• 作成日 : 2022年9月2日

国民年金基金とは?国民年金との違いやメリットを紹介!

年金制度として、国民年金、厚生年金があることは、多くの方がご存知かと思います。では、国民年金基金とはなんでしょうか。自営業者、サラリーマンなど、すべての国民が関係するものなのでしょうか。この記事では、国民年金基金とはどのようなものなのか、国民年金や厚生年金との関係も含めて、わかりやすく解説していきます。

国民年金基金とは?

公的年金である国民年金や厚生年金の仕組みは、非常に複雑でわかりにくいものになっています。国民年金基金について説明する前に公的年金制度全体の仕組みについて整理しておきましょう。

国民年金と厚生年金の関係は、建物に例えると、国民年金は全国民共通の1階部分の年金とされ、厚生年金は会社員や公務員に上乗せられる2階部分の年金となっています。

自営業者、会社員など、すべての国民に年金制度が適用され、国民皆年金となったのは、1961年のこと。自営業者は国民年金、会社員は厚生年金、公務員は共済年金という仕組みです。

自営業者は給与所得者ではないため、支給される年金は加入期間の納付済保険料で決まる定額部分だけとなっていましたが、会社員や公務員は給与所得があるため、1階は定額部分、2階は在職中の給与額で決まる報酬比例部分の年金で、公務員についてはさらに3階に職域年金もある3階建てでした。

このように職業による縦割り制度となっていましたが、制度間の給付と負担の公平性や、財政の安定性などを確保するため、公的年金の一元化を目指し、1986年4月に大きな制度改革が実施。それまでを旧年金制度、それ以後を新年金制度と呼んでいます。

新年金制度では、国民年金はそれまでの自営業者だけでなく、すべての国民共通の年金として基礎年金と位置づけられました。被保険者としては、自営業者は第1号被保険者、会社員や公務員は第2号被保険者、第2号被保険者に扶養されている配偶者は第3号被保険者となりました。

会社員や公務員の厚生年金と共済年金は、旧年金制度のときから2階建ての年金になっていたため、定額部分であった1階部分が、同じように定額部分である国民年金の基礎年金に置き換えられました。

新年金制度では、この国民年金の基礎年金に従来の2階部分である厚生年金、共済年金の報酬部分が上乗せされる仕組みとなったわけです。共済年金については、その後、2015年に厚生年金に統合され、現在に至っています。年金全体のイメージは次のようになります。

国民年金基金とは?

引用:「いっしょに検証!公的年金」|厚生労働省

国民年金基金と国民年金の違い

イメージ図でわかるように、本稿のテーマである国民年金基金は、国民年金(基礎年金)を1階として3階部分に位置づけられています。

1階部分および2階部分は加入が義務づけられている公的年金であるのに対し、3階部分は任意で加入する私的年金ということで区別しています。

国民年金は、自営業者(第1号被保険者)だけでなく、すべての国民が加入しなければならない基礎年金ですが、第1号被保険者については、厚生年金(報酬比例部分)のような2階部分の上乗せがありません。

厳密には、国民年金には第1号被保険者だけの独自給付として、任意で付加保険料を納付して支給される付加年金というものがあります。ただし、付加保険料が月額400円と少ない分、将来の付加年金も最大で年間96,000円と少なく、また付加年金は国民年金基金と重複して加入することはできません。

いずれにしても、第1号被保険者は将来の年金額が少ないため、制度として国民年金基金を設け、第1号被保険者が任意で加入し、保険料に当たる掛金を支払うことで上乗せ部分としての私的年金を受けることができる仕組みとなっています。

国民年金基金には、地域型国民年金基金である全国国民年金基金と職種別に設立された職能型国民年金基金があります。

国民年金基金と厚生年金の違い

国民年金基金と厚生年金の関係もイメージ図で一目瞭然です。

会社員や公務員の第2号被保険者は、2階部分として報酬比例部分の厚生年金があります。しかし、上乗せとして国民年金基金に加入することはできません。理由は、第1号被保険者と異なり、すでに厚生年金自体が上乗せ部分だからです。

国民年金基金とiDeCoの違い

私的年金は、国民年金基金のほかにもあります。確定拠出年金もその1つです。日本では、2001年、アメリカの確定拠出年金制度の1つである「401(k)プラン」をモデルとして導入されました。

確定拠出年金には、企業型DCと個人型DC(通称iDeCo:イデコ)の2つの制度があります。

iDeCoは、国民年基金連合会が実施する制度です。原則として、20歳以上60歳未満のすべての方が加入できますが、掛金は加入者個人が拠出します。

もともとiDeCoは、国民年金の第1号被保険者と企業年金のない厚生年金被保険者だけが加入できる制度でしたが、ニーズの広がりから、平成29年1月から専業主婦などの国民年金の第3号被保険者や、私的年金である確定給付企業年金に加入している方も加入することができるようになりました。

なお、確定給付企業年金は、イメージ図では第2号被保険者の3階部分に企業年金として描かれています。

国民年金基金はいつから・いつまでもらえる?

国民年金基金は、公的年金と同じように65歳から支給され、死亡するまでの終身年金が基本です。加入は口数単位となっており、1口目は65歳から支給される終身年金ですが、2口目以降は7種類から自由に組み合わせて選ぶことができます。

終身年金ではなく、支給期間が決まっている確定年金を選択した場合は、60歳から支給されるタイプが3つあり、支給期間はⅢ型は15年、Ⅳ型は10年、Ⅴ型は5年となっています。

国民年金基金はお得?国民年金・厚生年金・iDeCoと比較

4つの年金について同列で比較することは適切ではないため、私的年金と公的年金に分けてみていきましょう。まず、私的年金である国民年金基金とiDeCoについて比較します。

国民年金基金に加入した場合、将来の年金額は選択するタイプによって異なります。iDeCoについては年金だけでなく、一時金のほか、年金と一時金の併用もあり、こちらも単純に比較することはできません。

どちらが得なのかは、単に年金額だけでなく、ほかの仕組みについても比較しておく必要があります。

積立できる期間は、国民年金基金は60歳まで、iDeCoは60歳(第2号保険者は65歳)までとなっています。

ともに掛金の額によって将来の年金額は違ってきます。国民年金基金は複数の口数を選ぶこともできますが、いずれも月68,000円が上限です。また、国見年金基金とiDeCoを合わせての上限額であり、両方に加入する場合は組み合わせて月68,000円以内とする必要があります。

注目すべきは、税制上の扱いです。

ともに掛金は全額が所得控除となりますが、区分は異なり、国民年金基金の掛金は社会保険料控除、iDeCoは小規模企業共済等掛金控除です。

この区分の違いによって、国民年金基金のほうが受けるメリットは大きくなります。なぜなら、社会保険料控除は加入者本人だけでなく、生計を一にする配偶者等の掛金額も控除できるからです。小規模企業共済等掛金控除は、あくまで本人分の掛金額だけしか控除できません。

第1号被保険者の自営業者の場合、配偶者も第1号被保険者として国民年金に加入し、夫婦ともに国民年金基金に加入しているケースもあるでしょう。その場合、配偶者の掛金は年間で816,000円(月68,000円×12カ月)となります。住民税率が10%、所得税率23%の場合、控除額は両方合わせて最大269,280円にもなります。

年金額について、具体的に比較してみましょう。

【ケース】男性、加入開始年齢40歳、年収700万円、掛金納付期間20年

①国民年金基金の場合(終身年金A型1口)

  • 掛金月額:12,555円
  • 年金月額:15,000円(年額180,000円)

②iDeCo

  • 掛金月額:13,000円
  • 運用利回り:1.0%
  • 年金月額:14,377円(年額172,533円)

このケースの場合、60歳から受け取る年金としては、さほど大きな違いはないといえます。

次に公的年金である国民年金と厚生年金の支給額についてみてみましょう。こちらは、厚生労働省で公表している年金額をご紹介します。

③国民年金の老齢基礎年金(令和2年度平均額)

  • 月額56,000円(年額672,000円)

④厚生年金の老齢厚生年金(令和2年度平均額)

  • 月額90,000円(年額1,080,000円)

自営業者のような第1号被保険者は老齢基礎年金だけですが、会社員や公務員の第2号被保険者は老齢基礎年金と老齢厚生年金を合計した金額になります。

参考:「年金制度基礎資料集」(2022年7月)|厚生労働省

国民年金基金の内容と国民年金や厚生年金などとの違いを知っておこう!

年金制度は、公的年金制度と私的年金制度があり、いずれも複雑な仕組みとなっています。私的年金である任意加入の国民年金基金は、公的年金の上乗せ部分が十分でない第1号被保険者のための制度です。iDeCoも含めて将来の生活の糧としてよく理解しておくことが大切です。

よくある質問

国民年金基金とはなんですか?

自営業者のような国民年金の第1号被保険者だけが加入できる、国民年金に上乗せされる私的保険です。詳しくはこちらをご覧ください。

国民年金基金と国民年金の違いはなんですか?

国民年金は全国民共通の公的年金であり、加入義務がありますが、国民年金基金は任意加入の私的保険です。詳しくはこちらをご覧ください。


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