- 更新日 : 2025年3月19日
パート・アルバイトでも有給休暇は取れる?条件や注意点を解説
アルバイトやパートで働いている人でも、条件を満たしていれば有給休暇の取得が可能です。
ここでは、パート・アルバイトの人がの人が有給休暇を取得できる条件や日数について解説します。さらに、退職時に未消化の有給休暇がある場合の対応や、年5日の取得義務など、企業が把握しておくべきポイントについても紹介します。
目次
パートやアルバイトも有給休暇を取得できる
パートやアルバイトなどの非正規雇用の労働者も、一定の条件を満たせば有給休暇(年次有給休暇)を取得できます。
年次有給休暇は、労働者の心身の疲労回復や生活のゆとりを確保するための制度です。労働基準法では、勤続期間と出勤率の要件を満たせば、雇用形態を問わず有給休暇を取得できると定められています。
取得要件は、雇入れから一定期間が経過していること、出勤率が一定基準を満たしていることです。そのため、パートやアルバイトなどの短時間労働者も、勤務日数に応じた有給休暇が付与されます。
有給休暇は正社員だけでなく、すべての労働者に認められた権利であり、条件を満たせば取得可能です。また、取得を理由とした不利益な取り扱いは禁止されています。
有給休暇の取得日数や付与については以下の記事でも詳しく解説しているので、こちらもぜひご確認ください。
アルバイト・パートが有給休暇をもらえる条件は?
アルバイトやパートで働いている人も、一定の条件を満たせば、有給休暇を取得できます。アルバイト・パートの人に有給休暇を付与する条件は、大きく分けて2つです。ここでは、それぞれの条件の詳細を解説します。
入社日から6ヶ月以上継続的に勤務している
1つ目の条件は、入社日(雇い入れ日)から6ヶ月以上継続して勤務していることです。
継続勤務とは、労働契約が存続している期間を指し、試用期間も含まれます。
有給休暇は雇用開始直後には付与されず、正社員と同様に入社から半年後に付与するのが一般的です。6ヶ月勤務した場合、最低10日間の有給休暇を付与する必要があります。
また、契約更新により6ヶ月を超えた場合も、1年ごとに新たな有給休暇が発生します。付与のタイミングを把握し、適切に管理しましょう。
所定労働日の8割以上に出勤している
2つ目の条件は、雇用契約書などで定められている所定労働日のうち、8割以上に出勤していることです。
所定労働日とは、雇用契約で定められた出勤すべき日数を指します。たとえば、6ヶ月間で100日が所定労働日なら、80日間出勤すれば有給休暇がもらえることになります。
また、週の所定労働日数が決まっていない場合は、直近6ヶ月の労働日数の2倍、または前年の労働日数が基準です。さらに、遅刻や早退の日だけでなく、産休・育休の期間も出勤日としてカウントされます。
企業側は従業員の出勤率を正確に把握しておきましょう。
パート・アルバイトの有給休暇付与日数の計算方法
前述の条件を満たしてたアルバイト・パートの人は、どれくらいの有給休暇を取得できるのでしょうか。ここでは、付与日数と計算方法について解説します。
有給休暇の日数は会社の規定によって異なるため、以下で挙げるのは労働基準法で定められている最小の付与日数です。
計算方法は、「週30時間以上・週5日以上の人」と「30時間未満かつ週4日以下の人」で異なります。また、途中で労働条件が変わった場合は、有給休暇付与日の労働条件によって決まります。
それぞれの詳細を見ていきましょう。
週30時間以上・週5日以上の場合
週5日または週30時間以上、または年間217日以上勤務している人は、正社員と同じ基準で有給休暇の日数を計算します。
もらえる有給休暇の日数は、継続して勤務している年数によって変動します。継続勤務6ヶ月で10日の有給休暇が付与され、その後は1年ごとに日数が追加る仕組みです。
法律で定められている有給休暇付与日数の上限は20日であるため、原則6年半勤務した時点で、1年間にもらえる有給休暇の日数が最大になります。
30時間未満かつ週4日以下の場合
所定労働時間が30時間未満かつ日数が週4日以下のパート・アルバイトは、継続勤務年数と所定労働日数に応じて有給休暇が付与されます。
所定労働日数が週単位で決まっている場合「週所定労働日数」を基準に、決まっていない場合は「年間所定労働日数」で計算します。
たとえば1年半の間、週に3日(または年に121日から168日)出勤している人の有給休暇は6日です。所定労働日数が決まっていない場合は、直近6ヶ月の労働日数の2倍、または前年の労働日数を基準に計算します。
パート・アルバイトで有給を取得した場合の賃金計算方法
パート・アルバイトの従業員が有給休暇を取得した場合、賃金の計算方法は正社員と異なります。適切な計算方法を理解し、誤った支払いがないようにしましょう。
所定労働時間勤務した場合の賃金から算出する
所定労働時間にもとづく賃金は、所定労働時間と時給を掛け合わせて算出されます。
この計算方法は、毎回の勤務時間が決まっている労働者に適用され、とくにシフトの変更が少ない場合に便利です。
たとえば、時給1,100円で1日の所定労働時間が5時間の場合、有給休暇を取得したときの沈金は以下のようになります。
勤務時間が一定であれば、有給休暇取得時の賃金も明確に計算できます。
平均所定労働日数については以下の記事で解説しておりますので、こちらもあわせてご確認ください。
平均賃金から算出する
平均賃金は、過去3ヶ月間に支払われた賃金をもとに算出され、労働者の直近の賃金状況に応じた適正な金額が適用されます。
計算方法には2つの選択肢があり、いずれか高い金額を適用するルールです。
たとえば、4〜6月の3ヶ月間の給与が30万円で実労働日数が45日の場合、計算方法は以下のようになります。
30万円(給与) ÷ 45日(実労働日数) × 0.6 = 4,000円
この場合、2.の計算結果が高いため、1日の有給休暇に対して支払うのは4,000円です。
健康保険の標準報酬日額から算出する
有給休暇の賃金を健康保険の標準報酬日額から算出する場合、標準報酬月額をもとに日割り計算を行い、その金額をもとに支払います。
標準報酬月額は、従業員が得た給与などの報酬を1〜50の等級で区分したものです。標準報酬日額は、月額報酬を30で割った数値で算出され、日々の給与の支払いや有給休暇の賃金に使用されます。
たとえば、パートタイムの従業員の標準報酬月額が15万円だった場合、標準報酬日額は以下の通りです。
この5,000円が有給休暇取得時の賃金となります。
パート・アルバイトの有給休暇に関する注意点
有給休暇の取得は、法律で定められている労働者の権利です。企業としてもその付与義務があり、適切な対応が求められます。
ここでは、アルバイト・パートの人が有給休暇に関する注意点を解説します。
有給休暇は出勤日数に含まれる
有給休暇は賃金が発生するため、出勤日数に含まれます。
有給休暇は、労働基準法で定められた労働者の権利であり、賃金が支払われる休暇です。そのため、休暇を取得した日も出勤日数としてカウントされます。
さらに、以下の場合も出勤日数の対象です。
- 産前産後休業
- 育児休業
- 介護休業
- 業務上の負傷や病気による休業
企業はこれらの休暇期間の場合も出勤日数に加算し、正確な有給休暇の付与を行う必要があります。適切な管理を徹底し、法令遵守を心がけましょう。
雇用保険について以下の記事で解説しておりますので、こちらもあわせてご確認ください。
有給休暇は取得から2年で消滅する
有給休暇には2年の有効期限があり、期限を過ぎると自動的に消滅します。
労働基準法にもとづき、取得した有給休暇は1年間で使用しきれなかった場合、翌年に繰り越しが可能です。しかし、翌年に持ち越した有給休暇も、2年後には無効となります。
たとえば、1年目に5日分の有給を使わずに残した場合、翌年にその5日を繰り越し可能です。しかし、繰り越した有給は2年目の終了時点で消滅するため、期限内に使用しなければなりません。
また、有給休暇は最大20日付与されるため、そのまま繰り越せる場合には翌年度の付与分と合わせて最大40日保有できることになります。ただし、後述の消化義務があるため、単純にそのまま全てを繰り越せない場合があることに注意が必要です。企業はこの期限や最大保有日数を従業員に周知し、適切な取得を促すとともに計画的な管理を行いましょう。
有給休暇の増えるタイミングについては以下の記事でも解説しております。こちらもあわせてご確認ください。
年5日の有給休暇の消化が義務化された
働き方改革関連法により、企業は年に10日以上の有給休暇が付与されている従業員に対して、最低5日間の有給休暇を計画的に取得させることが義務化されました。
これは、労働環境の改善や働き方の多様化を促進するための措置であり、正社員だけでなくパートやアルバイトも対象となります。企業は従業員が過度に働きすぎないよう、計画的に有給休暇を取得させなければなりません。
この義務を怠ると、違反者1人につき最大30万円の罰金が科せられるため、企業側は適切な対応が求められるでしょう。
有給休暇の取得義務については以下の記事で詳しく解説しているので、こちらもご確認ください。
有給休暇の取得は事前に申請する
有給休暇は、基本的に従業員が自由に取得できる休暇で、事前申請が原則です。
従業員には「時季指定権」があり、自分の希望する日に有給休暇を取得する権利があります。企業はこの希望を尊重しなければなりません。
しかし、業務上の理由で事業の運営に支障が生じる場合、使用者は「時季変更権」を行使し、有給休暇の取得時季の変更ができます。
多くの企業では、有給休暇の事前申請を義務付けています。従業員が申請する際には、取得希望時季を確認することが重要です。事前申請がない場合や業務に支障をきたす恐れがある場合は、「時季変更権」を行使して適切に対応しましょう。
パート・アルバイトの有給休暇に関するQ&A
ここでは、パート・アルバイトの有給休暇に関するよくある質問を紹介します。
有給休暇の取得は拒否できる?
原則として、有給休暇は労働者の好きなタイミングで取得できる権利であり、企業は拒否できません。従業員が保有する有給休暇について、理由を問わず取得が可能であることを理解する必要があります。
しかし、従業員の有給取得によって業務に支障をきたすと判断した場合は、法的権利である「時季変更権」の行使が可能です。従業員に対して理由を明確に伝え、業務運営上の事情があることを説明してから代替案を提示しましょう。
退職時に有給消化できなかった場合は?
退職時や有効期限が迫っている場合に、未消化の有給休暇を金銭的に補償する「有給休暇の買い取り」が可能です。
ただし、これは法律で認められた例外的なケースであり、通常時には有給休暇の買い取りは認められていません。事前に「有給休暇を買い取ることを約束する」こともできないため、注意が必要です。
また、有給休暇の買い取りに関しては、支払われる金額は「給料」ではなく「賞与」として扱われます。企業は就業規則で、有給休暇の買い取りに関するルールを明確に定めておくことが重要です。
買い取りはあくまで例外的な手続きであり、通常時には利用できないことを理解しておきましょう。
退職時の有給買取については、以下の記事も参考にしてみてください。
有給休暇の理由は聞いてもいい?
有給休暇の取得には、従業員が理由を述べる義務はありません。
労働基準法にもとづき、従業員は希望する時季に有給休暇を取得する権利が保障されています。そのため、従業員が有給休暇を申請する際に休暇の理由を会社に報告する必要はありません。
ただし、虚偽の理由を述べて有給休暇を取得することは避けるべきです。たとえば、「体調不良」と申告しておきながら旅行に出かけるなど、会社の信用を損なう行為につながります。このような場合、企業は就業規則にもとづき適切な対応を取ることが重要です。
企業は有給休暇の取得に関する適切な運用ルールを定め、それを従業員に周知する必要があります。これにより、トラブルを避け、従業員と企業双方にとって円滑な運用が可能となるでしょう。
有給休暇の仕組みを理解して、正しく活用しよう
有給休暇の取得は、法律で保証された労働者の権利です。パートやアルバイトでも条件を満たしていれば有給休暇の取得ができます。
万が一のトラブルを避けるためにも、有給休暇の日数や取得条件など仕組みを正しく理解しておくことがポイントです。企業は有給休暇の取得に関する明確なルールを定め、従業員への周知を徹底しておきましょう。
よくある質問
アルバイト・パートに有給休暇はありますか?
継続して半年以上・所定労働日の8割以上に勤務している人は、アルバイトやパートでも有給休暇が付与されます。詳しくはこちらをご覧ください。
アルバイト・パートが有給休暇をもらえる日数に上限はありますか?
1年間あたり20日が上限です。継続勤務年数と所定労働日数によって、もらえる有給休暇の日数は変動します。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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