• 更新日 : 2022年10月7日

法定労働時間とは?月の労働時間の上限や36協定、残業代の計算方法を解説!

法定労働時間とは、法律で定められた労働時間の上限です。1日・1週間の法定労働時間を超える労働があった場合には、時間外労働として割増賃金が発生します。ここでは、法定労働時間や所定労働時間の違いを解説するとともに、基本の残業代の計算方法について触れていきます。36協定など、労務管理で重要な基礎知識を押さえておきましょう。

法定労働時間とは?

法定労働時間とは、労働基準法によって定められた労働時間の上限のことです。以下で、法定労働時間、所定労働時間、月平均所定労働時間のそれぞれの違いについて解説します。

「1日8時間・週40時間」を原則とする、労働時間の上限

労働基準法32条、34条、35条では、労働時間と休憩、休日等に関するルールが定められています。労働時間については原則として、「休憩時間を除き、1日8時間、1週間につき40時間を超えて労働させてはならない」とされており、これを、法定労働時間といいます。法律により労働時間の条件が定められているのは、過度な労働により労働者の健康が害されるのを予防するためです。

所定労働時間との違いは?

法定労働時間とおなじく、労働時間の上限を示すものに「所定労働時間」があります。法定労働時間との違いは、法定労働時間が法律上の労働時間の上限を根拠とするものに対して、所定労働時間は会社が独自に定める勤務しなければならない労働時間であるという点です。

独自といっても、会社が自由に設定できるわけではなく、所定労働時間は法定労働時間の枠内である必要があります。

月平均所定労働時間とは?

労働時間の考え方に、所定労働時間とは別に「月平均所定労働時間」があります。これは、年間の所定労働時間を12カ月で割ることにより算出される1カ月の労働時間で、残業代の計算の際に用いられます。

1カ月には31日まである月もあれば、30日しかない月もあります。こうした暦日数の違いをそのままにすると、残業代の計算にバラツキが生じてしまいます。どの月でも、残業代の計算を一定にするために、月平均の所定労働時間という考えを用いるのです。

なお、月平均所定時間は以下の計算式で求められます。

月平均所定労働時間 = (365日-1年間の休日合計日数) × 1日の所定労働時間数 ÷ 12カ月

法定労働時間を超えて働かせるには36協定の締結が必要

法定労働時間を超えて働かせる場合には、あらかじめ「36(サブロク)協定」の締結と労働基準監督署への届け出が必要です。36協定とは、労働基準法第36条に定められた「時間外・休日労働に関する協定書」をいい、届け出る書式を「時間外・休日労働に関する協定届」といいます。

36協定の届出が必要となるのは、以下のケースです。

  • 「1日8時間」「1週40時間」の法律で定められた法定労働時間を超えて、時間外労働をさせる場合
  • 「毎週少なくとも1回」「4週間を通じて4回以上」の法定休日に休日労働をさせる場合

参考:労働時間・休日|厚生労働省

つまり、法定労働時間を超えて労働させる場合や、法定休日に労働させる場合は、事前に会社と従業員代表との間で労使協定を締結する必要があるということです。

労使で合意された「36協定協定」は、所轄の労働基準監督署に届け出て初めて効力を持ちます。また、たくさんいる労働者の中の一部の労働者にだけ、法定労働時間を超えた労働をさせるような場合でも、36協定が必要となります。

36協定にもとづく時間外労働の上限は?

36協定を結んだからといって、企業が際限なく従業員を時間外労働に従事させられるわけではありません。過去には、時間外労働の上限に罰則等の強制力がなかったため、事実上、上限のない時間外労働が可能となっていました。しかし、働き方改革関連法施行に伴い2019年4月に労働基準法が改正され、36協定を結んだ場合の時間外労働の上限が明確に定められました。

【36協定に基づく時間外労働の上限】

  • 月45時間、年360時間

さらに、時間外労働と休日労働の合計が1年を通して常に以下のようにならなければいけません。

  • 時間外労働と休日労働の合計が、月100時間未満
  • 時間外労働と休日労働の合計が、「2カ月平均」「3カ月平均」「4カ月平均」「5カ月平均」「6カ月平均」のそれぞれがすべて、1月あたり80時間以内

36協定の特別条項とは?

36協定の時間外労働の上限には、例外措置が設けられています。繁忙期などで業務負荷が集中する際、どうしても月45時間・年360時間となる時間外労働の上限を超えて残業が発生してしまうこともあるでしょう。このような場合には、「特別条項付きの36協定」を届け出ることにより、上限を超えた時間外労働が可能になります。

特別条項による時間外労働の上限規制は以下の通りです。

  • 時間外労働が年720時間
  • 時間外労働と休日労働の合計が、月100時間未満
  • 時間外労働と休日労働の合計が、「2カ月平均」「3カ月平均」「4カ月平均」「5カ月平均」「6カ月平均」のそれぞれがすべて、1月あたり80時間以内
  • 時間外労働が月45時間を超えられるのは、年6回(6カ月)が限度

これらの上限規制に違反した企業には、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されるおそれがあります。これまで強制力がなかった時間外労働の限度時間が、罰則付きで労働基準法に定められたことにより、強制力を持つようになったのです。

参考:時間外労働の上限規制 わかりやすい解説|厚生労働省

法定労働時間と残業代の関係性は?

残業とよばれる時間外労働には、通常の賃金に加えて割増賃金が発生します。残業代を正しく計算するには、「法定内時間外労働(法定内残業)」と「法定外時間外労働(法定外残業)」について理解しましょう。

法定労働時間内の残業は割増賃金が発生しない

労働時間には、会社が定める「所定労働時間」と、法律で定める「法定労働時間」があります。所定労働時間が1日8時間、週40時間以内の労働者の場合、通常の労働時間を超えて残業をしたとしても、それが法定労働時間内であれば、「法定内残業」と呼ばれ、時間外労働の割増賃金が発生しません。

たとえば、以下のように1日の所定労働時間が6.5時間と定められている労働者が、8時間労働したとしても、1.5時間分の残業は法定内残業として扱われ、延長して働いた分に対する残業代は発生しますが、25%などの割増賃金は不要となります。

所定労働時間
6.5時間
法定内残業
1.5時間
法定外残業
1日8時間を超える分

法定労働時間側の残業は割増賃金が発生する

時間外労働の割増賃金が発生するのは、1日8時間・週40時間の法定労働時間を超える残業に対してです。これを、法定外残業と呼びます。労働者を法定労働時間を超えて労働させる場合は、割増賃金の支払いが必要です。

通常の時間単価を基準の1.0とした場合の割増率は次の通りです。

  • 休憩時間を除き、1日8時間、1週間につき40時間を超えた時間分(法定外時間外労働):1.25倍
  • 法定外時間外労働が月60時間を超えた場合に、60時間を超えた時間分:1.5倍(中小企業においては2023年3月31日まで猶予措置あり)
  • 法定休日に労働させた時間:1.35倍
  • 深夜(22時~翌5時)の時間帯に労働させた時間:0.25倍

残業代の計算方法

残業代の基本の計算方法は、法定内残業と法定外残業とで異なります。

法定内残業の場合は、1時間あたりの基礎賃金に法定内残業時間をかけて算出します。

法定内残業の残業代 = 1時間あたりの基礎賃金 × 法定内残業時間

法定外残業の場合は、割増賃金が発生するため、残業時間にさらに割増賃金率をかけることになります。

法定外残業の残業代 = 1時間あたりの基礎賃金 × 法定外残業時間 × 割増賃金率

ただし、これは基本の計算方法ですので、実際の残業代の計算の際には、労働者に適用されている変形労働時間制を考慮しなければなりません。たとえば、フレックスタイム制を導入している場合、単純に1日8時間を超えただけでは法定外残業とはみなされず、清算期間と総労働時間から残業時間を計算する必要があります。

また、裁量労働制を採用している場合には、みなし労働時間を労使協定によって定めることになりますので、原則として残業代は発生しないことになります。ただし、みなし労働時間が法定労働時間を超えている場合には、割増賃金を踏まえた給与計算が必要になりますので注意しましょう。

法定労働時間の例外(特例事業)とは?

これまで説明してきた「1日8時間・週40時間」の法定労働時間ですが、一部の事業では「1日8時間・週44時間」まで労働者を働かせることができます。このように、法定労働時間の例外が適用されている事業を「特例措置対象事業場」と呼びます。

特例措置対象事業場に該当するのは、以下の業種における、常時10人未満を雇用する事業所です。

  • 商業:卸売業、小売業、理美容業、倉庫業、その他商業
  • 演劇/映画業:映画の映写、演劇、その他興行の事業
  • 保健衛生業:病院、診察所、社会福祉施設、浴場業、その他保健衛生業
  • 接客娯楽業:旅館、飲食店、ゴルフ場、公園・遊園地、その他接客娯楽業

「常時10人未満」の労働者には、パートやアルバイトといった短時間労働者もカウントされます。また、企業全体の人数ではなく、支店や事業所ごとの労働者数を計算します。特例措置対象事業場の適用には、特別な申請は必要ありません。

1カ月単位の変形労働制・フレックスタイム制に週44時間の特例は適用可能です。ただし、清算期間が1カ月を超えるフレックスタイム制を導入している場合には、週44時間の特例は適用されず、週40時間を超えて働く場合には36協定の締結と届出、割増賃金の支払いが必要になります。また、1年単位・1週間単位の変形労働制でも、1週40時間の適用となる点に注意しましょう。

違法な時間外労働を課している場合の罰則は?

法定労働時間を超える労働をさせているにも関わらず、36協定の締結・届出がない企業や、時間外労働の上限規制を超えて労働させている企業は、労働基準法違反と見なされます。

時間外労働の罰則は、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金です。また、労働基準法違反となった企業は、悪質な場合は厚生労働省によって企業名が公表されることもありますので、法定労働時間の管理は厳格な取り扱いが必要です。

法定労働時間を正しく理解し、労働基準法を守ろう

労働者の労務管理を行う上で、法定労働時間や所定労働時間の正しい理解は必須です。法定労働時間を超えて働かせる場合には、36協定の締結と届出が必要になります。また、繁忙期などで時間外労働の上限を超える可能性があれば、特別条項を締結しましょう。

よくある質問

法定労働時間とは?

法律で定められた、労働者を働かせてよい労働時間の上限をいいます。1日8時間、1週間に40時間というのが、法定労働時間です。法定労働時間を超える労働は時間外労働となり、割増賃金が発生します。詳しくはこちらをご覧ください。

36協定にもとづく時間外労働の上限は?

36協定の時間外労働の上限は原則として「月45時間、年360時間」です。また、1年を通じて時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満、2カ月~6カ月の月平均が80時間以内とならなくてはいけません。詳しくはこちらをご覧ください。


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