職場の上司や人事部門に連絡を入れましょう。一般的には、復帰の1週間前には連絡をすることが望ましいとされています。
出勤報告の際には以下の内容を含めると、職場の人とよりよい関係が築けるでしょう。
- 産休・育休を取得できたことへのお礼
- 復帰後の業務についての意気込み
- 前任へのあいさつとお礼
復帰後は、体調や業務の状況についても上司と話し合うことが重要です。とくに、育児と仕事の両立に関する配慮が必要な場合は、早めに相談しておくと安心でしょう。
社会保険料の免除の終了
産休・育休中は社会保険料が免除されているため、職場に復帰する際はあらためて免除の終了手続きが必要です。
育児休業等を終了した場合、従業員は職場に対して復職の申し出を行います。職場から「健康保険・厚生年金保険 産前産後休業取得者申出書」を受け取り、必要事項を記載して職場の担当者へ提出します。
社会保険料の免除は、育児休業を開始した日の属する月から、終了日の翌日が属する月の前月までの期間が対象です。
従業員が職場に復職したあとに社会保険料の負担が発生するため、職場の担当者によって復職後の給与にもとづいた社会保険料が計算され、適切に給与から控除されます。
子が3歳になるまで年金が減額されないための特例措置の申出
産休・育休中は厚生年金または国民年金の支払いが免除されていたため、将来受け取れる年金が減額されます。しかし、産休・育休により免除されていた旨を申請することで、将来受け取れる年金が減額されません。
年金が減額されないための特例は、育児休業から復職したあと、子どもが3歳になるまでの期間に適用されます。
申請するには、職場へ「厚生年金保険 養育期間標準報酬月額特例申出書」を提出します。
ただし、厚生年金の被保険者でなくなった場合や、ほかの子どもを養育している場合などは、特例措置が受けられないため注意が必要です。
標準報酬月額の変更の申出(該当者のみ)
標準報酬月額とは、社会保険料を計算するための基準となる金額を指します。標準報酬月額をもとに社会保険料が計算され、標準報酬月額が高いほど社会保険料もあわせて高くなります。
育休・産休の前後で、職場から受け取る給与が異なる場合に申請が必要です。
申請するには、「産前産後休業終了時報酬月額変更届」または「育児休業等終了時報酬月額変更届」を職場へ提出する必要があります。申請することで、職場へ復帰後の報酬にもとづいて標準報酬月額が変更され、社会保険料の算定基礎が見直されます。
たとえば、職場へ復帰した後の報酬が産休・育休を取得する前より下がったとしましょう。下がったにもかかわらず申請しなければ、天引きされる社会保険料が高いままとなるため注意が必要です。
産休・育休の届け出・手続きチェックリスト
出産前・出産後・復職後で、必要な手続きは異なります。忘れないよう下記チェックリストでの管理がおすすめです。
時期 | 手続きの種類 | 必要な書類 | 提出先 |
---|---|---|---|
出産前 (産休前) | 産前産後休業届 |
| 職場 |
産休中の社会保険料の免除 |
| 職場または最寄りの年金事務所 | |
育休・産後パパ育休の申出 |
| 職場 | |
住民税の支払い方法切り替え | ※普通徴収へ切り替える場合
| 職場またはお住まいの自治体 | |
出産後 | 出生の届出 |
| 職場またはお住まいの自治体 |
出産育児一時金の申請 |
| 健康保険組合や協会けんぽの支部 | |
出産手当金の申請 |
| 健康保険組合や協会けんぽの支部 | |
育児休業給付金の申請 |
| 職場または最寄りのハローワーク | |
出生時育児休業給付金の申請 |
| 職場または最寄りのハローワーク | |
子どもの健康保険の加入 |
| 職場 | |
乳幼児医療費補助 |
| お住まいの自治体 | |
児童手当の申請 |
| お住まいの自治体 | |
復職時 | 社会保険料の免除の終了 |
| 職場または最寄りの年金事務所 |
子が3歳になるまで年金が減額されないための特例措置の申出 |
| 職場または最寄りの年金事務所 | |
標準報酬月額の変更の申出(該当者のみ) |
| 職場または最寄りの年金事務所 |
厚生労働省の公式サイトでは、女性と男性にシートが分かれているなど、より細かいチェックシートがダウンロードできますので、ぜひご利用ください。
産休・育休を取得するため正しい申請方法を把握しましょう
産休・育休を取得する場合、おもに下記の3段階に分けて必要な手続きがあります。
- 産休取得前
- 産休中や育児休業中
- 産休や育児休業後
それぞれの期間中、必要な申請を適切に提出することで、社会保険料が免除になったり給付金が受け取れたり、さまざまなメリットがあります。
また、産休・育休から復帰する際もスムーズに業務が進められるため、各期間中における申請の種類と方法について、あらかじめ把握しておきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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